6月7日、万城目サロメさんが100万人を突破した。
お隣のツースリーさんでは、男性の九頭さんと可能という男性2人が100万人登録者だったのだが、3人目にまさかの新人が入ったのだ。
その翌日に、ツースリーは上場した。
私の4年間、約1400日を、14日で達成したのだ。
私の100倍すごいやべー奴である。
おのぉ、なんで私のチャンネル登録者数が爆増してるんですかね?
社内会議に発展してるらしいんですけど。
「理由が分かりました」
「どうした急に、マネちゃんや」
まぁ、デビューから数日あったので原因は分かった。
その説明をする前に、今のVTuber界の状況を理解する必要がある。
少し長くなるぞ。
「つまり、キャラ被りです」
「でしょうね!」
まず、今のVTuber業界は3〜4時間が当たり前である。
長時間配信が当たり前で、同じゲームをしながら雑談をずっとやる感じである。
話は所属するコミュニティ、箱と呼ばれる自分の所属の話が中心だ。
詰まる所、詰まりは身内ノリという所である。
次にターゲットは主に男性になる。
アイドルオタク、声優オタク、ゲーマー、VTuber以前はそう言われるであろう層がVTuberというジャンルに流入しているので基本、男である。
なので、インターネットキャバクラと呼ばれている。
そして、4年という月日は飽きと業界特有の問題が浮き彫りになっている期間であった。
ユニットとしてデビュー、ロールしてない素のVTuber、美麗グラフィックなどと言って実写配信。
精神的なストレスで休止、肉体的な体調不良による休止、事務所やリスナーとのトラブルで休止。
大体の事はやり尽くされたし、相次ぐ今まで活動していたVTuber達が活動を一時止めたり、辞めたりした時期であった。
「向こうのプッシュがスゴイですね」
「今日、上場だったかしら?話題性もあったわね」
界隈の状況から少し視野を広げると、また違った要因が見えてくる。
例えば、投資家達の動向とか。
お隣のツースリーさんは4月末頃に上場することを発表していた。
これにより、上場まで普段見ない層からの値踏みの時期だった。
今度上場するところとは何だ、VTuberって何だ、YouTuberの会社とか前にあったがそんな感じ。
次にプラットフォームのアルゴリズムが分かり始めた時期でもあった。
再生するためにクリックした数、再生した動画を見続ける維持率、視聴履歴との関連性、シンプルに再生数と評価数。
つまり、サムネで開いたり、全体の何割を見ていたり、普段のと近い内容だったりが、おすすめされる時期だった。
「胡蝶さん。これは胡蝶さんが再評価されたって事だと思うんですよ」
「待て、お前は結論を急ぎすぎる」
「さっきから、何を言ってるんですか?」
いや、現場に行く車内で2人きりだと、マジな話は緊張するやん。
冗談ですやん……あっ、はい、拙者、緊張を失ったな。
「再評価ねぇ……」
マクロからミクロな視点、つまりは自分のことを分析する。
まず、お嬢様とかいうキャラは普通に金持ってるからで決めたけど、よくよく考えたらいないのである。
そう、当たり前にたくさんいると思ったら、殆どいないのであった。
いや、個人とか小さい事務所にいるにはいたが、大手事務所では私立に通うお嬢様って感じで現実にいそうな、それこそファンタジーから持ってきた悪役令嬢みたいなのはいなかった。
ぶっちゃけ、髪とか服とかのフリルとか物理演算が大変そうなデザインだったのもある。
私が新衣装少ないから不遇な思いをしてると勘違いされてたりするが、普通に3D費用とか手間があるから新衣装を頼んでないのはそういう理由だったりする。
ただ、数少ないお嬢様キャラだ。
「ネットの反応もすごいわね」
更に私の配信は、身体への負担を考慮しないと活動がキツくなることや、人間の集中力的に1時間位がウケが良かったりとか、ショートや別の媒体での動線を意識したりとか、切り抜きが一気に規制される前に金で雇ったりしていた。
数少ないお嬢様キャラ、いつも決まった時間、見やすい1時間の長さ、音楽やダンスなど若者が興味を引くような他の媒体、主戦場のプラットフォームでは数撃ちゃ当たるようにと意図的に切り抜きが多い。
やってることが似ている、いや、私の当たり前をこの人が作っていたのかもしれない。
