実家から帰ったらすぐに仕事。
ウチはマリカ大会とか盛り上がってるけど、ライブの準備で出来てないです。
なので、マリカ大会は出ません。
お金を掛けて、リハも何回もやったライブの配信を始める。
スタジオを何回も借りたり、演出にやりたいことを盛り込めたのは、お金があるからだろう。
お金があってよかった、普通に三桁万円飛んだけどね。
とはいえ、そんな裏事情はリスナーには関係ない。
すごいなぁとか、楽しいなぁだけ思ってればいい。
アンチは何やったって演出がチープだとか、文句付けるだろうから無視。
『…………』
コメント:待機
コメント:わくわく
コメント:誕生日おめでとう
オープニングが流れる。
流れているオープニングを見ながら水を飲んで、床に貼ってあるテープの位置を確認。
スタッフに飲み物を渡して、ポージング。
チラッと見える位置にある配信画面には、目を瞑って立ってる私がいた。
私のライブが始まる。
『あけましておめでとう!挨拶は手短に、早速歌ってくから楽しんで下さい!』
コメント:きちゃ〜
コメント:始まった
コメント:いえーい!
最初の曲は、どんな人だろ、普段聴かないから分かんないな、歌とか上手いのかな?
そんな風にいつもいない新規層向けに知名度の高い曲にした。
紅白とかでも歌われた今年のアニソンだ。
私の感覚からしても、ちょっと遅くないかとなるけども、これでもヒットする前のリリース直後の段階から発注して、それでも出来上がりは半年くらい掛かった。
大体その頃になると、ちょっと前に流行ってた曲じゃんってなる奴だ、これが間に合わせて最速やねん。
コメント:おおお!
コメント:今度映画やるやつだ
コメント:去年流行ったな
前世でカラオケランキング載ってたし、よく歌ってたから覚えるのは早かった。
生憎、私は踊るのも大人になってからやり始めたから苦手だし、人より少し歌が上手いだけだ。
まぁ……それも、スタートダッシュ早めで動けた高校時代のカラオケ漬けの日々のおかげだし、お金使ってボイトレに通ったからだけどね。
ちょっとしたズルと金の力だ。
でも歌は、ちょっとだけ自信がある。
だから、ダンスよりも歌に比重を置いたライブになっている。
『2曲目!ノンストップで行くぞ!』
コメント:休憩は!?
コメント:息切れしてる?
コメント:2曲目キター!
今回の生誕祭は、先を見据えてリスナーには悪いがライブ想定の工程になっている。
本来、というか人によっては録画を挟んだり、ゲストを呼んだり、ダンスなんかしてるなら衣装お披露目とかで休憩時間をバレないように設けたりする。
ただ、そんなのは裏の話で何も考えさせずに楽しませるのがライブだ。
綺麗なものをパッケージして届けるのがエンタメであって、作ってる工場などの工程なんて見せなくていい。
知って欲しいとは思うけどね。
次に歌ったのはアニメの主題歌。
呪術を使って戦うアニメ、今じゃカルピスみたいなハンターハンターなんか言われてる奴の曲だ。
どうしても見てる層は若いから、新規だけじゃなくて普段からいるサブカル層が飽きないように考えた曲選だ。
ダンスが少ない分、私のライブは動きが少ない。
フォローライブでは0期生と言われる古参の先輩達、陽街ちゃんや桜もち先輩などが演出にはテコ入れしているからステージは充実しているので、今回私は技術面に力を入れた。
先輩達の意見で言えば、ライトの点滅とかステージの鏡面加工、ゴンドラで降りてくるとかやりたい事とかに力を入れた感じだ。
それに対して、私はライティングの演出、要するに光の当て具合とか当たった時のグラフィックに口出しさせてもらった。
あとは、髪や服などの揺れる小物、まだカメラも固定方向からのが多い為に技術的に出来ない事は諦めて、台数を増やして色んな方向とかから見えるとか工夫した。
未来なら細かい動きは捉えられて、激しいダンスも出来るし、色んな角度からドローンを使ってるかのように撮影出来ただろうけど、写った映像をリアルタイムで処理出来る能力や細かい演算など、要望出すまで今は出来ないことが多いの知らなかったよ。
なんなら、ステージを1つ作るのだって時間とお金が掛かる。
だから、これが今の私が出来る精一杯。
演出も練習の努力も準備への口出しも徹底的に、手は抜かない。
生まれ変わって色んな物がなくなったけど、新しく作ってきた物が私にはある。
今はここが私の居場所で培ってきた物だ。
だから、リスナーをがっかりさせない。
リスナーに見限られたら、私にはもう何も残ってないからだ。
『ハァハァ……意外とそんな動いてないのに、歌いながら動くとキッツい……ちょっと休憩』
コメント:体力ねぇなぁ
コメント:虚空を掴んでる
コメント:お水飲んでもろて
『ゴクッ……ゴクッ……ふぅ……』
コメント:お水助かる
コメント:ミュートしろよw
コメント:喉越しがすごい
コメント:青スパが流れてきたぁ(笑)
『えっ?あぁ、別に隠さなくてもいいだろ。はい、休憩タイムです。この後はチケット購入した人だけとか言わないので、まだまだ続きます。どう?3Dだよ』
コメント:かわいい
コメント:ちっちゃい
コメント:あるあるw
『今はね、巣篭もり需要とか言ってVTuberが盛り上がってる時期でね。こうして見つけてもらえたけどね。やっぱりいつかは、大きな舞台で、家からじゃなくてライブ、したいよね。いえーい、コメント見えてるよ、みんな見てる〜』
コメント:いつになるやら
コメント:みんな配信見る時代になったよな
コメント:テレワークなんかやると思ってなかった
『こんな時代だけど、こんな時代だからネット配信が盛り上がって、これからも盛り上がってく業界だと思ってるから。そんで、ここがエンタメの最前線に近い所だと私は思ってるから、VTuberのライブスゲーって今日は見てってね!3曲目行くよー!』
コメント:ライブはしっかりしてる
コメント:いつものお前はどこだよ
コメント:ライブの胡蝶だ!
