COVID-19という名前で全世界にコロナが伝わった。
日経は一時的に上がったがどんどん下がっている。
日本では初めての死者が出て、世間ではクルーズ船に感染者がいると大騒ぎ。
クルーズ船の奴らを降ろすな、人権侵害だ、などと世論は騒いでる。
VTuber界隈では、お隣のツースリーでガチ恋勢がすごい多い、御伽ノ国薔薇さん。
通称、ギバラさんが活動休止というか配信を控えるツイートをしていた。
ネットでは以前からイラストが気に食わない、プレッシャー感じるなどと絵師…所謂ママとの関係が悪かったらしい。
問題になったのは、風俗広告のパロディネタをされたのがイラストレーターさん的に嫌だったらしい。
まぁ、清楚なキャラとして生み出された娘が風俗やってるんだから嫌かもしれない。
で、それがきっかけで住所を晒してストーカーに突撃されたとか、それが理由でイラストレーターの契約が解除されたとか。
憶測ベースの話だけど、タイミングからして仕方ないかもしれない。
20万人もいる大手の主力メンバーさんなので、向こうは大騒ぎしてるらしい。
私の資産は空売りしすぎて吐きそうなくらい損害が膨らんでいる。
毎月空売りを仕掛けて、9月から2月の半年。
含み損は2700万になった。
コロナになって下がったのに、なんでか年末の水準まで一時的に戻ったのだ。
今時点で確定させたら吐く。
資産が7000万になる、吐きそう。
今の平均額は22500円、つまり6億円使ってこれを下回らないと利益は出ない。
マスクメーカーが400円から3650円と9倍になったので8000万くらい儲かったけど、こっちに6億ぶち込んで54億にしとけばよかった。
っていうか商船御三家は含み損である。
なんで……上がるはずなのに、ホールドしていいんだろうか。
控室でスマホをポチポチ弄っていた私の髪を誰かが触る。
おい、なんで三つ編みになってんねん。
「あっ、気付いた」
「クッキー先生何してんの」
「ほぉ~ら、眉間にシワ寄ってるわよ」
「触んなや、やめーい」
なんか集中していたのか、全く気付かぬ間に髪の毛が弄られていたらしい。
普通気付くやろ、私ヤバすぎ。
周りを見たら、みんな思い思いに過ごしてる。
大体同期で集まってるけど、他の期生とも喋るようになって、何となくこないだのフェスから全体の仲の良さが上がった気がする。
まぁ、私に絡む人は相変わらず少ないんですけどね。
「おい、行けよ」
「ちょ、待ってよ」
「ねぇ……こっち見てない?」
そんな私の視線の先には、モジモジしてる黒鉄さんとその後ろに隠れるぴょこらの中の人と船長こと豊穣さんがいる。
女子校みたいだな、何かワチャワチャしてる。
「あ、あの」
「何?」
「あっ……すいません」
なんか謝りながら離れていく黒鉄さん。
待って欲しい、どういう事なの?
「眉間眉間、アンタ怖いわよ」
「はぁ?」
「いや、慣れないうちは目付きと口調怖いから」
「そうなの?よく分かんないけど……黒鉄さん、ちょっと」
「はい!」
クッキー先がなんか言ってくるんだが、私って怖いんだろうか。
何モジモジしてんだよ、呼んでんだから早く近くに来いよ。
「はい、すいません、何でしょうか?」
「私って怖い?」
「えっ、えぇ……こ、怖くないです」
「いや、どストレートか!その聞き方は怖いやろがーい」
「チッ……チョップすんのやめーや!」
ペシペシ私の頭にチョップが繰り出される。
おい、人の頭三つ編みにして叩いてくるとか大概にせえよ。
いや、言い方キツくないだろ?よく言われるけど、今のはそんなことないようにしてるつもりなんだけど。
ぴょこらちゃんの方を見たら、目を逸らされた。
「衛ちゃーん」
「はーい、何ですかぁ?」
「私って怖いかな?あっ、ソナタさんと話してたのにごめんね」
「いえ、問題ないです。胡蝶さんはカッコいい大人です」
「えへへ、そうかな」
「はい、胡蝶さんはカッコいい大人です」
ほら、ドヤァとクッキー先の方を見たら首を振られた。
なんで、だって推しが言ってるんだよ?
