てってってー、てれれー、みたいな最近見たアニメの音楽が流れていた説明シーンがあったのだろうか。
当人同士の話であり、部外者は関われないと、ここまで関わってたのに私は協議の場にはいられなかった。
いられなかったが、先生から聞いた話、マジで探偵みたいな事をしていたみたいだった。
弁護士先生は、偉い人達とマネージャーと青空メル先輩を呼びつけた。
そう事件の関係者だ。
理由としては、開示請求が難しく、今後についての話をしたいという名目でだった。
だが、集まって早々に言ったそうだ。
「犯人が分かりました」
「何の話ですか……今後の開示請求の話じゃ、貴方弁護士ですよね」
「あっ、はい……いえ、開示請求するまでもなく相手が分かったんです」
「そりゃすごい、費用が浮いて良かったじゃないか。で、誰が犯人だって?さんざん協力させて違いましたなら、誹謗中傷じゃないか」
まぁ、困惑する経理の人と協力者の危機管理部門から色々言われたそうだ。
そこで、すかさずメル先輩を見た。
なんでそこでメル先輩と思ったが、私には分からない考えがあったんだろ。
「事件発生後、貴方は何度も運営に相談した……そうですね」
「えぇ、でもそんな事実はないと」
「実際送ったというメールは会社側にはなく、マネージャー経由でも伝えたとの話だったが、私が来た段階で隠蔽されたという話でしたね。しかし、そこが違うのです」
どういうことなのとざわつく会議室、そこで弁護士先生はマネージャーを見ながら言ったのだ。
「社内側のメールを消して、代わりに相談していたフリで伝達を妨げていた。それが出来るのは、マネージャーさん……貴方だ!」
デーン!とみんなの顔色が変わり、衝撃が走ったそうだ。
まさか、お前だったのかと。
「な、なんの証拠があるんですか!可能性は考えられますが、会社側が隠蔽したとも言える。そうだ、貴方お金を貰ってるからそんな嘘を!私をハメるつもりね!」
「何をいうか、失礼な!私達はコイツとは関係ない!」
「証拠なら、あります!」
そんな感じでカッコいい一言によって、みんなが黙ったらしい。
何だそれは、決定的な証拠があるのかと。
「全てのツイートを確認すると、スケジュールを把握しているのは社内の人間だけ、そして貴方は会社が隠蔽している、非協力的だ、ストーカーは男性かもしれないと、意識を誘導した」
「ち、違う!そんなこと!普通、ストーカーは男じゃない!」
「リンさん、貴方にストーカーが男性だと言っていた人物はマネージャーだけだったのでは……」
「そんな……嘘でしょ!」
立ち上がるメル先輩、そして泣き崩れるマネージャー。
この瞬間、やはりと皆が確信したらしい。
「決定的なのは、引っ越しの話を知ってるのが限られた人物しかいないのに胡蝶さんの配信で、引っ越しを示唆するコメントがあったことだ。開示請求すれば貴方だと分かる」
「あ、あの女が悪いのよ!本当なら、リンは私を頼ってくれるはずだったのに!あの女が、あの女が……」
「辛かったな、だが貴方がやった事は罪だ。あとは、リンさんと示談しましょうか」
「うぅ……先生……ありがとうございます」
と、まぁこんな感じに綺麗に纏まったらしい。
さて、そんな事を教えてくれた弁護士先生を前に、事務所でアイスコーヒーを飲みながらずっと聞いていた私は口を開いた。
「嘘くせぇ……で、本当は?」
「胡蝶さんの配信のコメントを印刷して開示請求するけど、貴方じゃないんですかって言ったら、胡蝶さんが悪いって言ってすぐに分かりました。ずっと暴れてたので、本当は綺麗に纏まってないです」
「ですよね……最初リアリティあったのに、急に何だこいつみたいな展開でしたし」
「何なら自分より可愛い女が楽して稼いでたのが気に食わなかったのが理由だし、最近は胡蝶さんも気に食わなかったから粘着してたのに気にしないからコメントしてたらしいです」
