雛見沢とかいう田舎に転生した   作:that's the plan

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第101話

 

 大石、赤坂、熊谷が乗った車はほんの数十分で園崎宅に到着した。

 

 怪しまれないようにするため、彼らが乗り込んだのは警察車両ではなく普通の乗用車だった。

 裏手の大きな門の前に熊谷が車を停車させると、どこから到着を知ったのか、すぐに中から2人の男が出てくる。

 

 車の窓を開けて、大石が手を振って挨拶をする。流石の大石といえども、その顔は緊張気味だった。

 

「こんばんはぁ!園崎魅音さんのお友達から、ここでパーティをすると聞いてるんですがぁ……あなた方は知ってますかな」

 

「ええ。あなたは大石蔵人さんですね。そして、そちらは、熊谷勝也さん。……それで、そちらの方は?警察関係者の方ですか」

 

 黒服の男が目をやったのは、赤坂だった。厳つい風貌の男に鋭い目を向けられても、赤坂は堂々とした態度で返事をした。

 

「ええ……私は赤坂。公安警察のものです。大石さんに電話をしてくれた、牧野くんの……友人です。この建物に私が入るとまずいというのなら、外で待ちましょう。しかし、あとでお話はさせてください」

 

「彼の身柄は私が保証します。そうですなぁ、古手梨花さんと、牧野雄星くんも彼のことは知ってるはずです」

 

 大石も助け舟を出す。黒服の男は、難しい顔で考え込んだ。

 

「ふぅむ……彼らとはどういう関係で?」

 

 1人がそう言って、後ろに下がる。

 

「一旦中に入れてもらえませんか。ここじゃ、道路の邪魔になっちゃいますよぉ?」

 

 大石は不満げにそう言って、なし崩し的に中に入ろうとした。しかし、園崎家の男はそれを制した。

 

「どうして公安警察の方が?あなたと古手梨花さんにどんな関係があるんです?」

 

 大石は、自分がこの男に疑われていることを悟った。管轄の違う公安警察を連れてきて、何かしらの捜査に入るという疑いをかけられているのだ。

 

「私は……5年前、当時の建設省大臣のご子息が誘拐された事件で、この土地で捜査をしました。そこで出会ったのが、梨花ちゃんと雄星くんです。私は彼らに助けられた……今度は、わたしがその恩を返す番なんです!」

 

 その真剣な表情に、男は少し考え込んだ。

 

「分かりました……確認してきましょう」

 

 そう言って、男は戻って行った。

 

 そんな問答があってしばらくしてから、門から数人の男女が出て来た。牧野雄星と園崎魅音、それに古手梨花だった。

 雄星と梨花は驚いた表情で赤坂を見つめていた。

 

「牧野くん!久しぶりだね。元気だったかい?」

 

「赤坂さんじゃないですか!お久しぶりです」

 

「覚えていてくれて嬉しいよ。5年前のあの時は……君たちに助けられた。恩返しに来たよ」

 

「……ありがとうございます。……梨花ちゃんから、赤坂さんのことは聞きました。本当に、頼もしいです」

 

「赤坂がボクのことを助けにきてくれるなんて……」

 

 梨花は嬉しそうな表情で、雄星の手を握った。

 

 そんなやりとりの後、魅音が一歩前へ出て、大石たちに言った。

 

「……みなさん、覚悟を決めて来てくれたなら、中に入ってください」

 

 2人は無言で頷いて、門の中へと入っていった。車を運転していた熊谷が少し遅れて車を停めてから、それに着いて行った。

 

 

 

 赤坂と大石、それに熊谷は園崎家のある一室に招かれた。そこには部活メンバー全員が集合し、さながら合宿所のような様相を呈していた。

 

 大石たちは、そこですべての真相を伝えられた。

 

「うぅむ……わたしゃ、まるで何かのB級映画のシナリオでも聞いたような気分ですが……」

 

「私は警視庁の中でも、特殊な部署で働いていますから。私としては、あり得ない話だとは思えないですね……」

 

 未だに信じられない様子の大石と、考え込みながらもそれほど疑ってはいない様子の赤坂。

 

