本日は3Dとのことで、スタジオに来ていた。
今まで大したことなかった私という影響は、2018年から数えて4年を経て大きな物となった。
具体的には存在してなかったユニットや番組とか。
よくよく考えたら、よく話すし、たまに会うから仲良くしてるが、同期といえど画面の向こうにいたタレントさんなのだ。
友達……うん、多分友達、友達だと私は思ってるが、本来なら会うことすらできなかった存在なのである。
そんな人というか、そんな奴と、これから頻繁にコラボ配信するのだが、上手くいくかは前世を頼りに出来ないから未知数すぎる。
暗闇の荒野に放り出されたのである。
覚悟が、私には覚悟はないので無理だ。
どっちかって言うと、浮き沈みのある人生で浮き続けている。
何が起きるか一巡して知ってるから覚悟が出来てる状態だ。
破滅しそうだな、おい!
「おつかれ〜、悪い、遅れた!」
「んっ」
「朝早過ぎだろ、これ毎週やんの?」
「そうだよ。あと、遅れてないよ。時間通りだよ」
「……はぁ?どういう意味」
昴がスタジオにやってきた。
それも時間通りに、やってきた。
実は、彼女はよく遅刻する癖があるのだ。
癖というか、割と時間の逆算が苦手というか。
そして、私はというと時間関係は気にしすぎて早め早めに動くので、遅れられると正直イラッとくる。
出さないようにはしていたのだが、マネちゃんにはちょっと不機嫌になるのがバレてるらしく、今回は早めの集合時間を教えていたらしい。
「どういう事だよ……コイツは一体、どういう事なんだ……マネージャー」
「計算通りです」
「騙したのか!まだ、ベッドで寝れたのに!早起きさせたのか!」
いや、早起きしても遅刻してるやんけ。
騙したなーとマネージャーを揺さぶる昴を見ながら、内心で思った。
「で、でも、結局遅刻してるから意味ないですよね……えへっ」
マネージャー、お前言うようになったじゃねぇか。
小声で私に耳打ちするマネジャーに、初代の面影を感じた。
いつか、ズバズバ言ってきそう。
「じゃあ、配信じゃないので好きなタイミングで始めてください。あっ、これカメラです」
「そんな自撮り棒みたいなの渡されても……えっ、台本は?」
「型に嵌めたら面白くないとのことで……多分、手抜きです」
「うわダルいって、誰よ企画考えたの」
「行けます行けます!だって胡蝶さんは配信者ですから、ファイトです!」
「マネージャーからの信頼が重い……」
なんで私、こんな慕われてんの?
それとも舐められてるの?
取り敢えず、今回は色々なことを決めて下さいとだけ言われた収録だ。
ユニット名、毎週企画をやること、何をやりたいとか、あとは編集するから喋ってくださいとだけだった。
なお、スタジオには机と椅子、そしてマジックと紙があるだけだった。
何だこの低予算の事務所がやるようなレンタルスタジオでの雑な企画は、打ち合わせ風景を動画にするだけでは?
