親バレした事をツイートしたら、だから配信でやれとリスナー達が騒いでいた。
私は私で、ヤケ食いヤケ酒で一人だけ嫌なことを忘れようとしたけど、何もかも覚えてやがった。
記憶が消えない!クソ、なんなんだよぉ……恥ずかしくて死ぬ。
「本当に頼むからね!言いふらさないでよ!会社のクビとか、本当になるんだからね!」
「大丈夫大丈夫、アイドルとか言わなきゃ良いんだろ」
「んあぁぁぁ!分かってない、マジで分かってない」
「そうよお父さん、泥棒入られちゃうでしょ!大金持ってるんだから!」
「いや、その理由はどうなんだ、うーん」
「そんなに稼いでるのか?だったら小遣いくれよ」
「親が子供に集るなよ、別にいいけど」
まぁ、前世じゃ親孝行なんて大してしてなかったから良いけどさ。
金遣い荒くなければ……親がスポーツカー欲しがったりとかそういう、なんかこうあるあるとかなら配信のネタとかになるんだろうか。
お金で思い出したが、ちょっと前に買ったゲーマーストップ株が少しだけ話題になって値上がりしてた。
と言っても1ドルくらいしか増えてない。
まだまだ先ということだろう。
初日の出を見に行って、帰りに地元の神社に行く予定で外に出る。
クソ寒い中、真っ白いモコモコのコート着て、マフラーつけて、手袋とブーツがなければ私は死んでたと思うくらい寒かった。
肌を刺すような、痛いくらいの寒さだ。
あと、海で初日の出なんか見るもんだから、なんかベタつく気がする。
潮の感じがね。
「初日の出なんか、いつ見たって変わんねぇよ。正月だろうと日の出は日の出だろうがよ」
「うわぁ、およそ女子が言っちゃいかんでしょ。可愛げねぇ……」
「こんなもんありがたがって早起きのほうが辛い。正月はずっと寝てたいよ」
いやぁ、寒すぎてしんどいって。
明日はマラソン見に行くんでしょ?わざわざ国道まで見に行って中継所で走ってる姿見るんでしょ。
赤の他人を一日限定で応援するって、何のためにしたいんだよ。
「うぇ……陽キャのノリ過ぎる」
「おぉ……日の出見えてきたぞ」
弟の声に従って、瞑ってた目を開いたら夕日みたいなオレンジが見えた。
紫とも思えるコントラストの空、海との境界線に滲むオレンジ色。
ゆっくりとオレンジが空を侵食していく。
夕焼けが逆再生されてるみたいだ。
「…………」
何分経ったんだろうか、何も考えず、ただ日の出を見ている時間が過ぎてった。
見る以外、特に何もしたくないような、無気力とは違う感覚だ。
陳腐に言ったら感動とかなんだろうか。
どうでもいいとか思ってたけど実際はこうだったとか雑談のネタに使えそうだな。
「あっ……」
「おい、もう上がってんじゃねぇかよ」
「やべぇ、いやでも見れたしいいだろ」
「えー、じゃあコンビニ寄ろうぜ」
視界の端に映ったのは、社会人になりたてのように見える男達。
ただ、その姿を見てどこか懐かしさを覚える。
あぁ、そうだ、あれは男の時の地元の友達か。
「どしたの……何、知り合い?」
「ううん、なんでもない。なんかはしゃいでる奴らがいるなって」
知り合いじゃ、ない。
小学校は一緒だったかな?
今の今まで忘れてたな……少しだけ寂しいな。
今は関わりのない人達だ。
地元の神社、見知った顔もチラホラある。
でもみんな私の事は知らないし、知ってるのは私だけだ。
「あらぁ、市川さんじゃないの」
「どうも、鈴木さん。あけましておめでとうございます」
「あらぁ、ご丁寧にね。あけましておめでとうございます。そちらお嬢さん?胡蝶ちゃんかしら、大きくなったわねぇ」
全然知らねぇわ、なんだこの人母親の知り合いか?
取り敢えず無言で会釈すると、その人の後ろに中年のおじさんとか同い年くらいの男の子が見える。
家族での参拝かな?
