後日談。
というか、終わった直後の話。
スタジオ組というか、配信の環境的に近いのもあって借りてるスタジオに来てたメンバーとご飯に行くことになった。
メンバーは、もちちと衛ちゃん、ハルカゼ先輩と大海、あとトワちゃんの5人である。
ふむ、まぁ狭くなるけど詰めれば乗れるか。
「あ、あの……マジで100万貰えるの?もち、貰ったことにして返すよ……」
「えっ、何でですか?な、何か私、気に障ることしましたっけ……あの、炎上とかしそうじゃないですか」
「えっ、するのかな?いや、大金だし……お金は大事だし……何?何だよ、衛ちゃん……」
何だか呼び出される、もちち先輩。
あの、ねぇ、2人で何話してるの?
「おつかれ~、いやー面白かったね」
「あっ、お疲れ様です」
「ありがとうございます。貰った一万円は、この後の焼肉に使わせて貰います」
「いえいえ、来ていただけたので、出させてもらえたら」
「えぇ、でもこの中だと一番先輩だよ。ここは先輩の顔を立てさせろって……なんちゃって」
そんなそんな、ディナーショーとかキャバクラの同伴と思えば安いものだし、配信じゃなくて生で会えるのはなんていうか恐れ多いし、あのそれで、気安くされたりすると勘違いしそうになるというか。
「えぇー!そうなの!」
「馬鹿、声でかいって」
「おつかれ〜、何してんの?てかさぁ、店とか決まってんの?」
「お疲れ様です……」
ハルカゼ先輩と話していたら、最後の2人がやってくる。
スタッフさん達に挨拶しながら、着替えてきたのだ。
店は一応決まってる、よく行く焼肉屋が近くにあるからだ。
個室だし、防音だし、なんなら配信で喋って欲しい。
経費で落とせるようになるからね。
「胡蝶先輩……」
「はい」
「うわぁ、悔しい」
「ひゃあ!?あ、あの、トワちゃん……」
店のことを教えようとしたら、唐突にトワちゃんがタックルしてくる。
あの、身長差って今は変わらないし、なんなら165でちょっと小柄だし、というか女の子が抱き着くのは如何と、は、離れて……恥ずかしい!
「何してんだよ、早く行こうぜ」
「お、おま、お前さ!助けてよ!」
「何が?」
何がじゃねぇよ、引き離してよ。
今、抱き着かれてんの!
良くないよ、年頃の女の子が!ほら、ドキドキしちゃうでしょ!
何、ため息ついてんだよ。
そうだよ、引き離して、そうそう、よし。
「よし、行こうぜ」
「うぅ〜」
「ほら行くよトワ、先輩は照れ屋なんだから」
「まぁまぁ、もちも勝てるとは思ってなかったよ」
「何も考えてない、もちちに負けたの悔しい」
「何だと!もちだって考えてたよ!……たぶん」
まったく、心臓に悪いぜ。
女じゃなきゃ、捕まってた。
女子ってボディタッチ多すぎ、もっと距離感を大事にしようよ。
遅れながら、スタジオの外まで後から追い掛ける。
待っててくれたのか、外で談笑している様子が見れた。
こちらに気付いたのか、ハルカゼ先輩が手を振ってくる。
かわいい、とってもかわいい。
「遅いよー、もー、待ってたんだよ」
「すいません、お迎えを呼んでたので」
「えっ、お迎えって?」
あぁ、お迎えはと説明しようと思ったタイミングで、駐車場で待機していた運転手さんが自家用車のVOLVOを持ってくる。
ちょうどさっき電話したから急いで来てくれたのかもしれない。
「えっと……」
「お待たせしました……胡蝶様、差し出がましいですが広いとはいえ4人乗り仕様のため、全員乗るには少し手狭です。ここはタクシーを呼ぶのも一つの手かと」
「いや、詰めれば大丈夫かなって」
「……左様でございますか。失礼しました。それでは、ご乗車下さい」
まぁ、確かに座席4つだしね。
「よし、行こうぜ」
「私、助手席がいいな」
「いやいやいや、待て待て待て!」
呼び止められて、私と大海と陽街ちゃんが首を傾げる。
忘れ物でもしたんだろうか。
「えっ、何、えっ、お迎え?」
「あぁ、今日のシフトは田中さんです」
「いや、違うんだよ。市川、あっ、いや、市川さん。そうじゃないんだよなぁ……」
な、なんだろう。
あっ、あぁ、運転手に驚いたとかか。
そうだよね、お金持ちみたいでびっくりしますよね。
成金だもんな、私ってば。
「うっわぁ……胡蝶先輩ってガチお嬢様だったんだ」
「いや、育ち悪いよ。普通の家庭だから」
「ふ、普通……これが、普通なのか……」
「あっ、いや、今の状況は普通じゃないんだけど、えっと……お、おいで」
コクコクと小さく頷いて乗ってきてくれるトワちゃん。
あっ、でも、失敗した。
意外とスペースないかもしれない。
「あー、真ん中冷蔵庫あるもんな。トワ、お前上に座っとけよ」
「いやいやいや、じゃあ、タクシーで行くよ、私!」
「バカ。タクシー代勿体ないだろ、行ける行ける」
行け、行ける……っぽいけど!