推しが言ってるんだから絶対あってるよ。
「言わせてんじゃん」
「そんなことないよ。ないよね、ソナタさん?」
「はい!胡蝶先輩はカッコいい大人です!」
「ほら」
「いや、言わせてんでしょ」
「何、ソナタさん嘘ついた?」
「ついてないです!本心です!すいません!」
なんで、ねぇなんで先生、頭痛いみたいなポーズとんの。
尊敬される先輩なんだよ、本当だよ。
クッキー先、なんで呆れんのよ。
「はぁ……黒鉄さんが渡したい物があるんだって」
「あ、あの……こないだの誕生日ライブ最高でした。あとこれ、デビュー配信の時のお礼も兼ねて、チョコです」
「チョコ?なんで」
「えっ、バレンタインなんで……」
「あっ、そうか……」
そうじゃん、2月ってバレンタインなんだ。
やったー!甘いの好き!チョコだー!
「んっ、ありがとう。食べていい」
「はい!」
わーい、なんか生チョコだ。
る、ルイズ?ロイズ?よく分からんけど、高そう。
そうだ、お返ししなきゃ。
「マネージャー、ちょっと」
「はい!ど、どうしました?また何かやっちゃいました?」
「これで駅前かなんかでチョコ買ってきてくれる。高そうなの、ゴディバとか。10箱くらい、足りなかったら出すし、お釣り上げるから」
「えっ、えっと……ちょっと、先輩とかに良いか確認します」
取り敢えず5万くらいあれば足りるだろうか。
5000円くらいすんのかな一箱、高いならきっと美味いはず。
ゴディバとか、飲むチョコレートしか買ったことないけど。
「アンタって……」
「うん?」
「金銭感覚ズレてるわよね……」
「ねぇ、なんか冷たくない?何、生理かなんか、痛っ!ガチデコピンじゃん!痛ったぁ~、えぇ冗談ですやん」
「……デリカシー覚えなさいよ」
女同士ならセーフじゃん!何、買えに行けそう?よし、行って来い気を付けてな。
えっ、あっ、出番とか来る感じなのね。
分かった、分かった、タイムテーブル見とくから早く買ってきて、大丈夫リハしたから、気を付けてな。
マネージャーに買い物にいかせて、昼から夜まで3部やる。
1分だから短いと油断した、列がいっぱいあってずっと喋るのだ。
私達は全然1分じゃない、30分に一回休憩を挟むが1時間半3セットだ。90分が3回もある。
場所は体育館が映って見える。
カメラ越しにリスナーの待機列が見えるし、何やら各自の切り抜き動画みたいなのが流れてる、マネージャー聞いてないよ!
『じゃあ自己紹介ですわ〜!少々お待ちになって〜!夢はでっかくチャンネル登録100万人ですわ!だから待ってなさい!夢を叶える瞬間を見てなさい!これは約束ですわ〜!オホホ!えー、胡蝶よく分かんなーい!ざぁーこざぁーこ!おい、こっち見るなよ……だーいすき!キャッキャ!』
しかも何だ!この、クソMAD!誰が作った!合間に歌枠とか挟んでるけど、初期配信と最近の混ぜるな!キャラ違うんじゃぁぁぁ!てか、そんなこと言ってたのかよ、私の全体絵出たけど、それでループすんのも何!?
『えー、皆様。この大変なご時世の中、本日は誠にありがとうございます。無事開催出来て』
しかも、人が悶えてたらなんか開幕の挨拶とか始まったぞ。
いや、体育館みたいなとこで学校みたいだな!
