結局、途中でシオンは肉を焼くのをやめた。
なんでか流れで大海昴の家に行くことになって、宅飲み。
そんな流れの最中に、思い出したように言われたのがきっかけだった。
「あのさ、今日ごはんとのコラボあんだけど出る?」
「えー!いいじゃん、出よ出よ!」
あの、先方も聞いてない仕様変更はよろしくないんじゃ、みんな乗り気だな!
ということで、急遽全員でコラボすることになった。
配信画面には、スーツ姿の猫又ごはんさんの姿。
ゴハン君の姿がある。
今日はごはんさんが、ホストに扮して凸待ちをする企画ということで、呼ばれたら色々注文して売上を出そうとする。
要はホストクラブ風の寸劇だ。
『もしもし、ゴハンくん』
『お、お兄さん?』
『お兄さんではないです。声をやられた大海昴ことエドテンです。今日は、友達を連れてきました……いい?』
『あっ、うん、いいよ』
『じゃあ、エドテンするね』
「エドテンって何のことか分かってねぇだろ」
PCから離れた場所にいた他のメンバーが、私に馬鹿と叩いてくる。
しー、じゃねぇよ。思わずツッコミ入れちゃったんだもん。
ごめんって、あっ、呼ばれてんぞ。
『ゴハンくぅ~ん、えぇ、好きぃ』
『ゴハン狂いちゃんの名前を教えてもらってもいいかな?』
『シオンは……シオンかな?』
『シオンちゃんって言うのかぁ』
「やべぇだろ、アイツ地雷女臭い」
「ちょ、確かに、バカ、やめなって声入っちゃうでしょ」
やめろよ、お前こそと、裏で他のメンバーとわちゃわちゃしてる。
アドリブでようやるわ、おっ陸テラちゃんが行った。
『ゴハン〜、久しぶりぃ〜!』
『ちょっと、何よ、急に!あんた誰よ!』
『えっ、貴方誰ですか?あたしのゴハンに何か用ですか?』
『あたしのだけど、えっ思い込んでんじゃないの?帰りなよあんた』
『えっ、えっ、ちょっと待って、えっ、ねぇ、ゴハン?どういうこと?』
『け、ケンカしないで〜、ちょっとエドテンちゃん』
「アイツら修羅場で草」
「行った、呼ばれてるぞ昴、行った行った」
名前を呼ばれて昴がマイクの所に向かっていく。
二人でマイクを取り合ってたガキどもが、修羅場をやりながらマイクから遠ざけられた。
いい感じに声も遠くなって退出させられた感ある。
「えっ、どうする?私達もやる?」
「えっ、天丼?最初は普通にやったほうが良いんじゃない」
「ゴハンくんごめんね、次はマナーのいい客を連れてくるから、大人のお姉さん達」
作戦会議のあと、百目鬼とクッキー先生が声を作って行ってくる。
あっ、ガキチームが戻ってきた。
「どうよ、爪痕残してきたわ」
「修羅場は草だわ」
「シオンちゃん、地雷すぎぃ」
配信画面の方では裏とは関係なく、お姉さんとして何か百目鬼がいつもと違うキャラをやっていた。
『えっ、お姉さんすぎて名前分かんないな』
『どっち?どっちの話?』
『えっと、クッキー先生じゃない方かな』
『あはぁ(笑)』
『ちょ、ちょっとひどーい……ど、百目鬼菖蒲って言います』
「照れてて草」
「さっきのクッキー先生の嫌な女すぎぃ」
「マウント取る女の笑いだった」
3人でスマホの配信を見ながら、同期の姿を見守る。
ちょっと声作るの恥ずかしがってて草、後で弄るしかない。
『ねぇ、ゴハン、菖蒲ばかりで私のことは?忘れてない?』
『クッキーさんはいつも美しいから、ごめんね言わなくても良いかなって』
『もぉ~ゴハンったら私のことよく分かってる』
『いや私よ、私の方が!アハハ、私の方が綺麗に決まってるわよ、ウェヘヘ』
『あれ、エドテンちゃん!エドテンちゃん!また修羅場が!』
『ちょ、フフフ、じゃあシャンパン勝負しましょう!』
『くっ、ゴハンくん私、私達シャンパン入れるから!』
「ヤバい!アイツら天丼しやがった」
「行くわよ!ねぇ、ゴハン!ゴハン!」
「静かにしなさい!静かにしなさい!収拾つかないでしょ!」
私以外の4人が突撃して、画面の向こうが騒がしくなった。
おいおい、この後、どういうキャラで入ればええねん。
振って、大海の方で綺麗なお姉さんとか可愛い女の子とか、キャラ振ってくれ!
