個性【蒼星】   作:指ホチキス

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48:検診

リンより聞いた噂に関して、蒼はその場でこれといった否定をする事が出来なかった。

蒼は人を跡形もなく消し飛ばす方法について知見が無かったのである。

 

裏社会において死体は有効活用され、不必要な場合は蒼を含む異能によって消し飛ばしていた。

蒼の場合は意識が明瞭かつ非発狂状態でなければならないなど、各々がそれなりの条件を必要としていたが、それらは既知の手法では無いからこそ深い知識を必要とせずに用いられていて。

 

故に、蒼は自らの異能を用いずにどうすれば人間が跡形もなく消せるのかを答えられない。

 

結局リンが何かを言っているのを気にせず、その場をフラフラと離れてAFOが急に現れたら嫌だなと怯えながら家に帰り。

自棄食いとばかりに翌日の朝食分も腹に詰め込み、信じられないぐらいデカいイビキをかいて眠り。

 

 

「急にお前が殺される可能性出てきたかも」

「…………」

 

 

翌朝、飯抜きとなった蒼は修善寺に突如そう言い放った。

暫く固まった修善寺は、耳がおかしくなったのかと箸を置き、指を立てて再度説明を促す。

 

 

「こう……因縁みたいな感じでさ。私を特定できる内容の噂が広まってるみたいで、その場合はお前が尋問されるかなあ」

「……まあ、思ったよりマトモな内容で安心した。てっきり、寄生虫に怒り狂って全てを破壊するとか言うのかと」

「私もそこまで狂ってはねえよ」

 

 

アラ汁を啜りながら、修善寺は少し考えて。

 

 

「よくあることだな。俺も潔癖症の奴等から怨みは余るほど受けていたからこそ、お前のそれに何かを言える立場に無い」

「同一視するには危険性がだいぶ違うけど、まあそう言うだろうとは思ってた。ここに来るまでお前の面のせいで何度か襲撃食らってるし」

「死んだらその時はその時だ。この時代にしちゃ、俺も長く生きた方ではある」

「……もっと老けてから言うもんだぞ」

「十分老けただろ。俺達の世代にしては」

 

 

AFOより下で蒼より上。

修善寺や酉野の世代は、()()()異能発現者の中では歳を重ねた方に分類される。

事情を知る者からすれば、むしろその年齢帯をラインとして天然であるかを見分けている節もあった。

 

黎明期以降の出生率は格段に数を減らしつつあり、未だそれが良化した事はない。

 

技術の発展と科学的豊かさによって各国が出生率減少を緩やかに脱したのにも拘わらず、異能という人間から生じた現象によって再度減少に転じたのは人類史において極めて手痛い事象であるものの、それを理解できて解決に至るにはありとあらゆるものが不足していた。

 

 

「なんか変なのいたら殺すといいよ」

「どれぐらい変なんだ? お前ぐらい?」

「いや全然私より変だけどね、なんか私の光を見て夢とかなんとか言って私のこと殺そうとしてきたあげくに私の事殺せなくて絶対にぶっ殺すぞとか言って私の事追っかけてきてるストーカーだしなんかデカいし長いし瞳濁ってるしブラコンだし」

「あー……お前の光を見て死なない奴ってことは理解した。キチガイか」

「うん!!」

 

 

早口で文句を言い続けた蒼に対して、修善寺は端的に内容をまとめた。

光を見て死なない条件を狂人に近しい精神状態と聞かされていたため、着地点はかなり強めのワードとなるも蒼はそれを大声で肯定した。

ここ1週間で一番大きな声を出した蒼は、修善寺の飲んでいたアラ汁をぶんどって喉を潤す。

 

 

「そういうわけだから、知らない人には付いていかないようにね」

「いい歳してお菓子に釣られて知らねえヤバそうな宗教家に付いてったのはお前だろ」

「は? お菓子だけじゃなくて肉も沢山あるって言われたんだけど!」

 

 