「姉ちゃん輪っかくぐろうぜ」
「……んっ」
弟の服を掴んで、開かない目のままノロノロ歩く。
おー、輪っかって厄除けの奴か。
んー、右とか左とか回る順があるのか。
「やべっ、賽銭忘れた。5円ない?」
「神社の維持費だし、何円でもいいだろ」
「えー、千円は高くない?」
「小銭入れないし、財布にあんの札だけだから文句言うな」
基本的に電子マネーだから手持ちにないねん。
いや、まぁ、あるにはあるか……100円か10円とか。
「高いほうが良くない?」
「資本主義な神様とか絶対金で裏切るやん」
「確かに」
「でも意外と姉ちゃん信じるんだな」
「まぁ、神の奇跡って本当にあるしな……」
「真顔で言うとガチで信じてる人みたいで草」
ガチだよ。
じゃねぇと説明つかねぇよ。
まぁ、でも、邪神の類だろうな。
こっちのしんどいのとか、右往左往してる様とかを見て楽しんでそう。
人の人生をエンタメとして、消費してんのかな?
リスナーより裏側見えてるから、もっと趣味悪いかもな。
少なくとも私は頼んでねぇよ。
「おかぁ達、まだ喋ってんよ。出店とかあんじゃん、やべ金ねぇ」
「賽銭持ってきてねぇ奴が持ってる訳ないんだよなぁ、何が欲しいの?」
「出してくれんの?姉ちゃん何食う?」
「屋台って衛生気になるから私はいいや、ほら買ってきなよ」
チョコバナナ、焼き鳥、綿菓子、神社に毎年よくやってるな。
実はヤクザだったりしてシノギでやってるんだろうか。
アカンな、頭の中正月から中二病過ぎる。
「焼き鳥買ってきたぜ、ほい」
「えー、話し聞いてねぇのかよ」
「行ける行ける、焼いてるから」
「コートに油付けないように食べんのムズそう……」
鶏皮の塩だ。
分かってんじゃねぇか、うまうま!
「へー、そうなの。あら戻ってきたわ」
「やだ、話しすぎちゃって」
「そう言えば、おたくの胡蝶ちゃんは今ってお仕事とか何してるのかしら?」
あぁ、それはと言って固まる母親。
そそくさと逃げる父親、いたら言っちゃいそうだから英断だね。
「東京で、映像関係の仕事を……」
「あらぁ、彼氏とかいるのよね。ウチの子も見習って欲しいわぁ」
「あはは」
なんて返せばいいねん。
いないですって言ったら紹介してくる流れか?
ただの世間話にしては踏み込みすぎやろ、いや昭和生まれの世代ってこんなもんか?
「でも東京って家賃とか高いし大変でしょ。やっぱ女の子だし、そこまでして働くのもねぇ」
「まぁ高いですね……今は働かないと生きていけない時代なんで」
「ウチの子なんかどうかしら、ねぇ胡蝶ちゃんみたいな子ならおばさんも嬉しいわ」
「母さん、やめろって!ほら参拝行くぞ」
あははは、うぜぇ。
分かるぞ、30までにとか35までにとか言われるだろうな。
結婚の話題ばっか、辛い。
「お母さんも参拝行ってくるわ、待ってなさい」
「んっ……」
「あのマウンティング女、絶対あんなとこのと、くっつくんじゃないわよ」
何があったんだよ、口悪いな。
元よりくっつく気はないけどよ。
待ち時間が出来たので、電子タバコを取り出して焚き火のところで吸い始める。
帰ったら生誕ライブをやらなくちゃな。
色々言ったから良いもんにしたいな。
「いやぁ、さっきは……」
「あん?」
「へ、へぇ~胡蝶ちゃんって喫煙者なんだ」
「誰お前?」
知り合いか?うーん、あっ、さっきのマウンティングおばさんの息子か。
なんなら向こう知ってたし、同じ中学とかなんだろうか。
「ほら、覚えてない?中学とか一緒だったじゃん」
「知らんけど、何?」
「いや、何って……用がある訳じゃ……」
「そうなの?」
何しに来たんだコイツ、あぁ、タバコか。
まぁ、寒いもんな。
「姉ちゃん、行くよ」
「ん~!じゃあな、えっと……」
「鈴木です」
「あー、うん、鈴木な!よいお年を」
さて、マラソン見たら都内に帰って配信の準備だなぁ。
マネちゃんと打ち合わせ新年早々にしなきゃだしな。
「姉ちゃんさ」
「うん?」
「言っても分からんと思うけど、アレはキツいって」
「……何の話?えっ、何が?」
「いや、マジ姉ちゃんって変わんねぇわ。終わってんなぁ」
なんで急に罵倒されてるんだ!?