【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
「えっ? 私有地でも駄目なんですか?」
『業務になると無資格はまずいんですよ、なんでこっちでやらせて貰えればと思うんですけど』
「あーそうなんだぁ」
綾辻キングダムの撮影にユンボを持ってきてくれる予定の業者。
その営業さんに「素人には運転させられない」と言われて、俺は自分の勘違いに頭を抱えていた。
私有地なら無免許でも自由に作業し放題だと思ってたんだが、どうやら『業』として行うなら資格が必要だったらしい。
工事現場では資格を持った作業者しかいなかったから、気にした事もなかったな……
「小型なら特別教育でいけるんでしたっけ? 持ってきて貰うのミニユンボでしたよね?」
『そうですけど』
「そんじゃあこっちで希望者集めて教育受けときますわ」
『あ、それなら大丈夫だと思います』
という事で、幸い時はまだ緊急事態宣言が発令される前。
なんとか、ちょうどいい日程に滑り込む事ができたのもあり……
希望者を集めて二日間の教育に向かい、ミニユンボを運転するための講習を受けに行った。
演者も面倒だろうけど、撮れ高のためだ。
ついでに実技講習の場面を撮影してもいいか、テレビ局を通して聞いてみると……
講習の枠を全部うちで埋めた事もあってか、なんとOKが出たのでテレビカメラごと乗り込んだ。
結果は五人で教育を受けて、五人ともが無事修了証を頂く事ができた。
俺も今周では大型免許ぐらいまでしか持っていなかったので、ついでに取れてちょっとラッキーだったな。
そのお祝いにというわけでもないが、帰り道にみんなでラーメン屋に立ち寄った。
「会社の金で資格取れるの嬉しいですねー」
「そう? ユンボなんか一生乗らないと思うけど」
「いやいや、食い詰めたら工事現場で働きますから」
そんな事を言いながら、長い髪を後ろにまとめてラーメンを啜る若い女。
彼女は五期生のケモケモズのケモノホワイトこと、聖獣フワフワの中の人だ。
工事現場にこんな美人がいたら大変だろうなとは思うが、多分普通に冗談だろう。
「ていうか俺も早く行ってみたいっすよ
「まだなーんもないよ」
「なんもないからいいんすよ。アウトドアでクローズドな場所って東京にはあんまないじゃないですか、バーベキューとかもやりたいっすね」
そう語り、チャーシュー丼を食べながら目をキラキラさせているゴツ目の男。
彼は王国をモチーフにした二期生の、
他の箱の男性ライバーと一緒に草野球に行ったりするアクティブな人なのだが、コロナで予定も飛んで外に出たくて仕方がなかったらしい。
「バーベキューいいっすねぇ、俺は他にもステージ的なもの作ってもいいと思うんですよ。着ぐるみできたらそれで自分の曲の弾き語りビデオとか撮りたいですし」
「着ぐるみの手でギター弾くの?」
「無理っすかねぇ?」
そんな着ぐるみに無限の可能性を感じる発言をしているのは、細身で長身の男。
彼は
ガンガンライブやりたい勢の一人だったので、もしかしたらそちらの方向でも綾キンに可能性を感じているのかも知れない。
「…………」
そしてそんな話を、我関せずという感じで聞き流しながら……
休日のOLという感じの服装の
最初は「王様が働くために資格取るって何なんですか?」とか、文句ばっかり言っていたのだが。
実技でユンボを動かし始めてからは、疲れてしまったのかすっかり静かになってしまった。
とにかくユンボに乗れるライバーが四人もいれば、作業量的にも絵面的にも十分だろう。
そんな準備万端の二回目の綾キンの撮影は、すぐそこまで迫っていた。
いたのだが……なんとその翌日の四月六日、大都市圏に緊急事態宣言が発令されるというニュースが流れた。
県をまたぐ移動を制限するこの宣言により、企画は一旦ストップ。
『露と落ち 露と消えにし
発令から三日経った今。
そんな句を
前のキャンプ動画では焚き火料理だったが、今回はちゃんとした料理をするためにガスに切り替えたらしい。
「かんにんやで
シュシュは俺の横で動画を見て、備蓄のカップラーメンを啜りながらそんな事を言う。
「しょうがないよ、国のお達しなんだから」
「せやけどぉ……」
国のお達し、緊急事態宣言のせいで、綾辻キングダムは一旦元の企画に戻ってしまったのだ。
つまり、千葉住まいの王様が、自分の土地の草刈りがてらキャンプをするという企画にだ。
今は彼女と千葉住みの女性社員、そして一応撮影に来たテレビ局の女性ADでやっているキャンプで、女ばかりで安全面の心配もあるような絵面だが……
実際はすでに警備が入っているため、なんなら番組開始前より安全なぐらい。
『キングパエリア食べたい人ー』
彼女がそう言うと、頭にボーラーの画像を貼り付けた人間と『AD』と書かれた黒丸を貼り付けた人間が紙皿を手に並び、彼女の手料理を受け取っていく。
「美味しそうやなー」
「後でスーパー行って、具材売ってたら作ってみる?」
「できんの!?」
「パエリアの素っていうのがあるんだよ」
「なにそれ! めっちゃええやん!」
画面の中のパエリアはたしかに美味しそうで、空気もゆるくて面白い。
これはこれでいいような気もするが、なんか次はテントを持ち込んでの野鳥観察をやるつもりらしい。
「緊急事態宣言が明けるまで無理しなくてもいいよ」とは言ったのだが、綾キン企画は彼女の初めてのホームラン。
基本的にクソがつく真面目さの綾辻さんは、なんとか一人ででも宣言明けまで視聴者の興味を持続させるつもりのようだ。
同じ千葉住まいの二期生、
まだ着ぐるみができていない以上、絵面的にはあんまり変わらないんだよな……
今後こういう事があった時のためにも、これからは所属ライバー全員の着ぐるみを作る事にしようかな?