ここに来るまでの道中、修善寺が目を離した隙に誘導に類する異能持ちによって引き寄せられた蒼は、信じられないような内容での誘拐に遭いかけていた。

 

 

「いやいやいや、私も流石に騙されきったわけじゃないよ。なんか上手いこと飯奪えたらいいなと思って付いてっただけだって」

「そうか。安心してくれ、俺は肉があると言われても付いて行くことはない」

「いや……くっそ、なんかそう言われると負けたみたいになって悔しいな」

「勝手に負けてろ」

 

 

そう締め括られ、蒼の噂に関する話は終わった。

 

片付けを終え、廃屋を出て。

包帯を僅かに押し上げて町を見下ろせば、運送に関してなのかそれなりの人間が訪れているのが見える。

入口の監視役と言い争っている様子はなく、国からの人員であることが伺えるもので。

 

───ついでに、視界の端には山を駆け上がってくるリンの姿も見えていた。

身体能力が限りなく丈夫なのは異能によるものか、素質によるものか。

靴を履かずとも踏み固められていない斜面を平然と、常人の倍ほどの速度で走ってくる姿に、蒼は時代が違えば山岳地帯におけるヒーローとして優秀だっただろうにと思う。

 

 

「おーい!」

「なんだー!」

「男もいるかー!?」

「男漁りかー!?」

「なんだそれー!?」

 

 

程々に待てば声を掛けられたため、大声で冗談を返せば本当に分からないという顔をされて気まずさに口を結ぶ。

まあまあ品の無い世界にいた身として、咄嗟に出てしまう言葉を箱入り娘に掛けたとあれば当然の反応であり、蒼は溜め息を吐いた。

 

 

「あー……なんかあった?」

「なんかケンシンあるから山賊も呼べって」

「検診?」

「うん、ケンシン。知ってる?」

「何度か経験はあるけど……」

「あるんだ。私良くわかってないけど」

「医者が体を診てくれんだよ。場合によっては内臓に関してもな」

「えぇ、こわ……体とか切って()るの?」

「毎回切って閉じてたら大変すぎるだろ」

 

 

リンも勉学をある程度修めているとはいえ、定期検診といった文化に触れる機会がなければ検診というそれをイメージできるものでもない。

とはいえ蒼もどうやって診ているのかはよく知らないので、行けばわかるとその場を収めて廃屋に戻る。

 

 

「修善寺、町行くぞ町」

「何だ急に。キチガイでも出たか?」

 

 

奥からの声に、蒼は隣にいるリンと顔を見合わせて。

 

 

「うん。隣にいる」

「おい!」

 

 

バァンとデカい音が響くぐらい引っ叩かれ、修善寺は思ったより緊迫感がないなと奥から出て、そのままリンを見て足を止める。

場を占める沈黙に、リンの方が頭をガシガシと掻きながら頭を下げた。

 

 

「あー……その、あの時は私が悪かった。今は町の連絡役とでも思ってくれ」

「そうなったのなら、そうしよう」

「んで修善寺、検診あるから町降りんぞ」

「俺が受けるのか?」

「うん。あれ、もしかしてお前も受けたことある?」

「…………まあ、小学校で少しな」

 

 

修善寺の頃は、まだ学校があった。

既に崩壊の兆しはあったものの、人間の規格に収めようという狙いもあり、異能持ちは人々の間に紛れての生活を行っていた事実がある。

数の優位もあり、異能を持たない人間が多かったからこそ薄氷の上に、日常があったのだ。

 

蒼の頃には薄氷も割れ、政府は崩れ落ち、民間においては安全な通学や授業が保証できないとして義務教育の全てが停止していたが。

 

 

「そういやちゃんとおじさんだったね」

「で、何故俺等が対象になる。町民じゃないだろう」

 

 

