胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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耳舐めってそうやってやるんだ……

打ち合わせを行い、今後のために購入を勧められたがする事はないと言うことで、私の方からお家に行くことになった。

面倒臭かったので白いワンピースにした。

ワンピースって一枚だけ着れば良いから楽なのだ。

ちょっと寒いか?カーディガンでも羽織っておくか。

 

待ち合わせは東京駅、向こうはなんか事務所による予定があったらしい。

実際に会うのは初めてだが、どんな人なんだろう。

ちょっと、緊張してきたな。

 

「ねぇ、お姉さん1人?」

「あっ、お兄さんお暇ですか?」

「えっ、あっ、うん。暇だね」

「じゃあお茶しませんか?ここからすぐなんですけど、知り合いのお店があって、電話したらすぐ迎えに来てくれますよ」

 

人が待ち合わせしていたら、大学生くらいのがナンパしてきやがる。

見て分かんねぇのかよと言いたいが、会話するとナンパが続くのは経験で知ってる。

 

「迎え、へぇ……」

「そうなんですよ。マンションにあるから看板なくて分かり辛い個人経営なんです。1時間飲み放題で良いんですけど行きますよね」

「あー……酒飲めないから、今度で」

「ソフトドリンクもありますし、今呼びますから」

「いや、ほんと大丈夫だから、じゃあ」

 

なので、前世でボッタクリやろと思ったキャッチみたいな事を言ってみたら、引き攣った顔で距離を空けられた。

まぁ、怪しすぎるもんな。

 

周りで聞いてた奴らも暫くは絡んでくるなよ。

よし、暇な待ち時間、切り抜きとかを見て時間を潰すか。

おかしい、黄金シオンちゃんマリカ切り抜きとか書いてあるやつを見てるんだが、妨害行為にいいぞもっとやれみたいなコメントしかない。

 

「なぜ……」

 

おかしい。

私がやったらゲームを真面目にやれとか、人に酷いことして楽しいのかとか、絶対炎上するはずなのに、炎上してないのなんでだよ。

やはり、炎上しない才能とかあるんだろうか。

羨ましい、私も燃えたくないよ。

 

【着きました。どこにいますか?】

【白いワンピースにピンクのカーディガン、アンドロイドスマホ持って、グレーのマスクしてます】

【多分、分かりました】

 

スマホを弄ってたら、ようやく到着したらしい。

人が多いから、本当にナンパが鬱陶しい。

 

「あの……間違ってたらすいません。胡蝶さんですか?」

「あっ、はじめまして……意外とちっさい女だな」

「あぁ、胡蝶様だこれ、デリカシーないもん」

「なんで!?」

 

待っていると、頭一つ小さいギャルが話しかけて来た。

綺麗めギャルだ、陽キャに見える。

恐る恐るな感じだったのに、急に配信の時の絡みみたいになったぞ。

 

「ノンデリじゃないよ……」

「最初誰ってなったんだけど、めっちゃ儚げで」

「あー、まぁ、そうかな?照れるなぁ」

「喋った途端、ノンデリだったわ」

「第一印象良かったのに、なぜ……」

 

だって小さいのは事実じゃん。

あっ、そうだ。

 

「これ、さっきそこで買っときました。そろそろ着くかなって」

「えー、スタバ寄ってくれたの」

「スイートポテトゴールドフラペチーノ」

「気持ちだけ……紅茶とかコーヒーとか甘ったるい物苦手で」

 

ば、馬鹿な!?

女子はスタバが好きなんじゃないのか?

この身体になってからというもの、年齢を重ねるごとに甘い物とか俺の時と違って好きになってるぞ。

いいもん、2つ飲むもん。

 

「ごめんね、お金出すから」

「いえ、2つ飲めるから大丈夫です」

「胡蝶様、甘いの好きなの意外だったわ……」

「甘いの最近好きになってきた」

 

ちょっとご飯でも食べるかという流れになり、何故か焼肉に行くことになった。

しまったな、行くなら白い服にしなかったのにな。

さっきから裏目にばっか選択肢ミスってる。

 

「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」

「2名です」

「お煙草はお吸いになりますか?」

「はい、吸い――」

「吸わないです」

 

えっ?吸わないの?

