【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】 作:関係ないよ
俺とノットさんとの間でふわっと持ち上がっていた、コラボユニット計画。
絶対やろうね!(やれたら)……ぐらいに考えていたその計画に、いきなりブーストがかかったのはオフ会翌日の事だった。
『せっかく昨日話に出た事だし、みんなで一回ユニットやってみようよ!』
そう言って、
日曜の午前に来ていた招待を、昼に起きてから承諾したのだが、サーバーにはすでに昨日のメンツが揃っていた。
たしかに元々は
男性Vと絡む事になる彼女の事はちょっと心配だけど、俺としてはユニットで何かをやるのはもちろん歓迎だし、楽しみだ。
だが俺よりもユニット活動に前向きな人が、他にいた。
『ユニット名はVtuber Sound Teamあたりでどう? 一応全員音楽関係者だし、略したらVSTで験もいいし』
そう言ってきたのは、俺の師匠の一人である檸檬堂カレンさん。
昨日の飲み会では、ユニットをやるなら一緒にやりたいと言っていたし。
解散後に二人で飲みに行った
だが問題はその前向きな二人に、いきなり担ぎ上げられたのが俺という事だ。
『おうがさん、チャンネル作ってよ』
『そうだね、おうがさんなら任せられるし』
ノット・キング・コール
『おー、頼むわ』
最後のノットさんは乗っかっただけかもしれないが……
あれよあれよという間に数の論理で話が決まり、四人の中で登録者数最底辺の俺がリーダー的なポジションに立たされてしまった。
そんな『サウンドチーム』の初活動は勢いのまま、翌日の夜に始まった。
これはカレンさんが「日置いたら絶対めんどくさくなって自然消滅するから」と言い始め、全員がそれに同意したからだ。
『サウンドチーム』と言いながらもやる事はゲーム配信、タイトルは『モンスターハンターワールド』。
プレイヤーたちはハンターとなり、モンスターを倒してその素材で装備を整え、最終的に巨大で激強な敵を協力プレイで倒すのが人気のゲーム。
来たる2019年9月6日にDLCが発売される予定の、にわかに注目度の上がっているコンテンツだ。
これは
『あーっ、またおうがさん死んだーっ』
「……すいません」
『三乙したら終わりだからね』
『おうがさん双剣向いてないんじゃない?』
『そうだねー、ヘビィボウガンにしよっか』
俺が散々足を引っ張りながらも、
ただ、予想していた通りというべきか……予想していた以上というべきか……視聴者の反応は渋い。
なんか途中から乙ってすいませんだけ言ってる謎の男いたよな
ひぼたんが楽しそうなのはいいけど、男女コラボは色々言われて荒れるからやめたほうが。俺はいいんだけどね。
カレンって子めっちゃいいわ
三人コラボお疲れ様でした!
ひぼたんとカレンの2人コラボも見てみたいな
檸檬堂さんのファンになりました
一人喋ってない奴いたな
おうがって奴何者? 忍者?
概ねこういう感じで、俺がゲームにあっぷあっぷで黙りがちだった事から、こいつなんなんだよ的なコメントも目立った。
やはり雑談を疎かにしてきたツケが出ているのか……もっと頑張らなければ!
だがそう決意を新たにした俺が目にしたのは、Discordサーバーの謎の流れだった。
『謎の男
『これ企画でやろうよ』
ノット・キング・コール
『おうがさんの面白いところって、名前と見た目がド個人Vtuberなのに本人がまともすぎるとこだから、そこ押してくのいいかもねー』
『自己紹介企画みたいな感じでやってみる? ウケたら全員分やるみたいな』
そんな流れに前回何もユニットに貢献できなかった俺が抗えるわけもなく、始まった企画。
その名も『
俺に色々な事をやらせて正体を探る、という建て付けで始まったそれはもう悪ノリの塊だった。
一応、ほかの三人は毎回俺のリアクションを問題にしたクイズを出題して、一番得点が高かったものを『
『
『焼肉、ラーメン、カレーライス』
『小学生じゃん』
『名前と見た目の割に普通すぎる』
動画の中のVtuberの俺はみんなからそう言われて「何か悪いの……?」と三人の顔を見回している。
これは三人からのディレクションで、なるべく何やってるか、どう思っているのかをわかりやすくしようという試みだった。
たしかに、言われてみれば
名前から何をやっている人なのかも読み取れないし、チャンネルを見ても謎の歌動画が上がっているだけ。
全くもって、わかりにくいコンテンツになってしまっているわけだ。
謎は人を惹きつけるが、わかりにくさは人を遠ざける。
この企画はそのわかりにくさをネタにして、なんとか俺というキャラクターを世に出してやろうという、三人からの熱いエールだった。
『今から
ちなみに司会をやってくれているのは、
Vtuberの肉親というのは時々登場するとファンが沸いてコメントが加速したりするもので、
『おうがさん激辛好きだもんねぇ』
「いや、辛いのは別に……」
『
『マジで誰も正解できないかもね』
「…………」
『では
みんなの期待を一身に背負って、俺は用意した激辛ラーメンを一気に啜った。
「むっ! ぐっ! ゲホッ! ゲホッ!」
『ラーメンじゃん』
『啜ってた』
『百ラーメン』
その後も色々と身体を張った甲斐があってか、動画のコメント欄にはちょっとだけ好意的な反応が増えた。
ひぼたんが楽しそうで良かった
男二人いらない
こんなマニアックな動画いらんねん
男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士でコラボすべきだと思うの
おーが剣道やってたんだ。俺も中高やってたから親近感湧いたわ。
最初厨二病の人かと思ってたらすげーまともな人だった
『檸檬堂カレン、何者』も待ってます
俺はいいんだけど、男女コラボは気にする人も多いと思うし、あんまりこのチャンネルは長々続けない方がいいと思う。俺は楽しんでるけどね、念のため。
他のコメントも見てみると賛否両論というには否が強いという感じだったが、それでも個人的にはめちゃくちゃ手応えがあった。
なんと俺の『
しかも歌動画にも「応援してます」というコメントがついた、こんなに嬉しい事はないだろう。
ちなみに、コラボユニットであるVtuber Sound Team。
略して『サウンドチーム』のチャンネルの方は、最初の生放送が始まる前にすでに五十人近い登録者がいて、終わった時には百人超え。
俺の動画が上がった後には、三百人を越えていた。
やはりユニットは正義、数は正義なのかもしれない……
そう考え始めていた俺は、
『Vtuber甲子園面白かったしさぁ、うちでもパワプロやろうよ。向上委員会のメンツ選手にして、
『いいですね、やりましょう!』
ノット・キング・コール
『俺も監督やりたいやりたいやりたい』
『くじ引きしてさ、二人監督、二人実況でいいんじゃない?』
『あっ、俺応援歌作りますよ、高校の』
『いいじゃん応援歌』
そんな軽いノリで決まった、Vtuber甲子園の一ヶ月遅れの後追い企画。
この企画が、ターニングポイントだった。
もう自分でも、半ば諦めていた道。
光り輝く、夢への道。
登録者百人、ユニットを組んでも三百人。
そんなド底辺Vtuberが夢見ても、自分を含めた誰もが無理だと切り捨てる、険しい険しい道。
この企画が、その道に、かすかに繋がっているのだという事を……
この時の俺はまだ、知らなかった。