【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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【玉チル】底辺Vtuber奮闘記18

結局厳正なくじ引きの結果、野球対決の監督役に決まったのは緋牡丹(ひぼたん)さんと檸檬堂カレンさん。

俺とノット・キング・コールさんは実況役に決まった。

八月に著名個人勢Vtuberが、企業勢四人を監督として集めて行った『Vtuber甲子園』。

今回はそれにあやかったオール個人勢の後追い企画という事で、企画名は『Vtuber草野球対決』。

大会を行うほどの企画力も集客力もない、我々にはお似合いの企画名だと思う。

選手役も、配信品質向上委員会で募集してみたところすぐに集まった。

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『今度Vtuber草野球対決っていうパワプロ企画やるんですけど、選手として名前使っていい人いますか?』

 

特命社長

『ノ』

 

アーマード・コアの新作は必ず来る

『いいよ』

 

十津川扇(とつかわおうぎ)

『ノ Vtuber甲子園面白かったもんねぇ』

 

淮海(ワイファイ)(ちから)

『ノシ』

 

石音球鬼(いしおときゅうき)

『か、監督枠は!?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『すいません今回はプレイヤー側は募集なしです!』

 

石音球鬼(いしおときゅうき)

『(´・ω・`)』

 

マリモン

『ノ』

 

石音球鬼(いしおときゅうき)

『あ、選手いけます、いきたいです』

 

ゆうP

『ノ』

 

そんな感じですぐにほぼ規定数が集まり、俺とノットさんを選手枠に含めても微妙に足りなかった分は、緋牡丹(ひぼたん)姉を選手として使うという事にまとまり……かけたのだが。

『サウンドチーム』で配信枠を取ったドラフト配信にて、皆の悪ふざけが色々あったりして……

緋牡丹(ひぼたん)さんのお姉さんは、今回は出場なしという事になった。

ともかくそうして無事出場選手が決定した後は、パワプロの栄冠ナインという選手育成モードを使っての二週間の育成期間を定め。

その間に監督二人は各選手を育て、俺は応援歌作成を、ノットさんは野球実況の勉強を行うという事になったのだった。

 

『じゃあ今日は予告してた通り栄冠やってきまーす。これで作ったキャラはこんどサウンドチームでやるVtuber草野球対決で使うから、そっちも楽しみにしててねー』

 

わこつ

こんばんわー

ひぼたんスパチャ来てるよ

初見です

何時ぐらいまでやるの?

ひぼたんとカレンのコラボ好きだから楽しみ

 

『それじゃあ栄冠ナイン開いてー……うちはせっかくドラフトでおうがさん取ったから、まずは凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)選手から作成していきます』

 

1キャラ目から1ミリも知らねぇ

凸……天……?

目滑る名前だなぁ

とってんこうおうがさんをご存じない!?

誰だよ

ひぼたんが率いてるユニットのメンバーだよ

ドラフトで一位指名して争うような選手かぁ?

 

俺のPC画面の右上四分の一で流れていた、そんな緋牡丹(ひぼたん)さんの生配信。

そのちょうど下、画面の右下四分の一に表示されていたブラウザでは、今度はカレンさんの方の生配信が始まった。

 

『おつー、おつおつー』

 

おつ

わこつー

昼から待機してた

おつおつおつー

今日もお声が可愛いね♡

栄冠と聞いて

 

『そんじゃ栄冠やってくよん。え? いきなりじゃないよ、こんどVSTでひぼたんちゃんと対決するから、そのために選手作っとくの……えーっと』

 

VST?

サウンドチームだろ

Vtuber甲子園良かったよねー

1人目からあっちのメンバー?

とってんこうおうき?

おうき誰だよ

 

画面には『凸天虹(とってんこう)王起(おうき)』というキャラクターが表示されていた。

これがドラフトであった、悪ふざけというやつだ。

一位指名で負けたカレンさんが、勝手に俺の二次創作キャラクターを作り出して指名し、責任者(コミッショナー)であるノットさんがそれを許可してしまったのだ。

 

『とってんこうおうがの生き別れの弟だよ。ドラフトであっちに取られちゃったから、ハズレ一位指名で弟の方取ったの』

 

二次創作じゃん

DQNネーム兄弟

めちゃくちゃやん

おうきくんは何してる人なの?

