【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
『
そんなプチ炎上のような事を経験したお隣さんは、それからも元気に配信をしていたのだが……
なんだか、日を追うごとに元気がなくなっていくような感じがあった。
『今日~? まぁ、いつも通りスプラかなぁ……』
調べてみたら、やはり一部のファンがアンチに回っているようだ。
ファンから転じたアンチというのは恨みが深い。
アンチスレを立て、生配信を荒らし、ニゴニゴ動画に動画を上げたり、色々やっているようだ。
未来の
やはり叩かれ始めというのは、誰にとっても心が柔らかい時期らしい。
俺も最初に理不尽な怒られをした時は三日ぐらい引きずったからな、まぁすぐにそれが通常業務になってしまったが。
とはいえ、本人にとっては今が全て。
夜の八時、家を出るところでバッタリ会ったお隣さんは、なんだか髪も伸び、目の下に隈が出来ているように見えた。
「あっ、長谷川さんも
「ええ、あっ、
「そうなんですよ~……一緒に行きましょー」
「いいですけど……」
「んじゃあ、ちょっと待っててくださいね」
まだまだ寒い三月、アパートの外にある自動販売機の前に立っていると……
何かのアニメのコラボ商品らしいMA-1を羽織った彼女が、白いボア付きの
「寒いですねぇ~」
「夜はヤバいっすね」
そんな事を喋りながら歩き始める。
うちのアパートには風呂がない。
その代わりに歩いて十五分ぐらいのところに銭湯があって、みんなそこに通っているのだ。
とはいえもう一室のお婆ちゃんは昼間にデイサービスに行っているらしく、そっちで食事もお風呂も済ませているのだろう。
風呂付きを選ぶべきだったか……とは思うものの、銭湯代を込みにしてもうちの家賃は破格だ。
そしてそんな破格の家賃を生み出しているのであろう騒音兵器が、俺の隣で静かに話しはじめた。
「長谷川さんはVtuberって知ってます?」
「え? あー、ツシマアイちゃんとか?」
「そうそう、アイちゃんみたいな奴なんですけどぉ……実は私、それをやってて……」
あんだけデカい声で自身の名前を出しながら配信をしておいて「実は」もクソもないとは思うが……
まぁ、2018年のVtuberはまだまだ一般に広まっていないからな。
「そうなんですね」
「そうなんですぅ、うちの部屋
「生配信知ってますよ、アイちゃんもやってましたし」
「へぇーっ、じゃあ長谷川さん結構好きな方やったり?」
「好きですねぇ」
適当に何も知らないふりをして相槌を打つ事もできたが、それはしたくなかった。
超激務で家にも帰れなかった俺にとって、Vtuberというのは本当に生活の潤い全てだったのだ。
「へぇーっ、じゃあじゃあ、あたしなんかは?
「
「みてくださいよぉ、絶対ですよ」
そんな話をしているうちに銭湯に付き、彼女は「もうちょっと話したいんで、一緒に帰りましょ」と言いながら中に入っていった。
この時の俺は「まぁ、たまには画面の向こう以外の人間と話したかったのかな?」ぐらいに思っていたのだが……
その三十分後から数時間に渡って、面倒くささの本領を発揮した関西弁のアホの話に付き合わされる事になるとは……
一ミリも考えていなかったのだった。