 梨花はそんな2人の様子を見て、信じてもらえたかどうか不安そうにしていた。

 

「大石さん。おかしな話だと思う気持ちはわかります。でも、これは本当のことなんです。入江先生も富竹さんも、梨花ちゃんのために動いてくれています。他に頼れるのは、あなたたちだけなんです……!」

 

 雄星はそう言った。その目は真剣そのものだ。

 

 これまでの捜査でついに見つけることが出来なかった「オヤシロ様の祟り」の真相が、今の自分の目の前にある。

 大石は雄星と梨花の顔を見て、そう思った。

 

「分かりました。牧野くん。あんたは今まで色々と話をしてくれました。園崎が私を家に上げてくれるなんて、君に初めて会った時には想像もしていませんでしたよ。……あなた方が私を信頼してくれていることは分かりました。私も、一肌脱ごうじゃあありませんか!」

 

「こんなデカいヤマに関われるなんて……思っても見なかったっす!この熊谷、どんなことでも全力でやって見せますよ!」

 

「雄星くん、梨花ちゃん。私も力を貸すよ。私はまだまだ未熟だけど……5年前の、あの時のようにはいかない。この数年で、いろんな修羅場を潜り抜けてきた。君たちをガッカリさせはしないよ」

 

 3人は雄星と梨花に対して、強く頷いた。

 

「皆さん……!ありがとうございます。それでは早速、作戦会議と行きましょう。今、僕たちは少し計画を練っています。少し、耳を貸してください」

 

 雄星はそう言って、考えていた計画を思い返す。

 部活メンバーみんなで考えた、誰も傷つけずに綿流しの夜を迎えるための作戦。

 それが、3人に伝えられた。

 

 

 

「それは……君たちが考えたのかい?」

 

「はい。みんなが……凄いですよね」

 

 雄星は頷いてから、周りを見渡す。

 

「へへ、そんなこと言って、みんなを助ける方法は雄星が考えたんじゃないかよ」

 

「うん。だから、ええと……みんなで考えました。ここにいる、全員で。そうだよね、梨花」

 

「そうなのです。ボクらが力を合わせれば、これぐらいなんて事ないのです!」

 

 梨花と雄星は顔を見合わせて、頷き合った。

 

「大石さん、赤坂さん、熊谷さん。どうでしょうか。この作戦……乗っていただけますか?」

 

 即座に赤坂が頷いた。

 

「私は乗ります。この計画、勝算は高いと思います。向こうが国の機関なのであれば……計画が始まる前にイレギュラーが起こることは嫌がるでしょう。そして、軟着陸することを考える。……この計画が成功すれば、何も起こらないまま、誰も苦しまないまま、尻尾切りだけで終わることも考えられますよ」

 

「乗りかかった船です。これが君たちの冗談とは思えませんし、私たちの役目は普段の職務を全うするというだけですからなぁ……退職金がなくなるようなことであれば考えさせてもらったでしょうがね。もちろん実行させていただきますよ」

 

「自分もっす!」

 

 警察官たちの頼もしい言葉に、部活メンバーたちも頷く。

 

「ありがとうございます!計画の始まりは明日の正午ぐらいからですが、それまでにやることはたくさんありますよ!」

 

「ええ、我々は例の事件について調べておきましょう。令状を出すまでは行きませんが、何かしら確信が持てる情報があれば、突っ込んで捜査をすることは可能ですからね」

 

「大石さん、くれぐれもお気をつけて。警察関係者だからと言って、何もされないとも限りませんから」

 

「ええ、もちろん。入江先生から、全てのことを聞くまでは死ねませんからねぇ」

 

 大石はいつもの笑みを浮かべて、雄星と固い握手を交わした。

 

「赤坂さんは……今日、どこに泊まりますか?明日の正午には神社に来て頂きたいんですが……」

 

「私は興宮のホテルに。明日は早朝にはこちらに来れるようにしておきますよ。レンタカーでも借りて、雄星くんの家に迎えに行きますね」

 

「ありがとうございます。俺たちの無事は、赤坂さんに頼らざるを得ません。大変な役割ですが、よろしくお願いします」

 

