【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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【玉チル】底辺Vtuber奮闘記19

『打て打て打てーっ! アーマードコアーっ!』

『ゲッツーゲッツーゲッツー!』

『十一回裏、私立檸檬堂高等学校の攻撃。スコアボードは未だ0−0、壮絶な泥試合となりましたこの対決……』

「あっ、カレン監督タイムに入りました! どうやら代打を使うようです」

 

もうgdgd

この試合いつまで続くん

ずーっと知らん選手ばっかりでちょっと……

勝ったと思って風呂入ってきたらまだ続いてた

ほんとの草野球ならとっくに終わってる

 

そんな感じで、なんとも盛り上がりに欠ける試合内容となった『Vtuber草野球対決』本番生配信。

本来なら試合が盛り上がらなければ、監督と実況が盛り上げなければいけないところ。

だがやはり我々底辺Vが、企業勢や上澄みの個人勢たちと根本的に違うのはそこの部分。

頑張っても空回るばかりで上手く盛り上げる事は叶わず、試合上はカレンさんの勝ちだが、なんとも言えない空気で配信終了となった。

とはいえ、あまりに撮れ高がなかったという事で……

 

『せっかくおうがさんに作って貰ったしさぁ、うちの高校の校歌も流してよ』

『そうしよっか』

『それでは無念にも敗北に終わりました私立黒光り緋牡丹(ひぼたん)高校、校歌斉唱!』

 

なんて流れで、俺の作った校歌が二曲とも流れたのは、ラッキーと言ってもいいんだろうか?

そんな冗談も迂闊に言えないぐらいには、放送後のDiscordチャンネルの空気は重かった。

 

緋牡丹(ひぼたん)ゲーミング

『なんかアーカイブ見るのちょっと怖いね』

 

檸檬堂カレン

『どっかで反省会飲みしてさ、そこで見ない?』

 

凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)

『飲み会いいですね』

 

ノット・キング・コール

『そうしよそうしよ、一人で見たらトラウマになって引きずりそうだわ』

 

そんな予定はすぐに決まったものの……

俺の頭に「メンバーの萎えによる引退」という、最悪の展開がよぎっていたその時だ。

ほとんど動いたことのない凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)のメールアドレスに、一通のメールが届いた。

と同時に、Discordがペポッと音を立てる。

 

「えっ!? 織元(おりもと)さん!? なんだろ……」

 

相手は、同じ『配信品質向上委員会』にいながらも、ほとんど絡んだ事のない相手。

我々からすれば、ある意味天上の世界の住人とも言える、カノンボールの正規ライバー。

『配信品質向上委員会』からすくい上げられる形で正式所属になった、個人勢の星。

カノンボール三期生のユニット『ロボロボカンパニー』の社長こと、織元錦(おりもとにしき)さんだった。

 

織元錦(おりもとにしき)

『メール送ったわー』

 

彼からのメッセージは、そんな簡素なもの。

すぐにメールボックスを開いてみると、そこには@の後ろがカノンボールのドメインになっている織元錦(おりもとにしき)からのメールが届いていた。

 

「何、何、何?」

 

予想外の展開にぶつぶつ言いながらメールを開くと、そこにあったのは『校歌作成依頼』の文字。

 

「うおっ……依頼!? ていうか納期三週間!?」

 

『十月半ばの配信で使いたいので、間に合うならよろしくお願いします』

 

と、そう書かれたメールによると……

どうやらカノンボールも、うちと同じくVtuber甲子園の後追い企画を考えていたらしい。

そしてそこに出場する予定の織元(おりもと)さんは、この間のサウンドチームの草野球対決を見ていたそうで。

試合後に流れたオリジナル校歌を聞いて、俺に自分の高校の校歌制作を依頼してくれたようだ。

 

「これっ……飲んでる場合じゃないって!」

 

俺はすぐにDiscordに事次第を書き込み、織元(おりもと)さんの高校の校歌制作に取り掛かったのだった。

 

「おうがさん、あの話絶対爆速がいいよ」

「俺もそう思う、早ければ早いほどいい」

 

翌日、会社帰りの時間に急遽新宿で集まった四人。

残念会というよりは、俺の依頼への作戦会議となったこの場で、カレンさんとノットさんははっきりとそう言った。

 

「三週間後に試合って事はさぁ、もうすぐ選手作成始まるんじゃん。その時校歌あったらさ、絶対使うって」

 

カレンさんのその言葉は、自分たちで丸っきり同じような企画をやった経験から来るものだった。

たしかに試合終了後の、流れるか流れないかわからない一回きりよりも……

選手作成時点で校歌があれば、何度も流してもらえる可能性があるわけだ。

そしてそれは、作曲家凸天虹(とってんこう)王臥(おうが)としては、確実にオイシイ展開なのだった。

 

「おうがさん、27日のM3なんか無視していいよ。これ全力でいこ!」

 

金の差し色の入った青髪を、横からぐっと後ろに撫でつけたカレンさんは、その手で俺の胸を指差してそう言った。

そしてその隣の、俺と一緒にCDを出す予定の緋牡丹(ひぼたん)さんも、同意するように深く頷く。

 

「おうがさん、あたしはいいから、やっちゃって」

 

それを見ていたノットさんは、俺の隣から軽く肩パンをしてきた。

顔を見ると、彼は歯を剥いて笑った。

 

「草野球対決、やった意味あったねぇ」

「……そうですね!」

 

正直、それは俺も思っていた事だった。

このまま俺が結果を出せれば……

サウンドチームとしてのあのお通夜な配信が、悪い思い出で終わらずに済むかもしれない。

このユニットのお飾りのリーダーとして、その事が一番嬉しかった。

 

「で、どんな曲考えてんの?」

「おうがさん手ぇ早いからなぁ、もう一曲ぐらい作ってたりして」

「えーっ、あんなら聴かせてよ」

 

そう言ってくれるメンバーたちの前に、俺は胸ポケットから出したスマートフォンを置いた。

 

「ありがたいです、今回の企画で没った曲が三十曲ぐらいあるんですけど……一応それプラスで二曲新しく作ってもみたんで、一回聴いてみてもらってもいいですか?」

「三十……? やばっ」

「あたしに聴かせてくれたの三曲じゃなかった?」

緋牡丹(ひぼたん)に送った時はもうだいぶ絞ってたんで……」

 

俺がそう言うと、メンバーたちはなんだか困ったような顔でお互いを見た。

そして、カレンさんがサッと机の上の伝票を取った。

 

「とりあえずさぁ……カラオケでも行こっか。でっかい音で聴きたいしね」

 

そう言って立ち上がったカレンさんに続き、ノットさんと緋牡丹(ひぼたん)さんもサッと立ち上がる。

 

「そうだなぁ。三十曲かぁ……終電間に合うかな……」

「おうがさん、あたし終電遅いから大丈夫だからね」

「いやっ、後で曲のファイル送りますから、それでっ!」

 

とは言ったのだが、人付き合いのいい三人は結局終電ギリギリまで曲選に付き合ってくれ……

俺は翌日から、すぐに動く事ができたのだった。

 

 

 

そしてその翌日。

俺は大学の剣道部の後輩たちを集めて、大規模な飲み会を開いていた。

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