【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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単なる一人暮らしやん!

社長(おれ)入魂の綾辻キングダム企画。

それは一瞬で外部にバレた。

原因はなんの事はないヒューマンエラーだ。

もうしばらくしたら暇になり始めるであろう映像制作会社に伝手を作るため、営業に「仕事受けれそうかそれとなく聞いといて」と言っておいたのだが……

営業がその事でテレビ局の喫煙所でよく会う社員さんと雑談をするうちに、ついポロッと綾キンの企画の事を喋ってしまったのだ。

この頃もうすでにコロナ対策で収録に支障をきたし始めていたテレビ局としては、誰の唾もついていないアウトドア企画が魅力的だったのだろう。

すぐに俺のところに、テレビ番組としての打診が来た。

 

「うちとしてはね、お付き合いのあるカノンボールさんと是非番組をやってみたいと思っていたんですよ。まずは一時間の特番でと考えてるんですけど、どうですか?」

 

なんて事を言われたわけだが……

他の付き合いのあるVtuberとはとっくに番組をやっているというのに、なかなかに白々しいセリフだ。

そもそも、今更テレビか? という感じもある。

昔はVがテレビに出れればそりゃあえらい事だったが、ここからは逆にネットがどんどん強くなるからな……

とはいえ、うちの会長の掲げる大目標にも、テレビ番組というものはたしかにあった。

ドーム、自社ビル、大型案件、そしてテレビとアニメか……

そのうちのテレビとアニメは、自社の力だけでは難しい分野。

だからこの降って湧いたようなテレビの話も、ちょうどいいと言えばちょうどよかった。

 

「綾辻さん、火曜の十六時に事務所(そうこ)まで出てこれますか?」

『大丈夫ですけど、社長から連絡って事はアレ関係ですか?』 

「そうです、実は綾辻キングダムにテレビカメラが入るって話になりそうなんです」

『どぅえっ!?』

 

変な声を出している地主を引き連れ、テレビ局にて詳細を詰めた。

こっちはこっちで企画撮影をやり、テレビはテレビでそれを撮る。

尺もCM入りもリアルタイム性も気にしない動画サービスと、一瞬たりとも視聴者の興味を逃せないテレビでは方法論が全く違うからだ。

どうせカメラなんか回しっぱなしだし、使える部分だけ使ってもらうとしよう。

その上で何か大きな撮れ高があれば、そこは互いに応相談という事になった。

というわけで、特番としてテレビのカメラが入る事になった綾辻キングダム。

そこにテレビ側を入れた意味というのは……確かにあった。

というのも、テレビ側にはこういう企画の場所がバレないようにするノウハウというのがあったのだ。

近くの山の尾根などの特徴的な地形を映さないとか、そういうものだったが。

素人からすれば考えもしなかった事で、正直ありがたかった。

やはり実写を撮る事にかけては、テレビの右に出るものはいない。

そんな彼らの指導を受けながらの第一回の撮影が、早速始まろうとしていた。

 

「ぅあやつじぃ! キングダムゥー!!」

「「「「「イェーイ!!」」」」」

 

草だらけの原野に横並びになった、五体のエアー着ぐるみ。

空気で膨らんだ彼女たちは、まだまだ洗練されていない身振りでタイトルコールを行った。

メンバーは現段階の着ぐるみ持ちの中で、この日に集まれる人間を全員集めたもの。

空気の音がシューシューいっているが、その声は全て内蔵されたマイクで拾われている。

一応スピーカーも仕込んであるので、イヤモニをつけてない人と喋る時はそれをオンにすればOKだった。

 

「私、綾辻香真(あやつじかじん)はぁ! ここに独立を宣言致します!」

「王様!」

「王様っ!」

「王様ぁ!」

「オザマーッ!」

 

ガヤもまだまだシンプルなものだが……

どうせだからそこらへんも、テレビ局スタッフの指導を受けて洗練させていければいいな。

 

「王様ぁ、その独立ってどれぐらい独立?」

「日本からも独立するの?」

「独立戦争ありますか?」

「えー、最終的には、住民票を実家からここに移すぐらいの独立です」

「単なる一人暮らしやん!」

 

そんな寸劇があったところで、メンバー紹介へと移る。

特にディレクションはない。

うちの事務所は「一番面白いのはライバーだから基本口出ししない」という方針だし。

テレビ側も半ばドキュメント感覚で撮っているから、基本回すだけだ。

一応「欲しいシーンあったら言って」とは伝えてあるので、何かあれば指示が出るだろう。

 

「とにかく、まずはこの広大な領地にぃ! 私のための王国を築いてくれる民を紹介します!」

「イェーイ!」

「頑張るぞーっ!」

「働くぞぉ!」

「開拓開拓ぅ!」

 

一番左に立った綾辻さんは、まず事務所の顔である枚方(ひらかた)カノンを手で指した。

 

「まず、名誉キングフレンズである枚方(ひらかた)カノン!」

「どもども! カノンボール会長の枚方(ひらかた)カノンです!」

「えらい!」

「会長ーっ!」

「カイチョッ!」

 

