胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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2021年締めくくり

失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。

なんて感じで、最近見たアニメみたいに頭を抱える今日、この頃。

関係値が足りないからコラボは出来ず、コラボが出来ない理由として体調不良を説明したり、場を一人で回してヘイトを集中させたりとか、なんか色々考えてたけど、そもそも不審すぎて成立しなかった。

 

同期が新曲を出してたり、自分もまたシレッとオリジナル曲を出してみたり、コラボ商品の完全栄養食のラーメンとか出したりした。

もちろん、ファンは大盛り上がりで新曲スゴイとかコラボ商品買ったよとか。

 

そんな報告はネットを開けば見れるのだけど、でもチャンネル登録者数は増えてはいない。

自分から粗探しするように探してみれば、ガチャガチャうるさいとか、思ったより美味しくなかったとか、否定的な意見も聞こえてくる。

 

「なんだかなぁ……」

 

これを一部と見るべきか、みんなが言ってるなと見るべきか。

結局は自分の受け取り方次第なんだろう。

一年の締めくくりに、何を考えてるんだろうか。

 

 

 

2019年から続く、年末特番。

その、2021年から2022年の配信が行われる時期、年末になった。

VTuber企業、その各社が年末に行う長時間配信である。

 

テレビよりスマホで動画ばかり見ているのは若者だけ、という風潮は過去の物となった。

コロナで企業は自粛し、珍妙なCMに差し替え、ぽぽぽーんじゃねぇようるせぇよなんて、炎上もしたりした。

2020年を皮切りに、インターネットに繋がらない、もしくは繋げるのが面倒な設定が付けるだけで出来るUSBやら、そもそもテレビに無線設備が内蔵されたスマートテレビなどの普及もあり、テレビよりインターネットで配信や動画を観るのが当たり前になった。

 

何……知りたいことがある?検索しろ!この世の大体は動画か配信で見れるようになった!その言葉は、興味のないものも流れてるテレビより、見たい物しかないけど好きなものが見れるインターネットに人々を駆り立てた。

世はまさに、動画共有プラットフォームやサブスク配信時代!

 

でもって色々厳しいコンプラばかりのテレビより、何でもありのこっちがいいよねとテレビ離れとインターネット配信視聴層の増加。

そこに噛み合ったVTuberという動画配信者は、年末という最も視聴の長いイベント期間にテレビから奪うように配信することで注目を集めたのだ。

 

「……ってことは分かってるけどね」

 

あのさぁ、ウチ、ワークライフバランスとかあるから休みたいんですけど。

ダメです、繁忙期なら企業は有給をキャンセル出来るんです。

権利が通用しない!いや、そもそも社員じゃないから無視しても良いんですけど、今後の付き合いとか考えると……ね。

 

まぁ、なんやかんや、そんな感じで、大人の事情で、付き合いで、今年は収録で済ませる事は出来なかった。

悲しい。

 

正月は家に帰れないんだと家族に言ったら、コロナとか伝染るとマズイから今年は全員帰ってくるなと言われ、そんな事もあったなと思い出す。

すごく悲しい。

 

仕方ないから運転手さんを呼んで、スタジオにやってきたら、事情知ってる社員やマネちゃん以外に、えっ、なんでお前が今回は居るのみたいな驚愕の反応をされた。

とっても悲しい。

 

とはいえ、スタジオでの配信である。

年末の配信は、コロナということもあり、あと配信技術やスタジオの広さという大人の事情から数名が参加している。

 

参加できない人は予め収録で、声だけの参加でリモートから年越しとかやる人もいる。

私も収録やリモートをしたかったのだが、今回くらいは頼むよと遠回しにお願いされてしまい、流石に断れなかった。

 

まず、どうして運営が年末特番をやるのかというと、他の企業勢がやってるのもあるけど、ファンの共有化と知名度の向上を狙っていたりする。

配信時間が長いということは見る機会が増え、人数が多いということは連続視聴する固定ファンの獲得に繋がりやすい、そして配信が長くなるということは偶に出る面白いシーンが切り抜きされやすく、面白いの打率が上がるメリットがある。

 

