雛見沢とかいう田舎に転生した   作:that's the plan

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第107話

 暑い、夏の日。

 

 俺たちにとっては昨日のことのようにも思える、昭和58年の様々な苦難を乗り越えてから、大分長い時間が経った。

 

 昭和天皇の体調不良が報道される中、もうすぐ元号も、平成に変わるだろう。俺たち部活メンバーも、高校生、あるいは大学生になっていた。

 

 雛見沢分校の頃みたいに、毎週のように一緒に遊ぶことは出来ない。

 それでも同じ高校に通っている梨花や沙都子とはよくおでかけをするし、年に一度、綿流しの祭りの日には、こうやってみんなが集まる機会がある。

 

「ユウ!楽しむ準備はできていまして?」

 

「うん、沙都子。おはよ。その……綺麗だね。とっても、似合ってる」

 

「え、えへへ……この日のために、アルバイトを頑張ってレンタルしましたもの。そう言っていただかないと、張り切った甲斐がないというものですわ」

 

 沙都子は可愛らしい着物に身を包み、神社に向かう階段の手すりに、背中を預けていた。振袖を着ていても、わんぱくなところはそのままだ。

 どんどん成長していく中でも、こういうところは少しも変わっていない。

 

「……な、何かわたくしの顔についていまして?」

 

 俺から見つめられているのに気がついた彼女が、恥ずかしそうに言う。

 

「いや。その、成長しても、沙都子は沙都子だなぁ、って……」

 

「ふふん。私は毎日成長していましてよ?」

 

 揶揄うタネを見つけた、と言わんばかりに笑う。

 沙都子は、俺をハグするように自分の体を預けてくる。出来る限り優しく、受け止める。……彼女は心身ともに成長していて、俺の理性が乱されることもしばしば。

 

「ちょ、ちょっと。沙都子……」

 

 俺が恥ずかしそうにしていると、彼女は満足したみたいだった。笑いながら俺から離れて、手を差し出してくる。

 

「分かりましたわ。では、今日は華麗にエスコートしてくださいましっ」

 

「うん。沙都子みたいな素敵な女の子のお相手ができて、光栄だよ」

 

 うふふ、と慎ましく笑う沙都子。うーん、可愛い。

 

 と、そこで階段から降りてくる足音が聞こえた。どうやら、俺たちが遅いので呼びに来てくれたらしい。気怠げな表情を浮かべて、俺たちを階段の上から見下ろしていた。

 

「ちょっと……何を甘々な空気出しちゃってくれてるわけ?」

 

「あ……梨花。お疲れさま。梨花も巫女姿、とっても似合ってるね」

 

 少し照れたような顔で、彼女はそっぽを向いた。

 

「私は、もうこんな服は飽きたけど……仕事だし、仕方ないわ。ほら、行きましょう。みんな上で待ってるはずよ」

 

 梨花は、もはや今までのような幼い口調はしないようになっていた。高校に入学した頃からこのような大人びた口調になったが、元々梨花の性格を知っているみんなは、ほとんど驚きもしなかった。

 

 みんながあまりにも平然としているので、梨花の方から、「元の口調に戻したほうがいいかしら?」なんて相談までされたのが面白かった。

 

 2人とも、俺や、もう卒業した部活メンバーたちと同じ興宮高校に進学して、一生懸命勉強しているところだ。

 

 かつては小学校の勉強は完璧にマスターしていた?梨花だったが、今では理系科目に苦しむただの女子高生。

 数学の時間が終わると、いつも何かしらの愚痴をこぼす。勉強を教わるために、わざわざ学年の違う俺のクラスに来ることもよくある。

 

 沙都子の方も勉強が得意というわけではないが、みんなで勉強するのは結構好きらしく、図書館や俺たちの家で集まって勉強することもよくある。

 発起人の沙都子が、だいたい一番最初に遊び出してしまうのだが……まぁ、気持ちは分かる。結局いつも、みんなでゲームをしたりする。ちなみに、梨花が一番下手だ。

 

