胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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初めてのお泊り

10月になった。

インターネットで感染症と検索しても、大したものは出てこない。

とまりうみ先輩のワンマンライブが行われたりとかVTuber関連のアプリがゾクゾクリリース。

 

フォローライブという名のグループ名と一緒のアプリとかも出た。

これでお家3Dが出来たりするのだ。

他に2D関連のも出て、着実に技術は増えてる。

 

「んっ……陸テラちゃんじゃん」

 

【あの、お願いというかご相談が……】

 

ある日の事だった。

私の勧めで入れられたDiscordで連絡が来てた。

文面から漂う陰の気配、チャット面倒だな。

 

スマホから連絡先に向けて電話をかける。

これ、昨日の夜に来てたのかよ。

 

『…………ハイ』

「あっ、出た。どうしたの陸テラちゃん?」

『……ぇっ……ぁ……』

「何?なんか電波悪くない?今どこなの?……あっ」

 

なんか通話が切れたので、再度かけ直す。

おかしいな、キャリア変えたほうが良いんじゃねぇの?

 

『……ヒィ』

「もしもし?電車かなんか、乗ってる?電話できない」

『……の、乗ってない』

「ディスコ見たけど、どしたの?何相談って」

『……その……こ、今度泊まりに行ってもいい?』

 

とまり……あぁ、泊まり?ウチ、来たいの?

なんでだろ。

 

「なんで?」

『…ァ……ゴメンネ……』

「ごめんじゃな……あっ、切れた」

 

えっ、切った?いや、電波が悪いとかなのか?

今、会話の最中だったよな。

もう一回かけ直した。

 

「もしもし、電話切った?」

『……キッテナイヨ』

「えぇ……まぁいいか。いつ来んの?」

『……イッテイイノ?』

「声ちっせぇなぁ、もう一回言って」

『ゴメ……ゴメンネ……』

「いや、何が?」

 

切ってないらしいし、携帯ヤバいぞ。

まだこの時代だし、電波悪いとか普通にあるのかもな。

5Gとかじゃないもんな、そっか。

 

「それでいつ来んの?迎えはいるの?何時くらい?」

『……ッス−……チャット、スル』

「あっ……おい、切ってんだろお前!」

 

うお、めっちゃチャット来るの早いな。

あー、ライブのレッスンとかで遠征するのか。

都内住んでないから泊まれるか聞きたかったのね。

いや、いいけど、電話の方が楽くない?

 

 

 

待ち合わせの日に東京駅の近くに車を止めて迎えに行く。

あん時のガキだから、こっちは分かるけど向こうは分かんねぇだろうな。

 

【着いたけど、どこ?】

【分かんない】

【あっそ、位置情報送って】

【送り方分かんない】

【近くに何ある?写真送って】

 

送られてきた写真を見る。

あー、一番街って書いてあるな、この辺か。

東京駅ってダンジョンみたいだよなとか思いながら、迎えに行く。

暇だったのか、駅構内の店でぬいぐるみとか見てた。

 

子供か……あっ、まだ未成年だっけ?黄金のやろうは、18だから22時以降配信出来ないのは知ってるけど、まだ酒飲めないって言ってたからテラちゃんも未成年やろ。

 

「あっ、お姉さん!えっ、なんでいるんですか!?」

「どうも」

「会社の方から連絡あったんですか?すごい偶然」

「いや、迎えに来たんだよ」

「……えっ?……ッスー」

 

【胡蝶ちゃん?】

【そうだぞ】

 

トントンと後ろから肩を叩いたら、面白いように飛び跳ねて驚いた顔を見せてくれた陸テラちゃん。

キャップにリュックって、キャリーケースぐらい持ってきなさいよとか思ったりする。

スマホと私を交互に見て、そして固まる陸テラちゃん。

どうした、同期だぞ、笑えよ。

 

「胡蝶……ちゃん……」

「そうだぞ、一回会ってたんだぞ」

「よく会社にいたのに……」

「あー、都内だからよく事務所に行ってたな」

 

何でこいつ下向いてんの?

別に配信とかチャットで話したことあんだろ。

 

「な、なんか……大人っぽいね……」

「まぁ、歳上だし」

「そう……だね……」

「何か買ってく?見てただけ?昼は?どのくらい泊まるの?レッスンっていつ?」

「あ……えっと……えぇ……」

 

あれ?

……まぁいいや、お店の前で待ってるのもなんだしな。

 

「買うものないなら行くよ、車こっちだから」

「よ、よろしく……」

「ご飯は食べてく?買って帰る?」

「外で、食べたい……かな……」

「ラーメン?牛丼?バーガー?」 

「ちょ、ちょっと考えてみるね」

 

この辺に店とか何があんだろ、てかちゃんと着いてきてるか?

