フレデリカは魔女だった。   作:ニッカリ

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Chapter9

「ダンブルドア校長!貴方はこの者たちを許すと仰るのですか!?この者たちの浅はかな行動により、我々魔法界の存在が大勢のマグルに知れ渡っていたかもしれぬのですぞ!?」

 

華々しい歓迎会の裏、地下に設けられた自身の研究室内で魔法薬学教授セブルス・スネイプは怒りも露わに普段は発することもない様ない大声を上げた。

怒気を向ける先は学校長であるダンブルドアだ。

 

「セブルス。君が彼らを許せない気持ちも、わしは十分に理解しておるつもりじゃ。」

「ならばっ!!」

「じゃが、彼らはスリザリンでは無くグリフィンドールの生徒じゃ。よって彼らの処遇を決める権利と責任を負う義務は寮監であるマクゴナガル先生にある。そして、わしは彼らを退学になどしたくないというマクゴナガル先生の心情も理解しておる」

「くっ…」

 

これ以上は言っても無駄だろう。

この老人は無害な体を装ってはいるが、実際はスネイプが知る中でも一二を争うほどに抜け目のない、狡猾な人物だ。

 

「……承知しました。…では、この者たちへの処分はマクゴナガル先生にお任せいたしましょう。先生ならば、彼らに相応しい処分を下してくださる筈ですからな」

「ええ、そのつもりですとも」

「フンっ…」

 

すました顔をしてそう言ってのけるマクゴナガルに、スネイプは小さく顔を顰めた。

厳格さと聡明さで有名な彼女だが、身内にはとことん甘い。

ポッターたちへの処分は厳重注意と罰則程度に留められるだろう。

 

「さて、この話はここまでじゃ。ハリーたちは下がりなさい」

「ウィーズリー、貴方はすぐに医務室に向かいなさい。酷い姿です。処分は追って後日、通達します」

「はい…」

「…(ギリッ)…」

 

二人が返事をした。

先程まで自分が叱責していた際はこの世の終わりの様な顔をしていたというのに、明らかにほっとした顔をしてウィーズリーともどもうっすらと笑い合っている。

それが猶の事スネイプの心をささくれ立たせた。

 

「セブルス、君も一度歓迎会に顔を出してくるのじゃ。寮監が自身の新入生を見ないままというのは余りに無責任じゃ。君自身の顔を見せる意味でもある」

「…わかりました。校長は…」

「わしはほんの少しマクゴナガル先生と話がある。なに、直ぐに終わる話じゃ。終われば参加させてもらうよ。まだプディングも食べておらんからの」

「…左様で」

 

もうここに用はない。

自らの研究室の筈なのだが、スネイプは追い出されるような形で部屋を出る。

 

「セブルスや…」

「…なんですかな?」

 

扉を閉めようとしていると、背後からダンブルドアに声を掛けられた。

老人は先程までと表情は変わらないが、明らかに雰囲気を変えていた。

その開心術も使っていないのに、何でも見透かしたようなブルーの瞳に心がざわつく。

 

「……」

「……」

「…いや、プディングが無くなりそうなら一つ取っておいてくれんかの?」

 

何だそれは。

途端に肩の力が抜けた。

 

「…一つでよろしいですな?」

 

返事を待たず、スネイプは今度こそ研究室を後にした。

 

 

 

 

 

(忌々しい…)

 

歓迎会が行われている大広間。

教員達の座る長机に着席しながらスネイプは荒い鼻息を吐いた。

目の前には豪華な料理が所狭しと並んでいるが、今のスネイプにとっては全て色褪せて見える。

ダンブルドアからはプディングがどうのと言われていたが、見当たらない。

 

(既に無くなっていたとでも言っておこう)

 

「おい、スネイプ」

「なんだ?」

 

スリザリン側の長机をざっと眺めていたスネイプにハグリッドが声を掛けた。

また絡み酒かとうんざりしたが、どうも様子がおかしい。

いつもは調子に乗って顔が真っ赤になるほど飲むこの男が、今日に限って素面に見える。

 

「お前さん、確かジェームズと同学年だったな?」

「…それがどうかしたのか?」

 

さっきまで見ていた顔と記憶の中の顔が重なり、さらに気分が悪くなる。

大体、似すぎなのだあの親子は。

生き写しとしか思えず、憎悪しか湧かないあの顔…なのにその瞳は―――

 

「なら、リリーとも同学年だな」

 

一瞬、呼吸が止まった。

何故、急に彼女の話になる?

