胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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【一幕】隣の人が怖いと思ったら中身はオタクだった

とまりうみを始めとし、2017年始動のプロジェクト、フォローライブ。

フォロー社に所属する24人のバーチャルアイドルたちが2時間超の音楽ライブで、新曲も含む30曲以上を披露する。

 

開演前のコラム記事を読む。

色んなメンバーがいて当然読むが、目当ては自分の推しだ。

インタビュー記事、強気な姿勢の彼女の言葉が載っている。

 

【まだ一歩踏み出しただけ、100万人の通過点に過ぎない。今の私にとって偉大な一歩でも、これからの私にとっては踏み重ねていく一歩に過ぎない】

 

直前の配信でも余裕だとビックマウスで、自信に溢れていた。

まぁ、裏では同期から緊張して吐きそうって言いながらレッスンしてたのを聞いてる。

最初から掲げる目標の100万人、当然のように出来る風に配信では強気な彼女の初めてのライブだ。

今からでも楽しみで仕方ない。

 

現地には巨大なモニターがあった。

男性客もたくさんいて、女の子は少ない。

それもそうか、アイドルのコンサートなんかそんなもんだ。

 

「おい、ちょっと良いか?」

「かひゅ……」

 

そんな事なかった。

なんか入れ墨とか鼻にピアス付けたゴリマッチョに話しかけられた。

 

「悪いな、隣の席でよ」

「あっ、あっ……」

「お前……」

 

お前、隣かよぉぉぉ!

ちょっと、助けて、なんでみんな距離を取るんだよ!

今、目とかあったよね!助けてよ!

 

「その缶バッジ……痛バって奴か。気合入ってんな」

「あえっ……」

「現場は初めてでよ、煩かったら悪いな」

 

そう言ってドスンと巨体で座る怖い人。

あっ、ちゃんとペンライト持ってる。

しかも、よく見たら胡蝶舞姫推しTシャツ4800円税込を着てやがる。

 

「おかしいな、どうなってんだ」

「それ、ここを取れば通電して光るんですよ」

「おぉ、マジだ。ありがとうよ」

 

フッ、そうと分かれば怖くなんかないぜ。

ペンライトの使い方くらい教えてやるよ。

同じマイメンの誼だ。

 

「使いますか?」

「お前……罵ってなんて団扇はどうかと思うぞ」

「えっ、胡蝶ラブの方が良かったですか」

「いや、大丈夫だ……多様性って奴だな」

 

意外と遠慮出来る人間なのか断られてしまった。

とはいえ、会場が暗くなりライブが始まる。

歓声と共に、OPムービーだ。

あっ、うみちゃんだ。

 

「うぉぉぉ!キター!」

 

自己紹介ムービー、それぞれの出演者が現れて、推しであろう人達の歓声が聞こえる。

そして、巨大なモニターには一瞬でお揃いのアイドル衣装を着た彼女達が現れた。

全体曲だ!夏に急遽踊らされた、あの!こんな序盤で!?

 

「うおぉぉぉ!何やってるんですか、立って!」

「えっ、立つなってアナウンス」

「みんな立ってるでしょ!はい、振って!うぉぉぉ!」

「お、おう!うおぉぉぉ!」

 

周りに合わせて色を変えながら振りまくる。

なるほど、全体のあとはソロパートなのか。

順番が分からないが、みんな可愛い。

 

「おい、来たぞ!どうしたらいい!」

「あっ、ホントだ!赤です、こう!」

「よし赤色になったぞ」

 

会場全体が真っ赤に染まる。

瞳と髪のインナーカラー、今じゃ炎上の方が有名な苛烈な彼女らしいカラー。

黒い画面の真ん中に火柱が発生して、中からアイドル衣装を着たポニテの胡蝶舞姫が現れる。

可愛い、新しい髪型はポニテ、かわいい!

 

『約束を果たしに来たぞ。待たせたな!』

 

聞いたこともないような爆音が響く。

これはシンセサイザーか、ゲームサウンドみたいだ。

しかも新曲じゃねぇか。

 

「4つ打ちか。リバーブやディレイが効いてやがるぜ!」

「どうした急に!?」

「フェスみたいで盛り上がってきたな!」

 

身体に響く重低音、高い声と低いバックミュージック。

曲の速度は大分早い。

ボカロみたいな早口だ。

それでいて序盤から徐々に曲自体も早くなっていく。

 

皆が聞いている。

というより、一部しかついていけてない。

だが、一つだけ分かることがある。

 

「音が早まってきたぞ、来るぞ!」

「何かが来る!」

 

曲は知らないが、曲の構成は序盤に盛り上げて最後にリズムが収束、誰にでもこれからサビだって分かる構成ってことだ!

