流石の2度目の炎上、配信すればするほど荒れるということで運営ストップが入り、一身上の都合によりということで3ヶ月程お休みを頂いた。
世界経済は大暴落の不景気、世の中はボーナスが減ったとかそういうのばっかりだ。
損出しという、わざとマイナスを確定させることで一年間の総収入を減らし、そこから持ってかれる何割かを減らす、まぁ要するに所得税を節税する方法を行った。
で、不景気なので半導体やいい感じのとこに再投資。
最近、ワークマンが工場用品だけじゃなくてアウトドアに進出したらしいのでめちゃくちゃ買う。
なんかニュースになってた記憶があるからだ、確かキャンパーがワークマン買ってた気がする。
「アーモンドアイありがとう、でも配信でやれたらなぁ」
単勝を100万で買うだけで、40万、30万とコンスタンスに臨時収入が入ってくる。
私のTwitterアーモンドアイ全力の購入と購入結果しかねぇよ。
なんか炎上の裏で競馬民からバズってるな。
「タピオカ食べたけどカロリーが気になるなう」
すぐさまファンから元気出してとリプされて。
アンチからデブだろとリプされる。
アンチには令和早々に絡んでくるな開示請求するぞと返信。
えっ!なう、って今は使わないってマ?
「配信は上手くいかんのに競馬は上手く行くのなんなんだよ」
マネちゃんにも勧められたし、都内から30分ばかしかけて実家に帰ることにした。
実家の最寄り駅はアイマスの聖地だった。
町役場とかもアニメのシーンになってて、チラホラポスターがある。
変わんねぇ、数年ぶりだけど居酒屋出来たくらいか。
3月の少し肌寒い春に、私はジーンズと白シャツに黒い革ジャン片手に駅に立っていた。
「おーい、迎えきたぞ」
「ご苦労」
弟が駅まで軽自動車で迎えに来てくれた。
お前は世界線が変わっても変わらんな。
今の私が24だから、22か?
嘘やん、私も弟もガキやんけ。
「珍しいじゃん、デイトレ上手く行ってんの」
「あぁ、まぁ、うん」
「不景気なのにすげーなー」
当然の如く、親にも家族にも内緒にしている。
いつかはバレるかもだけど、今じゃないんや。
っていうか親に配信見られるとか死にたくなる。
自分の実家は相変わらずだった。
まぁ、それもそうか数年でなんか変わることなんかねぇもんな。
「いや、テレビが壁についてる」
そんなこともなかった。
なんかテレビでネトフリとか見れるようになってるし、何なら壁についてた。
あー、弟がネット対応のテレビとかWi-Fi導入したのこの時期かぁ……なんか早い気もするけど。
「姉ちゃんが言ってたS&P500ってのがめっちゃ上がったから売った」
「あーね」
S&P500とは、まぁ言うなればアメリカ版の日経平均みたいな奴だ。
この頃の投資信託の商品を持ってると数年後に増えまくってすごいことになるのだが、それを弟は買ったらしい。
興味なかったのに、バタフライエフェクトってやつか。
まぁ、投資信託だからそんな利確とかすぐにするもんじゃねぇけどな。
「おかえり」
「おう、これお土産」
「山崎に知多、マッカランもある!」
「それって有名なの?」
「お父さんの飲んでる横のそれの数倍」
「あら高い酒買って来たのね、もう全部飲んじゃうからいいのに」
大喜びの父と小言を言いながらも父より飲む母の言葉に実家に帰ってきた感をすごく感じる。
おっと、実家に帰ってきたってツイート……いや、仕事の事は忘れるか。
「いつまでいるつもりなの?」
「うーん、まぁ、スマホあれば仕事出来るからね」
「そう、ご飯の準備とかあるから帰るときは言いなさいね。作り過ぎたら困るもの」
「お母さんって、いつも辛辣だよね」
「アンタ、昔からしっかりしてるし心配いらないでしょ」
まぁ、まぁまぁ、30代の記憶ありましたからね。
リアルにコナン君やってりゃ、言うほど手は掛かってない。
大学行ったのに働いてないのはチクチク言われるけど、金入れて黙らしたしな。
「アンタ!タバコ吸うならベランダ行きなさい!」
「いーじゃん、持ち家だし換気扇の下だし」
「お父さん!アンタに似たんだからね」
「いや、自分だって吸うのに俺のせいにすんなよ」
「何!文句あるの!人が家事してる間、韓ドラばっか見て」
「関係ないだろ、悪かった!悪かったよ、もう」
うーん、性別が変わっても親のパワーバランスが変わってないのを見ると些細な違いに感じてくるぜ。
性別変わっても、子供の扱いは変わんないもんなのかな。
ベランダで煙草を吸って、空を見上げる。
大人になって空なんて久しぶりに見たな、男の時はサウナの後によく見てたけど女の自分って筋トレ以外で外出ないしな。
「海行ってくるわ」
「今の時期は山よ、菜の花きれいなのよ」
「あー、じゃあ山にするかな」
母親の勧めにしたがって、なんとなしに散歩する。
部屋で携帯ばっか弄ってるより、なんか健全だな。
これがデジタルデトックスって奴なんかな?
