【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
皆様に推していただけたお陰です、ありがとうございます。
Vtuberの世界は厳しい。
だが底辺Vtuberの世界はもっと厳しい。
俺が自分で絵を描いてLIVE2Dを作り……
ちょうどVtuberが激バズりしていた頃。
そして俺が友達に付き合って見に行ったカノンボールの初ライブ、カノンボールFESで全員歌唱のカノンボーラーを聴き、死ぬほど感動していた頃だ。
「俺、絶対にあいつらと同じようになってやる! そんで次のライブは俺も一緒に出るんだ!」
「
「するする! 今するわ」
「やる気じゃんマジで」
横浜駅のジョナサンで、ライブの感動のままに友達と一晩中そんな事を語り明かし……
俺はすぐにカノンボールのライバー募集へと応募した。
『
んで、落ちた。
深夜のジョナサン前で撮った勢いだけのPR動画、二十三歳という年齢の割に何もない特殊技能欄、そして最強のデバフである男という性別。
さもありなんという感じだが、当時はそれが超絶悔しく……
その気持ちだけをバネに、描けない絵を描いてまで自分でVtuberデビューしてしまったぐらいだ。
でもその活動をしばらく続けた今になってみればわかる。
俺がカノンボールに落ちたのは、当然を超えて必然だった。
「あー、これ聞こえてます? 聞こえてたらコメントください」
そんな事を、配信サイトの仕組みすらよくわからず、視聴者ゼロ人の配信画面に向けて言っていたのを覚えている。
とはいえ、その時にわからなくて良かったのかもしれない。
最初の配信丸々三回分、完全に視聴者ゼロ人でやっていた事をその時に理解していたら、早々に諦めて辞めていただろうからだ。
そんな底辺街道を驀進していた俺だから、最初に貰ったコメントの事をなおさらによく覚えている。
「しょっ!?」
それだけを言って、その人は去っていった。
動いているのは小学生が描いたような絵で、陰キャ丸出しのたどたどしい喋り、そして何の準備もない本当の雑談。
あんな事を言われるのも当たり前だ。
だが当時の俺はそうは思わなかった。
なにくそと奮起し、自分と
ガワに突っ込まれれば必死こいて絵を描いてアップデートし、喋りがボソボソと言われれば喉を絞った。
話がつまらないと言われれば必死でニュースを見て新聞を読み、寒いギャグを擦りまくった。
「
「初見さんいらっしゃい! がんばりますよ!」
「今見てってよぉ!」
「凸ですぐ終わっちゃったらごめんね!」
もちろん凸は十件来るわけもなく、配信はゲームをクリアするまでの十八時間の間続いた。
平日は会社に行きながら、そんな滅茶苦茶な企画を打ちまくった。
だが無茶をした甲斐があった部分もあり……話す内容は虚無ながらも、俺はどんどん喋れるようになっていった。
延々そんな事をしていれば、なんだかんだ知り合いも増えるもの。
気がつけば、うちのチャンネル登録者数も百人の大台に乗った。
そしてそのうちの五十人はVtuberだ。
SNSのアカウントに至っては、二百人ほどのフォロワーほぼ全員がVtuber関係者かもしれない。
そしてその関係者は……
もちろん、当然、当たり前のように、漏れなく、すべからく、完全に一切、マジで全員数字が伸びておらず。
男で登録者五百人行っている奴は、もうそれだけで堂々たるエースみたいな扱いだった。
そんな中で悠々と登録者五万人の壁を超えていく
デビューから三ヶ月が経った今になって、俺もようやくそれを理解し始めていた。
それでも「もう辞めちゃおうかな」なんて気持ちが起こらなかったのは、周りのV仲間たちのお陰だろう。
『
『いいってことよ! アーマード・コアも全作耐久凄かったぞ!』
この日もDiscordのチャットで『アーマード・コアの新作は必ず来る』という名前の仲間と、そんなやり取りを行っていた。
彼が大好きなアーマード・コアというゲームの耐久配信をやったので、そのファンアートを描いてファンアートタグへと流したのだ。
底辺の中では、クオリティはともかく絵を完成させる事ができるというだけでも立派なスキル扱い。
本人から大げさに喜んで貰えるファンアートは、俺にとって絵を頑張る推進力にもなっていた。
『そういや
『カノンボール? めっちゃ好きだけど』
『あ、そうなんだ。配信品質向上委員会って入らないの?』
『あーあれね、俺別に機材では困ってないし』
カノンボールの配信品質向上委員会というのは、マイクの選び方とか設定を教えてくれるところだと聞いている。
興味がないわけではないが、自分にはそれよりももっと先に改善しなければいけない事が多いとも思っていた。
『もう誰も機材の話してないよ。Vtuberの集まり所みたいな感じになってる』
『えっ、そうなんだ?』
『みんな動画伸ばす方法とか真剣に話しててさ、たまにハセやんがそこに意見くれたりするよ』
『マジ?』
ハセやんといえば、カノンボールの名物社長だ。
そして、俺が大感動したあのカノンボールFESを一手に取り仕切った男でもあるのだ。
『今度オフ会やろうって話にもなっててさ、それなら俺
『すぐ入るわ』
『おおっ! マジ?』
この、カノンボール配信品質向上委員会。
このコミュニティへの参加が俺のV人生の第一のターニングポイントになる事を、この時の俺はまだ知らなかった。