いや、どれだよ。
アンチなんか多くて、いちいち反応してられねぇよ。
何なら相談しようにも、プライベートの時間は彼氏といるので、スケジュール調整しましょうかってウチのマネージャーはビジネスライクだよ。
マネージャーのお前とメル先輩みたいにミーティングと称してストーカーの事とか親身に話したりしねぇよ。
「会社も想定しておらず、実際にスケジュールも常に一緒の行動をしていたら把握されてるから間違いないでしょうね。今後は担当を外すそうです、大事には至ってませんが、えぇ……あっ、大空メルさんの方もショックでしょうね」
「先生、青空です。青空」
「あぁ、失敬。青空さんでしたね……難しいですね、キャラクターに人格権を持たせるとか今後の争点になるかな」
私の男時代、なかなか見つからなくて翌年ぐらいまで掛かって、会社は何やってんだとか関係者って何だとか、男をマネージャーにするなとか、色々言われていたけど、蓋を開けてみれば、上手いこと情報伝達を撹乱しながら男性社員に目を向けさせて、ネットストーカーという性別の分からない手段で嫌がらせしていた訳だ。
「会社も声明出すんだ……」
「まぁ、まさかこんなに早く解決出来るとは思いませんでしたよ」
「ある意味私のおかげなのか?」
若くて金持ってて生意気な女が横で好き勝手やってたら嫉妬……嫉妬するんだろうか?
まぁ、とは言えだ。
本来よりもだいぶ早く解決したのは確かで、精神的にもそれほど重いレベルで先輩が辛い思いをしていないのだった。
なお、結局会社からの声明文には企業としての対応が遅いとかタレントの管理が出来てないとか、タレントから動かないと対応しないのはどうなんだという非難は相変わらずあった。
まぁ、運営会社とタレントが揉めて会社ごと消える事が多い時代だからね。
でも男時代同じことを思っていたが、裏を知れば時間も掛かるし対応も揉み消されてたら気付けないよなと擁護する気持ちは湧いてくる。
但し、本人が相談乗ってから適当に対応してたのはマジでクソなので、弁護士先生を顧問契約して部署の体制見直すならちゃんとやってほしい。
月末になった。
最近は、黒井ハルカゼ先輩がソロでバースデーイベントを、東京、大阪、名古屋、福岡、追加で上海で行った。
嘘のように忙しい年末がやってくる、翌年からライブが控えているからレッスンが増えたからだ。
因みにコロナはまだ来てない。
「ハァハァ……25の身体だぞ……なんでこんな体力足らんのや……」
「ダンスって意外と疲れるんだな」
「逆に……お前はなんで平気なんだよ……」
平然と横でレッスンを受ける同期の昴にびっくりする。
ええい、アイドルの体力は化物か!
いや多分、タバコのせいもあるんだろうけどな。
ダンスなんてやったことなかったから、変な筋肉使って筋肉痛になるし、なんかダンス経験少しありますみたいな子が多くて、女子ってみんな踊れんのかよと驚いた一幕もあった。
「先輩、これ……」
「陽街ちゃん……ありがとう!えー、好き!」
「何だコイツ、見たことねぇ顔してる……」
「うるせぇよ、ほら休憩終わったら再開するぞ」
「雑ッ!扱いの差ァ!えっ、態度違うよねェ!」
チッ、うるせぇな……推しがドリンクくれたら嬉しいだろうがよ。
それに内々だが来月の12月になったらフォローライブに移籍してくるんだぞ。
それは、態度違くても仕方無いだろ。
後輩になるわけだしな、うん。
12月はイベントが盛り沢山。
同期や先輩がいろんな大会を開くからだ。
コレクション出来るモンスター、コレモンの大会とか、ミミズになるスリザリンとか、お互いの陣地をペンキとかスプレーで塗るスプレートゥーンとか。
そんで最後は、年越しのイベントとかやったりする。
「はぁ、胃が痛い」
「何だ胡蝶、便秘か?痛っ」
便秘じゃなくて大量の含み損で胃が痛いんだわ。
コロナ、実は来ないんじゃないだろうか。