ツッコミ追いつかないぞ!てか、始まった。
『こんこちょー』
「こんこちょー」
『いつも配信見てます!ちょむすけです、歌枠とか歌ってみた最高です……えっと、あと話すことないです』
「えぇ……ちょむすけね。配信で探してみるね」
『どうしよ、そういえばLIVE良かったです!新曲もボカロみたいでカッコいいし、あと歌ってみたとか、いや言ったか、えっと、あっ、時間?もう?最高でした!また後で!』
「お、おう」
最初に来たのは、なんかシャツにジーンズの普通のメガネかけた青年だった。
スタッフが肩を叩いたら一分の合図なのか交代していく。
とりあえず、スマホに名前をメモっておくか。
『はじめまして、いやいつも見てるから違うか……えっと、あいぽんです』
「うん、いつもありがとう。女の子のリスナーだ、ロングスカートとブーツの合わせ似合ってるね。ファーも可愛い」
『ありがとうございます!胡蝶さんって、普段どんなの着てたりしますか?』
「私は色んなの買ってるからこれってのは、でも基本的には露出少なめで女子アナみたいって言われるコーデが多いかな」
『見てみたいです。いつか見れたりするんでしょうか』
「あっ、じゃあ、あいぽんの為にコーデ一式今度ツイートするね。あっ、時間だ。ごめんね、あんま喋れなくて、今日はありがとねー!」
二人目は可愛い女の子だった。
高校生くらいかな、高いのに嬉しいなぁ。
『よろしくお願いします。杉本清です』
「あっ、はい」
『私の胡蝶舞姫さんを知った切っ掛けは株の配信でした。最近は含み損のツイートしてましたが、やはり新型肺炎を懸念して空売りをしていたんでしょうか。9月頃からでしたら、年末にかけて株価も上昇してますが、それとも個別株か何かで』
「空売りしてますね……今日は2700万くらいマイナスです。分散投資です、下がるとは思ってます」
『ちなみに銘柄などはETFですかね』
「連動型のETFにしとけばよかったんですけど、個別で色んなのたくさんやってます。正直管理出来てなくて手間です。あと、商船系でマイナスです」
『商船系……なるほど、コンテナですね。良いこと聞きました!では!』
3人目はガチサラリーマンみたいな人だった。
多分、株クラの人だ。
いたんだな、本当に株クラスタの奴。
『ウッス、コテハン、カブトです!』
「あっ、はい」
『新曲良かったッス!あと、ダンスも良かったッス!聞いてる曲とか知りたいッス!今度プレイリストとか教えて下さい!オナシャス!』
「うん、カブトくんありがとうね。載せるね、プレイリスト」
『最後に、カブトくんだーいすきってお願いします!』
「あっ、はい……カブトくん、だーいすき!」
4人目は厳つい青年だった。
大学生くらい、タトゥーバリバリ入ってたな。
そして私はチケット代に負けた。
『よろしくでーす!ぴょこらちゃん推しでーす。胡蝶さんも応援してます』
「おぉ、すごいなお前。よく推しじゃないって言ってきたな」
『やぁー、ランダムチケットの方なんで、あっ5000円の指名の方はもちろんぴょこーらですよ。もっと胡蝶さんもコラボとかしたほうがいいと思いますよ、勿体ないですよ』
「あー、うん、考えとくね」
『硬派なのは良いんですけど、コラボとかで弄られて行きましょうよ。照れてたり恥ずかしがってんのは、マジかわ……何?時間?もう?早くない?あー、わかったわかった、おつこちょー』
5人目は別の子の推しだった。
ちょっとノンデリか?ヤベー奴だったな。
その後もいろんな人がやってきた。
名前と一緒に話した内容はメモして配信のネタにしようと思った。
特にちょむすけに至っては3部全部来てて、3回も会話したぞ。
1万5千円払って5時間ばかしの参加だ。
すごい通り越して怖いよ、ありがたいけど。
あと、エロワードエロリックさん。
やべぇ名前を堂々と言ったやつが今日1番印象に残ってる。
『自分、貯金は100万ほどあります!俺の財産半分上げるんで、胡蝶さんの財産半分ください』
「やらねぇよ、お前、あん時のコメントの奴かよ。セクハラで開示請求するぞ」
『えっ、じゃあ法廷で会えますね!楽しみにしてます!』
「やっぱしねぇーわ、すげぇよ、無敵かよ」
そして、何とか半日のイベントを終えて数日後。
「えぇ……嘘ぴょこじゃん」
なんか別の子が、イベントの感想を聞かれて、来てくれた人の名前とかエピソードを話したら炎上していた。
バニーぴょこら、リスナーを上級国民と下級国民に分けはじめる。
イベント参加出来なかった奴は無視して、来てる奴だけ優遇か?
そんな感じでまとめられてた。
えぇ……私も配信ネタとして来てくれた人の名前もエピソード言うつもりだったんだけど、言ってたら炎上してたの?