胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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もう一人の僕

最近、人の金目当てで奢ってとか言ってくる弟に辟易しつつも大学1年生を終えて二年生になった。

2014年の4月、単位をフルで取れた。

1年目のフル単はデカい、後々になってから後悔しなくなる。

1敗してるからね。

 

「ち、ぢぐじょう……」

 

そして、私は株で負けていた。

年間トータルはデカい勝負を除けば増えてはいたが、それでも少ない負けが出ていた。

+50万、本来ならそのくらいなのだろう。

いや、大人の時は元手が増えるほど勝てたし、年によっては100万から200万くらいは稼げた。

今回は半分貯金してたりして税金に気を使ってたからな。

 

「でも、今がチャンスなんだ」

 

未来にテロで死ぬ総理がいる。

襲撃されて亡くなってしまうのを知っていても、助けられないのは映画とかで知ってるので諦めた相手。

そんな総理大臣が掲げた政策、アベノミクスというのがある。

金融緩和、財政出勤、民間投資。

 

どういうこっちゃというと、インフレのために金利下げるよ、銀行に預けると利息減るよ、ローンとか安くなるよ!さぁお金を使おう。

これにより今のデフレを脱却しようというのが金融緩和。

まぁ、国債の買い入れとか難しい事もあるけど置いといて、未来のインフレとか物価が高いとかは、むしろ時代的には目指してる為に行われた。

 

次に財政出動は、国からの仕事増やすので給料上げてもらって稼いでね。

簡単に言うとこれである。

まぁ、天下りとか中抜きとか陰謀論的にちゃんとやってねぇと評価されるそれで、みんなの給料上げてこうねって奴である。

結果はお察しだったけどね。

 

最後の民間投資は、民間の投資である。

政治家みたいなこと言ってるけど厳しいルールを緩くしたり助成金という小遣いを上げたりして企業が稼げるようにした感じ。

民間で働く人も財政出動で稼いだ人みたいに稼いでね、世界中の人達も仕事しやすいから来てね。

そんな感じの政策、お察しパート2である。

給料なんて大して上がってねぇよ!

 

「成長投資枠、この手に限る」

 

2014年、時代は新制度であるNISAがこっそり紹介されていた。

なにそれ、こんな感じ、へぇー、みたいな一瞬だけテレビで取り上げられる程度。

そんなに投資しようぜみたいな感じではなく、温度感の差を感じる。

まぁ、あの頃に買っておけばみたいな事思う年代である。

 

日経平均株価というのがある。

要は、日本の景気の平均を出すために何個かピックアップして割った数字ですよ、みたいなもの。

そしてNISAというのもある。

投資で儲けたら2割取るところ、取りませんよというものだ。

この2つを使って、私は後々まで残るであろう有名企業を買った。

 

というのも14000円の日経平均が、今後40000になるのを知ってるからだ。

一株26000円増える余地があったり、なかったり……うん。

しかし、金はあっては困らないため私はバイトすることにした。

 

「いらっしゃいませ、お隣良いですか?」

「おう、可愛いね」

「よく言われます。アゲハです」

「そこは謙遜せんのかい」

 

インターネットキャバクラとも呼ばれるVTuber、その練習がてらガチキャバクラである。

酒と煙草と喋るの好きな私の天職。

なお、肝臓を切り売りする仕事でもある。

 

「何か飲むか?」

「ありがとうございます、お願いしまーす!コーラで」

 

ソフトドリンクなのに、一杯1000円のそれをありがたく貰う。

ちなみに店によっては違うが、200円をバックとして貰える。

指名料も入るし、同伴という店に来る前にデートしてからも入ったりする。

なお、アフターはお金が入らないから普通はしない。

 

「へぇ、半導体関連を」

「そうなんよ、今の中国は」

「アゲハさんアゲハさん、三番テーブルです」

「ごめんなさい、呼ばれちゃって……そろそろ時間だと思うので、延長しそうなら呼んでくださいね」

 