 神社の境内へと向かう。少し階段を登っただけでも汗ばむような、そんな季節。共に歩く2人の横顔を見ながら、昔を思い出す。

 

「……綿流しの日には、いつも……あのことを思い出すわ」

 

 ぼそりと梨花がつぶやいた。俺も、同感だった。

 

「鷹野さん、元気してるかな」

 

「私が前に会った時は、富竹のおじさまとイチャイチャしていらっしゃいましたわよ?……それに、もう鷹野さんではありませんわ」

 

「結婚したもんね。だから、えーと……美代子さんの方がいいのかな。何だか、呼び慣れないね」

 

「美代子さんとジロウさん、ね。私だって呼びにくいわよ」

 

 あの事件があった後、鷹野さんはしばらく勾留されていたが、"東京"か自衛隊かと司法取引のようなことをして、数年ほどで雛見沢に帰ってきた。

 当時の彼女が重度の雛見沢症候群を発症していたことが、罪を軽くする一因となったらしい。

 

 最初、梨花は鷹野さんに対して複雑な感情を抱いていたようだったが、帰ってきてからの鷹野さんが、一生懸命に雛見沢症候群の治療を推し進めているのを見て、態度を改めた。

 

 今となっては、会えば世間話をする程度の仲には戻っている。

 

 富竹さんももちろん一緒だ。彼らは雛見沢に土地を買って、そこで共に暮らしている。

 相変わらず、彼らは仲睦まじい。昔よりも、鷹野さんが素直な感じがする。

 彼らは入江さんとも仲がいいらしく、最近はプライベートでも交流があるとか。

 

 そうそう、改心したといえば、沙都子の叔父、鉄平と、レナのお父さんを騙した間宮リナもそうだ。

 結局、彼らは2人とも雛見沢症候群を発症していた。

 彼らはしばらくの間治療を受けた後、園崎家の手引きによってどこかの東南アジアの国へ行って、肉体労働に従事したそうだ。

 園崎家の上納金を元手に、海外への高跳びを画策していた彼らの希望を叶えたとか何とか。

 

 そこで、意外にも鉄平は真面目に働いて、現地の労働者の中で頭角を表して、今では優秀な現場監督として皆に慕われているらしい。日本には滅多に帰ってこないが、沙都子の家に手紙が来ることがある。今では沙都子も悟史くんも、彼とは普通に接している。

 

 気がつくと、もう神社が見えてきた。

 

 綿流しの祭りは、ますます盛り上がりを見せている。

 かつてはオヤシロ様の祟りを恐れて祭りに来た村人たちだったが、今ではただの祭り扱いだ。オヤシロ様の祟りなんて言うのは、単なる迷信。偶然が重なって起きた、都市伝説だと思われるようになった。

 

 羽入は、今でも梨花と会話出来るのだろうか?

 俺にはわからない。

 ただ、あの時言われた通り、俺は古手神社にはよく参拝しに行くし、梨花にシュークリームも食べさせている。多分、今でも見守ってくれていると思いたい。

 

 羽入が──オヤシロ様が──この世界に確かにいたことに、疑いはない。

 しかしそれは、女王感染者という立派な雛見沢症候群の発症者であった梨花にしか見えないものなのだ。昭和58年に必ず死を迎えるという極限のストレス下にあった梨花にだけ、見える存在。そのストレスが解消された今、梨花が羽入を見えなくなっていたとしても、大きな不思議はない。

 

「綿流しの祭りも、でかくなったもんだね」

 

「そうね。最初は、村の年寄りが飲んだくれるだけのつまんない祭りだったのが、今じゃこれよ。……ま、悪い気はしないわね」

 

「そうですわね。こうやって毎年、みんなで楽しめるんですもの」

 

 そう言って先に行く沙都子。俺は小声で梨花に聞いた。

 

「羽入も……喜んでくれてるかな」

 

「そうね。きっと、見守ってくれてると思う」

 

 感慨深い顔で、彼女はそう言った。俺は今でもたまに、羽入のことを夢に見て、会話することがある。

 

 それが俺の脳の中だけの話なのかどうか、俺にはわからないが……不思議な存在が、俺たちを見守ってくれていると捉える方が、面白いだろう。

 

