同期が活動休止した。
同期の陸テラちゃんだ。
いつだったか……衛ちゃんのライブ前、2025年の2月の武道館ライブ前に辞めていたのは覚えている。
覚えてはいたが、活動休止がこんな時期にあったなんて覚えてなかった。
最近、赤井ラブ先輩が復帰したばかりだというのに悲しい。
何なら、生まれた時に作った未来の事が書かれたノートにも、そんなことは書いてなかった。
それも仕方ないのかもしれない。
初めての試みでコラボしまくって分かった事だが、この人の配信は見てもこの人は知ってるけど見てはないというのは普通にあるみたいだ。
私の思い上がりが酷かった。
私のことを知ってはいても、別に配信を見てるという訳では無い潜在的な顧客が想定よりも多かったのだ。
かつての私もそんな一人、だから活動休止について知らなかった……あるいは、覚えるに値しないほど無関心だったのかもしれない。
「どう、どんな感じ?」
『喉痛過ぎてしんどい……』
まぁ、それは前世の話。
今世は普通に友達……いや、年齢も違うし向こうがどう思ってるか分かんないから同僚か。
同僚というか、同期のよしみで関わりがあるし、普通に連絡は取れたりしていた。
「最近仕事はどう?仕事量多かったから体調崩したの?ご飯食べてる?」
『お母さんじゃん!ゲホッゲホッ……うぇ……』
「うわぁ、大丈夫かよ」
様々な憶測がネットに飛び交っているが、概ねはアンチのせいではないかというのがファンの中での共通認識だ。
自分のコラボの準備とかで知らんかったけど、何やらバーペックスというゲームでランクを上げる企画をやってたらしい。
私には向いてなくて炎上した、VTuber業界のゴルフみたいな位置づけのゲームだ。
やってる人は多いし、後輩には凄いランクの獅子王ぼたんさんとかいるし、疲れたのかもしれない。
少なくともLOLでランクマなんて潜った日には、よく分かんないならコメントすんなとかリスナーに私なら言う自信がある。
で、どんな事かというとバーペックスの配信ばかりでつまらないという企画への否定的な意見。
たまにやらないと、今日はバーペックスやらないの?ランク上げはしなくていいの?と催促する意見。
あと少しという所で、配信を観ることで位置や状況を把握した上でプレイするゴースティングをしているプレイヤーに邪魔されるという妨害行為。
あと、メンタルのせいでヤバい説。
「取り敢えず、色々宅配で送ったからゆっくり休むんだよ」
『うん……ありがとう……ちょうどいい機会だからいっぱい休む』
「まぁ、そうだね」
『6月までに復帰出来るかな……このままで平気かな……』
「出来るでしょ、まだ辞める時期でもないし大丈夫だよ。普通に来月には復帰できるよ」
『あっ……そう、だね。復帰……出来るかぁ、そうだよねぇ……』
お互いに何やら沈黙の時間が発生する。
あれ、なんか、変なこと言ったかな?今のはうんうん分かるよ不安だよねとか言うとこだった?
お、女の子との会話分かんねぇ!