「うん。任せて欲しい」

 

 赤坂も優しく頷いて、差し出された雄星の手を握った。

 

「悟史くんと詩音ちゃんが今からやることは……明日のルートを考えておいてもらうぐらいかな?」

 

「それと、葛西に連絡しておきます。葛西に、他の計画も予定通り実行できそうだって伝えますね。……あ、あと、スタンガンの点検もしておきます!」

 

「う、うん。それで、詩音は僕の家に泊まるんだよね。明日のこと、相談しようね」

 

「はいっ!てことで、私たちの方も大丈夫です。大船に乗ったつもりで、安心しててください」

 

 詩音は親指を立ててみせた。それに合わせて、雄星もサムズアップを返した。

 

「僕に出来ることがあるなら、どんなことだってする。僕たちにしてもらったこと……少しも返せていないからね。だから、僕たちのことを信じて」

 

 悟史も、覚悟を決めた顔をしていた。雄星はその言葉に何も言わずに、深く頷いた。

 

「次に、魅音ちゃんは情報収集と根回しを。圭一とレナちゃんは、うまく説得する言葉を考えておいてね」

 

「任せて!例の事件の真相に関わることだから、婆っちゃもきっと賛同してくれる。園崎家のネットワークを駆使すれば、ちょちょいのちょいってもんだよ。圭ちゃんとレナは、どう?」

 

 自信を感じさせる表情で、魅音は2人に尋ねる。

 

「おう。正直、俺に務まるかは分からないけど……一生懸命やるぜ。雛見沢の命運が俺たちにかかってるんだ!男なら、燃えるシチュエーションだぜっ!」

 

「レナはそのサポートをだね。良く知ってる人だから、そんなに不安はないな。私たちが一生懸命話せば、きっと分かってくれるはずだよ」

 

 レナと圭一も頷く。

 

「うん。この作戦の攻撃の部分は、3人にかかってる。頼んだよ。それで……最後に、梨花と沙都子。2人は、俺と一緒。みんなが作戦を完遂してくれるのを信じて、陽動に回る。頑張ろうね」

 

「ええ。私も今日は、ユウのおうちに泊まってもよろしいですこと?3人で、明日の作戦会議と行きましょうですわ!」

 

「うん。俺も、明日に向けて少しは練習しないといけないからね」

 

「沙都子とボクで、その練習を見てあげますですよ」

 

 2人は雄星の手を握る。雄星は2人の頭を交互に撫でた。

 

「これで確認することは以上!みんな、明日は頑張りましょう。俺はみんなのことを信じてる。みんなも、お互いのことを信じて」

 

 雄星がそう締め括った後、梨花が立ち上がった。

 

「みんな!……私のために、本当にありがとう。私も頑張るから……私と一緒に戦ってっ!」

 

 いつもは余裕たっぷりな梨花が、切実な表情で叫ぶ。

 梨花の声が、部屋の空気を震わせた。

 

 一瞬の沈黙のあと、圭一が拳を高く突き上げる。

 

「おうっ!雛見沢の未来は、俺たちが守るんだ!」

 

 その言葉に続いて、魅音も笑いながら親指を立てる。

 

「部長命令!明日は絶対に、誰一人欠けずに綿流しの祭りに戻ってくること。いいね!」

 

 レナは両手を胸に当てて、大きく頷いた。

 

「うん……みんなで笑える未来を掴み取るために。もう二度と、後悔はしないよ」

 

 悟史と詩音は互いに視線を交わし、力強くうなずいた。

 

「僕も……もう逃げない。みんなを守るんだ」

 

「私も。何が敵だとしても、立ち向かってやります!」

 

 沙都子は拳をぎゅっと握りしめ、少し照れながら声を張った。

 

「わ、私だって役に立ってみせますわ。今度こそ、みんなを守るために!」

 

 雄星は最後に全員を見回した。そして最後に虚空を見つめてから、深く頷いた。

 

「……ありがとう。これで本当に、全員が揃った。明日は必ず勝とう」

 

 部屋にいた全員の声が重なり、園崎家の一室はまるで戦の前夜祭のように熱を帯びていった。

 

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