雛見沢とかいう田舎に転生した   作:that's the plan

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第57話

 

「牧野の忘形見に続いて、梨花ちゃままでご登場かい。魅音、ここの警備は一体どうなっとるんね!」

 

 お魎さんが怒りに顔を歪めながらそう言った。

 

 そこには、梨花ちゃんと沙都子、悟史くんがいた。

 

 俺は緊迫した状況にも拘らず、なんだかおかしくて笑いそうになった。確かにお魎さんの言う通りだ。ここは多分、園崎家の敷地内でも秘密の場所なのだ。

 

 だからこそ、生半可な人間にはきっと場所も知られてないはず。それで目立った警備がされていなかったんだろう。しかしそこに部外者が何人も来たわけだ。……そうだ、俺のことを見張ってた人にも、抜け出しちゃって少し申し訳ない。詩音ちゃんのためだと思って我慢して欲しい。

 

「も、申し訳ございません。ご当主様……」

 

 それだけ言うと魅音ちゃんは苦しそうな表情で黙り込んだ。

 

 梨花ちゃんは何故?どうやってここに?

 俺の書き置きを見て園崎家に来たことがわかったのだろうか。しかし、まさかこの場所を知っているなんて……。それに、何で沙都子と悟史くんまで?沙都子はさっきまで一緒にいたからまだわからないでもないが……悟史くんは何でここにいるんだ?

 

 俺の頭の中はわからないことでいっぱいで、俺は呆然としていた。

 そんな中でも、梨花ちゃんは怒り心頭という様子のお魎さんにも臆することなく、堂々と発言した。

 

「公由もいるということは……御三家の会議なのですか?それなら、ボクもご一緒しなくてはならないのです」

 

「梨花ちゃま、これはうちの家の話やぁ、黙っといてほしいんね」

 

 お魎さんは凄みを利かせて梨花ちゃんに答える。しかし、梨花ちゃんは少しも引かない。

 

「雄星はボクたちのお友達です。そこにいる詩音も、ボクたちのお友達なのです。お魎、2人を許してあげてくれませんですか?」

 

「……こいつらは園崎の決定を冒涜したんね。いくら梨花ちゃまの言うことでも、すんなり頷くわけにはいかんね」

 

 お魎さんは梨花ちゃんを睨みつけるようにしてそう言った。

 意外にも落ち着いたお魎さんのその様子を見て、俺は少し疑問に思った。

 我を忘れるほど怒り狂っているってわけじゃないのかもしれない。お魎さんがキレてるのはあくまでパフォーマンスで、本当は詩音ちゃんを苦しめようとはしていないんじゃないか……?都合が良すぎるかも知れないが、俺はそう思った。

 

「……これは雛見沢に住むボクたちの伝統なのです。仲間が危ない目に遭っているのなら、それに共に立ち向かう。雄星は雛見沢の人間として、それを実践したのみなのです」

 

 梨花ちゃんは毅然と言い返した。その顔に、いつもの子供らしさはなく、凛々しい瞳がお魎さんを射抜いた。

 

「それに、こいつはオヤシロ様の名前を騙って、好き放題言うてくれとるんね。それは梨花ちゃまのことをも冒涜しとるんね」

 

「そんなことはないのです。ボクはオヤシロ様の巫女として、断言しますです。オヤシロ様は、命を賭けて友を救おうという彼に感心し、彼のことを見守り、手助けしている。牧野雄星は、オヤシロ様の加護を得ているのです」

 

 お魎さんは、その言葉に何も言い返さない。その場には沈黙が訪れた。

 すると、今度は悟史くんが前に出てきた。

 

「園崎お魎さん。僕からもお願いします。僕たちを村の一員として再び迎えてくれたのはお魎さんの一声が切っ掛けだったと聞いています。本当に感謝しています。……ユウは詩音のために立ち上がったまでなんです。2人は僕の親友です。詩音とユウが罰を受けるなら、僕も受けます」

 

 悟史くんはそう言って頭を下げた。

 

「私からもお願い致しますわ。私も罰を受けます。ですから、どうか、ユウと詩音さんを許してくださいまし……!」

 

