雛見沢とかいう田舎に転生した   作:that's the plan

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第32話

 

「遅いですわよっ!この待ってる時間があれば、トラップを10個は作れましたわ!」

 

 俺は一度家に帰って荷物を置いてから、沙都子の家に向かったところだった。待ちきれない様子で外でうろうろしていた沙都子は、俺の姿を見るとこちらに駆け寄ってきた。

 

「そんなに遅れてないつもりだけどなー……」

 

 動きやすそうな格好をした沙都子は、うきうきした様子だ。俺まで楽しくなってくる。

 俺としても荷物を置いて着替えてすぐに来たのだが、沙都子は早く遊びに行きたくて仕方がないらしかった。

 

 ふと、沙都子が出てきた家の方をチラリと見た。開いたカーテンの隙間から1人の女性がこちらを見ていた……北条玉枝。

 沙都子と悟史くんの叔母で、噂ではヒステリックな人な上にご近所付き合いも悪いらしい。この村の人の言うことなので偏見が混じっているのは確かだろうが、少なくともすごく善良な人には見えない。

 

 しかし、彼女が北条兄弟の面倒を多少なりとも見ているのは事実だろう。俺はそちらへ、頭を下げて会釈した。

 隙間からこちらを見ていた玉枝さんは、こちらに睨みを効かせると、カーテンを勢いよく閉めた。あまり俺の印象は良くなさそうだ。

 

「何を見てますの?早く行きますわよ!」

 

 沙都子は家の方を見ていた俺に怪訝な顔を浮かべながら、俺の手を引く。裏山まではわりと距離があるのだが、この暑い日にでも、楽しそうに歩いていく。

 複雑な家庭環境に置かれる中でも、日々を楽しもうという気持ちが伺えた。俺も気持ちを切り替えて、沙都子との遊びを楽しむことにした。

 

 

 

 沙都子の指示に従って裏山を登っていく。少しでも道を間違えれば、恐るべきトラップが待っている。沙都子自身はトラップの位置を記したマップによってある程度の位置を把握しているが、ちょくちょく既存のトラップに改造を加えたりする関係で、全てのトラップの仕掛けを熟知しているわけではないらしい。

 

 一歩一歩、自分が踏みしめる足元を確認して歩く。沙都子は気にせずにてくてくと軽快な足取りで歩いていくが、俺は気が気ではなかった。

 

「今日はこの辺りに新しい罠を作ることにいたしましょうか!ユウ、刺さると痛そうな枝か何かを拾い集めてくださいますこと?」

 

「お、おう……」

 

 沙都子はうきうきで持ってきた縄跳びの紐をぐるぐる巻いて、何かの仕掛けを作りはじめた。これが一体誰に向けられるものなのかは不明だが……取り敢えず従おう。作っているものを見てると、もはや子供のいたずらとは思えない。

 

 俺はこの趣味について口を出すべきか少し悩んだが……もともとこの場所は人もほとんど入らないところだ。もしもこの裏山を伐採するようなことがあるなら先にわかるだろうし、その時になってからトラップを何とか解除すればいいだろう……それが出来るのかはわからないけど。

 

 俺は枝を集めてくる他にも、いろいろな力仕事などを頼まれたりもした。沙都子と一緒にいろいろなトラップを作るのは、正直に言って結構面白かった。これをお見舞いされる被害者は可哀想だがそれは考えないこととする。

 

 しばらく経って、沙都子は額の汗を拭って俺に笑いかけた。もう時刻は夕方ぐらいだった。たくさんの罠を仕掛けたあとで、誇らしげだ。

 

「ふう!今日も色々と作りましたわねー!」

 

「それじゃ、そろそろ帰ろっか。あんまり遅いと、みんな心配するしね」

 

「そうですわね!」

 

 俺は基本的には材料を集めたり、仕掛けのために枝をしならせたりはしたが、それがどういう罠でどういうものなのかはわからない。そのため、1人でこの山を降りることは難しそうだ。もしもあの縄の罠に引っかかり、足を吊り上げられたまま放置されたら……。一日中虫に刺されて、しばらくしてから村の青年団に行方不明者として捜索されるだろう。……オヤシロ様の祟りってもしかしてこれが原因だったりしないのか?