蒼の言葉を無視したまま、修善寺がリンへと問いかける。

社会性に無頓着な部分があるものの、流石に違和感を覚える程度には自らの扱いを客観視できていた。

しかしリンはリンで町に来て日が浅いため、町人と2人の距離感を掴みかねている部分もあり、むしろ何故とばかりに首を傾げる。

 

 

「なんか国としては受ける意志があるなら誰でも受けられるようにするらしいよ」

「……多分、データ取りの面もあると思うんだよね。別に困らないからいいかなって」

「俺はまあ、潔癖症がいないならなんでもいい」

「じゃあ準備……とか別に無いか。行くぞー」

 

 

そんなこんなで町に降りてくると、道の監視役がとても嫌そうな顔をした。

蒼としてはそんな顔をするなら町の中ではなく外で検診をやってくれと思うぐらいである。

 

───町に医院はいくつかあるが、その中でも蒼が近寄ることを許可されていないものがある。

当初、蒼は山賊として近辺に住み着く中で、それを超えないでくれと懇願を含めいくつかの制限を課せられていた。

 

その中の一つには、総合病院への侵入が含まれている。

 

リンの案内で総合病院の前へと来た蒼は、少しだけ不安そうに周囲を見渡し、役所の老人が立っているのを発見して手を振った。

 

 

「いいの?」

「今日だけ特別な」

「あ、いいんだ……」

 

 

いそいそと院内に入れば、昔に入った記憶とそう変わりのない病院がそこにあった。

受付、待合所、奥に続く通路と特有の臭い。

何か嫌なものを思い出したのか、修善寺が若干表情を引き攣らせる。

リンの案内に従って静かな院内を進み、この時代では驚くほど清潔に保たれた通路を見て、蒼はここがこの町における重要地点である事を実感していた。

 

恐らくは清潔に関わる異能持ちがいて、その存在は代替の利かない役割を担っている。

 

 

「早く帰りたいな……」

「お前も病院は嫌いか」

「んぁ、なんかここで異能事故とか起こしたらヤバそうだし」

「……」

 

 

ずっと硬い表情をしたままの修善寺に首を傾げつつ、やがて蒼達は診察室と記載された扉の前で立ち止まる。

 

 

「ここに呼べって言われてる」

「ん」

「───入っていいよ」

 

 

ノックをすれば、中から女の声が聞こえた。

リンに顎で促され、蒼だけ入る流れとなったので扉を開けるとそこにはタイトスカートに白衣を纏う若い女医が座っていた。

黒いストッキングに覆われた足は細く、座っていても分かる背丈の高さと相まって嗜虐的な印象を受ける。

 

キツイ吊り目と、後ろで束ねられた赤と黒の混ざった長髪。

何より特徴的なのは、前面から見えるほど大きな黒翼。

蒼をしてあまり見たことがない規格の異形に、包帯の下で目を見開いた。

 

目立つ異能を持ちうる世代でありながら医学を修めているあたり、この時代に押し潰されない傑物なのだろう。

 

 

「おっ、見るからに異能持ちっぽい見た目が来たね。まあ座りなよ」

「ウッス」

 

 

蒼が椅子に座ると、紙にサラサラと身体特徴を書き込みながら女医が口を開く。

 

 

「我々は国による支援活動としてここにいます。危険と判断した場合はかなり強硬的な鎮圧が行われる事があることを理解してください。……はい、形式的挨拶は以上。名前はある? わからなかったら識別番号で管理するけど」

「あー……蒼でお願いします」

「アオイね。さて、今回は問診と必要に応じた触診を行います。異能や体の不調、異常などはある?」

「……特には」

 

 

脳裏にアニサキスによる激痛が浮かぶも、解決したことなので今は無いと首を振った。

 

 

「ふむ……その目は見えていない?」

「見えてるけど異能の暴発のために巻いてる。見せることはできない」

「座るのに淀みなかったのは感知によるもの?」

 

 

───いくつかの質問を受け、蒼は真面目に答える。

やがて体調などに異常が見られない事を認識し、女医は聴診器を取り出した。

 

 