 沙都子もそう言った。沙都子の足はぷるぷると震えていて、強い恐れを抱いているのは明らかだった。しかし、俺のために身を挺して庇ってくれているのだ……。

 

 俺の目からは涙が溢れた。俺のことを案じてくれる大切な仲間がいること。そして、俺の勝手な行動で仲間たちに迷惑をかけてしまったこと。それらを理解し、自分の不甲斐なさに呆れた。

 

 初めから全部相談するべきだった。1人で抱え込んで、自分なら何とかできるなんて思い上がりなのだ。……俺は、大きな罪を犯してしまったように思えた。

 

 そこで、白い装束を着た魅音ちゃんが進み出た。

 

 お魎さんのそばから、一歩踏み出し、俺たちが並ぶ側に出てきた。

 そして、振り返ってお魎さんを見た。お魎さんは怪訝な顔をしたが、魅音ちゃんは覚悟を決めたように、確かな信念の籠った顔をしていた。

 

「……ご当主様。罰を……罰を受けるなら、私もです。詩音が学園を脱走したことは、もっと前から承知しておりました。しかし、私はそれを止めなかった!手助けもした。悪いのは、私なのです!」

 

 魅音ちゃんはその場に膝をつき、叫ぶようにして言った。

 

 仲間にここまでさせて、俺はこんなでいいのか?自分は大人だなんだと言って、結局、友達に嘆願をされて救われるだけで良いのか?

 そんなわけない。みんなは勇気を出してくれた。俺がやらなくてどうする!

 俺はもう一度、決意を新たにした。

 

「お魎さん。俺がケジメをつけます。見ててください」

 

 お魎さんは無言だった。まだ俺を睨みつけるようにして見つめている。俺はその無言を、やってみせろ、という意思表示のように思った。

 

 右手を取り付けたままの、その機械に、俺はもう一度、拳を振りかぶった。背中は詩音ちゃんの涙でびしょびしょで、詩音ちゃんは俺に縋り付いて俺を止めようとする。

 しかし……覚悟が本当だと言うことを見せるためには、俺がやらなくてはならない。これはきっと、俺が始めたことなのだから。

 

「ダメ!」

 

 梨花ちゃんが叫んで、こっちへ向かってくる。

 しかし俺はそれに構わず、拳を金具に振り下ろした。俺は目を閉じて痛みに備えた。

 

 叩きつけるようにして金具にぶつかった俺の拳は、予想とは裏腹に硬いものに阻まれた。痛みが来ると想像して、極限まで意識しないようにしていた右手の小指からは少しの痛みもなく、むしろ振りかぶって機械に叩きつけた左手の拳の方が痛みが強かった。

 

 ……爪は剥がれてない。何か、ロックみたいなものがかかっているようだった。俺は額から滴る冷や汗を拭って、お魎さんの方を見た。

 お魎さんは、怒っているとも、悲しんでいるともとれるような変な顔でこっちを見ていた。そして、小さくため息をついてから、ゆっくり口を開いた。

 

「あんじょうすったらん!お前ら全員、はよう出ていけい!」

 

 お魎さんはそう言い切って黙り込んだ。俺たち全員が、入口に控えていた男に誘導されて、どこかへと連れていかれるらしく、抵抗はできそうになかった。

 

 今度はどこに案内されるのか。

 この部屋に入るまでには牢屋みたいなところも過ぎてきた。流石に、監禁されるのは勘弁だ……せめて、他のみんなは許してやって欲しい。

 俺はそんなことをお魎さんのそばに控える大人たちに言ったが、彼らは意外にも優しい顔で首を小さく振っていた。

 

 俺たちは男に先導されて篝火の中を歩いた。暗い階段を登り、やがて地上へと続く扉に辿り着いた。重い扉を男が開けて、まるでドアマンのように俺たちを通してくれる。

 

 俺たちが地上へと出た時空気が変わった気がした。……これはきっと、許されたということなのだろう。俺は外に出てようやく気づいた。

 