 

「トラップを作るなら1人より2人ですわっ!ユウ、また来てくださると助かりますわ!」

 

 沙都子は梨花ちゃんとも裏山で罠を作っている。梨花ちゃんもトラップの位置は何となくわかっているらしく、きっと1人でも降りられるんだろう。だが、俺はそうじゃない。

 

「お、おう……でも俺は1人でこの山を降りられないからな。沙都子が帰らないって言ったら帰れないんだよな……」

 

「今日一日一緒に罠を作ったというのに、どこに何を仕掛けたかくらいは覚えていただかないと困りますわ!帰りも手を引いて差し上げましてよ?」

 

 沙都子はそれはもう嬉しそうだった。冗談めかして俺に手を差し伸べた。普段は生意気で天真爛漫だが、誰かに頼られたりするのは嬉しいということだろう。

 

「うん、頼むよ沙都子。何があるか俺にはわからないからね」

 

 目を見て手を握る。沙都子は、少し恥ずかしそうに顔を赤くした。

 

「仕方ありませんわね〜!ユウは、私がいないと迷子になってしまいますものね!」

 

 沙都子は恥ずかしさを誤魔化すように、俺の手を引いて山を降りていった。頼られるのが嬉しいという、沙都子の可愛いところの表れだった。

 

 ふと、ちょっと揶揄ってやろうという気持ちが俺の心に生まれた。

 

「なぁ、ちょっと思ったんだけどさ。俺が1人でここを歩いてて、罠に嵌ったとするじゃん」

 

「ちゃんと私の案内を聞いていれば、そんなことには決してなりませんでしてよ?」

 

 俺を安心させるように、胸を張って俺を見る沙都子。なんだか、ちょっと揶揄うのが申し訳なくなってくる。

 

「そうなんだけどさ。でも、もし俺が1人だったら一生見つからなかったりするかもしれないよな?」

 

「どうして急にそんなこと言い出すんですの?」

 

 俺の言葉に、沙都子は不思議そうな顔で俺を見上げてくる。

 

「あれ以降の行方不明者は遠いところで行方不明になってるけどさ、最初の年の行方不明者はここからそんなに離れてないと思うんだけど……」

 

「……ま、まさか……!」

 

「沙都子のトラップにどっかでかかって、そのまま残ってたりして!」

 

 ビビらせようとした俺の言葉はふっ、と鼻で笑われた。

 

「有り得ませんですわ。あれから、何度も何度もこの裏山には来てるんですもの!もしもそんなことがあれば、真っ先に警察に突き出しておりましてよ?」

 

 俺の言うことくらい予想できているとばかりに、胸を張る。

 

「なるほどなあ。ちょっと脅かそうと思ったんだけど、沙都子の方が上手だなあ」

 

「をーっほっほっほ!ここは私のテリトリーですもの。とーぜんですわ!」

 

 いつもの高笑いをする沙都子と共に、道なき道を下っていく。しばらく歩くと裏山の入り口で見た営林署の立ち入り禁止の看板が見える。立ち入り禁止のところに平気で立ち入っていたのに、今更気がついた。

 

「ここが出口だよな?いやー、無事に出れて良かった!切り傷をつけるトラップなんか引っ掛かっちゃうと、この時間から診療所まで行かなきゃだもんなぁ」

 

「そうですわね……」

 

 沙都子は裏山を降りた途端、暗い表情に変わった。自分の秘密基地的な裏山から出て、楽しい時間が終わることを実感しているからだろうか?あるいは、仲の悪い叔母がいる家に戻らないといけないからだろうか。

 

「沙都子、元気ないのか?」

 

