胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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胡蝶舞姫の取扱説明書

スタジオの椅子で座ってスマホを弄ってる昴。

マネちゃんが後ろでカメラの電源を入れたのを確認して、話し掛ける。

 

『あっ、昴さん。お久しぶりで〜す』

『はぁ?お前、さっきラーメン食ったばかりだろ』

『ねぇ、台本読んでぇ!二本撮りなのバレちゃうじゃん、もう撮り直し面倒だから後でこの辺に二本撮りって書いといて』

『おーい、始めるなら始めるって言えって〜』

 

自社スタジオではないため、1日に2回分の撮影が行われる。

なお、台本を読んでいたはずなのに、なんで把握してないの?

 

『はいはい、始めますよ』

『おせーよ』

『はい行くよ、せーの』

『『マイスバRadio〜』』

 

ここらへんで音楽が流れるんだろうなと、数秒間、2人で無言になる。

そろそろ良いかな、そんなところで台本の続きを読む。

 

『はい、マイスバRadioのマイ担当、胡蝶舞姫です』

『スバ担当、大海昴です……胡蝶、あのさ。さっきと違う挨拶やめてくれねぇーか?』

『ほら、まだ探り探りだから』

『配信外で決めてくれるかな、えっ、これ昴が悪いの』

 

うん、お前が悪い。

ライブ感を楽しんで貰いたいって、偉い人も言ってた。

異議がある奴は部屋の隅で口開けて天井見て埃でも食べてればいいよ。

もっとも、異議とか言ってる間に真っ二つにされそうだけどね。

 

『はい!第2回はですね、まだお互いのこと知らないじゃないですか』

『えっ、スルー!?あと、知らなくねぇだろ』

『と言うことでマネージャーから取り扱い説明書を作成して貰いましたので、お互いに読んでいこうとのことです。大体、30分くらいの動画なのでサクサクやってきますよ』

『あぁ、もういいよ。そういう感じね、分かったよ。で、どんなよ』

 

台本にはここで私の取扱説明書が出てきますと書いてあるので待っていると、マネちゃん達がタブレットを持ってきた。

PDF作ってきたんか。

 

『へぇ、おもしろそうじゃん』

『お前はな。私としては、私の取扱説明書って何だよって感じだよ』

 

同業他社のツースリーさんがやってたりするし、大海のとこのリスナーは私の事なんか知らんから何だろうけど。

お互いのファンをシェアというか、固定ファンにする試みだろうか。

画面に映っているのは、五角形のチャートだった。

 

項目としては、連絡速度、自己プロデュース度、こだわり度、先輩&後輩度、ギャップ度。

これ考えたの、マネージャーか?

なんか、項目に短文と長文が付いてんだけど。

 

『え〜、連絡速度について……返信が早くいつも助かってます!いいやん、これ2つあるけどどっちよ?』

『たぶん、新マネ。4代目か、5代目』

『お前のとこのマネージャー、火影かなんかなの?』

 

みんな殉死してんじゃん、やめろ。

でも、続かないのはあってる。

 

『え〜、旧マネからのタレコミです』

『タレコミ!?』

『胡蝶さんは返信が早くて助かるのですが、深夜だろうと気付いたら即返信してくるので注意が必要です。急ぎであろうと、基本的に就寝時間を考慮して連絡して下さい。此方で調整しないと、朝まで寝ない場合があります』

『そんなこと!いや、眠くなったら寝るよ。流石にしないよ』

 

たまたま、寝ないで朝まで通話したこともあったけど、急ぎで連絡来ない限り、夜は基本的に寝てるじゃん。

なにこれ、暴露大会みたいな感じなの?

 

『怪しいけど次、自己プロデュース度……常に自信たっぷりでカッコいいです。はいはい、新マネは基本全肯定なのね。旧マネ……ショートや台本、ボイスや企画、動画から配信までアイデア力がすごく色々やってますが、突発的に思いついてから事後報告は辞めて欲しいです。隠してますが順調な時は質問が多く不安がってます。逆に上手く行かない時は、意固地になって大丈夫な感じを出すので注視してください、話とか聞かなくなります』

『やめなさいよ、ちゃんとアドバイスとか聞いてるでしょ。ネガキャンだろこれ』

『いや、合ってるくね?』

『えっ?』

『えっ?』

 

あ、あってねーよ。なんか、やべー奴みたいだろうが。

何言ってんのみたいな顔やめれる?

ほら、次!さっさと流してお前のトリセツに移んだよ!

 

『やーめーろーよー、押すなよ』

『早く早く、ほら、ハリーハリー!』

『えー、こだわり度。新マネ、完成像があるのか最終的な地点までの指示が的確です』

『ここまではいいのよ、旧マネ頼むぞ!』

『旧マネ、予算や納期度外視で気になったら妥協しない時だけ問題なので、引っ掛かりそうな物は早めに相談すること』

 

いいことだろうがよ!中途半端なもの出したくないだろ、こっちは金払ってるし受けとんのはファンなんだからよ。

 

『あー、何ていうのかな。ちょっと待て、言語化する』

『なんだよ……』

『今後、昴達は長く付き合うわけだから、この二面性は理解しないといけないんだが……ごめんけど見栄張ってる?』

『…………』

『痛って!おい叩くなよ、スタッフ!暴力ですよ〜』

『張ってねぇよ、次読んで!はい、読んで!』

『新マネと旧マネのコメント、違いすぎんだろ……』

 