「あっ!皆さんがいらっしゃいましてよ。ほら、あそこ!」

 

 先に行く沙都子が指差す方を見てみれば、そこにはみんながいた。

 

 彼らは境内で歓談しているところだった。

 

 近隣の国立大に通う圭一、穀倉の大学に通うレナと魅音。悟史くんと詩音ちゃんは、医療を学ぶために2人で少し遠くの学校に通っている。みんな大学生なので、それなりにおめかししてきていた。まだ高校生なのは俺たちだけだ。

 

「遅かったな!俺たちはもう遊んだ後だぜ?」

 

「いやいや、全員揃ってからが勝負の始まりだよ。えーと……何凶爆闘?はち?」

 

 俺の言葉に、魅音が頷く。

 

「綿流し祭、八凶爆闘っ!……ちなみに圭ちゃん、もうお酒は飲める年だっけ?」

 

「バカ!まだ19だよ。無理やり飲ませようなんてやめろよな」

 

「へっへっへ……まぁまぁ。ものは試しにね。お祭りの時ぐらいはさ、羽目を外して……」

 

「こんなこと言ってるけど、お姉はお酒強くありませんから。酔ってるのを誤魔化して、根性で飲んでるタイプです」

 

 ニヤニヤしている魅音に対して、詩音ちゃんは、いつものように意地悪な顔をして呟く。相変わらず、この2人の関係は変わってない。

 

「ちょっと詩音!風評被害はやめてよね。私以上に酒に強い人間なんて、見たことないんだからっ!私に勝とうってんなら…」

 

 強がって胸を張る魅音、みんなが一頻り笑った後、今度は最初に何の屋台に行くかという話からだ。

 

 みんなが騒ぐ中、俺は梨花にそっとつぶやいた。

 

「願わくば、ここに、羽入がいてくれたらいいんだけどね……」

 

 突如、上から声が聞こえた。

 

「はい、なのですっ。もちろん僕だって、もう見ているだけじゃないのですよ!」

 

 その、聞き馴染みのある声に俺と梨花は仰天した。そして、2人で揃ってそちらを仰ぎ見る。鳥居の上に、ちんまりと座っていたのは、羽入だった。

 

「は、羽入!?どうしてここに?というか、生きてたのっ!?」

 

 うんしょ、うんしょ、と可愛らしい声をあげながら、ゆっくり鳥居から降りる。降りる時、滑ったのか、勢いよく地面に落ちて、彼女は痛そうに着地した。

 

「あぅあぅ……滑っちゃったのです。みんなを驚かせようとあそこに登ったのに、気づいてくれなくて、寂しかったのですっ!」

 

「羽入……大丈夫?角に傷がついたりしてない?」

 

 俺は倒れたままでわーわーと賑やかな羽入に手を差し伸べて、優しく起こした。

 ポケットのハンカチを取り出して、角を撫で回す。見た感じ、傷はなさそうだった。

 

「あぅあぅ、くすぐったいけど、温かいのです……」

 

「羽入!あんた、今までどこ行ってたのよ!?」

 

 梨花は血相を変えて、へらへらした顔の羽入に詰め寄る。

 羽入は、昭和58年の綿流しの日、確かに俺たちと一緒に遊んだ。そして、それから半年近くは梨花や俺の家に泊まって暮らしていた。

 食べ物も食べていたし、確かに、そこにいた。

 

 しかし、梨花が中学生になると同時に、ある日忽然と姿を消した。

 俺たちにはその理由はわからなかったが……とにかく、梨花がそのことで悩んでいたのは間違いない。

 

 あの時期、彼女はとっても不安定だった。

 100年を共に過ごした自分の親友が、常に自分のそばにいて見守ってくれているというのは、俺が想像するよりもはるかに心強いことだろう。

 それが、前触れもなく、挨拶もなく、突然いなくなってしまう……それはそれは、ショックに違いない。

 

「あぅあぅ〜!り、梨花、頭を揺らさないで欲しいのですっ、きもちわるくなっちゃうのです〜!」

 

