Q貴女にとっての人生とは? 女主「うーん」   作:胸痛

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凄いわね前話だけで200人くらい増えたわね。(混乱++)
ランキングにも載ったわね。(最高日刊38位)
私、死んだかも知れないわね。
あと今回は前話までとはうって変わってすごくシリアスなのよ。気を付けて頂戴。



醜悪な本性【(オモテ)

 ある日からアツコが『何かに怯える様な顔』をする事が少なくなった。アツコは自室で花を育てる様になった(心に余裕を持てるようになった)

 

 

 ある日からヒヨリが明るい顔をすることが多くなった。後向きな言葉も、少なくなった。

 

 

 ある日からミサキの自傷行為が少なくなった。自殺未遂についてはもう暫く見ていない。

 

 

 理由は、分かっている。

 

 

 キヨだ。

 彼女には金が、何よりも圧倒的な力があった。

 そんな彼女の周りにいることによって余裕が生まれたのか、それとも、彼女のあの大胆不敵な性格が、皆に良い影響を受けられたのか。

 

 家族達は私が守らなくてはならないと思っていた。

 

 だがどうだ、皆私が守っていた時よりも幸せそうじゃないか。

 

 それは幸福な事の筈だ。筈、なのに……。

 

 どうしてなのだろうか。皆が余裕を取り戻していく度に、私の心に余裕がなくなっていく。私が騙し騙し繋ぐことしか出来なかった状況が改善されていっている。その筈なのに黒い感情が止まらない。

 

 このままでは私にとっての『何か』が壊れてしまう。私がおかしくなってしまう。そんな気がした。

 

 考えないようにしていた。しかし最近、それを改めて考えるようになってしまう出来事があった。

 

■□□

 

 その日は、キヨが買い出しに出かけていた。私達は此処にいるのが子供だけだということが知られない様、音をなるべく立てない様に彼女が帰ってくる事を待っていた。

 

 

 だが、

 

「おぉ…!マジじゃねえか!?ここに面のいいガキが沢山いるっていう話はよぉ!?」

 

「だ、誰だお前ら!?」

 

 遅かった。私達がここに居るという事は既に何処か知られていたらしい。家の扉を破壊し、大人が何人か入ってきた。

 

「ですが兄貴、ここはよく聞く例の奴の縄張りじゃないですか。いいんですか?もし奴の癪に障れば最悪私達全員皆殺しにされますけど。」

 

「馬鹿野郎。たしかに奴は戦闘に関しては化け物らしいがこんな所のガキを助ける為に動くような奴ではない。きっと大丈夫だろう。」

 

「さっすが兄貴だ!で、どうするんですかこのガキ共。ウチは最近報酬少なくてキツイんでさっさと売っ払いますか?」

 

「そうだなあ……いや、せっかくの上玉だ。お前らも色々あるだろう?ここは一発やっていこうぜ。」

 

 大人共が此方に手を伸ばして近づいてくる。

 

 それに対して真っ先に動いたのはアツコだった。

 

 突如、部屋全体にけたたましい音が鳴り響く。それに大人達は驚いた様な表情で顔をしかめる。一部の獣人は耳が敏感な為か、耳を押さえてうずくまった。

 

 キヨが置いていったブザーその名を本人曰く『キヨスイッチ』。

 

 本人曰く『押せば音に追加で「しんごう」が云々でキヨがやってくるスイッチ』とのことだがやはりというべきか、私にはブザーとしての役割しか果たしていないように見えた。しばらくすると大人達はその音に慣れてしまって、こちらに近づいてくる。

 

 私は、何としてでも家族を守らなければと思った。銃を構え、乱射して牽制する。

 

「動きが甘すぎる。所詮はガキだな。」

 

「―――え…?」

 

 気が付けば目の前に『兄貴』と呼ばれていた人物が来ていた。咄嗟に殴ろうとした腕はいとも簡単に捕まれ、ならばと振り下ろした銃身は流れるような手つきで奪われ―――

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 ―――私の体を撃つための道具として使われた。

 

「ハハハハハッ!虚しいもんだよなぁ!こんな所で楽しくやってたおままごとが一瞬で壊されるんだからよぉ!!」

 

「さて、生意気なガキには『お楽しみ』よりも『躾』が大切だよなぁ………!」

 

 集団リンチが始まった。アツコ達も私を救う為、その大人達に襲いかかってくれたが、子供の力などちっぽけなものでその大人達の足元にも及ばず、同じ様に嬲られる家族達を私はそいつらの足を掴んで止めさせようとする事しか出来なかった。

 

 しばらくすると大人の内の一人が未だ鳴り続けているブザーを不快に思ったらしい。気絶したアツコの手からブザーを奪い破壊した。

 

「はぁ…なんでコイツらはこんな物で身を守れると思ったんすかね?こんな音が出るだけのゴミで。」

 

「そうだな。『私』はどこまで行っても詰めが甘い。」

 

「―――ぇ」

 

 斬撃。否、鞘に納められたままの刀での攻撃は斬撃と呼べるのだろうか。だが、それは確かに斬撃として侵入者の首を一瞬で圧し斬った。

 

「キ……ヨ…?」

 

「…………生きているか、サオリ。」

「後は任せろ。」

 

「お前…もしやと思ったがまさか本当に―――!!」

 

 兄貴と呼ばれていた人物が、何か言っていた。しかしそれは意識の薄れゆく私の耳には聞き取れなかった。

 

 

 

