Fate//////X   作:耳民美

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#03「震える槍(後編)」

Fate//////X 3

 

 

 

「食らいやがれ……ッ!」

 

 ランサーの重い槍撃が地面を抉り、小規模クレーターを作り出す。

 セイバーは跳躍して既に空中。だが地に足をつけていない以上、動作自由度においてランサーが優位を取っており、今狙い撃ちされればまずいことになる。

 ゆえに俺は宝石射出を決行——

 

「——せいッ!」

 

 ——するよりも速く、セイバーは空中で魔力放出スキルを絡め、それによる錐揉み回転で加速した斬撃をランサーへ打ち込む!

 ——これがサーヴァント同士の戦いなのか。速い、あまりにも展開が速すぎる。

 

「やりやがるなオイ!」

 

 ランサーは巨槍で一撃を受け止めるものの両脚が大地にめり込む。その隙を狙って、セイバーは地面に着地して必殺の横薙ぎを叩き込む——

 

 その刹那。

 

「——させるかよ! 『赤原猟犬(フルンディング)』……!」

「なに!」

 

 ——赤い一撃が、セイバーを襲った。

 

 

 

第三話「震える槍(後編)」

 

 

 

 赤い一撃は、俺やセイバーより更に後方——校舎屋上より投擲されていた。そしてその投擲は——昨夜聴いた男の声で()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ——『赤原猟犬(フルンディング)』。赤き剣、かつて叙事詩に謳われし英雄が振るったとされる宝具。その担い手の名は——

 

「ベオウルフだったのか……!」

「ご名答!」

 

 俺の叫びに対して、バーサーカーのマスターであるサングラスの美女——蒼崎トウコが現れ出でる。その手には懐中電灯のような魔術礼装があった。

 

「ちぃッ!」

 

 セイバーはフルンディングを横薙ぎの軌道を変えて弾き飛ばす。

 それを視界になんとか収めつつ、俺はトウコ氏に問いをぶつける。

 

「本当に裏切ったんですか!」

「相談を持ちかけただけだろう! 数日前既にサーヴァントを召喚していたマキリに協力を持ちかけるのは不自然か?」

 

 返答と共に、トウコ氏は電灯を影に向ける。そこにはサクラの虚数魔術の影が染み込んでいたのだ。月明かりなど関係なく、虚数の海は影として俺の足元まで黒いカーペットとして広がっている。それを電灯礼装の光によって——形状を自在に変化させ、触手として俺の手足を縛り上げる!

 

「クッ、くそ」

「間桐サクラ。これで良いかな?」

「はい。そのまま縛っておいてください。私、力加減できませんから」

 

 虚数属性の魔力による枷だからか、属性反発作用によって俺の魔術回路が上手く起動しない。令呪による助けもままならないまま、ランサーの宝具が魔力の奔流を纏い始める。こちらも真名解放か……!?

 

「死ねよセイバー。テメェがどうして()()()()を持っているのかわからねぇ、意味不明だ。だから——簒奪者には、極上の痛みを以てわからせてやるよ」

 

「受けるとでも!?」

 

 セイバーは宝具を構え直し迎撃準備に入る。この状況の俺からでさえ、サーヴァントの魔的膂力で魔力が吸い上げられていく——宝具だろう。だが仕方がない、背に腹は変えられない。

 

「頼むセイバー! なんとか切り抜けてくれ……!」

「当然だ! 宝具——!」

 

 黄金剣の隙間より漏出している黒い極光が、その昏き輝きを増していく。ランサーの宝具発動とおそらく同じタイミングで、その一撃が放たれる。槍の規模は不明。だが姿勢の関係でセイバーの横薙ぎが直撃する方がやや速いか!

 

 そう俺が思考したその直後。

 

 ——()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「猟犬は簡単にゃあ諦めねぇんだよォ!」

 

 屋上から轟音と共にバーサーカーが迫り来る。そちらへの対応以前に赤原猟犬(フルンディング)が殺到する! この宝具、追尾能力があるのか……!

 

「やってくれるッ!」

 

 セイバーはやむを得ず魔力放出によってフルンディングを弾き飛ばす。だがそれによって宝具の魔力が減衰し、確実にランサーの一撃が先に来る——!

