胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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クリスマスチキンは冷めて加湿器に水はない

12月になった。

最近デビューした新人は1ヶ月間はキャラ作りということでコラボせず独力で配信を頑張っている。

なお、それにより好き好きというガチ恋勢派閥と頑張ってて偉いと甘やかす派閥、最後に草しか流れない派閥が出来てるらしい。

 

というか、ラプラス・ダークちゃんが吾輩のとこだけ草しか流れないの可笑しいだろって言ってた。

同期のASMRで悶えたりしてるからネタキャラ扱いされてるんだよなぁ。

とはいえ、1カ月経ったので今は同期とも先輩ともコラボ出来るようになったみたいだ。

 

そう、コラボである。

私の方も、ちょっとコラボとかしようと思ってたりする。

正直、何もしない方がそれはそれで良いのかもしれない。

本人が失敗談として、その後にネタにしてたりしたからだ。

 

時期的にはクリスマス前、スカイツリーでコラボとか秋葉原にクリスマスツリーを置こうと思うなんて企画の話が聞こえてきたり、まぁVTuberで言うところの稼ぎ時である。

こういうイベントほどスパチャが飛ぶからね。

 

「……あっ」

『おっ、お……』

「お疲れ様です……い、今大丈夫ですか?」

『……はい』

 

ということで、私は自分よりも優秀な後輩に連絡を取っていた。

っていうか、私が75万人なのに対して向こうは180万人。

シンプルに倍以上もファンがいる後輩である。

うっ……新人にすら50万人と追いつかれかけてる、最近の後輩怖い。

 

『えっと……あの……』

「その……送ったメールとか読んで貰えましたか?」

『あっ、はい』

 

その後輩とは、我らがフォローライブで現在トップの登録者を持っているバニーぴょこらちゃんである。

ちなみに、配信者としては先輩にあたるし、こんな風に不思議な体験で過去に逆行していなければ話すことも出来ないVTuberの上澄みも上澄みである。

えっ、海外の方では360万人?日本国内ということで、バエル・グラトニーことグラちゃんは別格だから。

 

人見知りする子だから、先に文面に起こして送り付けるという完璧な作戦。

どうよ、この気遣い。完璧だ、このコラボ大成功だ。

 

「クリスマス、コ、コラボしましょう!」

『…………』

「し、しませんか?」

『…………』

「あの……して貰えないでしょうか」

『…………』

 

答えは、沈黙!

おかしいな、マイクミュートになってますよ。

へ、返事をしてくれないと、気まずいんだが。

 

『そ、その〜気持ちは嬉しいんですけど』

「あっ、これ、断られる奴だ」

『いや、あっ、いや、まぁ、あの……』

「何がダメですか、直せるとこは直しますから」

『ダメ……とかじゃ、えっと……あの、ほ、ほら、運動会以来絡みないですし、リスナーさんも困惑といいますか』

 

か、関係値かぁ……確かに、ダメかもしれない。

でも、私の知ってる未来ではぴょこらちゃんは体調不良でクリスマス配信を休んでしまうのだ。

それを待ち望んでる一部のファンが、チキンを用意していたのに配信がなかったことにショックを受けて、チキン冷めちゃったというワードを残してファンを辞める。

後に、冷めチキ事件と言うのがあるのである。

 

『あの、どうして急にコラボとか誘ってきたんですか』

「えっ、あっ、いやぁ……し、したいなぁって」

『それって、私の方が登録者が多いからですか?別に、それなら私じゃなくても良いかなって』

「ち、違うよ。ぴょこらちゃんだからしたいんだけど……あぁ、うん、でもそう見えるよね」

 

い、言えない。

炎上しそうだから今まで絡みなかったのにコラボしたいとか言いましたとか説明できない。

それに何か今まで仲良かったならまだしも急にだし、言うなれば学年の違う先輩が急にやってきて今度ご飯行こうぜみたいなレベルだ。

意味分からんな、自分のクラスの友達と遊んでる感じだったのに急に先輩来るんだもん。

会社なら別部署の先輩が遊ぼうって言ってくるようなもんだ、せめて絡みとかないと……VTuberって配信しない限り絡みないし、個別のコラボするまでに全体のコラボで仲良くならんとダメだ。

あっ、全体系に基本的に参加してない私、詰んでる。

 

