休みだから早く続きを出せたけど気分更新になるので気をつけて下さい。
「それで、私はどんな契約を結べばいいの?」
「そんなに気を張らなくてもいい。別に、取って食おうとする訳じゃないんだ。気が変わったからな。」
そう言うと女はアツコの前に温かい茶を出してから席に着いた。
「俺がお前との契約で求めるのは一つだ。」
緊張が走る。これに応じることができなければサオリ達が何をされるか分からない。どうか、自分一人の力で何とか出来るものであってくれと願いながらその時を待つ。
「なあ、秤アツコ―――。」
「―――アイツらを捨てて俺と一緒に来い。」
「嫌。」
反射だった。何を求められても『はい』と答える以外の選択肢は無いというのに。女はその答えに顔をしかめている。
額が汗ばむ。体が震える。自分のせいで、皆が。
「何故だ?見ての通り俺はアイツらよりも強いし、金も食料も大量にある。お前を不自由無く生活させる事ができるんだ。それなのにも関わらず、何故。」
「えっと、その……さっきのは無しに「答えろ秤アツコ。これは命令だ。お前に拒否権はない。」………。」
「………一人ぼっちになった私をサオリ達が助けてくれたから。家族として、迎えてくれたから。」
「……そうか。」
女は机上で強く拳を握りこみ、頬杖をつき始めた。不機嫌である事は明白だ。
断頭台の上で処刑を待つような心地になった。泣きたくなるのを堪えて気丈に振る舞う。気後れなどしてしまえば、交渉で勝てるはずもないから。
静寂の広がる数十秒、遂に処刑人が動いた。
「それなら、アイツらと一緒でもいい。」
「……え?」
紐を切るための剣を持った処刑人は、断頭台そのものを破壊した。
「いいの……?」
「仕方がない。お前の感情なんて物無視して無理矢理連れて行くことも出来るが、俺はお前とどちらかと言えば良好な関係を築きたい。」
「さあ、そうと決まれば契約だ。急造とは言え『契約』。しっかり書面には目を通した上でサインしろ。俺はあのクソガキ共の応急処置してくる。」
「待って!」
そう言って刑場を後にしようとする女を呼び止める。
「あなたの名前は…?どうしてそこまでしてくれるの?」
女は数秒目を瞑って考えた後、ゆっくりと口を開いた。
「俺の名前は…そうだな、『キヨ』とでも呼んでくれ。そんでもってお前にここまでする理由は―――」
■□□
「―――『顔』なんだって。」
「何それ、気持ち悪いし意味がわからない。」
「……なんだか、とんでもない人の所に来ちゃいましたね…。私達これから本当にどうなっちゃうんでしょうか……。」
「だが、ここに居るしかない。一人でも、特にアツコが出ていけば他が何をされるかわからない。すまない皆…私のせいで……。」
「サっちゃんのせいじゃないよ。それにあの人、もしかしたらそんなに悪い人じゃないかもしれないよ?」
アツコは交渉中のキヨの様子を思い浮かべる。不機嫌にはなっても、こちらの要望を受け入れてくれた所や交渉成立後に毎日私達に温かいご飯を振る舞ってくれている所。
そしてなにより、時折見せる此方への細かな気配り。
彼女は確かに自分達を助けた理由をアツコの『顔』といったが、その態度もいつもの本能の儘に動いているような様とは異なり、何処か誤魔化した様子だった。
「いつか、もっとキヨの事を知れたらいいな。」
「……正気?」
■■□
「えへへ……凄いですね。ここには雑誌がたくさんあります。何週間に一冊拾えるか拾えないかだったのに……。」
「人のコレクションを堂々と盗み見するな。」
「うわあぁぁ!?い、いつからいたんですか!?」
「お前がコソコソと俺の自室に入っていったところからだ。」
「最初からじゃないですか!?うわあぁぁん!!もしかして私の出荷が早まったりしますか!?それなら最後の晩餐はビーフシチューにしてください!!」
「出荷なんかしねぇし今決めた事だが絶対にお前の最後の晩餐はシュールストレミングにしてやる。」
「絶対に嫌です!!でもどうしょうもないから今の内に美味しい物食べれるだけ食べておきます!!」
「このクソガキ……。お前にやる雑誌はないから返せ。」
「うぅ……あっ!!」
必死に身体で隠したヒヨリだが、無情にも雑誌はキヨに取られてしまった。そしてぶん取ったグラビア雑誌の表紙を見て更に眉をひそめる。
「お前……。」
「な、なんですか?」
「真面目にセンスが無いな。よりにもよってこのグラビア雑誌見てたのか……。俺の収穫物の中でも一二を争うゴミだぞコイツは。」
「えぇ!?いいと思うんですけど……。」
「いいやゴミだ。」
そう言ってキヨは近くの椅子にだらしなく腰掛けて続ける。
「見ろ。どいつもこいつも同じ角度、同じポーズ。他のやつもどこかで見たようなものばかりだ。独創性がない。」