最近はシュシュさんの人見知りもだいぶ改善されてきて、ちょっとぐらい知らない人がいても普通に役に入れるようになった。

というか今年の一月までの一年間、ほぼ毎月リアルイベントをやってきたのだ。

テレビ局のスタッフ以外はぶっちゃけ全員顔見知りだった。

 

「次! 同期の賢獣ラムダ!」

「賢すぎる獣! ラムダだよー! 賢すぎるからこの国では大臣決定!」

「じゃあラムダはトイレ警備大臣に任命するから、王宮横の大トイレを守ってください」

「なんでだよぉーっ! キャハハ!」

「ラムちゃーん!」

「賢獣!」

「ケンジュッ!」

 

今やほぼカノンボールのマスコットキャラになっている賢獣。

テレビ局側からも好かれているキャラクターで、番組ロゴにも彼女のモチーフが入るらしい。

局側としては、彼女がうちの社員というのも好材料だったらしい。

社員の仕事としては、一応ケモケモズのマネージャー補佐のような事をやっているが……

割合としてはライバー六割、広報三割、マネージャー一割といった感じだった。

 

「次! うちとは別の王国の民ではあるけど、突破口アケミ!」

王国(にきせい)道化師(ピエロ)! 突破口(とっぱこう)アケミでーす! アケミって呼んでね! よろしくお願いしまーす!」

「あっちゃーん!」

「アケミーっ!」

「アケミッ!」

 

彼女は売れなかったとはいえ元芸能人。

ある意味カメラの前に立つのには一番慣れて……いるのかと思ったが……

さっき本人が綾キンの喫煙所(すいがらいれ)の前でタバコを吸いながら「自分に向いてるカメラの前立つのなんか養成所(がっこう)以来ですよ」と語っていた。

 

「えー次、今日はいないはずだったんですけど、勝手についてきました。同期の白衣頼でーす」

「こんにちはー! 家にぃ! 帰ったらぁ! うがい手洗い、忘れずに! 白衣頼でーす!」

「こいつさぁ! 社長に今日は休みって言われてたのに、普通に集合場所にごっつい車で待ち構えてたんだよ? 怖いって!」

「違うよぉラムダくん、私は休みを使って差し入れをしに来ただけだから。あ、うちの車にクーラーボックスあるんで、みなさんお好きに飲み物飲んでくださーい!」

「着ぐるみ持って差し入れしにくる奴おらへんやろー!」

「先生!」

「先生さぁ……」

「こういうのって医者の不養生って奴になるんじゃないですか?」

「おっ、よく知ってますねぇ香真(かじん)君、さすがは新聞部。でも大丈夫ですよ、私は今日自然の中でリラックスしに来てるので!」

 

まぁ、いいんだけどさぁ……

アホみたいに飛ばすシュシュの車でここに着いた時、普通に先生がいたのはビビったよね。

最近一日中家でコロナ対策の話ばっかりしてるだろうから、外に出たくなる気持ちはわかるけど。

 

「えー、それで最後に、リアルフォーム(きぐるみ)がまだ出来上がってないのに参加しに来てくれた人を発表します! ソラリオン(よんきせい)茶筒(ちゃづつ)くんとロボロボカンパニー(さんきせい)織元(おりもと)くん!」

「こいつら持ち物おかしいんだよ!」

茶筒薫(ちゃづつかおる)です! ギター持ってきました!」

織元錦(おりもとにしき)です! サッカーボール持ってきました!」

「完全に遊びに来てんじゃん!」

 

カメラが映した二人は、着ぐるみではなくお揃いのツナギを着た普通の人間。

後で顔の部分にはライバーとしての顔を貼り付けるが……

ぶっちゃけ今日の草刈りの実作業は、この二人がメインになってくれるだろう。

普通に考えて着ぐるみでまともに働けるわけがないからな。

 

「ていうか茶筒なんか朝サンダルで来たんだよ? 働く気ないよこいつら」

「大丈夫っすラムダ先輩! さっき社長と一緒にツナギと安全靴買ってきました! 何でもやります! 任せてください!」

「俺はちゃんと靴持って来ましたよ」

織元(おりもと)が持ってきたのはスパイクだっただろ!」

 

そんな、作業が始まる前からラムダのツッコミが止まらない綾キン一日目は、夜まで撮影が続き……

日中は土地の各スポットの紹介と、作る予定の施設の説明。

そして綾キンの警備を担当してくれる会社の営業さんに教わりながら、みんなでちょっとずつ草刈りをして作業は終了。

その後は暗い中みんなで焚き火を囲み、バンドをモチーフとしたソラリオン(よんきせい)茶筒(ちゃづつ)が弾くギターで『カノンボーラー』を歌ってお別れとなった。

これからもどんどん撮影は続く予定だし、六期生のデビューも近づいている。

そろそろうちも、もう少し社員を増やさないといけないな……

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