 

「でかしたバーサーカー! 食らいやがれ——我が誉れにして我が結末、父上より賜りし聖なる槍を!」

 

 魔力嵐の発生と同時に、ランサーの兜が変形し甲冑と合体する。宝具発動の縛りなのか、ランサーの顔が露わになる。美少年とも美少女とも言える美貌に金の髪、翡翠色の瞳が——美しさよりも、()()()()()()()()()()()()()()

 

 真名解放により、敵マスターである俺の脳内にも、ランサーの宝具情報が入り込んでくる。

 其は突貫宝具。本来の在り方とは異なるが、ランサー——十中八九、モードレッド卿であろう——の赤黒い魔力を取り込んだ暴走列車の如き鉄塊が、真に迫る勢いでセイバーを轢殺せんと間近に迫る——!

 

「受けるがいい! 『王より受けし血濡れの大槍(ロンゴミニアド・ブラッドアーサー)』ーーーーーーーーッ!!」

 

 ——受けきれない。いくらなんでもこの宝具は。

 ランクにしてA+の対軍突撃宝具。この至近距離では、もはや奇跡でも起きて背後に回らなければ避けきれない。その奇跡を起こし得る令呪は今、虚数魔術によって封じられている。絶体絶命、切れるカードがない状況。俺はどうにもできず、ただ————

 

「————は?」

 

 ——ただ、今起きた奇跡に目を疑った。

 

「——どこに消えたッ!?」

 

 驚愕の絶叫はランサーのもの。

 ——そう、消えたのだ。

 ランサーの宝具は未だ止まらず、突貫の寸前。だが、突如としてセイバーが()()()()

 どこに——何によって? 俺は令呪を使うことすらできないというのに——できないと、いうのに——

 

「————え?」

 

 だというのに、俺の右腕からは——令呪が一画消滅しており——

 

 ——ランサーの背後に、()()()()()()()()()()()

 

「——なッ! テメェどうやって」

「——『秘匿すべき勝利の剣(エクスカリバー)』——」

 

 その時既に、漆黒の斬撃がランサーを鎧ごと斬り伏せていた。

 

「——がっ!?」

「ランサー!」

 

 ランサーが吐血し、サクラが駆け寄った。

 

 その間にも、大槍にあった魔力が霧散していく。ランサーの霊核が破壊されたのだ。宝具は、放たれる前にその役目を終えたのである。

 

「——すまん、サクラ……オレ、お前の願いを——」

「いいのランサー。立場より願いを取っていいって、そう言ってくれただけで私、嬉しかったから——」

「——は。んなの当たり前なんだよ。ホントしょうがねぇやつだな、サクラ————」

 

 消えていく。ランサーが、粒子となって消えていく。戦いは非情であり、そして紙一重であり、今俺が勝利した状況さえ当たり前とは言えず。

 

「引くぞ、バーサーカー」

「あ? 今からがいいとこだろうがよ」

「乗ってやりたいところだが、あのセイバー、異常だ。まだ戦ってないやつもいるだろ?」

「——あぁそうだな。アインツベルンとこのライダーともやり合いてぇしな」

 

 背後では、トウコ氏とバーサーカーが撤退の支度をしているが、正直ありがたかった。

 俺はサクラと話がしたかったし、それこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()セイバーとも、腰を据えて議論がしたかったからだ。

 

「——なぁセイバー」

 

 俺が彼に声をかけると、セイバーは俺に向き直り、そして——

 

「——マスター。キミは、()()()()()()()?」

 

 先んじて嫌なことを訊いてきた。

 そんなもの、俺が知りたいぐらいだった。

 

 

 

 第四話「クラスアサシン破砕」に続く

 

 

 




【ステータス情報更新】

 セイバー
 第二宝具『原理決壊/事象投影(リミテッド/ゼロオーバー)
 ランクEX
 宝具種別・レンジ・最大捕捉不明

 セイバーの逸話が具現化した宝具。
 いかなる状況であろうとも、対応したコストを払って特定の結果を出力する。今回の場合、セイバーがどこかで経験していた『令呪による空間転移』を投影し、ランサーの宝具を完全回避した。
 常軌を逸した宝具であるためか、一度の現界で一回しか使用できない。
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