 思わず聞かずにはいられなかった。

 

「うーん……そういうわけではないのですけれど……」

 

 俺は言いづらそうにする沙都子を見て、きっと家に帰りたくないのだと思った。

 

「そうだ。遅くなっちゃったし、俺もご飯の用意してないんだよね。沙都子の家に連絡して悟史くんも誘ってみて、もしまだご飯の準備をしてなければ一緒にご飯でも食べに行こうか。そのくらいのお金は出すからさ」

 

「良いんですの?是非ご一緒したいですわっ」

 

 沙都子は嬉しそうな表情をした。俺の家計も余裕があるわけではないが……競馬もそうだが、ちょっとした未来の知識である程度の小銭稼ぎは可能な目算なのだ。賭け事のお金を元手に、まだ株価が安いうちに将来の有名企業の株なんかを買えば相当な金が作れると楽観的な想像をしていた。晩御飯を奢るぐらい大丈夫だろう。

 

「じゃあ、俺が叔母さんに聞いてくるね?」

 

 沙都子の家の前まで来たところで、沙都子に少し待っているように伝える。沙都子と叔母は険悪な仲だと言うので、まだ俺が話をした方がいいだろう。

 

「ごめんください。悟史くんと沙都子ちゃんの友達の牧野雄星と言います」

 

 外から声をかける。中からどたどたと音が聞こえてきて、がらがらと引き戸が開く。俺はおばさんがどんな人なのかと覚悟を決めて見つめる。

 

「ユウ、どうしたの?沙都子に何かあった?それとも……」

 

 出てきたのは悟史くんだった。心配そうな顔をしていた。

 

「いや、そういうわけじゃないんだけど。さっきまで沙都子と遊んでて、もしまだ晩御飯の準備をしていないなら、悟史くんも外で食べにいかないかな?って……」

 

 俺の言葉を聞いた悟史くんは、すぐにその表情を和らげた。妹が何か危険な目に遭ったのかと心配していたらしい。

 

「なんだ、そういうことなんだ。誘ってくれるのは嬉しいけど……用事があるから、僕は遠慮しとくよ。叔母さんは止めたりはしないと思うから、僕の方から言っておくね」

 

 悟史くんは、何とも言えない顔でそう言うと、そそくさと戸を閉めた。晩御飯に来たくないというわけじゃなさそうだが、用事とやらがあるらしい。叔母から言いつけられている家事があるのかもしれない。

 

 叔母も沙都子のことを好いていないとのことだから、沙都子が晩御飯を外で食べたことを後で怒られたりはしないはずだと思うが……思い付きでややこしいことを提案してしまったかと少し後悔の念が首をもたげる。

 

 しかし、今更無かったことにも出来ない。それなら、沙都子にせめて美味しいご飯を食べさせてやろう。

 

「あれ?にーにーはどうしたんですの?」

 

「悟史くんは用事があるって引っ込んじゃったよ。仕方ないから、2人で食べに行こうか」

 

 沙都子は少し残念そうな表情も見せたが、気を取り直して俺たちは商店街へと向かった。

 

 

 

 

「おいしーですわ!」

 

 沙都子はそんなに上等な店というわけでもない近所の蕎麦屋の天ぷら蕎麦を、それはもう美味しそうに食べている。少し遠くにいる店長の親父さんの顔もにこやかだ。

 

「沙都子ちゃん、いい食いっぷりやんねぇ。ユウくん、またこの子や友達を連れてきてなぁ。いっぱいサービスしたるんねぇ!」

 

 店長の親父さんも沙都子に話しかけてくれる。温かい蕎麦に載っている大きな海老の天ぷらも、店主のサービスだった。以前聞いた通り、もう北条兄妹は村の嫌われ者ではないようだ。

 

「はい。もちろんです!……そんなに美味しそうに食べてくれるなら、沙都子を連れてきて良かったよ。次は悟史くんも、何なら他のみんなも誘ってみようか」

 