 

「何を―――」

「そんじゃあよ―――」

 

 

 

―――あの娘っ子、どう思う?

 

 

 

 

===================================================

 

「レイブンクロー!!」

 

気が付くと、フレデリカは組分け帽子を外されていた。

オオーっという歓声がレイブンクローの長机から上がった。

 

「さあ、席に着きなさい」

 

少しぽーっとしていると、マクゴナガル先生に肩を叩かれた。

おぼつかない足取りでレイブンクローの長机に向かう。

 

(レイブンクロー…これで良かったのかな?…)

 

「ぁ……」

 

ふと、グリフィンドールの方を見るとジニーがにっこり笑いながら拍手してくれていた。

そのことに少しほっとする。

『失望されたらどうしよう』というのは杞憂だったようだ。

 

「ここに座りなよっ!!」

 

ふらふらと席を探していると、少し離れた所から声がかけられた。

振り返った先では少し体の大きな、恐らくは新入生であろう少年が手を振っている。

 

「え…」

「ほらっ、こっちこっち」

「わっ…」

 

フレデリカは立ち上がって歩み寄って来たその少年に手を引かれ、彼の隣に座らされてしまった。

 

「ぺトルス・バークスターだ。よろしく」

 

にこりと爽やかな笑みを浮かべて手を差し出してくる。

短く刈り込まれた金髪は綺麗な色で、キラキラとしている。

未だ幼さは残るが、顔立ちは整っており将来はさぞイケメンに育つだろう。

 

「え、あ、はいっ。フレデリカ・ウィンクルム…です。よろし――」

「ねぇねぇ、君って何者なんだい?」

「く…え?」

 

フレデリカが挨拶を言い終わらない内から少年は質問をしてきた。

びっくりしたフレデリカは目をぱちくりとさせ首を傾げる。

 

「だってさ、君の顔を見た先生たちの何人かがビックリしたような顔をしたんだ。僕が確認しただけでも四人…かな。な?君も見ただろ?アリオーシュ」

 

ぺトルスはニコニコしながら隣の少女に声を掛ける。

 

「え?そうだった?見てなかったわ」

 

アリオーシュと呼ばれた少女が少し顔を赤らめて答える。

 

「ねぇ、ペト――」

「えーーー…君はどうだい?ケイン、先生たちビックリしてたよね?」

 

アリオーシュの答えを聞くと、ぺトルスはすぐに彼女から興味を失ったように、向かいに座った男の子に声を掛ける。

 

「は?気のせいじゃね?」

 

質問された黒髪の少年はどうでもよさげに欠伸をする。

眠たげに半眼になった瞳は少し赤みがかった茶色だった。

 

「それよか、まだ食っちゃいけねーのかよ…」

 

ケインは苛立たしげに指でコツコツとテーブルを叩きながらぼやく。

――――と

 

「諸君!!」

 

大広間に朗々とした声が響き渡った。

皆が声のする方に注目すると、立ち上がり台の上に上がったダンブルドアの姿が見えた。

ダンブルドアは何処からそんな声が出るのかというほどに力強い声を出している。

 

「宴を始める前に、このおいぼれからの歓迎の言葉を聞いていただきたい」

 

向かいの席のケインが眉間にしわを寄せた。

他の新入生もそうだ。皆、素晴らしいご馳走を前にお預けされているのだ。

この上長ったらしい校長の話など聞きたくない。

 

しかし、上級生たちは意外と平気そうでむしろ苛立つ新入生をニヤニヤしながらチラチラとみていた。

 

「おめでとうっ!!!」

 

一際大きな声でダンブルドアは叫んだ。

そして―――

 

あろうことかそのまま下がって教員側の席に着席してしまった。

 

生徒たちが困惑しながら次の言葉を待っていると、ダンブルドアはニヤっと笑って

 