「一番はこれね」
『何か質問がありまして〜?えぇ、キャラ被り?あー、はいはい!アチラはお嬢様、わたくしはお嬢様になりたい、一般人でしてよ〜』
コメント:ざまぁですわ
コメント:このあと断罪されたりされ返したり
コメント:悪役令嬢とかいるのか
もうこれ、バタフライエフェクトだろ。
アンチなのか対立煽りなのか、上場したらしてないフォローはツースリー以下、しても株価低いからツースリー以下とか、一定数マウンティングしてくる対立煽りがいた時期だ。
それらしき奴のコメントを拾って読んでしまった、これが意図的かどうか知らんが切り抜かれていた。
まぁ、大手で彼女以外のお嬢様は同じ事務所とフォローしかいないし、触れる事もあるかもしれないが、アンチのせいで触れる事になるなんてな。
VTuber、お嬢様で検索したら、サロメさんのだけでなく私の切り抜きもたくさん出てくる。
アチラが女性向けにスキンケアとか香水とかスイーツを紹介してる横で、私は更に株の今後の動向予想とか最近当たらなくなってたけど競馬の話とか、ラップバトルの話とかしてる。
お嬢様の姿か、これが?そのせいで関連に出てるんだろうか。
ですわ〜、とか言うショートの裏で、サンドバッグはこう殴るとかダンスのステップ解説、陽街ちゃんの歌はここのファルセットやしゃくりがとか分析動画。
なんだろう、何やってるんだこの人?そのせいで他所のプラットフォームから人が来てるんだろうか。
SNSでは炎上してる方のお嬢様、一般人になったお嬢様、没落してない悪役令嬢の方とか言われてる。
おのれ、庶民のくせに私よりもチャンネル登録者数が多いなんて生意気よ!とか、絡みに行くと思われてるんだろうか。
「うっ……」
向こうは向こうでいきなり話題になって、偉業を成し遂げて、次は何をやるんだとか人気が落ちたなとか言われないようなプレッシャーと戦わなきゃいけない。
きっと、しんどいはずだ。
『あっ、おハーブですわ〜!やん、やん、痛って、オイ待てゴラァ!……あっ、ですわ〜!オッホホホ』
そんなこともなかったぜ、今も配信楽しそうにやってら。
何だこのおもしれー女、勝てるわけない、勝てるわけない、奴は伝説のスーパーVTuberだぞ。
「胡蝶さん、着きましたよ」
「行ってくる」
我が家に着いた私は、マネージャーにそう言い残してマンションへと入っていった。
何故なら、100万人記念配信があるからだ。
画面には簡単なイラストで机とマイクと垂れ幕が映っていた。
どこかで見たことあるだろ、初期にやった謝罪会見の背景である。
『あっ、カメラのフラッシュはご遠慮下さい!あっ、リスナー様!あっ』
コメント:挨拶はどうしたんだ!
コメント:開幕茶番じゃないか!
コメント:なにこれ?
『あっ、失礼しました。えー、胡蝶舞姫です。本日はよろしくお願いします』
コメント:なんだ100万人謝罪会見って!
コメント:急にバズって言うべきことがあるんじゃないですか?
コメント:お相手の女性とはお会いになったんですか
『改めて今回の謝罪会見について説明させて頂きます。この度は、いつの間にか100万人達成してしまい申し訳ありませんでした。本来ならカウントダウンや耐久歌枠など、節目を皆様と迎えなくちゃいけないのに……うぅ~』
コメント:おめでたいじゃないか!
コメント:祝わせないとは悪いと思わないんですか!
コメント:軽率にバズったこと謝罪しろ!
『カウントダウンも耐久歌枠もおんなじや、おんなじや思って!うぅ〜、うぉぉぉん!みんなと、祝いたい』
コメント:お祝い確定ね
コメント:嬉しいっピ!
コメント:教え教えはどうしたんだ!
『なんだお前ら、ネットミームでしか喋れねぇのかよ』
コメント:正体現したわね
コメント:なんなのこの人……
コメント:ハイハイ照れ隠しね
『いえーい、お祝いだ。最近流行ってるから、サイゼでウーバーして豪遊していくぞ〜』
コメント:サイゼで喜ぶお嬢様の姿かこれが?
コメント:訳わかんねぇ奴だな
コメント:初見です。サイゼリヤ一万円チャレンジまたやってほしい
『初見さんありがとうございます。過去の動画見てくれたんですね。あっ、ショートから、そちらはインスタから』
コメント:おいふざけるな
コメント:正体隠したわね
コメント:猫を被るな