『胡蝶ちゃんも、無理しないでね』
「無理なんかしてないよ、まだ大丈夫」
『そっか……胡蝶ちゃんはいつもそうだよね……』
「えっ、何が?……あれ、あれか、色々言われてる奴か、まぁ、間違っちゃいないから大丈夫!メンタル強いし!」
『まぁ、大丈夫なら良かった……切るね……色々ありがとね』
「あっ、うん……また何かあったら」
通話が終わる。
黒い画面に反射した自分の顔が、映る。
その顔は困惑している情けない面だった。
心配かけてしまったんだろう。
自己分析してみると、客観的に見ると、同じような状況なんだろうか。
最近、私もコラボ企画に関してつまらないとかそういう意見はあるからだ。
同じように、この人とはコラボしないのとか?この人とコラボしたほうがいいよとかいう、アンチとも言えない要望的なファンの意見。
最近は昔と違って面白くない、前みたいに自枠でやって欲しいという、ソロ配信が好きだったのになという古参の意見もある。
古参は意外と堪えたな、名前とかアイコンから、いつもいる人や昔からいる人だって分かってしまうからだ。
それにコメントもどんなのしてたかも覚えているし、私は蔑ろにしたつもりはないけど寂しい思いをさせたんだろう。
そんな事はないよと言って、ネットに書いたとして、配信やSNSなど伝える術が限られているのなら、果たして私の言葉は貴方に届くのだろうか、なんて考えてしまう。
とはいえ自分で決めたことだし、喜んでやってくれる相手に嫌々コラボなんて失礼だからやるしかない。
コラボするメリットはあるのだ。
デメリットとして、私の実力が他の人と比較されて浮き彫りになってしまうことくらいか。
それでも、今日も配信するのだった。
今日は後輩とゲームコラボ、UNOの予定であったが話し合いの末に関係値が浅い間は騒ぎやすいゲームの方が良くないかということで、爆弾マンというゲームに決定した。
画面に映るのは、よく喋る白夜トワ、姫川ルナちゃん、天音ソナタさんの4期生の後輩達だ。
『あっ、あっー!聞こえますかー!音量大丈夫そ?』
「イエーイ……声小さい?どう?イエーイ!……ハイ」
『ルナなのら〜』
『えっ、もう始まってる!?』
コメント:開幕雑で草
コメント:お邪魔しますなのら〜
コメント:こんこちょ〜
「はーい!今日はUNOの予定でしたが、映えないかなと思って爆弾マンにしました」
『ハハッ!メタ過ぎワロタ』
『えぇ、ルナたんUNOでもいいのら』
「UNOとか、1人でしかやったことない……」
『えっ……あっ、一人でやってたんかーい!』
コメント:後輩を困らせるな
コメント:1人でUNO?お前は何を言ってるんだ?
コメント:紙の方でないと思いたい
「はい、ソナタさんががんばってツッコんでくれました。それではやりますよー」
『トワ初めてやるけど出来るかな……』
『が、頑張ってとか言わないでくれますかね?』
『あっ、ルナこれがいいのら』
コメント:今日は喋ってるな
コメント:チーム戦でやった方がいいと思うな
コメント:へー、懐かしい
『みんなやったことある感じ?』
「昔やったな……ハドンソはもう合併されたんだっけ?」
『ルナたん始めてなのら〜』
コメント:バイハドンソ!コォーシュポーン!
コメント:ファミコン時代やんけ
コメント:サバイバルは実力差出るからやめなよ
『ファミ……なにそれ?』
「あっ……ッスー」
『ルナ知ってるのだ、レトロゲームらのらね』
「レトロゲームかぁ……」
コメント:胡蝶、分かるよ
コメント:ソナタ喋ってなくね?つまんな
コメント:グダってない?マダー
「コメントも待ちかねてるのでやりますよ、おうあくしろよ」
『あく……何?』
画面が切り替わり四隅にミニマムなキャラが配置された。
爆弾マン、それは爆弾を用いてステージ上のブロックを壊し、最終的に縦横に伸びる爆風で相手や敵モブを倒すゲーム。
一定のエリアで爆風で吹き飛ばす、シンプルながらプレイヤーの操作に依存する大人気ゲームだ。
「このゲームには必勝法がある」
『えっ!?自爆ですよ!』
私のキャラの目の前に爆弾が置かれており、それが爆発する。
端から見たら自殺にしか見えないだろう。
それは私のキャラが初期スタートで光っていなければな!
『あれ?』
ボンボンボン!と爆発しながら私の自キャラがブロックを破壊しつつ、他のプレイヤーキャラへと近付いていく。
『な、なんで死んでないの!?』
「ファミコン時代からある裏技だ!」
コメント:えっ、なんで死なないの?
コメント:リスキル対策の無敵時間で自爆してやがる
コメント:懐かしい
そう、爆弾マンは開始直後、無敵時間が用意されている。
光が点滅している間、爆死しない仕様なのだ。
それを逆手に取り、爆弾を爆発させ、爆風が出ている間に新しい爆弾を誘爆させると、数秒間だけ前後に爆風を出しながら移動できるのだ。
「勝ったな!……あっ」
『胡蝶さんが死んだ!』
『この人でなしなのら〜』
コメント:策士策に溺れる
コメント:知ってた
コメント:ソナタも会話に混ぜろよ
初手から爆死したが、この後めちゃくちゃ爆弾マンで遊んだ。
「ば、爆発オチなんてサイテー!」