全く動きのないディスコを見る。
17時集合、お店は17時半に予約してます、場所はここ、遅刻厳禁、それに対して誰も返事はしていない。
既読してはいるんだろうけど、誰か返してやれよ、これアイツ泣くぞ。
早めに集合して店でも見て回るのかと思ったが、これ遅刻を見越してたりしないだろうか。
そう考えたら、そんな気がしてきた。
朝起きて、早朝に軽く走る。
出勤しなくても良いから休日みたいな過ごし方が出来るのが、意外と嬉しい。
食物繊維が豊富で腸内細菌を育ててくれる大麦の入ったオートミール。
ヨーグルトやキムチ、納豆など、熱の加わってない発酵食品を朝食に取る。
朝食の後はデスクワーク、ブルーライトカットのメガネを掛けて、鬱陶しい髪を結ぶ。
ゲーミングチェアに座って、たくさんの画面を見ながらあーでもこーでもないとカタカタとタイピング、仕事のメールを返し、サムネを作ったり動画を編集したり、新曲の打ち合わせやグッズの監修。
昼になったらサラダチキンとハチミツとナッツと軽い食事、1時間くらい昼寝して、二度寝して1時間延長して、通販で買い集めたトレーニング器具のある部屋で筋トレ、1時間くらいサンドバッグを殴る。
男の時もハマってたが、サンドバックは鍛えられないけど楽しい。
有酸素運動だから、痩せるだけで筋肉はつかないけど。
そんなこんなで、気付けば14時くらいになっていた。
「シャワー、浴びるか」
流石に人と会うから直前に風呂に入る。
シャワーを浴びて、浴槽に張ったお湯に入る。
顔の水気をタオルで取って、お風呂に入りながら顔だけクレンジングオイルで汚れを落とす。
油汚れは油に溶けるので、まずはクレンジングオイルで綺麗にするのだ。
「ふぅ……」
浴槽から出て、シャワーでクレンジングオイルを落としたら、今度は髪の毛を洗う。
洗い終わったらヘアトリートメント、髪を巻きつけるようにまとめて、今度は身体。
ボディスクラブを手に取って、身体をくまなく擦って古い角質を落とす。
チェリーとミルクのがお気に入りのボディスクラブ、洗い流したらヘアトリートメントも落とす。
今度は通常の洗顔料で油じゃない汚れを落とす。
ビタミンC配合の酵素が入った洗顔、泡立てて撫でるくらいでゴシゴシはしない。
浴槽に入りながら顔を洗ったら、またシャワーを軽く浴びてから風呂を出る。
風呂上がり、冷蔵庫からビタミンやナイアシミンアドなど入ってるシートマスクを顔に貼り付ける。
鏡の向こうの私は、まるでスケキヨだ……犬神家!
ヘアオイルを軽く手に取って馴染ませてから、髪のキューティクルをケアする。
終わったら手を洗って、ドライヤーで髪を乾かす。
温風を当て終わったら、冷風で冷まして、最後にヘアブラシで整えたら終わり。
ついでに、シートマスクも外して、乳液で整えて、メイクの時間だ。
日焼け止め入りの下地クリーム、所謂プライマー、毛穴やくすみがなくなり肌がキメ細かく、少しだけトーンが明るくなる。
次にファンデーション、焼肉ならちょっと暑そうだし、テカりとか気になるからツヤ系じゃなくてマットな感じのほうが、メイクが崩れても地肌が出ないか。
なら、液体のリキッドじゃなくて固体のファンデを使う。
全体にクッションファンデを薄く塗って、密着性で崩れないように、本命の別の種類のファンデーションは重点的にやりたいところに、軽くタッピングをして。
「あー、シンプルな方がいいよね」
アイラインは際を避けて、トレンドの赤みを帯びた目元に塗っていく。
チークは頬に、乾燥してみっともなく見えないように、ワンポイントで、ツヤがゼロなのも良くないしな。
顔がテカテカに見えないようにはしたが、かといってそれだけだと不自然だから一部はチークでツヤ肌に仕上げる。
色落ちしにくい、水や擦れに強いティントタイプのリップで終わり。
あとは崩れたとき用にメイクポーチに使った奴を入れておく。
「やべっ、時間ない」
急いでクローゼットに行き、流行りとかを意識しながら全身鏡を見る。