 先ほどの地下の座敷の重苦しい雰囲気を抜け、ようやくいつも暮らしている雛見沢に戻ってきたような気がした。俺は安心感からか、大きなため息をついた。それに気づいたスキンヘッドの男から声を掛けられた。

 

「はっはっは!そりゃあ疲れただろうなぁ!君、詩音さんのためにこれだけ身体張るとは、根性あるねぇ!御歴々に啖呵を切った時、ちょっと俺もスカッとしたぜ。将来、俺らと働かんかい?」

 

 さっきの地下での一悶着の時とは打って変わって、スキンヘッドの男は人懐っこい笑みを浮かべた。

 

「あの、ちょっと気になるんすけど……園崎家で働いてる人って……銀行口座、作れるんですか?」

 

 俺の言葉にスキンヘッドの男は吹き出した。

 

「あっはっはっは!もちろん作れるよ!」

 

 スキンヘッドの男は俺の言葉を面白がって、俺の背中をどんどん叩いた。まだ上半身が裸なのでかなり傷痕に響く。しかもかなり力が強くて、頭が揺れる。

 確かに言われてみれば、昭和後期ぐらいなら、暴対法がまだ制定されてない時代か。俺は変なことを言ったのを笑って誤魔化した。

 

「いてぇ、いてえっす」

 

「君、結構筋肉あるからねえ、俺と同じ仕事もいけるかもな。がはははは……」

 

 スキンヘッドの男はそう言って笑った。俺はそこそこ筋トレをしてる方だが、この人もかなり良いガタイをしてる。武闘派なお仕事なのかもしれない。でも、やりたくはないかな。

 

「ユウ、これ着なよ。いつまでも裸だと、目のやり場に困るよ……?」

 

 悟史くんがそう言って、俺に上着をかけてくれる。確かに啖呵を切った時に半裸になったままだった。あと、包帯も取れてしまっているし、靴も履いてない。まるで何かの格闘ゲームの主人公みたいだ。

……包帯は解いてあの場所に置いてきたままだ。すみません、お魎さん。捨てといてください。

 

 いつもは包帯を巻き付けている傷跡が空気に触れて、ヒリヒリする。悟史くんが貸してくれたジャケットの、前のボタンを閉めた。これで元通り。……帰ったら包帯を巻き直さないとな。俺が捨ててきた包帯は誰かが掃除してくれるんだろうか。ちょっと申し訳ない。

 

 俺が服を着たことで、それまで俺から目を逸らしていた沙都子が、俺の後ろから抱きついてきた。

 

「お風呂から上がって髪を乾かしていたら、梨花が血相を変えて家を出る準備をしているんですから……驚きましたわ。ユウ。もうこんなに危ないことはしないでくださいまし!」

 

「沙都子、お前が来るなんて、思ってもいなかったよ。心配かけてごめん」

 

「ふん!私も、いつまでも守られているばかりではないのでございますのことよ!」

 

 いつにも増して変なお嬢様言葉と共に、誇らしげに胸を張る沙都子。俺は小さな友人の勇姿に感動し、そして自分の無鉄砲を反省した。

 

「本当に迷惑をかけてごめんね、みんな。詩音ちゃんも、変に首を突っ込んでごめん。でも、居ても立っても居られなくて……」

 

 俺が話しかけるまで茫然自失といった様子で、ずっと俯いていた詩音ちゃん。俺に声をかけられ、そして悟史くんが顔を覗き込んだことで、平静を取り繕うようにして笑った。

 

「もう、あんなに危ないことやめてくださいね。鬼婆の気が変わらなかったら、生きて帰れたかもわからなかったんですから!……でも、私の代わりにユウくんが怒ってくれたおかげで、冷静になれました。もしユウくんがいなければ、私が鬼婆に逆上して、もっと怒られてたかも。とってもカッコよかったですよ!……悟史くんがいなかったら、惚れちゃってたかもね。あはは……」

 

 アイロニカルな喋りをして、わざとらしく笑い声を上げる詩音ちゃん。最後は、悟史くんに聞こえないようにちょっと小声だった。

 