『全く……うわっ、すげっ……写ってる』
アプリを起動して自撮り棒のような物に付いたカメラを使って、自分を写したら実写ではなくアバター姿が写っていた。
服のモーションキャプチャー用の小型慣性センサーに反応してるんだろう。
ライブの時みたいに、小さいモニターにはカメラの映像が流れている。
『こっち来て』
『何それ……えっ、配信中!?』
『違う違う、動画だから大丈夫』
早速、カメラで昴を撮影してみた。
ちょうど画角的にツーショットになっている感じだ。
なお、ウチと向こうのマネージャーも映っているが、画面には反映されてない。
『はい、では昴さん。今日は、何やるんですか?』
『番組の収録しか聴いてないんだけど!ちょっと、マネージャー!』
『あの辺に、マネージャーがいます。あとで編集してください』
どういうこと、と聞きに行ってる昴を写す。
後でカットね、点線とかで見えるようにしてくれるでしょ。
『はい、この番組は何にも決まってません』
『マジで言ってる?おいマネちゃん、これ考えた奴バカじゃねぇの?』
『昴さんダメです。後で怒られちゃうんで』
『おい胡蝶、撮んな撮んな、見世物じゃねぇぞ』
いや、見世物だろ。
はいはい、座って説明するからね。
昴を座らせて、一応企画書なる物を読んで説明する。
『えー、どうやらスタジオを貸し切って毎週何かやってみてとのことです。本当に、バカじゃないの?』
『何やるかも決まってないの?マジかよ……』
『はい、今日はユニット名と番組名とやる企画を考えます。なんかやりたいことある?』
『お前はお前で順応しすぎだろ、だから紙とマジックあんの!』
そういうことです。
理解力がありますね。
『じゃあ、昴さん。ユニットと番組名決めるよ』
『えー、何でもいいよ。胡蝶と昴でいんじゃね?』
『牡丹と薔薇みたいに言うのやめれる?』
『何それ』
『えっ、知らんの?』
あーだのこーだの、いろいろな案を4人で考える。
マネージャーを巻き込んで色々な案を出したが、多分編集では10分後とかになると思う。
『えー、それでは発表します!』
『わぁぁぁぁ、楽しみですけーど』
『ユニット名は、マイスバ!マイスバになります』
『わ〜』
『えー、マイスバのマイマイ担当、胡蝶舞姫です。そして!』
『えっ、なになになに、こわっ……お前、急に何?えっ……』
『そして!はい!はい、早くして!役目でしょ!』
『えっ……スバスバ担当、大海昴……です?』
『何言ってんの?……あっ、痛っ!ごめんって、叩かなくても良いじゃん』
思いの外、強めに叩かれる一幕もあったが無事にユニット名が決まった。
ちなみに番組名は、マイスバRadioである。
ラジオではない、レイディオだ。
ネイティブだろ?
『それで、こちょさんや。何やるんですか』
『何でもいいよ、案出せよ』
『えー……普段、何見てる?』
『えっ……株か、ラップバトルか、美容か、競馬?』
『へー、つまんな』
今度は私のほうが思いっきり叩いた。
だったらお前、面白いもん見てんだろうな。
『えぇ……何か言葉分かんないけど屋台の飯作ってる動画ばっか見てるぞ』
『太んだろ、お前』
『はぁ?ライン超えなんですけど!シオンみたいなヘソ出ししてるからってよー』
『出せばいいだろうがよ、そんなダサい全身ジャージやめてよ』
『ちげーよ、おま、オシャレジャージなの!ブランドもんだからな』
いや、サッカー少年くらいしか着てるの見たことねぇぞ。
ブランドならオシャレって訳じゃねぇぞ。
『えー、じゃあ食べ物系?』
『あのさ、思いついたわ。人気の奴10個当てるまで全メニュー食べるとかどうよ』
『お前、いとも容易く地獄のような企画を』
『はいはい!異議あり!反論ばっかで、自分は意見ないんですか』
『えぇ……じゃあ、もう、リスナーから募集しようよ。あと、たまにゲスト呼んで、ゲストに決めさせようぜ』
『他力本願すぎねぇか……』
まぁ、大体のコンセプトは決まった。
撮れ高とかはない、本当にゆるっとした雑談だが、初回はこんなんで良いんだろうか。
マネちゃん達が頭の上で丸を作ってた、こんなんで良いらしい。
『えー、各種SNSも運用開始しますのでよろしくお願いしまーす……はい、終わり』
『てかさ、インスタあんじゃん』
『あー、うん』
『2期生お前しかやってないんだけど』
『あーね、あっ、シオンの話知ってる?』
『あっ、あー、はいはい、インスタアンチね。こないだ、それ知らなくてさ。一歩間違えたら死んでるとこだったぜ……えっ、何?まだ終わってない?』
『編集でカットすんじゃない?電源切るよ〜』
撮影用の自撮り棒についた専用のカメラを切ってマネージャーに渡す。
片付け終わったら、今日はミーティングして後は帰れる。
「胡蝶、ランチ行こうぜ。昼だし、ラーメンとかどうよ」
「どこにあんの?」
「歩いてたらどっか見つかるっしょ」
「えぇ……検索しようよ。おっ、家系あるやん」