胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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頂点は依然変わりなく、悪役令嬢の胡蝶舞姫ですわ!

記憶を整理する。

偶に見る男性時代の夢を見る。

行きつけの病院で、話をする。

薬を貰う前の、いつものことだ。

 

「生理は時に精神的ストレスの影響もあるかと思います」

「そうですね」

「映像関係で中々言えないことがあると伺っています。守秘義務の範囲で、抱え込まないような環境を作れば改善するかもしれませんね」

 

言えない秘密ね。

今も嘘は言ってないが、本当の事も言ってない。

そろそろ、鬱陶しいし病院変えようかなとか思いながら薬を貰って帰る。

 

 

 

何度か足を運んだ先生の弁護士事務所にお邪魔する。

行き掛けにドーナツなんか買ってきたのだが、随分と忙しそうだ。

慣れてるのか受付の人はすぐに受け取って部屋まで案内してくれる。

やっぱ弁護士って儲かるのかな。

 

「全然ダメですね。前よりツイートもしなくなった。結果的には良かったかもしれませんが、開示請求という観点では……」

「そうですか」

「後少し、あと少しだったんだ。関係者なのは間違いない、業務上の守秘義務を盾にされたら、こっちだって動けない」

「ドラマとかでありそうですね、そういうセリフ」

「あぁ、たぶん、そういうのは弁護士監修なんでしょう」

 

以前から開示請求はしているが、最近は嫌がらせやセクハラツイートは、ないと言っても過言ではなかった。

あるにはあるが、今までの同一人物かは怪しいずっと昔からあるアカウントばかりだ。

少なくとも捨て垢での投稿はない。

 

メル先輩は説得したら、準備が出来次第引っ越しをする予定らしい。

引っ越しはマネージャーさんや私とか弁護士先生とか、あとは社長くらいのごく限られた奴しか知らない徹底振りだ。

いつかはきっと開示請求出来るのは知ってるが、私の言葉は勇気づけるための希望論にしか今は聞こえない。

 

「例えば男性職員同士、グループラインがあれば、その場にいなくても分かるかもしれない、社員の情報は明かせないというのは分かるが、もっと協力体制があれば」

「あとは関係者ですから、仕事先とかですか」

「それにしては、頻度が多すぎる。その現場で毎回いるなんて、同じ業界でもありえないはずだ」

 

プリントアウトされたスクショの束を見せながら、あーでもこーでもないと先生が唸る。

もっと淡々と手続きとかでやると思ってたけど、私の時より何か熱いな。

いや、熱心なのはいいことだけど……ね。

 

「頑張ってください。ドーナツも皆さんで」

「勿論ですよ、企業との契約は胡蝶さんのお陰ですからね。絶対に見つけてみせますよ」

「はい、お願いします」

 

いつ終わるのかは知らないが、確か去年そんなのあったんだとか、そんなことを思ってた気がする。

だから年明けまで分からなくても無理はない。

本来の歴史のように、見つけることは大分先なんだろうか。

 

 

 

コロナの情報はやってこない。

でも年末だった気がして、含み損の状態で株を保有し続ける。

恐ろしい金額の含み損、解消されると分かってても手が震える。

画面には私とは無縁の可愛くて自信たっぷりな私がいる。

ちょっと元気出た、よしやるか。

 

「音量大丈夫ですかぁー!うるさ」

 

画面には沢山の2Dモデル、フォローライブのみんながいる。

初めての大型コラボになるのか、私にとっては初めてである。

なので、なのでかは分からないが、すっごい音割れしてる。

みんな同時に喋ると何言ってるか分かんねぇし、うるせぇな。

 

「えっ、あっ、自己紹介ターンですか?」

 

みんな静かにと開会式の挨拶と自己紹介が始まる。

確認用の配信画面ではスケジュールなどが表示されていた。

おぉ、一人一人写してくんだ……へぇ。

ちなみに私は強い人のブロックだ。

 

『続いては、近づく者は全員燃やす。フォローライブの炎使い、悪役令嬢!胡蝶舞姫だ』

『はい!舞姫ちゃん、意気込みをお願いします』

「全員ぶっ飛ばしますわ!頂点はただ一人、この私!庶民ども、断罪出来るならしてみなさい!昨今は逆転するんですからね!」

『はい、結構ノリノリですね』

『にぇ……昨日考えたかいがありました』

 

一日で考えたワンオペかよ。

まぁ、最近は悪役令嬢にいじめられてハッピーエンドが主流の界隈で、徐々に逆転する実はいいお嬢様物が増えてますし、つまり負けヒロインじゃねぇーですのよ!