えっ、えっ、禁煙席なの?

いや、そうなんだ。

大丈夫、吸わない人と一緒にいる時くらい自制出来る。

 

「ユッケないかしら?」

「あー、ユッケ!ユッケ好き!」

「やっぱり焼肉よね、ランチ定食にする?」

「いや食べ放題行けるでしょ!」

 

良かった、なんとか仲良くなれそうな要素出てきたぞ。

やはり焼肉はすべてを解決してくれる。

それから二人であーだこーだ活動以外の話をしながら焼肉を食べる。

活動関係は個室でもないし、まずいからね。

 

「へー、出身地こっちなんですね。私、神奈川なんですよ」

「おー、横浜で遊んでるんだ。すごーい」

「多分、先生の想像する横浜と私が遊ぶ駅前は違うよ」

「そーなの?」

 

先生は多分みなとみらい、私の言う方は西口というチェーン店だらけのごった煮な場所だ。

決してオシャレではない。

話してみたら年齢も近いと言うことも分かった。

 

「なんか胡蝶様ってアレね」

「アレって何?」

「裏だと配信の時と結構違う」

「ギャップ萌えって奴だ、知ってる知ってる」

「萌えねぇよ、炎上の間違いだろ」

「おい」

 

ちょっとだけ仲良くなれた。

そんなこんなで、帰りに酒とか買ってクッキー先生のお宅訪問。

遂に逃げたかったASMRの時間である。

 

 

 

ほぼ毎日やってるらしいクッキー先生のチャンネルで立ち絵を2枚立ち上げる。

眼の前には人の頭みたいなのが置いてあった。

これが立体音響とかの出来るバイノーラルマイクって奴だろうか。

見たことはあったが、映像越しでないのは初めてである。

 

「GoodEvening、こんクッキー、フォローライブ所属2期生の癒日クッキーよぉ〜」

「こんこちょー、フォローライブ所属2期生の胡蝶舞姫です……はい」

 

コメント:こんばんは

コメント:待ってた

コメント:緊張してる?頑張って

 

な、何だこれは……ウチのコメント欄と全然違うんだけど。

おかしい、いつもの煽ってくる感じのコメントが一切ない。

 

「今日は胡蝶様にASMRを教えるわよ」

「ねぇ……やる時下着になる必要あった?」

「ちょ、言わなくていいから!」

 

コメント:慌ててるクッキー先生始めてみた

コメント:何!?

コメント:やはり衣擦れの音を防止する観点からし……ふぅ

 

「んんっ……気を取り直して始めるわよ」

「先生これどうするの?」

「段取り!子供か!」

 

コメント:落ち着きないの草

コメント:うちの子がすいませんねぇ

コメント:おかしい、いつから俺は親子配信を見てるんだ

 

「まずは耳掻きやってみましょうか」

「おぉ、私でも出来そう」

「リスナーの耳だと思って触るのよ」

 

ちゃんと耳の形になっている。

へぇ、ここにマイクがあるんだ。

上手く出来るかな。

 

「い、入れるよ……どう?気持ちいい?」

「ちょ、言い方!」

「えっ、えっ」

 

コメント:無知シチュって奴っすか

コメント:たまげたなぁ……

コメント:ぎこちないけど良いぞ

 

「なんかキッモ……」

「言い方!炎上するから、ねっ!」

 

コメント:ガチの嫌悪じゃん

コメント:お前才能あるよ

コメント:罵倒ASMRか、あっ!ガリってやらないで

コメント:うおっ!強すぎ!

 

「えぇ……あっ、あんまり強くすると音が大きくなるから」

「難しいな、耳かき」

「ジェルボールの方、試してみましょうか」

「なにこれ……すっごい、ネチョネチョする……」

 

コメント:コイツわざとやってんのか?

