クリスマスが今年もやってくる。
親からいつ帰って来るのと言われて、28日には帰ると回答。
もう気付けば12月、家族と過ごす子は年末の収録をしておいて、仕事する子はスタジオで年末配信をする。
稼ぎ時とは言え、年末年始に働く……偉いなぁ。
私と言えば、マネージャーと打ち合わせと称して忘年会とシーシャで一服していた。
うん、すまない。禁煙はしているが、シーシャはやめてないんだ。
でも、ほら、シーシャは非喫煙者のほうが多いし、誰に言い訳してんだろ。
非公式wikiに好きな銘柄は缶PIECEって書いてあって焦ったけど、今は吸ってないから許して欲しい。
「完全個室の場所なんてあるんですねー」
「仕事の話とかするんじゃない?知らんけど」
都内だと人に聞かれたくないような話をしてる人とかいそうだしな。
社長とか芸能人とか、身バレがマズイ界隈の人とか。
「私って、なんだろう」
「メン限の話ですか?割と好評でしたね」
「まぁ、私が清純派アイドルだとみんな思っているのは知ってるけど」
「思ってませんけど」
「えっ?」
馬鹿な、男と付き合うことがないと公言している私が清純派アイドルでないとしたら何だというのだ。
ユニコーンもニッコリだろうが。
「変わっちまったな、寝取られてから……」
「寝てから言え。抱かれたのは旦那だけなんだよなぁ」
「の、脳が破壊される……」
「あと、ジャンル的には僕が先に好きだったのにって奴かなと」
細かいことは良いんだよ、そんなことより配信の方向性とかだよ。
なんかこう、引っかかってるんだよな。
自分のマネジメントもやらなきゃいけないのが、配信者だもんな。
「何言ってるんですか、清純な人は下ネタ言われて普通に返答しないですからね?」
「えぇ……リスナーが悪くね?」
「いや、キャラ設定的に恥じらっても……お嬢様だし」
「キャラ設定は投げ捨てる物!かまととぶってあざとい女とか無理すぎ……」
確かに身体は女だし、Vのガワは美少女だけど、私としては男の自認がまだあるわけで……キャピキャピした女って感じのムーブは自分でキャラじゃねぇなぁってなったりする。
おねショタとかさ、同人誌の人気ジャンルとかさ、童貞がどうのとかさ、別に言われても真顔で返すだろ。
そ、そういうのはちょっと……とか、そんなこと言って恥ずかしがってる自分とか気持ち悪い。
「っていうか、責任も取れないですし、配信の方向性とかマネージャーと話すことではないですよ。どっちかって言うと、他のメンバーとやるべきかなと」
「いや、まぁ、そうなんだけどね」
「デビューからの付き合いですしね、話しやすいのは分かるんですけどね」
「よくお分かりで」
何年の付き合いですか、とか言ってくる。
へへへ、2年くらいじゃないか?マジレスするとだがな。
しかし、現状としては客観視出来る別の視点とかは大事である。
リスナー側と配信者側では見てる物とか見たい物が違うからね。
最初の頃はアイデアが溢れまくってたんだが、大体のことをやり尽くしたからマンネリ化してる。
「そういえば、来年は3回目の生誕祭ですね。土曜日でしたら1月9日でしょうか」
「Twitterで誕生日はすませるよ。カウントダウンしてもいいけど、仕事とかね」
「そういうもんでしょうか。次の日休みだからって人もいると思いますけど」
「まぁ、でも大多数なら見やすいのは、で考えたらね」
やり直せるなら、正月明けあたりなんか誕生日にするんじゃなかった。
明日から仕事かぁとか、もう仕事始まったとか、そんなタイミングで日替わり配信はキツイやろ。
いや、どの日でも日替わり配信はキツイか。
「うわぁ、そういうとこ胡蝶さんってリスナー目線強めですよね。胡蝶してますわぁ」
「胡蝶やめてね、分からないから」
「胡蝶さんは胡蝶してますよ」
「だからやめろって言ってんだろ」
とは言え、飲み会と言うことで女2人が集まってするのが仕事の話とは……名目は打ち合わせだから正しい形ではある。
マネちゃんは懐から何やら折りたたみ式のキーボードを取り出して、真ん中にスマホを置いた。
「えー、Bluetoothでいけるの?」
「これ便利なんですよね、スマホ打つより」
「外でないから知らなかったな。ケーブルトレーが今年一番良かったかもなぁ」
「配線関係気にするほど机に座りっぱなしじゃないから知らないですねぇ」
おや、この話は何か配信に使えるのでは?などと、どこかのプロデューサー的な突拍子もない思考をしたりする。
うーん、誰もやってないけど買ってよかったものとか聞いてもいいかもしれない。
「方向性……配信はアーカイブの追いやすさから1時間程度。時間帯は21時は固定、週に1回か2回ですかね。基本的に雑談メイン、比重はゲームや歌枠よりも雑談が大きい」
「なんかあれだよね、探偵の推理パートみたい」
「こういうのは書き出して整理してけばいいんですよ。でもこうして見るとリスナーの見やすさとか反応を気にしてるんですね。あんまリスナーとかは気にしないタイプに見えるのに、メンタル的にね。知ってましたけど」
「うぐっ……」
「承認欲求の塊」
「おい!正論は反論できないだろ!こんな仕事、承認欲求なかったらやろうと思わんやろ」
「こんな仕事、はい、職業差別で炎上でーす」
「あっ、卑怯な!」
そ、そんな揚げ足取りなアンチみたいな事言わないで!勝てない!マネちゃんに口で勝てない!
