【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
レコーディング。
それは、なんとなくやってる作業自体の絵面は浮かぶものの……
実際に何をやっているのかという事については、全くわからない種類の事柄だ。
マイクに曲を吹き込むという事、それは自分も日常的にやっている事。
しかし当然、そうして吹き込んだ歌声というのは、売っているCDとは全くクオリティが違うもの。
何が違うのかもわからない俺は、素直に先人の知恵を借りる事にした。
『レコーディングって、どうしたらいいんですかね?』
『
『そうなんですけど、
『カラオケかなんかでさ、レコーダーで録ってきてもらったら?』
『いやそれがですね、実は
『は?』
『え?』
何が気になったのか、師匠から
とにかく師匠様々と言うべきか、レコーディングについての質問にも色々答えてもらう事ができた。
それどころか百戦錬磨のミュージシャンであるカレンさんが、うちのレコーディングに付き添ってくれるという話にまでなり。
さすがにそれは悪いとも言ったのだが「全然、教えたげるよ」と言って頂き、恐縮の至りだった。
それに加えて、更にカレンさんはこう提案をしてくれた。
『せっかくあたしら以外の人も集まるんだし、音楽系の面子集めてオフ会にしようよ』
『え? レコーディングですよね?』
『
ノットさんというのは、俺がカレンさんと並んで師と仰いでいるノット・キング・コールさんの事だ。
たしかにキングさんはバンドをやっていたと聞いているが、果たして今もギターが弾けるのだろうか?
『たしかあの人元プロだから、下手したらレコーディングはあたしより詳しいかもよ』
『そうなんですか!?』
そう言われると、ぜひともお話を伺ってみたい。
割と直近の日程にも関わらず、幸いな事にレコーディングスタジオの予約もサクッと取れた。
その上で、さっそくノットさんに個チャを飛ばしてみると、すぐに「いいよ~」という気楽な返事が返ってきた。
『もうレコーディングまでやるの凄すぎンゴ。そんでどんな曲録るの?』
『あっ、よかったら聴いてくださいよ! ファイル送ります』
ノット・キング・コール
『あり~、聴いとくわ』
一応他にも、何人かの音楽系Vtuberの方にチャットを飛ばしてはみたのだが……
みんなその日は都合が悪かったようで、結局四人でのオフ会となった。
というわけでの、八月末の土曜日の事。
俺はギターとパソコンを引っ提げて、待ち合わせ駅まで向かい……
定刻より十分前に集合したメンツと共に、都内某所のスタジオへと向かっていた。
「ノットさん、プロミュージシャンってほんとなんですか?」
「いやいやいや、何枚かCD出した事あるだけだよ。全然全然」
「いやめっちゃ凄くないですか? やっぱギターですか?」
「いやいや、それはベースだったけど。全然全然、ほんと凄くないよ。そんぐらいは全然普通にいっぱいいるからね。全然マジ、全然」
ちょっと年上で、黒髪センター分けにポロシャツという、普通の休日の男性サラリーマンという感じのノットさん。
そんな彼と俺が喋りながら先頭を歩き、後ろを女性陣二人がついてきているのだが……
「…………」
「…………」
やっぱり、女性もいるんだし……もうちょっと涼しくなってから企画するべきだったんだろうか?
ジリジリと照りつける太陽のせいか、後ろの二人の会話はあんまり弾んでいないようだった。
「おうがさんはどんな感じ? ギターは?」
「いや正直全く上手くならないっすね……実は今日もノットさんに教えてもらおうと思って来ました」
「いやいやいやいや、教えるとか無理よマジ。まぁ一時期レッスンの仕事とかやってたけど、マジ全然だよ全然……あ、そういやおうがさんってエフェクター何使ってんの?」
そんな話をしながらも、なんとなく二人の足は速くなる。
「…………」
「…………」
背後からの圧を感じると言ったら、変になるかもしれないが……
この時の俺とノットさんの間には、なんとなく後ろを振り返られないような空気があったのだった。