今日はマイスバ収録の日である。
風魔ちゃんからの紹介で、今回のゲストはラプラス・ダーク。
数珠繋ぎで人を呼ぶ感じ、アナログからデジタルに移行するような懐かしさがある。
来てくれるかな、いいともー!みたいな。
うわ懐かしいなぁ、とか思いながら最新ヒットチャートの音楽を聴いたりする。
まだ衛ちゃんの曲でステラとか来てないのか。
コロナによって何だかEDMとかラップとかロックとか、ジャンルの壁が壊されている。
そのうち、ボカロとクラシックの技法が混ざったロックテイストのJ-POPも出るのだろうな。
スタジオでは、今日の為だけに各店舗にお取り置きしてもらった商品を持ってくるスタッフがたくさんいる。
朝から人数分、数万円使って大量に持ってきてるからだ。
一箱5000円から1万くらいでもたくさん入ってるから、そんなに掛からないのね。
スタッフによって運び込まれるお菓子とクーラーボックス、いいな、早く食べたいな。
「俺らの分まで、あざーっす」
「せっかくですから」
「胡蝶さん!これ美味しいですよ、あっ、お茶入れますね」
「あぁ、それ高いやつやしいよ。5000円したらしい」
「えっ……10回分で……1杯500円」
先に何故か食べてるマネちゃんがお茶を淹れてくれた。
うわぁ、久しぶりに温かいお茶飲んだ。
人が淹れてくれたお茶、美味しい。
「あ、あの!」
「ッ!?」
アチッ、アチチ!びっくりした、ちょっと跳ねちゃったよ。
えっ、誰、えっ、お、女の子だ……ミニスカにフリフリの女の子だ。
スタッフにしてはオシャレだ、え、演者か!?
ど、どどどどうしよう、ラプラスちゃんかな?
「胡蝶舞姫さんですよね」
「そういう君は、ラプラス・ダーク」
「はい!ラプラス・ダークをやらせて頂いてる田島です、本日はよろしくお願いします!収録とはいえ、失礼な言動もあり、キャラ設定としても言い過ぎなどがあればすいません」
「そう」
す、すげー喋るじゃん。
一旦、お茶を濁そう。
いや、お茶を飲んでるだけなんだけどね。
マネージャー!おい、ニコニコしながら見てないで対応しろ!
ヤバい、時間稼ぎのお茶が無くなった!
「えっと、あの……えっと」
「マネジャー、お茶を」
「あっ、了解です〜」
「あっ、あっ、恐縮です!」
ち、違う!私の、私の!
畜生、なんで分かってますよって顔してんだ、分かってねぇよ!
大海!大海、お前、来い!なんで遅刻してんだ、前もって早めの時間言われてんのに対応してくんなよ!
早く来て!スタッフも気を使わないでいいから寄ってきて!会話、何話したらいいの!
「あの、ショートとか配信について参考にさせて貰ってます。あの、世界は残酷だ〜ってオチが分かるBGMの後に焼きそばの湯切りミスる動画とか、マジ天才だと思いました!あと、あの、神奈川県を紹介する動画、なんていうか、すごいセンスを感じました……あっ、すいませんいっぱい喋ってしまって」
「別に、気にしてないわ……」
き、気まずい。
いや、あの、パクりなんです。
なんなら、そのセンスある奴の元ネタは貴方なんです。
あっ、ヤバい、背中に変な汗かいてきた……これは、冷や汗って奴かな。
辛い、辛いよぉ、スタッフとはお喋りできるのに何でこんな緊張するのよ。
「あと、音楽もEDMとかラップとか今時って感じで、あっ、でも、発表はずっと前だし、MVもアニメで値段とかすごいの知って、なのにやってるし、フォローライブに入る前から知ってはいましたけど活動する事になって、それぞれの先輩達がどういう配信をしてるかとか調べると胡蝶さんは毎回1時間きっかりで同じ時間帯で毎週継続してるから見やすいってのが、分かってぇ!」
「うん」
「おのぉ、なんていうか先進的というかぁ!もう胡蝶がやってるよとか言うリスナーのコメントとか色んな動画で見たりとかぁ、余りにも未来に生き過ぎてて!胡蝶さんは、巷じゃ自己肯定感が低いとか言われてるけど数少ない100万人登録者に最近なったじゃないですか!でも、そのせいで何も分かってない新規も多いんですけど、プロレスしてると思ってたら急に話題が変わったりとか、意外と女の子扱いされると照れちゃうとことか、最近の奴らは口が悪いとか態度悪いとか分かってないんですよ。もうね、表面的なの、胡蝶さんはね、ツンツンしてるのに偶に女の子してるギャップが魅力なの、なんなら女児みすらあるのに分かってないんですよ」
「そっか」
お、女の子って怖い。
メッチャ喋る、いや私も女の子だけど同期もここまで息継ぎなしで話しかけて来ないよ。
あれか、最近の若い子は動画とかで育ってきたから時間効率が早くてタイパ意識が高いから早口だったりして高速の情報伝達を確立してるんだろうか。
何言ってんだろ、分からな過ぎて意味分からんこと考えてたぞ、あっ、お茶うめぇ、
やべっ、どうしようお茶が、お茶が切れたら、お茶飲んでるから会話できないフリが使えなくなるよ、へへへ、きちぃ。
「ちわーっす、おっ、お茶あんじゃん。なんだコレ、お茶良っ!ヌルくて美味いんだけど」
「昴さん、1杯500円らしいです。私もさっき知りました」
「マジかよマネちゃん、さっき和菓子貰ったけど、マスカット丸々入ってたぞ」
「何それ知らない、怖い」
「えぇ、おぉ、ラプラスじゃねぇか!今日はよろしくな!なんだよ、お前胡蝶と話してたのか?やめとけやめとけ、最初のうちはテンパって話せねぇんだから」
メッチャ喋る。
そんなこともなかったわ、同期も喋るわ!