 自分以上にキレてるやつを見たら急に冷静になるみたいな話だろうか。俺自身、勢いで変なことを言ったのが少し恥ずかしくなった。

 

 沙都子は詩音ちゃんの言葉が聞こえていたらしく、唇を尖らせた。

 

「にーにーもユウも、詩音さんには渡しませんですわーっ!」

 

 沙都子が張り合うが、詩音ちゃんはそれをニコニコしながら受け止めていた。仲は悪くなさそうでよかった。

 

 話を聞いてる感じでは、沙都子は詩音ちゃんのことを知らないかと思っていたが、何となく勘づいていたみたいだった。詩音ちゃんは悟史くんの家に遊びに行ったりもしていたみたいだし、そりゃそうかもしれない。

 

 俺たちはさっきとは打って変わって、少し和やかな雰囲気で園崎家の正門に差し掛かった。まだ園崎家の敷地は出ていないため、あんまり今日の話はしにくい。俺は早くこの場所から出て行きたかった。

 

「牧野くん、待ちな」

 

 早足で敷地を後にしようとした俺は、1人の女性に声を掛けられた。女性は園崎宅の正門の外に立っていた。先ほどの地下での一幕の際にも見た顔のその人。彼女は園崎茜さんだ。玄関に置きっぱなしになってた靴を半笑いで返してくれた。……恥ずかしい。

 

 二、三度くらいは喋ったことがある。彼女は園崎姉妹の母親で、お魎さんとも日本刀を振り回す大喧嘩をしたことがあるという女傑だと聞いている。

 

 俺は茜さんに向かって、深く頭を下げた。

 

「はい。本日のことは本当に申し訳ありませんでした。お魎さんにも、園崎家の皆さんにも僕の自分勝手な行為で大変ご迷惑をお掛けしました。謝って許されることではないかもしれませんが……両親に誓って、今日のことを誰かに話したりはしません」

 

 茜さんは苦笑した。

 

「はぁ……牧野くん、あんたも頑固だねぇ。鬼婆さまは、元から詩音にそこまで怒っちゃいなかったよ。もしも本当に詩音に怒っていたなら、一枚爪を剥がすだけで許されるわけがない。園崎の決定に不満があったとしても……ちゃんとした手続きをして、謝ってからここに戻ってくるならいいけど、周りに迷惑かけて自分勝手なことをするなって怒ってたわけだよ」

 

 その言葉を聞いて詩音ちゃんは唇を硬く結んで申し訳なさそうな顔になる。詩音ちゃんが素直に謝っていれば、誰も巻き込まず、そんなに怒られることもなかったのかも知れない。

 

「な、なるほど……」

 

「牧野くん、まだ子供なのによく鬼婆様に啖呵を切れたね」

 

「あ、あの時はほんと、無我夢中で……」

 

「いくら本気ではなかったとはいえ、あのままだったら代わりにあんたがケジメをつけるってのも、生きて帰れないってのも、冗談では済まなかったよ?でも、梨花ちゃまやお友達たちが来て、牧野くんも漢気を見せたから、鬼婆の面子も保たれた。あんたのことは昔から気に入ってるのもあるしね」

 

「雄星、今そこにいれるのはボクたちのおかげなのです。みんなに感謝するのですよ」

 

 梨花ちゃんはそう言う。口調こそ冗談めかしているが、それは本当のことだ。俺は深く頷いた。

 

「……あそこにいた人間は、私含めてほとんどが詩音に同情的な人間だったんだよ。そんな人間たちは、詩音を自分の体を張って助けようとする少年がいるのは悪い気はしなかっただろうね。……最初、喧嘩を売るようなことを言ったのはほんっとに、ヒヤヒヤしたけどね?」

 

 茜さんはそう言って笑った。実の母というだけあって、この人は園崎姉妹以上にお魎さんのことをわかってるんだろうな。俺はそう思った。

 

「そうですよね……本当に、ご迷惑をお掛けしました。梨花ちゃんもみんなも、助けに来てくれてありがとう」

 