「なんじゃ?皆、食べんのか?わしの話は終わったぞ?」

 

そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらっ、あの先生!あの小っちゃい先生、また君の事見たよ!!」

 

フレデリカがケーキを食べようと口を開けると、ぺトルスが肩を強く揺さぶってきた。

美味しそうにデコレートされたケーキはその衝撃でフォークから離れ、へしゃげてしまった。

 

「あ…」

「ねぇ、ホントに検討も付かないの?実はすごい魔法使いの末裔とか、実は吸血鬼とのクオーターだ!!とかさ」

 

目をキラキラさせて質問攻めにしてくるぺトルスに流石のフレデリカもうんざりしていた。

ふるふると首を振りながら落下死したケーキをかき集める。

 

「…にしても、あの先生マジでちっちぇーな」

 

目の前でひたすらに揺さぶられているフレデリカを気の毒に思ったのか、向かいのケインがぺトルスに話題をふった。

質問されたぺトルスはくるっとケインに向き直ると

 

「あ、気になる?気になるよね。僕もね、大広間に入った時から気になってたんだ。それでね、上級生の人に聞いてみたんだけどなんとあの先生…あ、フィリウス・フリットウィック先生って言うらしいんだけどねっ!呪文学の先生なんだって。なんでもレプラコーンの血を引いてるとかで、それであんなに小さいんだ。けど、あんなに小さいのに昔は決闘クラブで優勝したこともあるほど強いんだってっ!!驚きだよねー。あ、あとさ…」

 

ぺトルスは正にマシンガントークという他ないほどに饒舌に、聞いてない事からビックリするようなことまでもの凄い量の情報を叩きつけてくる。

よくよく聞いてみれば、この短期間で集めたとは思えないほどに重要だったり細かい情報が散りばめられているのだが、いかんせん話が長い。

初めは聞いていたケインも、『へー』と『ふーん』と『まじで?』をルーチンワークの様に繰り出しながらチキンを切り分けたりしている。

 

「あっ、あの先生は誰かな?ほらっ、あの新しく席に着いた先生!!」

 

ぺトルスが再びフレデリカの肩を叩く。

ケインのおかげでようやくケーキを食べられたフレデリカは少し余裕が出来たので、彼の指差す方向を見た。

 

真っ黒な人だった。

真っ黒な黒髪に黒いマント。

纏っている雰囲気もどことなく暗く、フレデリカは『あの人こそ吸血鬼みたいだ』と思った。

 

何処となく不機嫌そうな黒い教師はハグリッドに話しかけられて顔を顰めている。

―――と、突然ハグリッドがこちらの方を指差してきた。

その先に居るのは間違いなくフレデリカ。

指につられるように黒い教師もこちらを向いた。

 

 

 

 

目が合った。

 

―――彼は驚かなかった。

ハグリッドの訝しげな視線も気付かないのか、熱に浮かされたようにじっとフレデリカを見つめてくる。

 

その黒い瞳に宿る感情は…分からない。

ただ、見つめている。

 

どのくらいそうしていただろうか?

彼はゆっくりと瞑目し―――

 

元の仏頂面に戻ってしまった。

 

「???」

 

フレデリカは首を傾げた。

矢張り、自分を知っている人がいる。

だが、自分はつい最近まで誰とも接触せずに地下室にいたはずだ。

 

「もしかして…」

「なんだい!?思い出したのかのかい!?君は何処のお姫様なんだい!?」

 

フレデリカが思わず呟いた言葉をぺトルスは聞き洩らさなかった。

喰いつくようにフレデリカに顔をよせ、興奮した様子で両肩を掴んで揺さぶる。

 

「え、えと…もしかしたら、だけど…」

「うんうん!!」

「……………お世話になってたお店のお客さんだったのかなぁ…とか…」

 

そうだ。

『漏れ鍋』は魔法界では有名な店らしいし、ホグワーツの教員が来ても何ら不思議はない。

 

「えー、そんな簡単なものじゃ無さそうなんだけどなー…」

「で、でもそれ以外に思いつかない、し…」

 

ぺトルスは不満そうだ。

けれど本当に知らないのだから仕方がない。

 