「これを胸に当てます。ゆっくり呼吸をしてください」

「……」

「───ん? ……ちょっと、もう一回」

 

 

蒼の心音を聞くために耳を澄ませた女医は、徐々にその背に生やす羽毛を逆立てていく。

どことなく焦燥の様な表情を浮かべた女医は聴診器を置き、落ち着けるように一呼吸をして蒼と向き合う。

 

 

「響くような……空洞のような音、明らかに臓器の音ではないものに覚えはある?」

「あー……異能による影響だと思います。音に影響が出るので」

 

 

蒼としては異能を解放した際に副次的に発生する静かで低い音についてあまり気にしていなかったが、どうも心音を掻き消すほどにそれが内に満ちているらしい。

手首の脈拍を確認し、異常がない事を認識した女医は溜め息を吐いた。

 

 

「まあ異能のせいなら大丈夫なのかな……聞き忘れてた、最後に病院を受診したのはいつ?」

「多分3年ぐらい前とか……?」

「あ、受診したことはあるんだ。理由は?」

「…………」

 

 

エメラルドグリーンの尿が出たからである。

それをここで言うのに躊躇いが生じ、少しばかりの沈黙が流れた。

 

 

「言いづらいこと?」

「あ、いや……えっと、エメラルドグリーンのおしっこが出て婦人科を」

「…………」

 

 

信じられない言葉に、女医が固まった。

数秒の硬直の後、女医がゆっくりと手を口元に翳す。

 

 

「あの、あの伝説の患者さん……?」

「私伝説になってるの!?」

「握手してもらえるかしら」

「え、あっ、えぇ……?」

 

 

言われるがままに手を握り、満足そうに女医が頷いた。

 

 

「一応医師の間で異能持ちの治療のため、勉強会が開かれているの。色々な症状が出るのだけれど、婦人科の先生が挙げたエメラルドグリーンの尿についてという発表は非常に特質的で、界隈では有名よ」

「やめてほしいかも」

「それこそ、勉強会で聞いた婦人科や泌尿器科の先生の間で研究機関が復活したら皆で論文として上げるために貴方のことを密かに探しているぐらいよ。まさか会えるなんて」

「やめてほしいかも!」

 

 

蒼は嫌そうな顔で首を振った。

それを見て、女医は面白そうに目を細める。

 

 

「まあ、当人の意思は尊重されるから。貴女のことを報告として上げるのはやめておくわね」

「はい……」

「とりあえず貴女の身体に多分異常はない。異能のせいで人の規格が変わってきちゃってるから明確に言えないのがもどかしいけれど……何かおかしな事があったらすぐ病院に来るように」

 

 

そう締め括られ、蒼は退室を促される。

 

 

「ウッス。修善寺、次だってー」

 

 

そうして、蒼が部屋を出ようとして。

 

 

「うお」

「ん?」

 

 

入れ替わりで入室した修善寺を見た途端、女医が立ち上がった。

そして、何事かと動きを止めた蒼の横をすり抜けて修善寺へと抱き着く。

 

 

「ちょっと……顔が好みすぎる。えっいい老け顔だな。ねえねえ、私の男にならない?」

「流石に言い方ってもんがあるだろ」

「おい、抱けッ!」

「理性捨てた言い方にしろとは言ってねえよ」

 

 

珍しく困惑し、抱き着かれるがままになっている修善寺が殴っていいかという視線を向けてくるが、蒼は黙って首を振った。

医者を怪我させると流石に立場が悪くなりすぎる。

 

他の医者を呼んで引き剥がさせると、女医はスッと真顔になって座り直す。

 

 

「ふぅ……いや、ごめんね。この時代では中々出会いがなくて。ところで異能とか教えてもらえたりするかな?」

「……【修繕】。怪我に対しそこに残ったものを含めて身体を修繕する異能。それに伴う感染症は起こらない」

「えっ強い! オイやっぱり私と子供を作ろう!」

「俺の周りの女はおかしい奴ばかりなのか?」

「そこで私の方を見るなよ」

 

