Fate//////X 11
——エルドラゴが消滅していく。小聖杯ごと、消滅・退去していく。
本来ならば、それでそのまま聖杯戦争も勝者不在のまま終わる。
だが——俺には、妙な確信があった。
——これで終わるとは思えない。アイツが、ラプラスがこの終わりを想定していないとは思えない。
そしてそれは、
——その歪みの先に、俺はありえない光景を目撃した。
——キレイが、マスクドカレンが、トウコさんが。そして、
「なんで大聖杯がここに——いや、
俺は次元融合と共に出現したラプラス——衛宮ツカサへと視線を向ける。衛宮は、目を細めながら笑ってみせた。
「よくわかったねぇ遠坂。そうだよそのとおり。事象収納の応用でね。冬木地下空洞と【煉獄】を繋げたんだよ。キミたちの頑張りでライダー——いや、小聖杯が破壊されることはわかってたからね。
——なら、大聖杯……そして魔たる私の本体をこの場に引き寄せたら——座へ戻る前の魂を取り込めるかもね、ってね。いやぁ、上手くいってよかったよ」
衛宮は——いや、キャスターの枠を利用して無理矢理現界した【ラプラスの端末】は、そう言って大聖杯の起動完了を示唆する。
——次元融合の影響かどうかはわからないが、今の俺は、
——時が集束していく——。
つまりは——この宇宙における
「すごいねセイバーも。さすがは
黒いセイバー、赤いアーチャー、衛宮切嗣。彼らの尽力そのものが
ステータス情報に更新はない。それもそのはず。そういった、特定の誰かではない——正義の行い、正義の味方という在り方そのものが——無銘の英霊・セイバーを生み出したのだから。
それゆえに彼は、数多存在する【正義の味方】——その代表者として現界した。そういうわけだった。
ふと、集束の音が止んだ。目を向けると、軋む時空を抑える光が見える。
それは巨大な光の巨人となり、事象収納を抑えこむカレンちゃんだった。
「 これが私の対
——『
光が、崩壊と拮抗している——。
いつまで保つのかわからない。ゆえにこそ、俺は眼前の黒幕を倒さねばならない。
だが——その前に。
「なぁ、衛宮。お前はラプラスの端末なんだろうよ。キャスターの枠で現界した、ヤツの尖兵。聖杯戦争をこの結末へ持ってくるためのツール」
「今更何? そんなこと聞いてどうするの?」
やれやれ、とばかりに肩をすくめる衛宮ツカサ。その態度を無視して——俺はその問いを投げた。
「——じゃあ俺はなんだ?
その問いを受けて、衛宮ツカサの表情が消える。
「何、って——
ただの偶然。キミは意味もなく、遠坂凛じゃなくなった。バタフライエフェクトの結果として——
まあそれでも——と付け足しながら、彼女は続ける。
「——それでも、キミもまた、ラプラスの息吹を受けて産まれ落ちた存在——そういう意味では、私と同じ、
第十一話「ラプラスの子どもたち」
——言葉もない。
無意味、無価値、偶然の産物。ただ眼前の少女と同じ烙印を押された、ラプラスの落胤でしかないときた。
笑いすら出ない。ただただ俺は、遠坂凛の偽物でしかなかったのだ。
背後では、魔力消耗により崩れ落ちているイリヤスフィール。
隣では、フラガラックを構えるも放てずにいるバゼット。
——俺もラプラスの子どもだからなのか、少しだけ原理がわかる。
ラプラスは、ただそこに存在するだけで
その事象操作によって、誰もラプラスに手を出せないのだ。
あの確率魔性は、数多の並行宇宙——それらの揺らぎを
つまり、現状この宇宙では事象に揺らぎはなく、ただ一つの帰結へと突き進んでいく。
ゆえに、その宝具の名を『
運命を操る、対界宝具である。
勝てないのか? 俺の力では——?
まだどうにか疑問符を付ける精神は残されているが、おそらくこれも時間の問題。ラプラスが受肉を果たした時点——その寸前である今でさえ、既に【煉獄】及び冬木地下空洞では運命支配が始まっていたのだ。
——今度こそ起こってしまう。
なす術もなく、腕を振り上げる勇気すらなく、俺は、俺は力なく崩れ落——
「——何をしているマスター。
——崩れ落ちそうになったところを、セイバーの声に支えられた。
「——セイバー。でも、」
今にも折れそうになる心をどうにか留めて、俺はセイバーへ言葉を紡ぐ。
「マスター。キミが仮にラプラスの子どもだったとしてだ。
「え、それは——」
「キミはまだ夢すらおぼつかないぐらいに、先行きが未知じゃないか。
……
まだ定まっていない、未来の可能性がキミにはある。確かにあるだろう。
——それこそがラプラスの誤算。ヤツの力はキミにも流れており、
だから遠坂凛のヴィジョンも見えた。いくつもの可能性が見えた。
——まだ戦える。今ならばまだ!」
「——————」
眼前では、背中を見せたセイバーが、ラプラスとその子どもと向かい合いながら——その上で俺を奮い立たせる。
——は。今更何を、
「——セイバー。
手元には幾許かの宝石と、一画の令呪。
それだけあれば十分だ。
大事なのはこの状況で
まだ諦めずに立てていることだ。だから、だから俺は——
「——令呪を以て命ずる。
……“世界を救え、セイバー”!」
ただそれだけ、ありたっけの魔力と共に叫んだ。
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真 名 確 定
キャスター:衛宮ツカサ
↓
プリテンダー:エミヤ・ラプラス
最終回「フェイトエクス」へ続く