胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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お労しや姉上……切り抜きを見なければ無作法というもの

コロナはまだ来ない。

炎上したとはいえ、スルーしてなかったことにするために百目鬼ちゃんは普通に今まで通りだった。

まぁ、認めるに認められないしな。

 

何なら、同期から慰められてたりしたらしい。

大海なんか、肉まんのレビューしてディスってしまって炎上してたらしい。

知らん間に燃えてるって何?馬鹿なの?

 

「ねぇ!なんで二回も昴が足を痺れさせなきゃならんの!」

「それは本当の昴と私の動きに声合わせる昴のダブル収録だからだよ」

「馬鹿じゃねぇの!?」

 

そんな中、私はと言うと、ゆくフォローくるフォローという年末番組の収録をしていた。

出来る人は生だけど、無理な人は録画で対応するのだ。

ぶっちゃけ、録画のほうが音質いいし、テレビのパクリだよね。

因みに私はキャラ的に格付けに出る。

 

「そう言えばさ、見た?」

「主語を言えよ、4期生でしょ」

「それな!マジヤバイよな、ウチの会社」

 

12月中旬、フォローは四期生であるフォローフォースを発表した。

天音ソナタ、真島ココ、角突わたあめ、白夜トワ、姫川ルナの5人だ。

準備が出来次第で、早い人は年内デビューらしい。

全然目新しさはないが、それは見覚えがあるのだろう。

だいぶ、昔の記憶は薄れてきたけどね。

 

「オッケー出たからこれで」

「あー、格付けだっけ?出来んの?」

「あれって台本あると思ったら、ガチらしい」

「えー、昴もやりたいッス!」

「運営に言ってくださーい、はい」

 

昴と別れたらクッキー先生と合流、ペアで回答するからだ。

収録では、お茶や肉とかボールペンとか、さっきまでやってた昴がどっちが本物かなどをやる。

明らかに透き通ったお茶、デカくて脂の乗ってる柔らかい肉、うーんこれは視聴者でも分かりやすい演出かな。

ボールペンとかから分かり辛いぞ、まぁ全問正解だけど。

 

「一流アイドルとなった胡蝶さん、感想を」

「まぁ……お嬢様ですし、毎年勝たないとですね。来年からは答え書いといてくれない?」

「はーい、本家のLIGHT枠になろうとしても不正はしないで下さーい。以上、格付けでした!…………はい、お疲れ様でしたー!」

 

スタッフAちゃんの司会が終わり、次の収録。

収録が終わったら何が始まる……収録だ!

ちょっと休憩を挟んで、煩悩と抱負について録画したら仕事は終わりだ。

ケータリングなどはまだそんなに用意出来てないのか、自費でみんな集めていた。

まぁ、タレントに用意すると一緒に働いてるスタッフの不満とかありそうだもんね。

 

「食べていい!?食べていいの!?」

「いいぞ」

「えぇ、テラちゃん羊羹とかお婆ちゃんじゃーん」

「知らないの!?これ、高い奴なんだよ!」

「えっ、シオンも食べたい」

 

まぁ、自前でお菓子とか買ってきたけど。

旅行とか行ったら会社に買ってくるみたいな感覚だ。

私が炎上や小火でどんだけお菓子買ってると思ってんだ。

そんなに買う機会なくていいです。

 

「あっ……」

「あっ……」

「も、もちちゃん……これ、あげる」

「あ、ありがとにぇ……」

「……う、うん」

 

ワイワイガヤガヤしてて文化祭みたいだなと思ってたら、陸テラちゃんが人見知りしてる場面を見てみたりした。

 

「えっ、お前ぴょこらかよ!」

「な、なんだよ……」

「えー、テンション低くない」

「お前はお前で相変わらず可愛いな!」

「胸はないよね」

「っざけんな!牛女が、ぶっ殺すぞ!」

 

わー、3期生は3期生で仲がいいな。

ウチの事務所ってグループに1人は陰キャ入れないといけないルールがあるんだろうか。

普通に知ってる配信者さんだ、中の人って呼ばれる奴。

あの人可愛いけど情緒不安だな……この世界でも引退してしまうんだろうか。

してからは叩かれまくって、めちゃくちゃ転生してたイメージがある。

ヤベーことだけは、ちゃんと覚えてるんだな。

 

運営さんの努力により、光の歴史だけでフォローライブ年表が作られる。

すごい、私の炎上が消えて10万人突破とか15万人突破とかしか書いてない。

こうやって見ると、10万人突破だらけですごいな。

 

「こ、胡蝶ちゃん……」

「なんだよ、どした?」

「あの、こないだは……」

 

こんな感じでやりますよ、とスタッフさんが作ってくれてた年表の資料を見てたら同期の百目鬼菖蒲がやってくる。

炎上したのなんて2週間くらい前なのに、まだ引き摺ってんのかよ。

面倒くさいなコイツ、炎上したもんは仕方ないだろう。

 

「しつけぇなぁ」

「わぁ、あぁぁぁ!やめ、やめて!髪が!」

「失敗くらい気にすんなよ。それで辞められた方がメンタル来るから」

「辞めないけど、いや、髪!」

「意外とサラサラだな」

「意外とって何!?セット崩れるからやーめーてー!」

 

いや、本当にね。

後輩が病んで辞めてるのとか10年務めたら見まくるから、1年に誰かしら定年以外で辞めてるんだもん。

なんなら、どかって辞める時期とかあるからね。

同期が辞めがちな方だから、あの頃何人残ってたかな。

 

そう考えたら、この人生での同期は少ないからか辞める人もまだいない。

誰も辞めないでは、多分無理なんだろうな。

なんか、起きるべくして起きてる気がする。

 

