胡蝶の夢、或いは不労所得の夢   作:nyasu

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鉱石争奪戦テストプレイ

リスナーにとっては偶に配信してるな的な頻度であったり、長時間配信してるなとか思ってたりするんだろう。

実際にやってみると、コメントがあったとしても結構疲れる。

 

試しに本やテレビで、文章や音声を追いながらゲームでもしてみるといい。

ツッコミを入れつつ、話を組み立てて展開しつつ、かといってシラケさせる訳でもないように話を終わらせるってのは、ある種一つの才能なのだ。

 

少なくとも合わせるだけやろと思ってたキャバ嬢時代に、30分の会話すら長いと感じた私は難しいね。

私のしたい話と相手の話したい話は違うし、顔も見えない相手は文字しか情報はないからだ。

 

 

 

その日もいつもの作業。

桜もち先輩は平均3時間の配信を続けている。

ポンとか赤ちゃんとリスナーからは言われているが、配信者というフィルターを通して見てみると最前線を走り続ける化け物である。

 

なんで、あんなに話し続けられて定期的に切り抜きされるような発言が出来て、それでいて偶然で面白いことを起こせるのか。

バズったのはと言われて代表的なのが出てくるのもスゴイ、一から積み上げてきた全ては自称していたが本当にエリートだと思う。

 

未来の知識とか、カンペと企業バフありきで50万人の私には出来ない実績である。

配信外、大会の配信、大会の後日談。

このマイクラ運動会という企画だけで3回はコンテンツになる……まさか、そこまで考えて……すごいなぁ。

 

「あっ、白夜ちゃんだ」

 

TMT、TMTとチャット欄に打ち込む。

なんかあれやな、配信外で何かやってるからか何人か会いに来るな。

野良猫とか見つけて寄る感覚に近いのか?

案の定、配信をやっているようで……なんかコラボしていた。

赤井ラブ先輩と桃雀ねねさんだ。

 

動かない立ち絵から、全員が動く2Dになってるのはコロナ禍の技術発展だな。

大きさが違うということは、配信画面で重ねているんだろうな。

プレイキャラは3人、パソコンを横並びにって訳にはいかないから自宅からマイクラして、2Dだけ送って重ねてるんだな。

最近はオフコラボで他の人の動きを読み取ったりしなくなったし、2Dのトラッキングとかも上がってるかも……いかんいかん、配信を普通に楽しめばいいのに何かメタい技術的な所に目がいっちまったな。

 

『胡蝶先輩だ〜……配信枠はトワ様だけで皆さんで観光してるんですね……えっ、誰?』

『アハハ!トワちゃん、敬語で距離取られてて草』

『取られてないんですけどぉ、仲良しですけどぉ!』

 

配信を開いて見ていると、私のチャットを広げて会話展開する二人が移る。

まだ新人で距離感が掴めてないのか、後ろで会話を聞いてる桃雀さん。

2人以上の配信になると、会話のテンポがキャッチボールじゃなくてドッジボールみたいになるから難しいよね。

 

会話の邪魔しないとか、配信に被せて発言がリスナーに聞き取れなくしないとか、リスナーには分からんコラボの苦労があるよね。

うん、だから私はコラボしないけど仕方ないよね……言ったらコラボ強化期間って言ってただろってリスナーに殴られそう。

 

『後ろの方は、ご紹介して下さらない、ですか?……おい、スーパーネネ!言われてんぞ!お前、上下関係厳しいんだぞ!』

『大丈夫大丈夫、私の方が胡蝶ちゃんより先輩だから』

『こ、こんにちは……やべぇ、あとなんて打てば良いだろ』

 

あらあら、貴方って桃雀さんって言うのねと適当にお嬢様ムーブで返信する。

ぶっちゃけ文字だけのやり取りだから、普通に返しても普通だなってなるからね。

あと、弄ったら多分配信で他の二人が黙って桃雀さんも喋ったりするはず。

今は私と桃雀さんのターンだ、みたいなね。

 

『語尾のアルは辞めたんですか?ッスー……』

『おいネネ、先輩が何言ってるか分かってるか?答えるんだよ』

『三下ムーブ過ぎない?確かに言ってないよね』

『お、大人の事情で……はい……大人?って返ってきたんですけど!ネネ、ガキじゃないよ!』

 

コメント:ガキ扱いされてて草

コメント:食べ物くれるのおばちゃんなんよ

コメント:エセお嬢様キャラはなんなんだ……

 

取り敢えず3人にゲーム内の食べ物を与えて、バイバイする。

彼女達はデバッカーとして運動会遊戯を練習という名目でチェックするんだろうな。

えっ、落下死した?なんで……何をしてるんだ奴ら。

 

 

 

もう、誰かしら来るだろと予め配信中の枠を小窓で複数開いてミュートにしておく。

モニター画面が3つあると助かる。

1つは配信、もう1つは設定関係、普段使わない3つが活用されるなんてな。

 

桜もち先輩がやってくる。

ペコペコと頭を下げるモーションをしながら画面の中から配信を見つけて音量を上げる。

 

『おぉ〜、進捗、どう、ですか?……ポチぃ!おい、見りゃ分かんだろとか、餅ちゃんに文句あるってのか!コラァ!』

 

コメント:あば……しり……?

コメント:塀で囲まれてるように見える

コメント:何をさせるつもりなんだ

 

『しょ、しょみ……しょみんを……うるさいなぁ!もちちゃんが読んでる最中でしょうが!』

 

コメント:庶民以外は用意出来ましたわ?