『じゃあ、あの、なんで急に……ゲームとかなら分かりますけど、あの、雑談とか……その、胡蝶先輩がじゃなくても、ハードルが高い……って……感じというか……その……』

「あっ……あーね、うん」

『な、なんかある感じですか?相談とか、う、上手くできるか分からないけど乗りますよ』

 

き、気まずい。

後輩にめっちゃ気を使われてるのを感じる。

しかも、お互い配信と裏だとキャラが違うタイプだから会話も行き詰まってる。

間に誰か入れるべきだった。

 

『あれ……あの、大丈夫ですか?……あれ、ミュートになってるのかな』

「…………」

 

こ、ここから挽回できる方法ってないですかね。

なんか数字を気にして擦り寄ってきた先輩みたいなムーブになってんだけど。

考えろ、なんか急にコラボしたいような理由。

 

「そ、その……」

『……はい』

「ぴょこちゃん可愛いなって、ご飯とか苦手なのは分かるけど仲良くなれたら行けるかなって……な、なーんちゃって」

『…………』

「あっ、通話切れた!待って、ごめんごめん誤解なんだよ!距離空いちゃったよ、もー!」

 

距離詰めたら逃げてくタイプだった。

ちなみに、再度の通話にはすぐ出てくれた。

びっくりさせちゃったね、ごめんね。

 

 

 

私は失念していたのだ。

後輩とコラボするために、下ばかりみていたから、私は上である先輩の事を忘れていたのだ。

それは、乾燥の強くなってきた12月の配信での事だった。

 

『あとは、なんか質問ある?』

 

コメント:最近案件やってる?

コメント:ローソンコラボ出ないの?

コメント:加湿器に水入れた?

 

『加湿器に水入れた?……あっ、えっ、最近だっけ?』

 

コメント:もちちw

コメント:切り抜きのやつだ

コメント:加湿器に水入れてない奴なんて

 

そう、それは、我らが先輩さくらもちこと、もちち先輩の加湿器事件の事である。

加湿器事件とは、最近乾燥するのは何でだろうに、水を入れ忘れたんじゃないかとコメントがあり、そもそも加湿器に水を入れるのかと言うことに気付き、公式メーカーさんからウチの加湿器は水を入れなきゃ加湿できません、魔法使いじゃないんだからとツッコまれた事件である。

 

ちなみに、配信後、すぐにネットニュースになっていた。

そのためか、最近の配信では色んな人が加湿器に水入れた?と聞かれてたりする。

……と記憶しているが、最近だったかぁー!すっかり忘れてた。

 

『加湿器ね、入れてないよ面倒だから加湿してない』

 

コメント:ガサツな……

コメント:すぐ水なくなるから面倒だよなぁ

コメント:もっと加湿してもろて

 

『風呂行け、風呂。風呂は湿度100%だぞ。もちち先輩も、これをきっかけに加湿器の仕事とか来るかもしれんじゃん』

 

コメント:なんでだよ(笑)

コメント:公式反応してたしワンチャンありそう

コメント:お前が言うと本当にありそう

 

『あとは……クリスマスとか正月はどうするんですか?実家帰るから配信は年末から年始までないよ。男とデート?いや、ないない。あったら稼ぎ時のクリスマスは配信して、クリスマス以外にデートだろ』

 

コメント:うわぁ、生々しいのやめろ

コメント:年齢的に彼氏いない方が問題だろ

コメント:クリスマスも正月も配信しろ。もっと働け

 

『やってるやってる、こないだも案件で外出てたからマネージャーと車乗って出てたわ。近日公開するよ』

 

コメント:VOLVOだろ。ローン組めたんだな

コメント:もっと親の顔見てもろて

コメント:正月は配信なしか

 

『クリスマスも正月も配信たくさんあるから良いじゃん。君達だって、クリスマスはデートするし、正月は友達と初詣行くんでしょ……まっ、私はしないんですけどね』

 

コメント:彼女いるやつがこんなとこいねぇよ

コメント:正月からLOLやってないで初詣行け

コメント:友達とか俺もいねぇわ

 

『アンタ達寂しい奴らね……おっ喧嘩か?久しぶりにキレちまったよ、クリスマスはコマンドーを見よう、何だこのコメント欄……みんなピキピキし過ぎだろ、わーごめんって、正論パンチ過ぎたわ』

 

 

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