しかも、同じリズムだから一回聞いたら何となく合わせられるぞ!

やっぱりサビじゃねぇーか、しかもいい曲じゃねぇか!

 

「うぉぉぉ!いいぞ!あっ!」

「あっ、こっち見た!手振ってる!」

「走り回ってるぞ!すげぇな、本当にいるみたいだぜ!」

 

歌は、たまに声が聞こえなくなる時はある。

それは、まぁ、走ってるとか動きながらってのもあるんだろ。

でも、録音じゃなくて生だからこその演出と思えば悪くない。

 

『ありがとう!明日公開するMVも見てね!』

 

そう言って彼女の姿が舞台袖へ消えていく。

一瞬だった。

あっ!衛ちゃんだ、今日もかわいいー、ヤッター!

 

「うぉぉぉ!何やってんですか、次は青ですよ!」

「お、おう……うおぉぉぉ!」

 

そしてライブも中盤、MCパートを挟んだらユニットパートだ。

1期生が集まって歌い出す。

これは、来るぞこれは、来た!2期生でライブだ!

画面に6人で写った姿が見える。

 

すごいぞ、新曲は全体曲が2つに胡蝶のソロ曲だ。

最後は全員のMCパート、全体曲を歌って、EDムービーだった。

楽しかったな、来年も抽選当たったら見に来たいな。

 

「あっという間だったな」

「ですね」

「物販はねぇのか?」

「えぇ、どうだろ……探しますか」

 

物販は見つけられたが、商品はそんななかった。

 

 

 

家に帰って翌日。

昨日は知らない人と飲みすぎたな、陽キャになった気分だぜとか思いながらダラダラと土曜日を過ごす。

Twitterを見ていたら……なんか推しが燃えていた。

 

「えぇ……」

 

内容としては、新曲発表なんて運営から優遇されているのはおかしいという物だった。

リプライで自費なの知らないのとか、運営がお金出さないことなんてあるのかとか、賛否両論だ。

 

他にも全体ライブの雰囲気を壊すとか、それも良いと言う奴もいて賛否両論だ。

まぁ、新しすぎると言えばそうだが、それぞれのソロ曲を流してたし、雰囲気壊すとか言っても全部雰囲気違ったけどな。

 

後は、まぁ声が掠れてるとかパフォーマンスの質が悪いとか、求めるハードルが高いのも可哀想だ。

 

「あっ……こりゃあ」

 

すぅたん@suu3dd

なんかファンもキモかったけど言うほどのライブじゃなかった。私がやったらもっと綺麗に歌えるし、所詮VTuberなんて素人だしこんなもんか。舞姫とか名前負けでしょ。ダンス頑張って欲しいわ

胡蝶舞姫 フォローライブ二期生@maihime_cotyou

返信先:@suu3ddさん

ライブ来てくれてありがとう!じゃあ、フォローライブ応募待ってるね。きっと、綺麗な歌声でちょっと練習したら完璧なダンスも出来るし、きっと私より才能あるから出来るでしょ?したらスクショ送ってね?

 

 

 

ご丁寧にリツイートといいねしている。

可哀想に、どのくらいでツイート削除されるんだろうか。

リプライにスクショ取ったぞとか書かれてるのは、みんな消されるのに慣れてるな。

 

どうしてすぐに燃えに行くのか、何も学んでない。

いや、ガチだから沸点低いのかもしれない。

うんうん、そういう子供っぽいとこも含めて俺は推していこう。

 

でも、取り敢えずお気持ちはしとこう。

あまり、炎上するような可能性があるから反応しない方がいいよって、今日の夜には振返り雑談あるからな。

 

「あっ、早速記事になってる。まぁ、まとめサイトやし小火だな」

 

ボヤが多すぎて慣れてきちゃったけど、普通はこんなまとめサイトに乗らないんだよなぁ……

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