うんうん、話を聞きながら仕事の愚痴を聞く。

大体分かるので、話が分かるねと盛り上がった。

これはリスナーのコメントの受け答えに近い気がする。

後はたまにこっちの話、こっちの話のほうが多くなりそうなのは課題かもしれない。

モニターを挟んで自分語りするのと、対面での接客はまた別だった。

 

キャバクラで働いて良かったことは、年確が緩い時代でも買えない酒が飲める事だった。

と言っても仕事終わりにコソッと貰って、お姉様方にタバコを頂いて、うーん三下ムーブ。

いつかスキャンダルになりそうだが、自分で言わなきゃヘーキだろ。

 

「胡蝶ちゃんってさ、元ヤン?」

「えー、何でですか?」

「やけに吸い慣れてるし、昨日今日じゃないでしょ」

 

流石プロということか、染み付いた年季の動作を見抜かれていた。

吸ってないよ、今世では全然ね。

 

「キャバクラ、大変ですか?」

「まぁねぇ、時間が限られてるし腰掛けならまだしも本業はね。自分に使わないと行けないし」

「あー、ネイルとか分かんないんですよね。逆にスキンケアならバッチしです!ご飯行きましょうよ、アフター!」

「アンタ、アフターしないんでって断ってたのにウケる」

 

そりゃ、おじさんと飲んで何が楽しいんだって話だよ。

休憩時間はもう、この世の天国よ。

女になって良かったのは多少触っても許される事だ。

 

 

 

仕事が終わってご飯を食べない組は車での送迎があったりする。

なので、送迎なしなので始発の来る朝まで先輩キャバ嬢とアフターである。

先輩風を吹かせてくるが、女に払わせるかと内なるユニコーン君の自己主張により、割り勘で飲み会。

早く酒が合法的に飲みたい、畜生!

深夜の居酒屋なんか大学生ばかりで、先輩のあしらい方を学ぶ。

なるほど、よし来い。

 

「じゃあさ、君はどう?」

「いやぁ、無理ですね……おい、胸触りやがったな!待てやゴラァ!」

「お客様、どうしました!」

「すいませんね。おい待てや、テメェどこ行こうとしてんだよ!」

 

私の胸はタダじゃねぇんだよ!

脂肪の塊だけどな、女だからって舐めてんじゃねぇぞ!

 

「うわぁ……」

「触ってねぇよ!」

「うるせぇ!警察行くか、詫び入れろ!分かってんのか、ヘラヘラしやがってよ」

「おい、もう行こうぜ」

 

そそくさと去っていく男達。

おっと、感情的になってしまった……アルコールがちょっとしか入ってないのに酔いが回ってやがる。

うーん、男の頃より飲めないかもしれない。

 

「やっぱりさ」

「はい」

「胡蝶ちゃん、ヤンキーだよね」

「……アゲハ、難しいこと分かんなーい」

 

先輩に滅茶苦茶、引かれてしまった。

 

 

 

大学に来たら、髪はノーセットで簡単なメイクだけして授業を受ける。

男には基本寄らず、新歓コンパも行かない。

きっと酒飲まされてエッチなことされるんだ、怖い。

同人誌みたいなことされるんだ、超怖い。

 

語学系の大学だからか帰国子女が多くて、豚肉を生で食う話を聞いてドン引きしたりした。

えっ、日本人は生卵食べるじゃん。

なるほど、そういう感覚ね。

これは配信ネタになるかもしれない!

 

「おにぎりってさ、海苔も昆布も明太子も海産物じゃん」

「そんなことないよ」

「じゃあ、シーチキンとおかかは」

「海産物……」

「ほらぁ!」

 

外国の人の視点ってすごい、これは配信ネタになるかもしれない!

いかんな、これから出るゲームみたいに何でもかんでも配信ネタになるか考えてしまう。

 

「あるじゃないか!配信ネタ!」

「配信ネタ?それは、どんな、寿司ネタですか?」

「寿司じゃない、LOLだ!」

「おぉ、カルフォルニアロールは寿司ではないと……むむっ」

 

お前は何の話をしてるんだと、隣の外国人に首を傾げた。

そういえば同じクラスだけど名前知らんな、こいつ。

 

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