失言は失言だけど!ニュアンス!悪意のある取り方やめーや!
「でもこうして見ると、本当に雑談が多いな。サムネが一覧化されてると目立つくらい……ソロばっかですね。胡蝶さん、フットワークは軽いんですけど、配信は余り他の方と絡まないんですよね。こう、線を引いてるというか……いや、だからタレントというよりリスナー目線なのかな?」
「マネちゃん、マネージャーらしいこと言うなぁ」
「そうですか?誰でも見たら思いそうですけど……ゲーム全然してないな。来年はゲーム配信してきますか?」
「同じゲームばっかだと見てる方も飽きたりするかなと、いや連続で配信出来る人は良いけど向いてないんで」
少なくとも、また同じ配信か、また長時間か、そう思ったら見るのやめてたりとかしたことあるし……まとまった時間に垂れ流しで全部視聴したけど、長いと長い弊害が出たりする。
あと、シンプルにコメント読んで、返して、ゲームして、対人戦なら相手の動き方考えてとか、マルチ過ぎて苦手過ぎる。
歌枠も、歌の合間にコメント読んだり雑談は苦手。
「まぁ、歌枠で歌よりも雑談が多いとか、同じゲームで代わり映えのしない作業と雑談とか、ごちゃごちゃするのが嫌な感じですね。ストーリー系のゲームは……リアクション淡白だからなぁ、昔から」
「流行りのゲームは配信増やしていくかぁ……」
「なんか面接対策みたいですね……うわぁ、大学とか遥か昔すぎぃ……」
「やめてよ!まだ26なんだから!年取った感じ出さないで、若いよ!」
「もう26なんだよなぁ……26の女が画面越しに性癖開示してんだよな、だから結婚出来ないんだよ」
け、結婚してるからって!実家の親みたいな!結婚するだけが幸せじゃないんですぅ!
あと別に聞かれた質問に答えてるだけで自分から開示してる訳じゃない!
「はい、貴方の強みと弱みはなんですか?こんなじゃなかったですか?」
「ひたすら圧迫されてアドリブで反論し続けて、終わらない圧迫面接が対策だった記憶しかない」
「おい、配信外でおもしろそうなエピソード言わない!」
「口調が荒いぞオメー、さては酔ってんな!」
「シーシャ吸いながら飲むと早く回る気がする……しない?」
「えっ、分かんない」
「そういうとこぞ!」
どういうとこなの!あっ、スマホと折りたたみキーボードしまい始めた。
やめてやめて、もうちょい話そう、深堀りしようよ。
「でも雑談かぁ、何喋ってるか覚えてないよ」
「逆に雑談ばかりでよく数字持ってますよねぇ」
「まぁ、強みは他がやらないような内容だしね」
「だいたい、毎回騒いでますよね。プロレスがメインで、殆どNGなしな気がする……うわぁ、よく考えたら私毎回チェックしてるし、なんなら古参くらい見てるんですよね。嫌なこと気付いちゃったなぁ」
「まったく、私の事好き過ぎ」
「何言ってるんですか、仕事ですよ?」
お前、刺してくんなよ。
ただ、他人の視点っていうのは大事だな。
配信は1時間ほど、時間帯は他のメンバーと重なりやすい時間、配信に足りないのは歌枠やゲーム枠。
私の配信スタイルと違うが、長時間……それこそ通しで見たいゲーム配信とかあるかもしれない。
時間が重なるのは新しいリスナーは獲得できても、固定リスナーは推しを優先するから同接数は少なくなるだろ。
逆にアーカイブなら見やすいから、アーカイブで見られることは多そう。
フォローメンの人だけど、雑談してるだけじゃね?みたいな認知かな、この辺は特定の誰かとすらコラボは余りしないからな。
ゲームや歌のイメージは多分ないんだろうな。
あと、英語は勉強してたけど、そんなお前喋れないじゃんみたいな……いや、まぁ、分かるとしても話す機会とかね。
次年度はゲームや歌に力を入れるか。
方向性としては、他はやってないだろとかみたいなのをやりつつ、他もやってる奴もやるか。
シンプルに配信関係の時間増やす必要が、案件とか増えてきたら回るんだろうか。
今は競馬なんか数えるくらいだけど、みんなやってくだろうしな。
何なら大抵のゲームは数字が取れるとなると、みんなやるし、みんながやってると知ってるからとか、同じ配信ばっかだなぁで見られなくなるし配信すら見て貰えなくなるからな。
「次年度は歌枠増やせー!もっと歌のイメージつけろー!」
「あーあー、酔ってるよね。ハイボール飲みながらシーシャなんてやるか」
「ジンハイなんですけどぉ!そもそも、歌ってみたとか出してるのに何で歌枠少ないんだ!おかしいだろ!」
「面倒クセェリスナーみたいなこと言い始めたなぁ」