「そうですわね。私だけおいしいものを食べて、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいですわ」

 

 少し前から聞こうと思っていたことを、ここで切り出すことにした。

 

「やっぱり、悟史くんは叔母さんに用事を押し付けられてるから来れなかったのかな」

 

「そうですわね……にーにーは、叔母が言いつける用事を何でも自分でやろうとするんですの。中には意味のないようなことや、敢えて人に頼む必要がないことまで」

 

 不満そうな顔でため息をつく。

 

「そうなのか……悟史くんは真面目だからなあ。沙都子は?叔母とうまくやれてるか?」

 

「少し前と違って、私はあの意地悪な叔母に口答えするのをやめましたの。私を虐めることで叔母がストレスを発散していたと思うと、腹立たしい限りですわ」

 

 何か思い当たる節があるのか、首を傾げて考えだす沙都子。どういうことだろうか……俺はそれを待った。

 

「最近、村の人たちに私たちが無視されたりすることは減ってきましたわ。きっとユウや、みんなのおかげですわね。……でも叔母はご近所付き合いもしませんし……嫌われているままなのでございましょうか?」

 

 沙都子の推測は正しいかもしれなかった。俺や両親が訴えたのは北条家の子供たちに対してのことで、北条家全体を許すという話ではない。むしろ村の一員として認められだした子供たちを虐める叔母に向けられる目は、これまで以上に厳しくなっているのかもしれない。

 

 叔母が兄妹を虐め、こき使っていることは村では周知の事実なのだ。それに加えて、兄妹を迎え入れる以前からマナーが悪くルールを守らないという評判なのだから。

 

 叔母さんはまだ村からはみ出し者と扱われていて、その一方で兄妹は村に受け入れられだした。その結果、兄妹を手酷く扱う叔母は村から一層厳しい目で見られることになる。そして叔母は自分が村八分にされる原因を作った兄妹に対して、今まで以上にフラストレーションを溜めてしまっているということなのだろうか。

 

「うーん。難しい問題だなぁ。叔母さんがひどいことをするのをやめて、まともになってくれたらいいんだけどな」

 

「あのお方の元々の気質もございますでしょうから、難しいですわ。言ってやめるような人ではなくってよ?私は何を言われても最近は気にしておりませんから、ユウも気に病む必要はないんですのよ」

 

 あっけらかんとそう言う沙都子。しかし、これは俺が蒔いた種なんだから、見て見ぬ振りはできない。

 

「とは言ってもなぁ……」

 

 俺がうんうん唸って考え込んでいるうちに、沙都子はもうご飯を食べ終えてしまったようだ。

 まだ小学生なんだが、よく食べてくれて俺も嬉しい。

 

「私の家のことなら、きっとなるようになりますわ!それよりも、私は梨花の方が心配ですわ!」

 

 確かにそうだ。梨花ちゃんは元気そうに振る舞っているが、彼女もまだ小さな子供だ。北条家の2人も同じく両親を亡くした身だが、兄妹という肉親がいる。梨花ちゃんは老人から可愛がられているが、血の繋がった家族はいない。

 例え梨花ちゃんの心が俺と同じように多少大人びているとしても、きっと大きな悲しみを背負っているに違いない。

 

「梨花ちゃんも本当に辛いだろうな……でも、どうして学校に来ないんだろう。公由村長が後見人になってくれてるとは聞いたんだけどな」

 

「そうだ、今から梨花の家に行ってみませんこと?ちょっと時間は遅いですけれど、きっと喜んでくれますわ!」

 

 確かにそれはいいかも。友達みんなで押しかけたら少し迷惑かと躊躇していたが、梨花ちゃんと特に仲がいい(と思いたい)2人でこそっと行くくらいならいいだろう。

 

 そこで、俺たちの話が聞こえたのか店長が裏から出てくる。

 