デメリットはしんどかったり、個性が埋もれると目立たなくなったり、比べられたり、プレイするゲームによっては批判されたり、まぁ、色々ある。

ただ、遅延を上手く使ったり収録を使ったりすることで全員でワイワイガヤガヤと仲良く配信してるように見えるのだ。

実際、何が収録で何が本当のリアルタイムかは分からなかったりする。

 

 

 

何が悲しくて、こんなクソ寒い年末に仕事しないといけないねん、と全身で表すかのようにモコモコと完全防護した格好でスタジオに来た。

全身真っ白、帽子、耳当て、マフラー、手袋、スカート、ブーツ、コート、殆ど露出していない。

ファッション性を捨てて、温かさ全振りである。

 

「…………」

「おー、久し振り……えぇ、ホッキョクグマ?」

「何だお前……久しぶりの同期にあって開口一番がそれですか?おっ、やんのか!シュッシュッ!」

「いや、暑いでしょ、それ!」

 

スタジオ入りして、パイプ椅子に座っている私。

遠巻きに新しい後輩ちゃんが見ているけど、此方から話しかける勇気はない。

奇しくも同じ構え、後輩も間合いを測りかねている。

 

そんな互いの緊迫する間合いの読み合いを無視して同期の百目鬼ちゃんが話しかけてきた。

パーソナルスペース近っ!安心感、良っ!っぱ、話慣れた同期ですわ。

 

「あやめ殿〜下山とは珍しい」

「ねぇ〜、下山やめーや。胡蝶ちゃんしか言ってないからね」

「えー、そんなことないと思うけど……トゥンカロンはいる?」

「なんて?」

 

トゥンカロンだよ。

マカロンを切って生クリームとかフルーツ詰め込んだカロリー爆弾、トゥンカロン!

SNS映えするから女子ウケいいと思って、よく分かんないけどウーバーで頼んだ差し入れだよ!

 

「えっ、いいんですかぁ?うお、おいし……」

「うんうん、お前が喜んで何よりだよ」

「今日って何やるんだろうねぇ〜」

「えぇ……」

 

事前にスケジュール送られてたやろ。

お前、マジか……読んでねぇの?

 

「抱負とかカルタとかやるって」

「あー、はいはいはい」

「どーちどっちとか言いそう、言わない?」

「何言ってんの?」

 

……うん、なんかごめん。

そんなこんなで、二人してトゥンカロンとか言う高カロリーのスイーツを食べていたら、先輩達も合流してきた。

 

「お疲れ様でーす。あぁ、胡蝶ちゃんじゃないですか、おひさー」

「あっ、お疲れ様です。こちら、良かったら」

「えー、いいの、おーい!もちさん、差し入れあるよ」

「ハルさん、よんだー?」

「胡蝶ちゃんから差し入れだってよ!おい、やべぇぞ!なんか高そう!」

「えっ、いいなぁー!もちちゃんも食べたいんですけーど」

 

やって来たのは黒井ハルカゼ先輩と桜もち先輩である。

今日の予定はスタジオでカルタ勝負ということで、ウチと百目鬼菖蒲チームが企画をやるのだ。

まぁ、その前に抱負とかを全員参加でやったりするんだけどね。

 

「ねぇ〜これ美味しいよね。あっ、ラプちゃん食べる?」

「あっ……ッス……」

「…………」

「…………は、はじめまして。ラプラス・ダークです。本日はよろしくお願いします。私のキャラ的に配信中は失礼な発言があったらすいません」

「あっ……はい……良かったら」

「あっ……頂戴します」

 

すごい頭下げてくる良い子だ。

ちっさい、若い、でもキャラと違って腰が低い。

逆になんであのキャラに……運営、謎だ。

いや、裏では丁寧な子はこれはこれでアリなのか。

 

ラプラス・ダークで活動している後輩に、差し入れを手渡しした。

どうよ、先輩してるだろ。

 

「えっ、気まずくて草。もっと喋んなよ」

「や、やめろよ。そんな事ねぇし」

「あっ、はい!そうっすね……」

 

ほら、後輩も言ってんだろ。

だから同期だからって事実を陳列すんじゃねぇよ!

なお、私が書いた来年の抱負は『もっとコラボを増やす』だった。

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