 

開会式が終わったら、個別の配信でマリカをする。

前回の敗北から、CPUとも戦ったし、レート戦をした私に不覚はない。

 

「始まりましたわ!悪役令嬢こと、フォローライブ2期生の胡蝶舞姫ですわー!」

 

コメント:はいじゃ……言ってない!?

コメント:そんな……ハイがないなんて

コメント:テンション高いな

 

「皆様ー!全員ぶっ潰して行きますわよー!スタートダッシュはセバスチャンから教わりましたわ、はいここ!」

 

コメント:誰だよwww

コメント:すごい、これが英才教育!

コメント:メルちゃんは?

 

私のキャラが華麗にスタートダッシュを決める。

まずはコインを集めて、他のスタートダッシュを決めた組と並走する。

全員ノーミス、流石はつよつよ杯に呼ばれるだけある。

 

「来ましたわね!庶民の癖に生意気ですわ、落ちろ!」

 

コメント:テラちゃんが死んだ!

コメント:この人でなし!

コメント:落ちろォ!落ちたな!

 

「生意気にも私のリスナーに可愛いと言われる庶民ですわ!悪役令嬢としてぇぇぇ!おのれ、ハルカゼェェェ!不意打ちとは卑怯な!誉れはどうした!」

 

コメント:あーあ

コメント:因果応報だね

コメント:ぴょこらとごはんも意外と上手いな

コメント:メルちゃんいないのに楽しそうだな

 

後ろを来るのはゲーマーズと呼ばれる人達。

配信者としては先輩の後輩。

猫又ごはんと犬神クリーム。

あと、三期生ですごい人気なバニーぴょこら。

そんで、私に赤甲羅当てた、黒井ハルカゼ先輩。

 

「おのれ、畜生どもめ!人間に逆らうとは革命か!貴族を舐めるなよ!」

 

コメント:悪役令嬢なのか?

コメント:戦国時代みたいなこと言ってないか?

コメント:フランス革命でもされんのかよ

コメント:引っ越すの、そんなに嬉しい?

 

アイテム抽選はお祈り、最終ラップは余裕で追い越せるが真ん中をキープする。

競馬で言ったら、先行と差しだ。

逃げはアイテムにやられる先頭だし、追込は間に合わないのがマリカだ。

 

「貴族がなぜ貴族なのか!それは資産額ですわー!そして、青甲羅なんぞ効きませんわよ!私、輝いてますからねー!キノコキノコキノコ、はい、スター!」

 

コメント:資産額(コイン10枚)

コメント:キノコが金ピカだ、強い

コメント:おぉ、1位だ

 

「ふぅ、まさに紙一重。コインやバナナが出ていたら負けていましたわ。ですが私の勝利でしてよ、オーホホホ!ゲホッゲホッ!」

 

コメント:この女、ノリノリである

コメント:無理するから……

コメント:あっ、スタートダッシュミスった

 

「あぁ!お、お待ちになって!クソが、ミスっちまった!アイテムですわ!」

 

コメント:一瞬、自我出てない?

コメント:胡蝶……そこにいるのか

コメント:悪役令嬢に乗っ取られてるのか……

 

「乗っ取られてございませんわ!あぁ、バナナ!なんてやらしいバナナ!アイテムの前に置くとは躾がなってませんわね!」

 

コメント:やらしいバナナですわー!

コメント:ヤバい、負けそう

コメント:キラー来いキラー来い

 

「こうなったら、出すまで抽選ですわ!当たるまでやれば、なんでここでキノコ!キノコはいらんですわ!タイムロスしたけど、キラー出たから良し!」

 

コメント:1位は2周目か

コメント:まぁ、最終ラップまでに捲れれば

コメント:コース取りは上手いからな、邪魔はいらないと早い

コメント:背中は見えた

 

「見えた隙の糸ですわ!オイオイ、追いついてんぞ!退きな、これからここは戦場になりますからね!」

 

コメント:やはり胡蝶が中にいる

コメント:煽り運転とか最低だな

コメント:悪役令嬢っていうより輩では?

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