「そして何よりゴミなところはだな。」
ヒヨリはキヨの剣幕に思わず息を飲む。
この三大欲求の擬人化のような女がこのグラビア雑誌をゴミと罵る最大の理由それは―――。
「モデルが悪い所だ。」
「えぇ!?この人可愛くないですか!?」
表紙には巷で話題の美女などと謳われており、実際ヒヨリにはその名にふさわしい美人に見えている。
「第一、この女位の年齢の奴らはどいつもこいつも同じ様な顔ばかりしていやがる。没個性だ。もっと若かったり、年季が入っていた方が俺は好みだ。」
「好みの問題!?あとよく見て下さい全然違います!?」
「更に言えば俺はこの位の年齢で俺にとって最高の被写体を知ってる。それと比べたらこの女はカスだ。」
「ひ、酷い……!でもその人に興味があります!見せてください!」
「見たいか?見たいだろう。すごいぞ?なんてったってもう何を着ていてもエロいんだ。やれ水着だの何だので布面積を狭くすればいいと思ってるんだろうがそうじゃあない。さっきも言ったように真にエロい奴は何でも映える。むしろ少なめのほうがエッチなこともあるんだ。」
「き、気になります!!早く見せてください!!」
柄にもなく熱弁するキヨにヒヨリの期待は高まっていく。まるでツバメの子が口を開けて親からの餌を待つようにヒヨリは目を輝かせる。
「断る。」
餌は雛鳥の目前で引っ込められ、親鳥は雛鳥に見せつけるように餌を丸のみした。
「えぇーー!!??」
「当たり前だ。『俺にとって最高の被写体』と言っただろう?つまり俺以外の人間にとっては違うかも知れない。なんなら酷評されてしまうかも知れないということだ。そして他の奴らにとっての『最高の被写体』と比較されて酷評されてみろ、何が起きる?」
「え?な、なにって……。」
なんだろうか、ディベートかもしくはそれにすら満たない口喧嘩だろうか。
「戦争だ。血で血を洗い、どっちかの性癖か命の蝋燭が折れるまで続く殴り合いが始まる。」
「えぇ…。」
「まぁそういう事だ。ちなみに俺はこれまでにそれで5人飛ばした。」
「本当に何やってるんですか!?」
「安心しろ流石に殺しちゃいない。だが普通に路地の真ん中でやったしアイツらは最低でも身ぐるみ剥がされてるだろうがな。」
「駄目じゃないですか!?」
「人の性癖をゴミと罵ったんだ。それくらいの覚悟があっての事だろう?」
「え?多分普通にさっきのグラビアアイドル好きな人もいると思うんですけど……。」
キヨはさっきこの雑誌のアイドルをゴミと罵った。それはキヨにボコボコにされた者たちと同じなのではないだろうか。
「ん?…あぁ俺はいいんだよ。だって負けないし。仮に穏便に議論で俺の癖がそいつの癖より劣ってる事が論理的に証明されるようなことがあったとしても最悪そいつを弾丸論破(物理)すればいい。」
「えぇ………。」
「とにかく俺から言えることはこんな没個性な写真では無くお前にとっての『最高の被写体』を見つけろってことだ。そしてそいつを自分の好きなように撮ればいい。そうすればこんなもんを探す手間もかからないし、何より自分が楽しい。」
「それだけだ。それともうすぐ飯の時間だから後少し待ってろ。今日は冷えるから鍋だ。」
「やったぁー!!具材は?お肉はありますか?」
「調子の良い奴め、だが安心しろ。もちろんあるぞ。」
「こ、こんなに幸せでいいんでしょうか!?」
■■■
鍋を待っている間、ふと考える。
キヨは自分にとっての『最高の被写体を知っている』と言っていた。
そして先ほどの言い方といい、『被写体』という言葉は『自分が撮るもの』として使われているように思える。
それにも関わらず彼女の部屋にあった雑誌のおおよそ半分はグラビア物だった。
彼女がその『被写体』に出会うまでに集めたのものだったのだろうか。
それとも―――
「おーいガキ共ー。飯の時間だぞさっさと来ーい。」
「はーい!待ちくたびれました!!」
どんな反応来とるやろうな〜。
↓
まぁ、流石に感想は来てへんか〜。
↓
評価来とるやんけ!!こんな速いとか絶対荒らしや!!
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☆10「よろしくニキ〜」
↓
アイエェェェーーー!?!?!?!?(以下略)
え?もしかして私、明日死ぬ?
単刀直入に言うわ。どうすりゃ俺っちの命だけでも助かるんや?
とても嬉しいです(語彙力評価E−)
本当にありがとうございました。
閑話休題
キヨの名前の由来
虚→きょ→キヨ
決してブレーキ音の人ではありません。
そしてキヨはサオリ(原作開始時17歳)よりも9歳年上で原作開始時では26歳になります。