【書籍化】告知事項(隣人がVtuberです)【進行中】   作:関係ないよ

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音声コンテンツに挑戦致します!

『ちゅうことで! 私枚方(ひらかた)カノンはぁ~! 事務所を立ち上げる事にぃ~しましたぁ! 法人化っちゅう事やね!』

 

今日は朝から、ほぼ寝ずに職業訓練に行って帰って爆睡していたのだが……

お隣から聞こえてくる、そんな声で目が覚めた。

 

『まぁ事務所っちゅうても、タレントはまだまだうち一人だけやけど! ゆくゆくはVtuberのプロデュースとか? ンハハハ! やってもええかもね!』

 

どうやらお隣さんは、昨日デニーズで盛り上がった話を、さっそく視聴者に話しているようだ。

昨日していた話というのは、Vtuberの未来の話だ。

ライブ、リアイベ、大規模事務所(はこ)、そしてVtuberによるVtuberのプロデュース。

そういう話を「そうなったら夢があるよね」というてい(・・)で色々話した。

そして、具体的な彼女の未来像についてもだ。

 

『え? いやいやさすがに一人ではできへん! せやからスタッフを雇わしてもらいました! お隣さんが今暇してるって話やから、ちょっとバイトとして手伝ってもろて……』

 

本当は処女厨(ユニコーン)のファンのためにも俺の話はもう出さない方がいいんじゃないかと、そう彼女に言ったのだが……

「そんな息苦しい活動は続かんて!」と言われてしまったので、次善策でVtuber初の法人立ち上げという話を出して、俺をそこのスタッフ扱いにする事にした。

女Vの近くに男がいるという状況はもうどうしようもないが、Vtuberに迷惑をかけられている隣人がいるという状況よりは身内扱いにしてしまった方がいいと思ったわけだ。

もちろん彼女に俺を雇う金なんかないし、俺だってV事務所に就職する気はない。

あくまで、そういう()にしたというだけの事だ。

前周でも、女Vと男性スタッフという形のコンビはいくつかあった。

女の近くに男がいる事で叩かれはするだろうが、なんだかんだと「スタッフ〇〇」としてキャラクター化してしまえば視聴者はそのうち慣れる。

当然疑似恋愛のような売り方は難しくなるが、これから先どんどん普通になっていくVの男女コラボに乗り遅れずに済むと考えれば……

いつかプラスになる事もある……んじゃないかなぁ……

 

『あともう一つ! 重大発表! 私枚方(ひらかた)カノンはぁ! 音声コンテンツ(ボイス)に挑戦致します!』

 

これは彼女に「なんかええお金儲けの種ないですかね?」と聞かれて教えたものだ。

Vtuberの飯の種といえば、広告収入、メンバーシップ(メンシ)、スパチャ、案件、そしてグッズだ。

お隣さんのチャンネルは既に収益化はしているが、メンシの制度はまだこの世に存在すらしない段階。

スーパーチャットに関しては、2018年のこの時期、一般Vtuberに入るスパチャはまだまだ小遣い程度の額だ。

案件も有名Vに入り始めた頃だが……チャンネル登録者数が三万人程度のお隣さんには、まだまだ遠い話。

そして最後にグッズだ。

イラスト制作費、製造費、保管費、発送費……グッズを作るには結構な原資がいる。

それはとても、毎日の食事を事欠くお隣さんに出せるような額じゃない。

そして当たり前の事だが、グッズというのは投資をいくら回収できるかわからないギャンブルなのだ。

ギリギリすぎる綱渡りを続けている今のお隣さんが手を出すと、それだけで背骨が折れかねない事柄だった。

だが、ボイスは違う。

ボイスにイラストは……欲しいけど……まぁ、最悪いらないし……

シナリオも……誰かに頼みたいけど……まぁ、最悪お隣さんが自分で書けばいいし……

録音機材も……高いとはいえ……まぁ、俺にも多少は知識があり、そこそこの値段で揃えられると思う。

前周で、録音機材に異常に詳しいVtuberの生放送を追っていた甲斐があった。

というわけで、お隣さんの当座のシノギはボイス録音で決まったわけなのだが……

 

「すいません……うち、ほんまに現国苦手で……」

 

そう言いながら涙目でやってきたお隣さんに見守られながら、俺が枚方(ひらかた)カノンのボイス台本を書いているのは、一体どういう事なんだろうか?

とはいえ、前周で取った杵柄というべきか……

V黎明期からしこたまボイスを買いまくってきた俺の手は、意外な事にスラスラと動いて止まる事がなく……

形だけ(・・・)だったはずの彼女のスタッフとして、結局俺は三日で三本分の台本を書き上げたのだった。

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