なんで抵抗しないの、重くないですかじゃないよ。
帰りは、タクシー呼ぼうね。
「よし、ハルさん。来い!」
「いやいやいや、流石に私ともちさんも無理だって」
「うんうん!うんうん!」
「タクシーで行くから、トワも降りよっか」
「やっぱ無理があるよ、スバちゃん」
無理があると思うなら何で試した、言え。
そうか?行けると思うんだけどな、じゃねぇよ。
結局、3人3人で別れていくことにした。
「それでは、近くで待機してますので」
バタンと扉を閉めて最寄りの駐車場に停めに行った田中さんを見送る。
色々あってお腹すいた。
よく来る焼肉屋にやってきた。
御値段は掛かるが、殆ど土地代とかなんだろうなとか思ってたりする。
それぞれのメンバーが好きに肉を頼んでいく。
珍しい部位もあって、全部美味しい。
イチボとかトモサンカクとか、まだ脂っこいのが食える。
若さって素晴らしい。
席の座り位置は、酒を飲める組と飲まない組で自然と分かれていた。
そのため、私の隣は黒井先輩とトワちゃん。
喉のために飲まない衛ちゃん、酒が弱いもちち、飲めない昴が向かい側に座っている。
「でもさ、珍しいじゃんお前がコラボなんて」
「最近、チャンネル登録伸びないし、後なんか後輩から怖がられてる気がする」
「んっ……んっ……っぷはぁー!」
焼いたエリンギやズッキーニを後輩のお皿に入れてあげる。
あっ、秒で鉄板に戻ってきた。
「ほら、嫌われてる」
「食べにゃい!食べにゃーい!」
「いや、コイツは野菜嫌いなだけだから」
「むふふふ……んあ?」
それに、最近色々あって人と関わろうとか思ったしな。
あぁ、人と焼肉行くとか前世の後輩との飲み会を思いだす。
今世は女子会みたいで苦手だし、みんな距離感が近いからな。
「胡蝶先輩〜」
「あ、はい」
「あぁ、フカフカでいい匂いするんじゃ〜」
「香水つけてるからね、プラダの」
「うぃぃ〜、はぁぁ……」
うわぁ、後輩が酔ってる。
でもこれ、おじさんだったら女の子が抱き着くシチュエーションとかなかったんだろうな。
あの、熱いです……炭やってるから、離れようね。
「トワちゃん、お肉食べようね」
「もうお腹いっぱいです」
「えっ、えっ、まだ5皿しか」
「いや十分だろ、どんだけ食うんだよ」
「あれ?あっ、おとっととと……えへへ……」
女の子ってそんなに食べないで生きていけるんだろうか。
そういえば仕事の話はマネージャーとはしても、メンバーとはしたことなかったな。
「おい!胡蝶〜、お前なんだこの腹は!」
「ひゃあ!?」
「腹出して風邪引くだろ、女みたいな声出しやがって」
「や、やめ……女です……」
「あぁ!ハル先輩やめて下さる?出来上がってんじゃないすか」
「酔っぱらっぱっぱだ……うぇへへへ」
「ダメだこれ、いつの間に飲んでたんだ。あーもう、離れて」
セクハラだ!
これがセクハラって奴だ!
おっぱいとかお腹とか掴まれた!
チェンジ、チェンジ、トワちゃんチェンジ!
「たぶん、今のお前の姿見て怖がる後輩いないだろ」
「助けなさいよ!」
「あぁ~、ギャルが遠くに〜!やだぁ〜」
「えぇ……あの、お水、お水頂きましょうか」
「やー!ロックじゃなくてストレートがいいのー!」
何だかんだ、みんなで焼肉を楽しんだ。
ただ、次の時は露出の少ない格好をしよう。