 俺は茜さんに頭をもう一度下げた後、隣にいる梨花ちゃんに謝った。

 彼女が俺の書き置きを見て園崎家に向かったことに気が付かなければ、俺は間違いなく痛い目に遭っていた。もしかすると、詩音ちゃんもただでは済まなかったかもしれない。俺は梨花ちゃんに素直な気持ちで感謝を告げた。

 

 しかし、梨花ちゃんの顔は暗いままだった。

 

「……もう危険なことはしないで欲しいのです。ユウの、その命は……自分だけのものではないのです」

 

 梨花ちゃんは儚げな顔をしてこちらを見つめた。俺はその顔を見て、こんな悲しい顔をさせてしまったことがとてつもなく情けなくなった。

 

 梨花ちゃんの言う通りだ。梨花ちゃんは、自分の目標を、"誰1人欠けることなく昭和58年の7月を迎えること"と言ってた。そして、その中には俺も含まれてる。俺が死んだとしたら、きっと今までのような幸せな日常は戻ってこない。その時点で梨花ちゃんは……。

 

「2度とこんなことはしない。約束する」

 

 俺は梨花ちゃんを見て言った。梨花ちゃんは俺の目を見て、小さく頷いて、ぽつぽつと語り出した。

 

「あんたは何でも相談しろって、私の道連れだって、そう言ったわよね。そのあんたが何で1人で危ないことをしてるわけ?……反省しなさい。そして、これからは何かあれば私に相談すること。いいわね?」

 

 梨花ちゃんは人目を憚らずに大人っぽい口調になってそう言った。これは珍しいことで、みんな少し驚いた様子で梨花ちゃんと俺を見守っていた。

 

 しかし、梨花ちゃんは周りの目線は少しも気にせずに、俺を真っ直ぐ見つめた。

 俺は頭を下げた。梨花ちゃんは俺の頭を撫でた。俺が頭を上げると、梨花ちゃんはいつもの可愛い顔に戻っていて、「にぱー⭐︎」をしてくれた。許してくれたらしく、俺も一安心。

 

 俺たちのやり取りが一段落したことで、茜さんが流れを断ち切るように口を開いた。

 

「さ、鬼婆様の気が変わらない内に早く行きな。詩音も、今から興宮に帰るのは難しいだろうから、今日は牧野くんか悟史くんに泊めてもらいな!詩音、あんたもいい男の子たちに好かれたねぇ!」

 

「母さん!変なこと言わないでよ!」

 

 詩音ちゃんがそう言って茜さんに掴みかかる。茜さんは笑いながらそれをいなして、詩音ちゃんを上手くあしらっていた。流石親子だ。

 

 茜さんも、地下で見た時は恐ろしい人かと思ったが、タイプ的にはこの2人の姉妹と同じ感じで、明るく愉快な人なんだろう。俺は2人のやり取りを見てそう思った。

 

「じゃあ、詩音……僕たちの家に泊まる?」

 

 正門を出てしばらくして、悟史くんが恥ずかしそうに言った。詩音ちゃんは顔を赤らめて黙り込んだ。詩音ちゃんは北条家に遊びに行ったことがあるようだったから、当然の帰結だろう。

 

「……い、いいんですか?悟史くん。沙都子も、家にお邪魔していいの?」

 

 沙都子は複雑な顔をした。梨花ちゃんは沙都子の前に立って、頭を撫でてから詩音ちゃんの方を向いた。

 

「今日は沙都子は雄星のおうちにお泊まりする予定だったのです。だから、悟史と2人きりでゆっくり過ごすといいのですよ。にぱー⭐︎」

 

「仕方ないですわねー……詩音さん、にーにーに変なことはしないでくださいましね!」

 

 沙都子は嬉しいような悔しいような変な顔をして頷いて、詩音ちゃんに釘を刺した。

 

 悟史くんは揶揄われているのに気づいて「むぅ……」と黙り込む。悟史くんとお泊まりすることが決まった詩音ちゃんは「えへ、えへへ!」と嬉しそうな顔でにこにこしてる。妄想が捗っているらしい。

 

 俺たちは目を見合わせて、その2人の様子を笑った。これで詩音ちゃんを巡る一連の騒動は、解決したみたいだった。

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