「山の上でのタバコうめー」
なんていうか、空気が澄んでいて、一面の黄色い菜の花を見ながら、肺に入ってくる紫煙の香りの旨さよ。
「肉喰いてぇなぁ、あっ」
すぐ呼べば来る奴いるやん、土日だからすぐ出るだろうと電話する。
あれ、出ねぇや。つまんな。
「電話出ろっと……焼肉食いたいな」
地元に帰ってきたら、不思議な程に仕事の事とか抜けてきてる。
すぐなんか配信がみたいな思考になってたのにな。
山を降りて実家に戻ったら、風呂に入るように言われる。
うーん、この何もしなくていい感じ最高だな。
一人暮らしだと全部自分でやんなきゃだしな。
何が嬉しいのか、祝い事しか用意しないのに、夕食はすき焼きだった。
なんだかんだ、実家への帰宅は喜ばれてるのかなとか思ったり。
「またバスケ見てんのかよ」
「NBAが熱いんだよ」
「そんなもんかね」
「まぁ、興味ないとそんなもんだよな」
確かに解説聞いてと玉投げ合ってんなとしか思わない。
スポーツって見るよりやるほうが楽しいだろ。
「人がやってんの見て楽しいかね……」
「姉ちゃん昔見てたゲーム配信、あれもスポーツ観戦みたいなもんじゃん」
「あー、いや、まぁそうか」
「まぁ、あぁ言うのオタクしか見てねぇけどな」
うぐぅ……そのオタクなんですが。
弟が陽キャ過ぎて姉ちゃんには効く、その言葉は効く。
「買う前とか見たりするけどさ」
「えっ、何、お前推しとかいる感じ」
「イラストの推し文化あるよね、キモくて俺は無理だけど」
「キモくねぇだろ」
「いや、俺は俺だから。価値観の多様性を認めさせようとするのも良くないでしょ」
それは、そうなんだろうか。
うーん、まぁ確かにキモいと思う奴はキモいのか。
すき焼き食いながら弟とバスケ見てたら、ふとした瞬間に携帯に通知が来てたことに気付く。
おっ、昼間に連絡したやっくんから不在着信あったわ。
タバコ片手にベランダから電話を掛けると数秒で出てくれた。
『もしもし』
『何、久しぶりじゃん』
『今何してんの、飯いかね?実家帰ってきた」
『えー、実家出てるよ俺』
言われて、あーそうだったと思い出す。
30分掛けて、来てもらうのも悪いしな。
あと、もう肉とかいらねぇし。
行き当たりばったりだな。
仕事とかは計画立てがちなのにな。
『アイドルやめたん?前言ってたじゃん』
『あー、いや、まぁ』
『24だし良いんじゃね、無理でしょ』
『えぇ……お前までそういうこと言うのかよ』
お前は昔から理解者だから、そういうことは言わねぇと思ってたんだけどな。
なんか、がっかりだよ。
『胡蝶がとかじゃなくて、普通にアイドルは無理。一握りしかなれない』
『あっそ……』
『でも、だからアイドルなんだよ。最初から上手く行ってる奴なんていないんだ』
『お、おう』
『ずっと応援してたのにさ!去年解散しちゃったよ!俺は、下積みから応援してたのに!トラトラタイガーってコールも練習してさ!聞いてくれよ!』
『あー、お前、ハマってたな。あの金髪に変えた子推してたなぁ』
思い出してきた、そうだ飲み行ったわ。
髪の色変えて激怒してたのに、次の飲み会で金髪似合ってるとか言ってたわ。
あーだこーだ言ってたのにすぐ撤回してたわ。
『まぁ、実家帰ってるなら上手く行ってないんだと思うけどさ、地下アイドルなんて続かねぇって』
『地下アイドルじゃねぇよ』
『でもよ、頑張ってる姿はファンは見てるんだ。第二第三の俺を生み出さないでやってくれ』
『えぇ……結局そこかよ……』
見てくれてるファンか。
アンチばっか気にしてたな。
たまには良いこと言う、キモいけど。
『やっくん』
『何?あっ、今から行こうか?焼肉好きだろ10時でもやってんとこ知ってるけど』
『キモい、キモい通り越して気持ち悪い。推すのはいいけど、あーしたほうがとか願望の押しつけは卒業しよ』
『あっ、うん、なんかごめん』
『でも、ありがとう。ファンは大事だな』