しっかし、小さいなぁ……ちゃんと食ってんのか。

 

「陸テラちゃんさぁ」

「な、何?」

「もっと食べたほうがいいよ、切り抜き見たけど45キロしかないんでしょ?」

「44キロだから!っていうか見たの!?」

「お、おう……急に大きな声出すじゃん」

 

びっくりしたぁ、あっマックあんじゃん。

 

「これは?気分じゃない?」

「えっ、あっ、麺がいい……」

「何系ラーメンが好き?ウチ、塩」

「……わかんない」

「分かんないかぁ、東京駅ってラーメンストリートあるんだよ。ちょっと行くか」

 

いろんなラーメンあるから、好きなもんあんだろ。

適当にブラついて、何となくで入ったラーメン屋で昼飯を取る。

この頃になると、少しコミュ障が治ったのか少しは話すようになってきた。

 

胡蝶ちゃんってノンデリだよね、良い意味だよ、とか言われたのが地味に傷付く。

今までの会話のどこにノンデリ要素があったのだろうか。

クッキー先生にも言われたけど、今回小さいとか言ってないんだけどな。

 

あー次の配信は、わっかフィットでもいいな。

三天堂さん、いつもありがとうございます。

 

「ここが胡蝶ちゃんのハウスね!」

「んっ……行くよ」

「えぇ……知らないのか……」

「何の話?オートロックだから早く来て」

 

私のハウスは私のハウスだが、何を言ってるんだ、構文か?

コンシェルジュにヘコヘコしてるテラちゃんを見ながら最上階専用エレベーターのボタンを押す。

都内住みじゃないから遠征するなんて大変だな。

親御さんに仕事の話もしてるらしい、ウチなんて隠してるんだけどな。

 

「えっ……最上階なの?」

「なんで?配信してたら煩いじゃん」

「あっ、そ、そうだね……」

「うん?あぁ……大丈夫だよ。ベランダから下に降りれるから、内側から開ければ緊急時には降りれるらしいの」

「そ、そうなんだ……地震怖いもんね……」

 

専用カードキーを挿して、ボタンを押して最上階に移動する。

部屋は余ってるし、掃除もしたからいいけど人泊めるの初めてだな。

 

「お、おっきいね……」

「何してんの、行くよ」

「えっ、ドア1個しかない」

「ペントハウスだからフロア全部だよ、何言ってんの?」

 

まぁ、最初はびっくりするけどタダ広いだけだしな。

月40万くらい家賃出してるけど割高に感じるし、投資してなかったらVだけだと赤字だもんな。

毎月、信用取引で200万行くからいいけど俺の時代みたいに毎月10とか20万しか稼げなかったら住めなかったろうなぁ。

 

「お邪魔します……」

「荷物適当に置いて、あぁシーツ変えたけど家族来たとき用の部屋があるから、そこ使ってね」

「胡蝶ちゃん……お嬢様だったんだね……」

「えっ、だってそういう設定じゃん」

「設定だけど……設定じゃない……」

 

まぁ、唯一の人に誇れる所だからな。

金しか自慢できる事がないなんて悲しい存在だ。

テラちゃんみたいな才能が羨ましいよ、フォローライブは、みんなすごいからな。

 

「あっ、風呂予約しといたから入りなよ。パジャマ、買ったから持って帰りなよ」

「えぇ、これいいの!高い奴だよ!」

「ブランドよく分かんないけど、女の子好きなんでしょ?ソルピケ」

 

アイスクリームみたいな生地だっけ、ブランドって理念とか思想強めだから面白いけど高いんだよな。

 

「ねぇ、探検していい!」

「子供みたいな事言ってんなぁ、私ベランダにいるから」

「あっ、タバコ……タバコはよくないよ……」

「部屋で吸わないから平気平気、あっ配信で言うなよ」

「うん……分かった……」

 

高いけど、夕方頃の景色は割といい。

空気は山に比べたら悪いし、夏はクソ暑いし冬は寒いけど。

ベランダの観葉植物に水やって、チェアーに寝転がりながらタバコを吸って、日経新聞を読む。

うーむ、小市民が考える金持ちみたいな生活でちょっとだけ好きな時間だ。

こんな生活だけ続けてたら、死にたくなりそうだけど、刺激とかなさすぎて。

 

「ねぇ!部屋の中に香水がいっぱいある!」

「あぁ……うん」

「ワインセラーあるよ!お金持ちみたい!」

「うん……そうだね」

 

なんかダウナーな気分で夕日見てたら、ベランダまでテラちゃんがやってくる。

あの、静かにしてもらっていいですかね。

報告したら探検を再開するガキがバタバタ走り回ってた。

いや、まぁ、防音あるけど下の階とか気にしてね。

 

「クローゼット!映画みたい!靴とかカバンもある!」

「私の家だし、知ってるよ……」

「ジャグジーだよ!シャンプーもいっぱい!お風呂広い!」

「…………」

「ソファで寝れる!テレビデカい!すごい、インターネット繋がる!」

 

いいよ、もう。

いちいち、報告してこなくてさ。

ゆっくりタバコ吸わせてくれよ。

ベランダのドア、いちいち開けるなよ。

 

「機械がいっぱいあったけど、あれ何?仕事部屋みたいなのあったけど防音室?あそこで配信してるの?」

「……チッ、案内するから待ちな」

 

タバコの火を灰皿に押し付けて消して、部屋に戻る。

色々説明してやらないと、しばらくは騒がしそうだからだ。

 

「なにこれ、飴?食べていい?」

「開けんな、お菓子じゃねぇから」

「あっ、タバコだ!こんなのあるんだ!すごいね!」

「テラぁぁぁ!開けんなって言っただろ、逃げんな!」

「えへへ、ごめーん!きゃー」

 

ほんと、マジでガキだな。

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