(あれ?でも……本屋さんで会った人も…)

 

ルシウス・マルフォイも自分を知っているそぶりを見せていた。

 

(なんか…怖い…)

 

知らない人が自分を知っている。

そう思うと、寒気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

『レイブンクローか…いいんじゃないかな。君は頭がいいからね』

『でも、ジニーとは別の寮になっちゃった』

 

歓迎会も終わり、自室も割り当てられ、ルームメイトも寝静まった頃。

フレデリカは小さな、小さな灯りを灯して日記を書いていた。

書き込んでいるのは、あの―――トム・リドルの日記。

 

『それは意外だったけどね。君ならジニーがいる寮を『選ぶ』と思っていたよ』

『うん。でも、わたしは勇敢じゃないし、それに…』

 

傍から見れば日記を書いているだけに見えるだろう。

だが、一たび日記を覗き込めば誰もが首を傾げる。

 

『それに…なんだい?』

『わたし、分かった気がする。みんながわたしを受け入れてくれる…求めてくれるようになる方法』

 

フレデリカはインクをつけて日記に書き込む。

しかし、書かれた文字は書いた先からすぐに消えてしまう。

そして代わりに別の文字が浮かび上がるのだ。

あたかも見えない誰かと文通しているかの様に。

 

『その方法って?』

『わたしが求めてもらえる人間になるの。求める価値のある人間に』

 

―――と

先程まで即座に返ってきていた返事が途切れた。

こんな事は初めてだ。

フレデリカは何か気に障る事でもしたのかと不安になった。

 

『リドル?』

『ああ、ごめんね』

『どうしたの?わたし、間違ってる?』

『いいや。…そうか、だからレイブンクローなんだね』

 

リドルからちゃんと返事があり、否定的ではない事にフレデリカはほっとする。

 

『うん。頑張って勉強して、いろんな魔法が使えるようになって、沢山の人の役に立てるようになるんだ』

『なるほどね。誰かのために頑張る。素晴らしい事じゃないか』

 

自分の見つけた答えをリドルに肯定してもらえた。

素晴らしい事だと言ってもらえた。

それだけでフレデリカは胸がいっぱいになった。

 

けれど、少し不安になった。

考え始めると怖くてたまらなくなった。

その気持ちのまま、フレデリカは日記に書き込む。

 

『リドルは』

『うん?』

『リドルに、わたしは、必要?』

『もちろんさ。君がいないと、僕はただの日記だ。書いてくれる人がいないと退屈で仕方がない』

『もし、ほかの人が』

 

もしも、リドルにとって日記に書き込むのが誰でもいいのなら…。

 

『前にも言ったけどね。僕は普通の人が見たら気味悪がって捨てちゃうような日記なんだ』

『そんなことないよ!!リドルは気持ち悪くない!!』

『うん。そう言ってくれる君だから僕は捨てられずに済む。それに、いろんな事を毎日書いてくれる君のことが、僕は好きだよ』

 

「―――っ///」

 

『好き』

その言葉にフレデリカは顔を真っ赤にして悶えた。

 

『今日はもう寝―――』

 

「ねえ、何やってるの?」

 

突然、背後から声がかけられた。

ルームメイトのアリオーシュだ。

 

「あ、ごめっ…」

「明日からいきなり授業で早いんだからさあ…とっとと寝なよ」

「ごめんなさい…」

「ちっ…」

 

しょんぼりと俯いたフレデリカに対してアリオーシュは舌打ちを打つ。

 

「あんたが寝坊しようが居眠りしようがアタシには関係ないけどさ、アタシの睡眠の邪魔はしないでよ」

「……」

 

俯いたままのフレデリカにもう一度大きな舌打ちを打ち、アリオーシュは自分のベッドに戻っていった。

 

「……」

 

『ごめんね、今日はここまでにする。お休み、リドル』

 

そう走り書きをして、フレデリカは急いでベッドに潜り込んだ。

 

『おやすみ、フレデリカ』

 

誰も見ていない日記に文字が浮かび―――消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ハリポタシリーズでどの女性キャラが一番好みかと言われれば、間違いなく



『『『『『マクゴナガル先生です』』』』』
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