抑止力って奴だな。

正月特番のアニメで見た、今年もやるらしいから見なきゃいけない。

対策するように言ってもストーカーとか起きたし……ということで、頼むからコロナ起きてくれ、世間的には起きて欲しくないかもしれんが個人的には助かる。

 

「またボーっとして何考えてるんですか?」

「あっ、陽街ちゃん」

「分かりました、この……ぼ、ぼんのう?って奴ですよね、なんなんですかね」

「将来の事だから違うけど……欲望の事ね」

「最近、人気落ちたって言われてますもんね」 

 

実はそうなのである。

飽和したVTuber業界、いるだけで珍しい時代は終わった。

俺、全部VTuber分かるぜとか言ってる時代は遠く昔。

 

今はもう分からんくらい増えて、みんな同じで、大手すらやってること一緒でやっぱテレビの方が面白いよねとか言われる冬の時代だ。

ツースリーさんなんて、面白くないからとかそんな理由で炎上したり、デビューで10万人行かないし落ち目だなとか言われてる。

 

「煩悩……欲望……やはり、ガチャか」

「程々にね」

「このままでいいのか分かんないですもんね、ブーム終わるのかな」

「大丈夫だよ。こっからどんどん人気になれるから」

「胡蝶さんって、いつも自信満々ですよね!流石です!」

 

あー、うん、いや、君の未来とか知ってるからね。

自信満々……そうか、まぁ先の事なんか分かった気でいるから、そうかもな。

とはいえだ、収録をしなきゃいけない。

陽街ちゃんと別れたら、カメラの調整をして収録である。

 

「煩悩は……お金が欲しい。歌ってみたも、壁紙も、ライブも、お金さえあれば……3桁飛んでくのに震えが止まらない」

「メタいメタい!胡蝶さん、次、抱負お願いします」

「抱負はコラボ増やして行きたいかなと、色んな人が増えてきたので、来年は頑張ります」

 

全部の収録を終えて、一度家に帰る。

クリスマスはお婆ちゃんや家族が家に来るのだ。

まぁ、部屋とかいっぱいあるし、金持ち!みたいな生活してるからみたいわな。

ちなみに、親には芸能関係で映像編集とかする仕事とか言ってるから、VTuberはバレてない。

 

「ただいまー」

「お帰りなさい。胡蝶、お酒しかないじゃない。スーパーで買ってきたわよ」

「やめてよ、コンシェルジュの人も困ってたし」

「いつもお世話になってるんだから年末くらい挨拶と菓子折りくらい良いじゃない」

 

そういうもんなんだろうか、まぁ営業やってる母の方が正しいかもしれない。

お父さんはお父さんで、私のウイスキーを普通に空けてるし、高いのに勝手に開けんなや。

 

「おっ、今帰りか?彼氏とデートでもしてたんか?」

「いねぇよ」

「口悪いから出来ねぇんだよ、寂しい奴だな」

「それ以上言ったら怒るよ」

 

うーん、この親にして私はあるのかもしれない。

ノンデリって言われないように来年は気をつけよう。

さて、クリスマスパーティーだ。

配信のネタに使えるかなとか思いながら普通に楽しんで、ソファーで弟とテレビを見ていたら、切り抜きなんか見始めてた。

今どきの子だな。

 

『凱旋?あぁ、見た見た。割と有名な曲だからバトルだけじゃなくて音源聞けよ、耳馴染みないとか普段何聞いてんだよ』

「やだよ、アンタみたいな事言ってるわね。ラップかしら、アニメなんか見てないでネトフリみたいんだけど」

「テレビ他にもあんだからいいでしょ、あとアニメじゃないよ」

「それにしても声も似てるな……いや、気のせいか!」

「親父はアイドル見ても見分けつかないし、酔ってんじゃないの?」

 

……消してぇ。

えっ、普通に座ってた頃にやり直したい。

やり直して、弟からリモコン取り上げたい。

 

『今年は配信もうやんないかな、家族と過ごすから……ほら気軽に感染症とかで出歩けなくなる前に会っときたいじゃん……あー、そうそうインフルとか感染症って表現くらいで炎上とか言うなよ!流行り病ね!はいはい、チッ、うるせーな』

「本当に口悪いわね、中に人が入ってるの?声優さんって奴ね、胡蝶好きだもんね」

「どのアニメの声優なの、胡蝶ちゃんいつもこのアニメのって教えてくれたね……」

「婆ちゃん、アニメじゃないよ。VTuber、姉ちゃんも仕事で関わってそうなの、俺もプログラミングってこういうの作ったりするんだよ」

「不思議だねー、中継が遅れないんだ」

「中継……いや、配信っていうのはね」

 

なんでお前、家族の前で私の切り抜き見てんだよ。

お前、確信犯か!知っててやってんのか!

マジで弟とはいえ、ブチ殺すぞ貴様!

殺すためだけに鬼になれるぞ、お前!

 

「姉ちゃんなんか良い歳してオタクだから、コイツとか知ってるよ」

「あっ、うん」

「ラップとか聞くし、何か株の話とかしてんの、やってるゲームも姉ちゃんとやった事あるやつだし」

「おっ!そうだゲームあるじゃねぇか、お父さんあれ、マリオのアレやりたいわ、昔はファミコンでやってたんだ」

「ピコピコばっかやってたねぇ……アンタ……」 

 

そ、そこかー!

導線そこかー!

でも、お父さんが騒いで有耶無耶になったのでバレなかった。

あー、顔熱い。

酔っ払いもたまには役に立つな。

 

「ゲームばっかだし、声も似てるからコイツってお前なんじゃね?」

「お父さん!お前って言わないで!怒るよ!」

「お、おう……そんな怒るなよ、ごめんって……」

 

やめろ、二度と口にするんじゃねぇ!

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