『大丈夫。次の子は夜遊びとかしたことないから、ガチお嬢様だから』
おいぃぃぃ!何だそのフリは!せめて、成金お嬢様にしろや!
清楚でいけっていうのか!キャラじゃねぇだろ!
『お嬢様〜』
『ご、ごきげんよう〜』
コメント:ごきげんようwww
コメント:エセお嬢様来た
コメント:お前もおったんかい
『ちょっと、アンタ誰よ!』
『後から来てしゃしゃり出ないでよ!』
『ゴハン〜!ゴハン〜!』
『ちょっと、あたしのゴハンから離れなさいよ』
コメント:あ~もう滅茶苦茶だよ
コメント:お嬢様のキャラが消えた
コメント:深窓の令嬢が来る世界じゃねぇんだよ!
『エドテン、庶民がうるさいですわよ』
『ほら、静かにしなさい。お嬢様のターンでしょうが』
『差別、差別よ!金持ちだからって横暴だわ』
『そーだそーだ』
コメント:言論統制
コメント:これがお前達のやり方かぁ!
コメント:札束で殴ってきそう
『はじめましてお嬢様、お名前を聞いてもいいかな』
『よろしくってよ』
『何よあの女、ポッと出のくせに』
『何か頼んだほうが良いんですわよね、じゃあこのシャンパンタワーで』
コメント:初手100万円
コメント:ポンッ
コメント:これはお嬢様ムーブ
『ちょ、私5本入れるわよ!』
『だったら私は6本よ!』
『ちょ、ちょっと待ってね。シオンとテラはどうする?』
『シャ……ハァハァ、い、いくら持ってる?』
『お、おにぎり2個分くらい』
『大丈夫、エドテンする?』
コメント:エドテンするって何やねん
コメント:よくわかってないだろ
コメント:エドテン金融!?
『何個にする?何個開ける?』
『な、何個……ゴハンが望むなら何個でも』
『う、うん、お金借りるよ……借りてくるね……』
『庶民はシャンパンも買えないなんて大変ねー』
『じゃあ、エドテンちゃんの分も含めて6個ね』
コメント:煽りおる
コメント:金借りてまでやる限界女なの草
コメント:明日から頑張っても600万は作れんやろ
『それではシャンパンコール行きます。世界で!一番!かわいい!二期生!世界で!一番!かわいい!二期生!』
『…………』
全員が、職業病で音声が被んないように黙っていた。
ただ改めて配信画面を見ると、何だか滑ったような空気になっている。
盛り上がってないシャンパンコールだ、ヤバい。
『いや、足りない足りない、ゴハン、まだ行けるでしょ』
『シャンパン!入りましたぁー!』
『入りましたぁー!いぇぇぇい!』
『ウェーイ!』
『フゥゥゥゥ!』
コメント:さっきとの落差で草
コメント:合いの手(笑)
コメント:イェイイェイじゃないんよ
『ありがとう、ございましたー』
『じゃあごめんね。またね、お疲れ!』
デロン、とマイクがオフになった音が聞こえた。
「やぁ~、みんなお疲れー、クッキー先、ナイスフォロー」
「そうよ、ヤバってなったわ」
「ごきげんよう(笑)」
「くっ……百目鬼菖蒲です、ってテレ気味に言ってたじゃん」
「ハァァ!?照れてないが!」
「えー、照れてたよ菖蒲ちゃん照れてたって!」
「はい、2対1です。照れてましたー!」
みんなで防音室から出て、大海の家のリビングで飲み会を再開する。
今までの活動を思い返して、そんな事もあったねぇと、私の場合は主に炎上だけど。