よく考えたら、まずガキ2人は論外だし、大海はジャージだろ。
なんかダサいとか思いそうなのは、百目鬼とクッキー先生くらいだ。
片方は普通に女子だし、片方はオシャレだからだ。
他の3名はガキとジャージなので、多分何もわからん。
「トレンドは押さえたいが、攻め過ぎか?気合入ってるとか思われたくないが」
無難にワンピースがいいか、そんなに着る量も少ないし、動きやすいほうが二次会とかあるかもだし、あっでも羽織るものは寒かったら必要か。
ワンピースにジャケット、黒めに合わせてジャケットは白が良いか。
アクセは、あんま大きいのは邪魔そうだから小さいので、ネックレスはどれが合うか。
多分、そんな歩かないから靴はハイヒールでいいよね。
カバンは、どうせ携帯と財布とメイクポーチくらいやし、小さいカバンでいいか。
あんまり匂いが強いとダメだよな、サボンかシトラスか、肉にはレモンやし柑橘類の香水、シトラス系がいいわ。
「やべ、あと1時間半じゃん。普通に遅れそう」
アプリでタクシーを呼び出す。
クソ、すぐには来ないのが難点過ぎる。
もっと利用客が増えたら早くなるんだろうか。
えっと、お店の住所はここか。
んっ?なんだよ、クッキー先生も遅れそうなのかよ。
やっぱ集合時間、遅れるの前提だろ。
先に店にいるようで、着いたという一言が、ディスコに書いてある。
幹事というか、焼肉行こうぜとか言って集めた陸テラの奴、あてぃしも遅れるとか言ってやがった。
やっぱりね!3年目になったら分かりますよ。
「ごめーん、遅れたー」
「おーつかれぇい!」
「おう、胡蝶が先に来たか」
「何お前、声、ガラッガラッやん」
「あぁ、うん、なんか喉壊れた」
先に店の中にいたのはクッキー先生と大海だった。
先に飲み物頼んでたみたいだ。
えっ、あっ、私はハイボール頼んでよ。
「おい、なんかシオンの奴、住宅街に降ろされたらしい」
「大丈夫かよ」
「目的地から15分くらい離れてるから遅刻するって」
「なんでだよ」
「あと、テラと百目鬼も遅れるらしい。遅れる余とか言ってる」
「分かりきってた遅刻組」
なんやかんやで、遅れながら全員集合した。
こっちはもう二杯目である。
空腹にハイボールは染みる。
「久しぶり、えっ、なんか久しぶりじゃない」
「まぁ、オフは久しぶりか」
「声ヤバ!えぇ、どういうこと!アハハ、ガラガラすぎ!」
「すいませーん、遅れました〜、ちょ聞いて、タクシー別んとこ降ろしてんだけど」
「ま、待って!先、行かないで!あっ、あっ、遅れました」
席順は先に来てた2人が奥、私と百目鬼が真ん中、後から2人で来たガキ2人が手前に座る感じだ。
私の隣は、陸テラとクッキー。
向かいの百目鬼の隣は、黄金と大海だ。
「何頼む?取り敢えず韓国海苔10人前でいいか」
「お前、いつも海苔頼みすぎじゃね。えっ、タンじゃね?」
「タンでしょ、後は?カルビ行こう、あっ、ロースもいいな」
「私もタン」
「えっ、牛タン食べたーい」
「なんだお前ら、タンしか頼まねぇじゃん」
待ちきれなくて注文パッドを操作する。
このご時世とはいえ、オンライン注文出来るパッドを置くとは……スマホ注文じゃないってことは金のある店だな。
ってか、牛タンしか頼まねぇな。
「飲み物来たよー、はい!オレンジジュースの人、ウーロン茶は?」
「あっ、日本酒私、私、はいありがとう」
「はえーよ、さっきマッコリ飲んでたじゃん」
「肉は勿論、私が焼く」
「いや、お前は食べるだけにしろ。いつも半ナマで下手くそだから」
「はぁ!?肉は生でもレアだから行けんだよ」
「鶏と豚はダメだろ。冷たいとか言ってても食うやん、お前」
なんだかんだでトングは没収されて、焼かれた肉を入れてもらったら食べる感じになった。
自分で焼きたかったのに……韓国海苔美味っ!
「お前ら海苔ばっか食ってないで肉食えよ」
「言われてんぞ、テラ」
「あてぃし!?」
「シオン、お前肉とか焼けんの?」
「やーけーまーすー!」