まだ本性がバレてねぇんじゃね、とかやめろや。

そんなことないから、最近の方が落ち着いてるだけだから、カッコつけてない。

 

『先輩&後輩度、上下関係に厳しいように見えて仲良くなるとフレンドリーに見えます。よく差し入れや後輩を連れて食事に行くので、どっちもバッチしです』

『おいなんだその目は、言いたいことがあるなら言ってみろ』

『オチの旧マネ読んでいいんだな?』

 

横目で此方を見てくる昴に頷き、続きを促す。

 

『旧マネ、人見知りのように見えてスタッフとは普通に話せます。異性に関しては無頓着ですが、同性のスタッフやタレントさん同士では同性だからか意識して、最初話せません。慣れてくると急に距離を詰めてくるので、先輩タレントさんに失礼がないかヒヤヒヤしています。同様に、後輩にも馴れ馴れしくなるのでちゃんと仲良く出来るか不安になります……ママやん、なにこれ小学校の連絡帳?』

『ネタだろこれ、ちゃんと話せてるから!そんな童貞みたいなムーブしてないんだけど』

『えぇ……お前、2期生以外と絡みあんの?ねぇだろ……あっ、痛っ!お前、すぐ叩くのやめろ!ぐぬぬじゃねぇんだよ、そんな目で見ても事実だろうが』

 

お前、後でお前のターンになったら覚えてろよ。

そんな距離感バグってないだろ、確かに話せないけど話せるようになってから馴れ馴れしくない……はず……あれ、客観視出来てないのか?

いや、いやいや、言われたことないし、そんなことない。

セクハラにならないように、距離とか取ってるしな。

ウザがられないように、めっちゃ気を使ってるしな。

 

『最後、ギャップ度。配信では怖い感じですが、裏では気を使って悩みがないか聞いたり、落ち込んでるとご飯に連れてくれたり優しい一面があります……おぉ、やるやん。おい、その手は何だ』

『むーむー』

『むーむー言うのやめなさい。旧マネ、配信では騒がしいですが、裏では静かな時は悩みがある時なので察しないといけません。抱き着いてきたり甘えてきたら重症です。適当に褒めとけば上機嫌になるのでメンタルケアしてください』

『おい、旧マネ呼んでこい!名誉毀損だろ、これ』

『へぇ……』

『お前も引いてんじゃねぇ!違ッ、違うから!そんなんじゃねーから、カット!カットしろ!』

『スタッフさん、後でちゃんと使って下さいね〜……あっ、続きあるぞ』

 

新マネ!笑ってないで、カットしろよ!

畜生、後で絶対連絡してやる。

未読スルーされるけど、苦情を言ってやる。

 

『旧マネから新マネへの引き継ぎ。収録の必需品、新商品があれば何でも、ブランケット、クッション、椅子、ダンスの時はお茶、甘い飲み物は機嫌が悪くなります』

『ならないよ!甘いの、最近好きだよ』

『あーキャンプの時の椅子あるわ、あれ、お前のかよ……』

『知らない、みんなあると思ってた』

 

マネージャーが持ってきてたのかよ。

よく座ってたよ。

 

『マネジャーしか知らない推しポイント。新マネ、女の子らしい所を褒めると照れてキレ気味に恥ずかしがるのが可愛いです。旧マネ、何か仕事で失敗してメンタルが弱ると甘えてくるのでいつも曇ってて欲しい』

『おい、旧マネ呼んでこい!人の不幸願ってる奴がいるぞ』

『これが照れてるってやつかぁ〜』

『今は照れてねぇだろ、やめてくれるか?』

 

おいそこ!手、振ってんじゃないよ!照れてないが!

何、恥ずかしがってんだ、お前が書いたんやろがい!

おい、何、目を逸らしてやがる!

直前の、あっみたいな顔はなんだ!

 

『まーまー、これが最後だから。正直直してほしいところ、新マネ、気軽に高い物を与えないで下さい。金銭感覚が狂ってると時たま思います……お前何してんの』

『違うじゃん。偶にのプレゼントとかは、ほら、高いかもだけど』

『いや、気軽にって偶にじゃねぇだろこれ……』

 

庶民の感覚は忘れてないから!都内は物価が高いから、コーヒーとか500円くらいするし仕方ないじゃん。

若いから、新マネは高いと思ってるけど給料上がったら普通だから、若いうちは高く感じるだけなやつ。

 

『旧マネ、自己肯定感が低い自覚をして欲しい。また、目標設定を勝手に高くして出来ないからと凹まないでほしい。もっとコラボ配信などして、そろそろ他のタレントと話せるようになって欲しい』

『さっきからさ、旧マネ厳し過ぎないか』

『でも事実じゃん。えっ、スタッフはアレなの、下に見てるから気軽に話せるの?』

『見てねぇよ、炎上させに来てんのかお前!着火すんな!』

『あの、ごめんだけどさ。燃やそうとすんの着火って言うのやめてくれる?してないんだが』

 

おい、新マネ!だからさっき目を逸らしたろ、こっち来い!

色んな事書きやがって!

 

このあと後半は昴の取扱説明書で散々弄ってやった。

 

 

 

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