「なんだ、ユウくんらは梨花ちゃまのとこへ行くんかい?それなら、ちょっとお土産を用意するからちょっと待っててなぁ!」

 

 有無も言わせず親父さんは引っ込んでいった。もう6時も過ぎている。もしかしたら、もう晩御飯も食べてしまったかもしれない。食べ物の差し入れを持って行って歓迎されるかは微妙なところだ。

 しかし店主の好意を無碍にするのも悪いので、一旦俺たちは店長が用意してくれる何かしらを待つことにした。

 

「ほんと、梨花はみんなから愛されてますのね……」

 

 沙都子がぼんやりした顔で呟く。

 

 片や、村の御三家の一人娘で、オヤシロ様の巫女として誰からも愛される存在。片や、裏切り者の北条の娘で、悪戯好きの跳ね返り娘。2人はいつも仲が良いが、一緒にいる時に沙都子が明らかな扱いの差を感じて悲しくなることは、今まで何度もあっただろう。

 

 しかしこれからはその差はずっと小さくなる。年寄りは梨花ちゃんを崇拝しているだろうが、普通の大人たちからするとどちらも村の小さな子供だ。

 

「沙都子もこれからはそうなるよ。元々、俺たちの中じゃ一番の愛されキャラだしな!」

 

 俺は元気付けるように、沙都子の頭をぽんぽん、と撫でながら言った。沙都子は恥ずかしそうに俯いたが、そんなに悪い気はしていないように見えた。

 

「もう。そんなことを言っても、何も出ませんことよ?」

 

 照れたように笑う沙都子。本当のことを言ったまでだよ、とそれに返して店主の帰りを待つ。すぐに店主は何かの包みを持って現れた。

 

「待たしてすまんねぇ、2人とも。梨花ちゃまがもしご飯も食べとらんかったら、これを渡してやんね。あと、こっちは蕎麦団子。全部甘いのやから、3人で食べるとええんね」

 

 店主は俺たちにその包みを差し出した。ずっしりと重いそれを受け取り、俺たちは感謝を告げる。

 

「ありがとーございますわ!」

 

「ありがとうございます。じゃあ、早速持って行ってきますね。お会計をお願いします」

 

 俺は店内で食べたものと持たせてくれたものの合計で、まあまあの額を支払おうとした。しかし店主は、

 

「子供が大人に気を使わんでいいんね!」

 

 とそれを断り、むしろ安くしてくれたのだった。俺は昔から村の子供として受け入れられていたが、今では沙都子と悟史くんもそうなっている。俺と両親と、他にも色々な人が手を尽くした結果だった。人知れず俺の心は感慨深いものでいっぱいだった。

 

「ごちそうさまでした!またみんなを連れてきますね!」

 

「ご馳走様でございますわ!」

 

 店主は俺たちに手を振って見送った。俺たちもそれに答えて店を出て行った。

 

 店を出ると、外は少し薄暗くなりつつあった。商店街でもシャッターを下ろして今日の営業を終えたところがちらほらと目立つ。今から神社に行って、帰ってくるとすると、沙都子の帰りはかなり遅くなるだろう。

 

 やっぱり暗くなる前に沙都子を家に帰そうかとも思ったのだが、どうしても一緒に行くと言って聞かなかった。徐々に暗くなりゆく村を、俺たちは自転車でゆっくりと走った。村には電灯はあまり多くないので、日が落ちるとみんな車以外ではほとんど出歩かない。

 

 少し走ると、俺たちは神社の前に着いた。梨花ちゃんの自転車が止まっているそばに俺たちも自転車を停めて、俺たちは長い神社の階段を一緒に登った。

 

「沙都子、ちゃんと鍵締めたか?」

 

「もちろんですわ!」

 

 数年前、ここで自転車の鍵を閉めてなかったことで一悶着あったことをふと思い出して、沙都子の方を見た。

 沙都子も同じようで、俺の顔を見てうふふ、と笑った。可愛い。

 

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