 

退室のタイミングを失った蒼だが、先程の女医の言葉には少なくない驚きを得ていた。

 

 

「……遺伝に関して、知ってるんだ」

「おぉ、アンタ知ってるクチ? 医療関係じゃなさそうだし……余程のとこから出てきた感じかな」

「裏とヨソの売春街でちょっとね」

「ふぅん、結構な経歴で」

 

 

女医は足を組み、修善寺から視線を外さずに緊張から乾いた唇を舐める。

 

 

「異能に関する医学はまだ未開拓分野でね。遺伝性疾患に類似した様子を見せるものもあれば、遺伝に関わらない先天性とも言うべきものが生じる場合もある。ただ、まだ世代として2代の観測が精々とはいえ、明らかに遺伝が見られる部分が多いのはこれまでのデータを見る限りよく分かる」

 

 

女医は多くの異能持ちを診てきた。

親と子の異能に類似例が見られることから、それがある程度の遺伝性を有し、そして時として両親の形質を掛け合わせる事が明確に記録として積み重なっている。

そしてそれらを認識した上で、女は仮説を組み立てた。

 

 

「この時代における生存率は異能の強さに依存する。より良い種は異能という能力によって絞り込まれる」

 

 

指を振り、単に事実を口から零す。

誰かの助けを期待できない時代、強い異能は自衛として最も有力な手段である。

 

 

「そうして生き残る異能はやがて先鋭し、収束し、弱い人間は弱い異能と同時に淘汰されていく」

 

 

それは、医者の口から飛び出すにはあまりにも強い言葉だった。

どちらかといえば学者の中でも運動家や思想家のような、それ程に強い思想の色が混ざっている。

過去における収斂進化を指して言うものではなく、これからそうなっていくのだと語る口調は、職業倫理に照らし合わせてあまり論じられるべきではないもの。

 

患者を救うという根底に抵触しかねないそれを当然のように語る女医には、老練していない熱意のある浮ついた若さがあった。

 

 

「なんか勉強会でご立派な持論を振り回して騒いでた奴はやがて複雑化し、特異点に辿り着いた異能は人類を滅ぼすことになる〜なんて言ってたけど、私はむしろ逆を提唱していてね。これから更に()()()()()()()()()()()()()()()()()時代が来ると思っている」

「……」

 

 

女医の脳裏に浮かぶ、医療従事者が集まった勉強会で発表された異能特異点という終末論。

あれはどこか宗教的で悲観的すぎるし、なによりそれ程の異能を生じさせる例外が産まれるなんて例を女医は知らず、ありえないと笑っていた。

 

ただ、唯一それを知る蒼だけは出来る限り表情を動かさないように必死だった。

既にAFOの懐刀とも言える協力者、殻木球大の存在が仄めかされたのだ。

未だ邂逅を果たしていないため、名も異能もAFOに捧げてはいないだろうが、それでも将来AFOにとって重要な協力者となるのであればあまりいい顔はできない。

 

何より、蒼自身が特異点と呼ばれるに相応しい存在であるからして、それを一笑に付す事が出来ないものだ。

 

そんな蒼の様子には気づかず、女医は言葉に熱を宿らせて前のめりになる。

 

 

「強い異能は優れた種である事の証。容姿や肉体ではなく、強い異能に惹かれる事が人間の新たなる基準」

 

 

薄い唇を笑みの形に歪め、修善寺へ胸元を見せつけるように下から覗き込む。

 

 

「さて、そういう訳でね。種を注がないか? いい女だぞ私は」

 

 

どうしたものかと黙る修善寺に対し、女医の言説を聞き終えた蒼は衝撃を受けていた。

その言説は明確にある文化へと辿り着いている。

将来において、人類史の過ちとしてどこか禁忌のように扱われるもの。

 

個性婚という文化の発達が、明確に始まっていた。

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