【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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【玉チル】底辺Vtuber奮闘記14

レコーディング。

それは、なんとなくやってる作業自体の絵面は浮かぶものの……

実際に何をやっているのかという事については、全くわからない種類の事柄だ。

マイクに曲を吹き込むという事、それは自分も日常的にやっている事。

しかし当然、そうして吹き込んだ歌声というのは、売っているCDとは全くクオリティが違うもの。

何が違うのかもわからない俺は、素直に先人の知恵を借りる事にした。

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『レコーディングって、どうしたらいいんですかね?』

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

緋牡丹(ひぼたん)さんの? 音源送って自分で録ってもらうって話じゃなかったっけ?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『そうなんですけど、緋牡丹(ひぼたん)さんもちゃんと歌作るのは初めてって話なんで、途方に暮れてまして』

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

『カラオケかなんかでさ、レコーダーで録ってきてもらったら?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『いやそれがですね、実は緋牡丹(ひぼたん)さんがうちのサークルに入って、M3に出すCDのボーカルもやって頂けるって事になりまして。どうせだからちゃんとしたところでレコーディングをやってみたいなって……』

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

『は?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『え?』

 

何が気になったのか、師匠から緋牡丹(ひぼたん)さんがうちのサークルに入った経緯を根掘り葉掘り聞かれたりもしたが……

とにかく師匠様々と言うべきか、レコーディングについての質問にも色々答えてもらう事ができた。

それどころか百戦錬磨のミュージシャンであるカレンさんが、うちのレコーディングに付き添ってくれるという話にまでなり。

さすがにそれは悪いとも言ったのだが「全然、教えたげるよ」と言って頂き、恐縮の至りだった。

それに加えて、更にカレンさんはこう提案をしてくれた。

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

『せっかくあたしら以外の人も集まるんだし、音楽系の面子集めてオフ会にしようよ』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『え? レコーディングですよね?』

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

自分(セルフ)でオペ(レーション)する代わりに料金固定、何人でもOKっていいとこ知ってるからさ。音楽系ならスタジオとかでオフ会は定番だし。あとせっかくだから、ノットさんとか呼んでギターちょっと見てもらったら?』

 

ノットさんというのは、俺がカレンさんと並んで師と仰いでいるノット・キング・コールさんの事だ。

たしかにキングさんはバンドをやっていたと聞いているが、果たして今もギターが弾けるのだろうか?

 

檸檬堂(れもんどう)カレン

『たしかあの人元プロだから、下手したらレコーディングはあたしより詳しいかもよ』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『そうなんですか!?』

 

そう言われると、ぜひともお話を伺ってみたい。

緋牡丹(ひぼたん)さんとカレンさんとのチャットを往復しながら、なんとか調整して日程を決め。

割と直近の日程にも関わらず、幸いな事にレコーディングスタジオの予約もサクッと取れた。

その上で、さっそくノットさんに個チャを飛ばしてみると、すぐに「いいよ~」という気楽な返事が返ってきた。

 

ノット・キング・コール

『もうレコーディングまでやるの凄すぎンゴ。そんでどんな曲録るの?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『あっ、よかったら聴いてくださいよ! ファイル送ります』

 

ノット・キング・コール

『あり~、聴いとくわ』

 

一応他にも、何人かの音楽系Vtuberの方にチャットを飛ばしてはみたのだが……

みんなその日は都合が悪かったようで、結局四人でのオフ会となった。

 

 

というわけでの、八月末の土曜日の事。

俺はギターとパソコンを引っ提げて、待ち合わせ駅まで向かい……

定刻より十分前に集合したメンツと共に、都内某所のスタジオへと向かっていた。

 

「ノットさん、プロミュージシャンってほんとなんですか?」

「いやいやいや、何枚かCD出した事あるだけだよ。全然全然」

「いやめっちゃ凄くないですか? やっぱギターですか?」

「いやいや、それはベースだったけど。全然全然、ほんと凄くないよ。そんぐらいは全然普通にいっぱいいるからね。全然マジ、全然」

 

ちょっと年上で、黒髪センター分けにポロシャツという、普通の休日の男性サラリーマンという感じのノットさん。

そんな彼と俺が喋りながら先頭を歩き、後ろを女性陣二人がついてきているのだが……

 

「…………」

「…………」

 

やっぱり、女性もいるんだし……もうちょっと涼しくなってから企画するべきだったんだろうか?

ジリジリと照りつける太陽のせいか、後ろの二人の会話はあんまり弾んでいないようだった。

 

「おうがさんはどんな感じ? ギターは?」

「いや正直全く上手くならないっすね……実は今日もノットさんに教えてもらおうと思って来ました」

「いやいやいやいや、教えるとか無理よマジ。まぁ一時期レッスンの仕事とかやってたけど、マジ全然だよ全然……あ、そういやおうがさんってエフェクター何使ってんの?」

 

そんな話をしながらも、なんとなく二人の足は速くなる。

 

「…………」

「…………」

 

背後からの圧を感じると言ったら、変になるかもしれないが……

この時の俺とノットさんの間には、なんとなく後ろを振り返られないような空気があったのだった。

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