 

『ん? おうきくん? パチプロ』

 

草、兄貴見習って個人勢やれよ

タコ負けして兄貴から金借りてそう

個人勢Vtuberよりパチプロのがまだ目あるだろ

カレンちゃん声好きすぎる

カレンの選手はつくらないの?

 

『あたしは監督だから』

 

そんな感じで盛り上がっているカレンさんの生配信と、着実に育成を進めている緋牡丹(ひぼたん)さんの生配信を副窓しながら、俺はギターを握っていた。

 

「えー……苦く……酸っぱい青春に……魂かけたこの歩み……黄色、黄色、レモンっぽさを入れたいよなぁ……」

 

ゲーム企画用の歌作りは初めての経験で難しかったが、喋りで貢献できない以上、一番やれそうな歌ぐらいでは成果を出したいところだ。

 

「えーっとぉ、校歌の歌詞、校歌の歌詞っと。昔の人はインターネットなしでどうやって曲作ってたんだろうなぁ……」

 

曲に行き詰まった俺は、参考にするための校歌の歌詞をブラウザで探し始めた。

今作っているのは、応援歌ではなく校歌だ。

これまであんまり興味がなく、調べるまでよくわかっていなかったのだが……

甲子園の応援歌っていうのは『チャンステーマ』というらしく、ほとんどポップスの吹奏楽アレンジのようなものだった。

二人から好きな曲を聞いて作ってみるというのもいいが、創作の余地はあんまりないし、なんならゲームの中にも元から色々入っているものだ。

下手に作って流しても「ゲームの音とのミックスが難しいかも」と、配信品質向上委員会に常駐しているカノンボールの社員さんからも言われている。

とはいえせっかく二週間という時間があるのだから、なんとか配信でウケが取れそうなものを作りたいという事で……

俺は試合が終わった後に流す予定の、二人の高校の校歌を作る事にしたのだ。

 

「それっぽくて、かつ笑える曲にしなきゃなぁ」

 

現実にある校歌を参考にはするが、これはそもそもイベントで流すものなのだ。

いい曲にできれば嬉しいが、それ以上に視聴者がちゃんとコメントで気持ちよくツッコめるものを作りたい。

 

「甲子園っていう舞台とギャップがあった方がいいんだよな、多分……」

 

俺もすでに百曲以上曲を発表してきているのだ。

朧気にではあるが「いい曲とウケる曲はちょっと違う」という事は理解し始めていた。

いい音楽は時間を超えるが、ウケる音楽の方はタイミングが重要なのだ。

然るべき時に然るべきクオリティで場にあり、それが然るべき役割にハマった時にだけウケる。

そこをいくとこんな企画の一要素の曲っていうのは、ちゃんとそこにハメに行けるだけ作りやすいというものだろう。

勝ったほうの一曲だけ、それも一度しか流れない曲ではあるが……

俺にとっては百人、いやもしかしたら千人が聞いてくれるかもしれない大舞台だ。

聞き流されるのはいい。

だが「邪魔」と言われる事だけは避けたかった。

 

「あくまで校歌ってフォーマットは外したら駄目だよなぁ……えーっと、最後はああ我らが檸檬堂学園で締めるのはマストで……」

 

完成度を高くするのは当然の事、多分歌詞はドギつく、曲自体は格調高く、全体にバカバカしくて、しかしガッチリ型にハマっている方がいい。

 

「うーん……作ってみなきゃわかんないよなぁ……とりあえず、十曲ぐらい作ってみんなに意見聞いてみるか」

 

『イェーイ! 凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)! U18選出ぅーっ! 金特金特金特~!!』

 

やるやん

この選手、何者?

左曲がりの男

ひぼたん持ってんねぇ

ひぼたんが楽しそうで良かった

 

「……明るい……太陽……緋牡丹(ひぼたん)さんの高校って、なんかあったかい地方の学校っぽいよなぁ……琉球音階?」

 

そんな、緋牡丹(ひぼたん)さんとカレンさんの生放送を見ながら、曲を届ける相手を客観的に分析するという経験は……

俺の中に、何かこれまでとは違う形の武器を形作り始めていた。

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