「いいから答えなさいよっ!」

 

「り、梨花。落ち着いて……」

 

 尚も詰め寄る梨花を引き止めて、羽入の言葉を待つ。

 落ち着いた羽入は、可愛らしく胸を張って言った。

 

「僕もこの世界に生きる準備をしていたのです。僕よりも偉い神様のところへ行って、僕の持つ神の位を返上させてもらいましたのです」

 

「なにそれ?そんなの聞いてないわよ。私たちにも相談しなさいよ……!」

 

 そう言って、梨花は泣きながら羽入を抱きしめた。羽入は少し照れたような顔で、梨花の頭を撫でた。

 そこで、少し離れたところにいる圭一が俺たちに気付く。

 

「あれ?雄星、梨花ちゃん。その子は高校の友達か?」

 

「ま、そんなもんかな。この子は羽入。可愛くて、優しい女の子だよ」

 

「羽入ちゃんっていうんだね。何度か……ううん、雛見沢にいた頃、ずーっと会っていた気がする。違う?」

 

 レナが羽入に目線を合わせて、尋ねる。レナに見つめられた羽入は、何と返せばいいか分からないのか、あぅあぅ、とこぼしながら助けを求めるようにこちらを見てくる。

 

「違くないよ。羽入は、ずーっと前から俺たちのことを見ててくれてたよ」

 

「そっか。よろしくな、羽入!」

 

 みんな、口々に羽入に声をかける。

 羽入は恥ずかしそうに口ごもりながら自己紹介をした後、みんなに囲まれて楽しそうにしていた。

 

「じゃ、羽入も入れて綿流し九凶爆闘。行くぞーっ!」

 

 戸惑いながらも、皆は羽入を受け入れてくれた。きっと誰もが、羽入が今までずっと俺たちを見守ってくれていたことを、薄々感じているのだろう、と思った。

 

 

 

 

 ────────

 

 

 梨花は、夢を見ていた。

 

 周りには誰もいない、ひとりぼっち。自分は病室に1人放置されて、誰も見舞いに来てくれない。

 

 だって、みんな死んだから。

 ベッドに横たわる梨花は、それを理解していた。

 

 寝ても起きても、1人。

 どうしようもない恐怖と絶望が、梨花の心を覆い尽くしていた。

 

 

 

 

「ねぇ、具合悪い?大丈夫?」

 

 そんな声で、梨花は目を覚ました。

 慣れ親しんだ声だった。その声を聞いて、血の気の引くような暗い夢から引き戻された。震える手を、彼が優しく握ってくれていた。

 

「ん……大丈夫。ちょっと、怖い夢を見てたの」

 

「そっか。もう、全部解決したよ。大丈夫。もう、これから先に怖いことなんて起こんないよ」

 

「ええ、そうだといいわね……」

 

 病室で眠る自分の夢を見ていたのか、あるいは病室で眠る自分が、幸せな夢を見ているのか。それは分からない。けれど、大切な人が今、目の前にいることだけは確かだ。

 

 梨花はその人に、体を預けた。その彼は、少し戸惑いながら、それを受け止めた。しかし、向こうからは何にもしてこない。

 

 何だか、自分だけが甘えているみたいだ。なら、望み通りもう少しわがままになってやろう。

 

 そう思って、梨花はさらに自分の体をその人の胸へと投げ出した。彼から苦笑するような声が聞こえて、梨花は満足げな表情になった。

 

 2人は、どちらも無言のままだった。2人のことを、えも言われぬ優しい雰囲気が包み込んでいるその時……玄関のドアが、開け放たれる音が聞こえた。それと、何人かの人が話している声も。

 

 2人は顔を見合わせた。友人たちが来たのだった。

 

 キッチンの方から、1人の女の子が現れた。

 

「梨花……あんまり甘えすぎるのは良くないのですよっ」

 

 梨花に小さく助言した。梨花は照れくさそうにして、それを無視した。そんな梨花の姿を見て、2人は苦笑した。

 

「えっと……綿流しの祭りの二次会、だったわよね?」

 