コメント:恥じらいというものがないな……ふぅ

コメント:下着姿でネチョネチョ言ってんだよな

 

なんか、ウチとやっぱ違うな。

コメントがいちいち気持ち悪いな。

 

「コメントが気持ち悪い。セクハラやめて」

「ガチトーンじゃん。多少は、ね、ほら」

 

コメント:おかしい癒やされるはずなのにゾクゾクする

コメント:エッチな気分から怒られて変な扉開きそう

コメント:罵倒の才能あるよ

 

「いらな、何だその才能」

「じゃあ、ふぅーってやりましょ。きっと上手くいくから」

「おぉ、知ってる」

 

クッキー先生が、ふぅ~と眼の前で実践してくれる。

簡単じゃん、これなら私でも出来るぞ。

 

「行くよ〜フゥゥゥゥ!」

 

コメント:うお!

コメント:台風かな?

コメント:強すぎる!

 

「あっ、ごめん。どう、丁度いい?」

「もっと優しくよ、ふぅふぅ〜って」

 

コメント:あぁ、いいよ胡蝶、気持ちいいよ

コメント:もっと強くてもいいよ

コメント:だんだん、上手くなってきたな

 

「やっぱお前らなんか気持ち悪いよ」

「もう慣れてきたわ……」

 

コメント:上げて落とすじゃん

コメント:罵倒とセットなのか

コメント:サウナかよ

 

「昴様からセリフのリクエストが来てるから、囁いてみましょうか」

「煽りだろ、アイツ馬鹿なの?」

「配信者たるもの何でもネタにしておけとの事です」

「ねぇ……PEX……しよ……何発でもいいから…………アイツ、やっぱ馬鹿だろ」

 

コメント:PEXしよwww

コメント:狙ってんだろ

コメント:炎上ネタで煽ってきてる

コメント:PEXで気持ちよくなってんだ!許せねぇ!(笑)

 

「もう、じゃあ耳舐めやってみましょうか」

「えっ、やだ……」

「ダメでーす。基本だから覚えて帰ってくださーい」

 

コメント:耳舐めとかエロじゃん

コメント:俺初めて聞いたけどすげぇな

コメント:チャンネル登録しようかな

 

「あっ、お前らウチのとこのだろ。どこ行ってたんだよ」

「良いから、はい真似して」

 

実際に舐めるわけにはいかないのか、頭みたいな形をしたマイクの耳を、クッキー先生は両手で掴んでいた。

なるほど、それで舐めるんだ。

いやでも、やりたくねぇ。

 

「やる時に吐息とか声を混ぜるのがポイントよ……やって」

「……はい」

 

ちょっと怖いよ。

やれば良いんでしょ、やるよ!

これは仕事だからな!

 

「……んっ……あ、あむ……んちゅ……」

「…………」

「ど、どう?上手く出来てる?」

「…………」

 

ねぇ、なんで目つぶって無言なの。

なんか喋ってよ。

クッキー先生、ねぇ、反応してよ。

 

「まだダメ?ねぇ……聞いてる?」

「聞いてる聞いてる、続けて」

 

続けてって言われても、分かんないんだけど。

どんな感じに聞こえてんの。

 

コメント:全年齢の女でなくなってくれ

コメント:クチュクチュいいよぉ

コメント:あぁ、いいよ胡蝶、上手だよ

 

「うわっ……きっしょ……」

「急に梯子外すじゃん」

 

コメント:言うと思ってた

コメント:不安そうな声に冷たい罵倒。いつもと一味違う体験でした

コメント:なんかレビューしてる奴いる……えぇ……

 

「まだ照れが抜けきれてないわね」

「照れ、なるほど」

「でも照れ隠しで暴言はやめましょうね」

「いや、照れ隠しじゃ、いや嘘ですそうです照れ隠しです、はい」

 

コメント:妙だな?

コメント:何かされたようだ

コメント:もう1時間だと!?

 

「それじゃあ胡蝶様。終わりの挨拶……いつもどうしてるの?」

「えっ、適当におつこちょーって」

「じゃあ、おつチョコクッキーで」

「チョコクッキーどこから……おつチョコクッキー」

「それでは皆様、おつチョコクッキー」

 

コメント:おつチョコクッキー

コメント:いかないで

コメント:ママァ……

 

なんか、やっぱウチのコメ欄と違うなぁ……

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