コメント:漢字が読めないからローマ字にしたのが仇に

コメント:なんか色んなブロックあるな

 

私が頼まれて作っていたのは、鉱石争奪戦というゲームだ。

鉄や金、ダイヤモンドのブロックがあり、それを採掘。

指定の箇所に収納して、得点をつけて勝負を決める。

なお、妨害として相手を倒すのもありというね。

 

普通に楽しそう、よく思いついたな。

相手を殺す専門のジャグラーとネクサスを守るためのADCを用意したらいいんじゃないか?

変則的だけど、マイクラだから違うゲームだけど。

 

『そうそう!石の争奪戦ね、紅組と白組の醜い争いを高みの見物するにぇ……』

 

コメント:金持ちの遊び!

コメント:コロシアムであったか

コメント:じゃあ敵だね、じゃあ殺すね

 

『おぉ……コメント欄も殺伐としてきたにぇ……えっ?テストプレイしませんか?』

 

コメント:ヤバい!乗るな、もちち!

コメント:チャットクソ早くて草

コメント:二つ返事で後輩来るんだが

 

『まだやるって言ってないんだけどぉ〜みんな来ちゃったよ、なんで今日に限って6人集まんだよぉ……なんかチーム決めだしたぞ』

 

コメント:馬鹿な、早すぎる

コメント:通話繋げるとか言ってる

コメント:ガチじゃん

 

当たり前だろ。こっちはガチでテストプレイでも勝ちに行くからな。

まぁ、やらないという選択肢はないと思う。

撮れ高的に、やった方が美味しいし……多分エリートだからあれは演技だ。

すごい、さすが長年やってるだけある。

 

『や、やってやるにぇ!こっちはラブちゃまとバニーか!勝ったな、ガハハ』

 

配信画面を切って、音声だけ垂れ流す。

裏で他の二人に通話を繋げる。

私の方は準備万端である。

 

「お疲れ様です。聞こえますでしょうか?」

『お疲れ様です!聞こえてます!』

『よ、よろしくでーす』

「桃雀さんは初絡みですね。急に誘ってすみません」

『大丈夫です!展開的に美味しいので!』

 

あら、逞しい。

ポジティブで陽キャの人やで……さて、このゲームでは連携とキルが重要になる。

復活の間に作業が止まり、その間に採掘され、金差がつく。

鉄鉱石が1、金鉱石が2、ダイヤモンドが5点だ。

 

タワーがあってその上にある感じ、真ん中にはダイヤモンドがある感じだ。

 

「バロンとトップは捨て序盤はミッドを攻める。何か質問は?」

『はい!分かりません!』

『先輩ミッドってなんですか……』

 

おっと、そうだったな。

 

「ダイヤから取りに行きます。全員で取りに行って邪魔されたら殺します。死ぬと相手の採掘してた分が場に落ちるので、基本的にスプリットプッシュ……つまりは単独での行動はこのゲーム不利です」

『な、なるほど』

「中盤からはボックスから取りに来る場合が想定されるので1人残して2人ペアでダイヤ、金、鉄鉱石の順番で……敵が攻めてきたらすぐに戻って」

『おぉ……』

「終盤は2人で防衛、1人が敵のボックスから鉱石を奪いに行きましょう」

 

了解ですと2人から返事が返ってくる。

目下の人の場合は承知しましたなんだけど、細かいことは言うまい。

そして、テストプレイが始まる。

 

『あぁ!ラブちゃま!バニー!ちょ、石取りなよ!ズルじゃん!』

『もち先輩、仕様です。あっ、抵抗するか!しぶとい!』

『3対1はズルじゃん!んわぁぁぁ!』

『よし、今のうちに採掘だ!』

 

まずは一人でダイヤを取ろうとしてた、もちちを殺して3人で採取。

そのままボックスに入れたら私が残って、後輩2人に取りに行かせる。

 

「金に2人行った!戻っておいで、鉄行こう!鉄!」

「やばいやばい、3人来た!戻ってきて!あー、死んだ!」

「ナイスナイス、ちょっと持ってかれただけだから」

 

中盤は3人でアイテムボックス襲撃に遭い、私が死んでダイヤの何個かを持ってかれたが私が付いてたからかそんなに取られてない。

 

「よし、ねねちゃん行け!防衛は慣れてる私達に任せろ!」

『うりゃりゃ!オラ、守れるのかって!』

「ちょっとキツイか、バニー!バニーから狙え!アイツがこんなかで一番上手い!ナイス、次、ラブちゃま!」

 

中盤で味を占めたのか襲撃してくる3人を2人で捌いて、その間に対人戦に自信のない桃雀に拠点襲撃させる。

 

『あぁ!後ろ後ろ!あっ……』

「戻れ戻れ!気付かれた!守りきったら勝てる勝てる」

『ねね、ダイヤ持ってきたよ!』

「よくやった!勝てる勝てる!」

 

2個もダイヤを持ってきて、これには撮れ高もしっかりあるし、MVPの流れだ。

結果、私達の勝利であった。

 

『もっかい!もっかいやるにぇ!チーム変えて!』

『良いですよ〜、よくやりましたわ〜』

『えっ、さっきとキャラ違う』

『おい、お前分かってんな。向こう行くか?敵か?』

『はい!すいません!ナマ言ってすいませんでした!』

『何やってんだよネネ!ブランディングがあんだよ、先輩にも!』

 

いやプロレスだからいいけど、トワ様お前もやんけ!

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