「うん。魅音の家で、いろいろ用意してくれてるらしいよ。ほら、行こ?」

 

「ええ。……羽入。もちろん、あんたも一緒よ。今度は、傍観者だなんて言わせないわ」

 

 梨花は、キッチンから来たその女の子の手を掴んだ。にこにこしながら、手を握り返した。

 

 青年が、その女の子の頭を撫でた。その女の子の頭には角があった。

 

「次に興宮に行った時、寝る時に頭に巻く可愛いやつを探そうね」

 

「あ、あぅあぅ……恥ずかしいのです、恥ずかしいのですっ」

 

 角を撫でられて、恥ずかしそうに体を震わせて反応する女の子に、梨花は吐き捨てた。

 

「ふん、綺麗な雑巾でも買いに行きましょ」

 

 相変わらずの憎まれ口だった。しかし、それが愛情表現なのは他の2人はわかっていた。やはり顔を見合わせて、苦笑した。

 

「誰1人、欠けてなんかいない。俺が生まれ変わった、牧野雄星くんには申し訳ないけど……」

 

「そんなの、今考えなくて良いのよ。ほら、みんな待ってるわ。早く行きましょう」

 

「とか言って、奉納演舞で疲れて寝てたくせに……」

 

 梨花は無言で隣の男の子の腰をつねった。大袈裟に痛がる姿を見て、ちょっと満足気な顔をした。

 

「沙都子は?どこに行ったの?」

 

 梨花が聞いた。

 

「みんなが来る前にトラップを仕掛けるってさ。だからそのうち、圭一あたりが……」

 

 ちょうどその頃、外で金属が何かにぶつかるような音がした。そして、がやがやと楽しそうな声も。

 

「あぅあぅ、遊びに行く前からタライをぶつけられて、ちょっぴり圭一がかわいそうなのです……」

 

「ふっ、羽入。あんたも、食らってみたいんじゃない?沙都子のトラップ」

 

「あ、あぅあぅ……ちょっと怖いのです。はじめは優しいものにしてほしいのですっ」

 

「トラップを喰らうのも悪くないよ。それを見てるだけってよりは、ね?」

 

「えへへ、えへへ……みんなとお友達になって、みんなと一緒に部活動なのですっ!」

 

 羽入が楽しそうな顔でそう言ったと同時、居間のドアが開かれた。沙都子が胸を張って立っていた。

 

「梨花もユウも羽入さんも、行きますわよっ。圭一さんは、私のトラップが怖くてこの家に踏み込めないようですわ!」

 

「あははは……山狗も撃退したトラップだからね。そりゃあ、俺も怖いけど。あとで片付けはしてくれよな」

 

「どうしましょうかしら……ユウ、最近はあまりトラップに引っかかりませんし、このままでも……」

 

 考え込む沙都子。雄星はその頭に手を置いて、乱暴にかき混ぜる。

 

「ほら、パーティは園崎家でやるんでしょ?行こうよ」

 

 3人もついていく。誰1人、置いていかれはしなかった。

 

 

 

 今日の祭りは、まだまだ終わらない。

 

 祭囃子がその日だけのものだとしても、夢が現実に戻るように、いつか終わりが来るものだとしても。

 夢ならば覚めるだろう。けれど、こうして笑い合っている間は、それは確かに現実なのだ。

 

「……明日も、学校があるんだから。お酒は飲んじゃダメだよっ?」

 

 雄星は振り返って、梨花に告げる。梨花は、膨れっ面で返した。

 

「ケチくさいこと言わないの。明日の一限は古典だから。寝ても大丈夫よ」

 

 2人はそんな会話を交わすと、玄関先で待つ友人たちに合流した。

 

 不思議な奇跡が彼らを導いた。

 ひぐらしのなく頃に。彼らは皆、笑っていた。何よりも大切な仲間たちと、自分の未来に向かって。

 それは決して物語の結末などではなくて、あくまで一区切り。彼らが生きる人生は、無限の可能性と選択肢に溢れているのだ。

 




活動報告にちょっとした後書きがあります。長いので読後感を損ねますが、暇ならぜひ。
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