女になって良かったのは、女の曲を歌う時に高い音も歌えるようになったことだ。
男の時に掠れてた高音が出るから、高校の時は調子乗ってカラオケで歌いまくってた。
まぁ、次に歌う曲は男の曲だけど、これから歌うやつは全部高いけどね。
コメント:髭じゃん
コメント:最近の曲ばっかだね
コメント:カラオケでよく聞く奴だ
チラッとコメントを見れば、まぁウケはいい。
カラオケね、歌詞とか見ながら歌ってるからあながち間違いじゃない。
録画じゃないのに拘ってるから放送事故に気をつけないと、音を外したり声が出なかったりね。
実際、生歌だと聞き取り辛かったり、聞こえない時があったりする。
ライブならではといえばそうだけど、どうせならちゃんとしたい。
あっ、今、ちょっとサビのところが声出なかったか。
次の曲はKPOP、徴兵制のある国だから活動を休止してたイメージがあった奴だ。
個人的には音楽は好きだが、国策とか教育方面のお国柄は好きじゃない。
料理も好きだけど、材料と作るのは国産がいい。
でも、若い子には人気だし、女子ウケや若者ウケを狙うならラインナップに入れない訳にはいかない。
随分と打算的な選曲だ。
コメント:かわいい!きゅんです
コメント:急にコメント増えたな
コメント:胡蝶たんしか勝たん!
記念ライブでは、平均5分くらいの曲を大体10曲ほど歌ったりする。
2020年の技術では、どうしてもダンスやカメラワークで派手な動きが出来ないので変わり映えしない画面が続く。
演出とかの監修をするまで普通に見てたが、先を知ってると何だか手抜きに見えるような写し方をしているのだ。
今の人達なら満足かもしれないが、見る人によっては同じ映像のように感じるかもしれない。
だから、休憩も含めトークタイムで茶番を挟んでいたんだなと演者になって分かる。
『いつの間にか30分経ってるの?早いなぁ、ファンサしよ』
コメント:おっ、休憩かな?
コメント:まわってー
コメント:動きがうるせぇ(笑)
『休憩だよ!動きながら歌うの息切れすんの!でもまだ30分は続くし、最後に告知があるからね!最後まで楽しんでね!』
コメントに反応しながら、用意していた他の曲も歌いきる。
10曲なんてカラオケだったらあっという間なのに、覚えた簡単な振り付けを気にしながら歌ってると神経も擦り減るし、体力も意外ともたない。
でも、スパチャという金が飛び、コメントというリスナーの声が溢れて、しんどいけど少しだけ報われた気になってくる。
今、承認欲求が満たされまくってる。
しんどいのに、口角が上がってしまう。
これだからアイドルはやめられない、ちやほやされるのは最高に嬉しい。
『はい!ありがとうございました!残すところあと一曲になります!』
コメント:はい!
コメント:はいが出来て偉い
コメント:いつの間にラスト1曲に
『最後まで楽しんでってね!』
コメント:ファ!?
コメント:何の曲だこれ
コメント:メッチャうるせぇ(笑)
ライブの最後は、サプライズの新曲お披露目だ。
はみ出していい、ヒップホップってはみ出し者の文化だ。
だから、はみ出し者の私を肯定してくれるヒップホップは大好きだ。
コメント:新曲だ!
コメント:うおっ韻踏んでる
コメント:最近、ラップパート増えたよな
コロナの頃、デジタルリリースが中心となるように移行して完全にストリーム向けの曲が流行った。
そして、デジタルネイティヴ世代を中心にフェスが減った分、家で色んな国の曲を聴くようになった。
結果としてジャンルがなくなるジャンルレス、流行の最先端は配信を中心に若者のアプリが担う配信重視の時代に変わる。
そして、コロナ終息に近付き落ち着いたチルやエモいと言った曲が流行り、完全に適応された未来では今までの鬱憤を晴らすように激しい高速でクラブに流れるようなダンス・ミュージックが流行った。
若者が踊る事を前提にしたり、配信用にサビを短くまとめたり、ジャンルが無くなりクラブに行くやつしか聞かなかったEDMに触れる機会が増えた。
そして、世界の3分の1も売り上げがある、ロックより売れてる未来のヒップホップシーンを私は知っている。
今は日本語はラップに向いてないと言われているが、これからどんどん英語は日本に流れてきて、ジャンルレスで形成される複雑な要素の曲はどんどん増えていく。
なんなら、オタクには相性がいい。
昔流行った、持ってけセーラー服なんて2025年頃に流行る日本語ラップの先駆けだ。
韻を踏んで、電波ソングで、歌詞もオタクなら食いつくキャッチーな奴だ。そんな感じで未来からの逆輸入、EDMがあるテクノで、高速なメロディラインにラップの要素のある新曲をお披露目した。
『ということで!新曲でした!このあと、プレミアム公開でMV流します!更に、明日からデジタルリリースも各種サイトでも聴けます!いっぱい聴いてね!』
コメント:うおおおお!
コメント:新曲すげぇ!
コメント:毎日聞く!
新曲お披露目の少ない時代に、他と違うことをする。
実現するのにお金が掛かることを、金の力で解決する。
未来を知ってる知識を参考に戦略を考え、バズるのを狙っていく。
今の私に出来る精一杯だ。