そうだよね、配信者は喋ってなんぼだもんね。
喋ることができない私なんて配信者として終わってるよ。
「胡蝶さん、収録です」
「分かったわ」
「おぉ、かっけぇ……生の胡蝶さんすげぇ」
「そうか?猫被ってんぞ、あれ」
うるさいよ!
バストアップ、上半身が映った姿でマイスバの私達が映っている。
オープニングトークの始まりである。
『はぁ、お嬢様だから株で儲かってお金が使っても使っても減らないわ』
『初手から炎上しそうな発言ヤバくねぇか、おいなんかお菓子いっぱいあったぞ』
『べ、別に全員分のあるけど、注文の数、間違えただけなんだからね!』
『ツンデレなのかドジっ子なのかキャラが迷走してねぇか、しかも通販で買えないのもあるんだけど』
『というのは茶番で、今日はゲストの為にお菓子を用意しました。ほら、ガキってお菓子好きがちだから』
『それで和菓子はチョイスがお婆ちゃんなんよ……マイスバRadioあ〜じま〜るよ〜』
『あじまるよ〜』
適当に喋ってくださいという台本のオープニングトークが終わった。
いつもの挨拶、そして今回はゲストをお呼びする。
『ちょっと待った!こんな所に、お菓子がたくさんあるじゃないか!』
『ほら、お菓子で釣れたぞ……宇宙人のガキが』
『ガキ扱い辞めてやれよ、新人なんですよ』
『貴様ら、刮目せよ!我輩のお名前はラプラス・ダークだぞ!うぅ、和菓子怖い!』
『釣られたんじゃねぇのかよ、どういうことだよ』
『古典落語かしらね、たぶん和菓子をみんなで食べれば満足して宇宙に帰るわ』
『いや、今の拠点は地球にある秘密結社なんで、場所は秘密ですけど』
『急に教養出すし、そういう趣旨だし、帰らねぇじゃん』
『ここは、和菓子でお帰り頂くしかない。早速食べるわよ』
『我輩に献上するがよいぞ!』
『やってること、お供え物で撃退する妖怪なんよ、宇宙人じゃなくて』
本日は前回のゲスト繋がりでラプラスちゃんがやってきた。
後から編集で、春先ほんわかさんが地球にやってきたラプちゃんを撃退出来るんでしょうかとかナレーションすることだろう。
『まず初めは、何だコレ雪見だいふく?』
『喜九福のずんだ大福らしいのだ!抹茶みたいなのだ!』
『ずんだ、オッオッオッ、ずんだーもん、アッアッアッ』
『笑い方、エグくねぇか……あっ、枝豆だコレ!』
愛想笑いだろうが、後輩が笑ってくれて嬉しいよ。
色んなの買ってきてくれたな。
『今日ってさ、食べてるだけで良いのかな?』
『謝ったほうがいいか……じゃあ、謝罪のために羊羹食べるか。寅屋の羊羹だ。謝罪の時に送るって聞いたことある』
『和菓子知らない我輩でも知ってるぞ!早く食べたい、早く食べたい!』
『総帥!威厳守って、総帥だよ』
普通に試食会とかしている収録。
笹乃家のどら焼、種屋のふくみ最中、叶彩堂のあも、俵屋本舗の雲龍、森乃庵の長生殿、両月堂の千なり、赤坂庵の赤坂もち、榮彩堂の梅ぼ志飴、塩瀬庵の志ほせ饅頭、鶴屋彩堂の京観世、仙彩堂のぼた餅、源吉彩堂の陸乃宝珠、虎彩堂の最中、文面堂のカステラ。
店名とか聞いても、知らないのばっかだな、っていうかずっと食べてたな。
『うわ、懐かしい。修学旅行で買ったな、カステラ』
『へぇ、長崎とか行ったの?』
『そうそう行っ……てなかったか、引きこもってたし』
『お前、急に悲しいこと言うやん!』
行ったのは前世で、今世は行ってなかった。
そもそも、旅行先とか違ったしな。
『はい、ということでどうでしたか?』
『えっ、我輩はもう眠くなってきたから帰るよ、今日の所は許してやるぞ』
『どうやら撃退出来たみたいですね』
『いいのかそれで、やってることまんま子供だぞ』
『昔は甘いの苦手だったけど、最近は甘いの好きだから良かったわ』
『てかさ、お茶美味かったよね?』
『50グラム5000円らしい、コンビニのお茶よりは高いのか?』
『あっ、撮影用にたくさん買ったお菓子の中身はこの後スタッフが食べます』
『よく考えたら、これトータル幾らしたん?えっ、大丈夫?』
『聞くな聞くな、お嬢様だから分かりませんわ〜、オッホホホ』
『お前、最近流行ってるからって、お嬢様で誤魔化すなよ。いつからお嬢様になったんだよ』
『初期設定からだよ!』