 意識を取り戻した時、そこには私達を襲ってきた大人の姿は残されておらず、ただ嵐の過ぎ去った後ように荒れた部屋だけがあった。

 

 ただ一つ、部屋全面を彩る赤い色だけが、ここで何があったのかを物語っていた。

 

 私は無力でしかなかった。

 

■■□

 

 私達はこのままここに定住は危険であると判断したキヨにより家を手放し、放浪を始めた。

 

 歩いて、見つけたいい感じの家で数週間から一ヶ月程度住み、また歩く。そんな生活だ。

 

 またキヨは時間がある時に私達を鍛えるようになった。

 

 訓練は地獄といって遜色なく、ボコボコにされて伸びるまでがワンセット。そこから結果を分析して、もう一度ボコボコにされる。癖を覚えようにも暫く繰り返していると全く新しい戦闘スタイルに変化し、またボコボコされる。

 

 始めは嫌だという気持ちが滲んでいたミサキの目がだんだんと次こそは殺すという目に変わっていって少しだけ怖かった。

 

 訓練が終われば夕飯を食べて皆は寝る。

 

 

 

 だが、私はまだ足りなかった。

 

「もっと私を鍛えてはくれないか。」

 

「断る。」

 

「私は強くなりたい。ミサキ達を守る為にはお前のように、いや、お前よりももっと強くならなければならない。」

 

「寝ろ。」

 

「何故だ!?私が強くなれば前のような場面でアツコを守れる確率だって上がる!お前にとってもメリットがある筈だ!」

 

 最近は何度も私はこうしてキヨに教えを乞いている。しかし、何を言っても彼女は首を縦には振らなかった。

 

「前の件の事を言っているなら解決している。あれは『俺が目を離したから』こうなった。そもそもこんな所でガキ4匹抱えてなおかつそのガキに留守番させるなんて馬鹿なことをした俺のミスだ。」

 

「だからこうして放浪しつつお前らを常に目の届く位置に置いている。」

 

「ならばこの戦闘訓練は!?」

 

 これに対する答えは分かっている。このやりとりは何度もしたからだ。

 

「何度も言わせるな。この戦闘訓練は『俺くらい強い奴に粘れるようにする為』の訓練だ。そもそもただ強くなることを求めてないんだよ。」

 

「俺がただでさえ少ない睡眠時間を削ってまでお前個人を強くする理由が見つからない。ガキはガキらしく寝ていろ。」

 

 それでは駄目なのだ。私は、家族を導く者として強くなければならないのだ。そうでなければ、そうでなければ……!!

 

 

 

 

「このままでは私は、姉でなくなってしまう……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――は?

 

 

 私は今、何と言った?

 『姉でなくなってしまう』だと?

 

 なんだ、その言葉は。

 まるでそれでは『私が皆を守る立場に執着している』と言っているような、家族を生きる目的の為に利用しているようなものじゃないか。

 

 これまでのミサキによる自殺未遂の映像が頭を過る。

 

『どうして生き続けなきゃいけないの?』

『サオリ姉さんはなんで生きているの?』

 

 答えられるわけがなかった。こんな身勝手な理由で生きてくれと言う事がどうしてできようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの、キヨへの黒い感情の意味がわかった。

 嫉妬だ。これを嫉妬というのだ。

 

 アツコを安心させる事。

 ヒヨリを明るくする事。

 ミサキを生きさせる事。

 

 

 私には出来なかったことをたったのの数カ月でやり遂げたキヨ。そんな彼女への醜い醜い嫉妬。

 

 あぁ…そうか。私はこんなにも自己中心的で、見苦しい人間だったんだな。

 

 私はアツコを真に安心させることが出来た事があっただろうか。否、私達との生活の中でアツコはいつも何かに怯え、その理由を聞くこともできなかった。

 

 私はヒヨリが満足するまで食べさせる事が出来た日があっただろうか。否、私は盗みを働いてもゴミを漁っても腹五部程度が限界だった。

 

 私はミサキが生き続ける理由を提示出来た事があっただろうか。否、私は問答から逃げ、ただ何故なんだ、やめてくれといい続ける事しか出来なかった。

 

 家族の為などと言っておきながら、何もしてやれなかった。

 

「もう、いい。」

 

「ああ?」

 

「私は出ていく。」

 

 私がいなくても、家族は幸せになれる。いや、このままキヨへこの感情を抱き続けて生活していたら私はおかしくなってしまいそうだ。

 

 皆の幸せを、壊してしまうような行為をしかねない気がするのだ。

 

 だから―――

 

 

 

 

 

 

 ―――家族の為を想うならば、これで良いのだ。

 

「………。」

 舌打ちの音が聞こえた次の瞬間、私の体が浮く。

 

「あ゛っ……なにっ…はな…あ゛!?」

 

 キヨは無言で私の首を掴み、力強く絞め上げる。ふと目をみると、初めてあった時の嗜虐心を擽られて恍惚とした顔でもなく、いつもの飄々とした顔でもなく、ただ敵意と殺意の込められた目でこちらを見ていた。

 

 その目に寒気がし、蛇に睨まれた蛙のようになった私をキヨは容赦なく投げ飛ばした。

 

「何をす「黙れ。」!!」

 

「最近やけにらしくもなく喚き散らすと思ったらまたふざけたことを……、どこまでも俺を不快にさせるガキだ。」

 

「どいつもこいつも人の気持ちも考えずに消えようとしたり死のうとしたり、反吐が出る。」

 

「何を悟ったかは知らねぇけど、出ていくならせめてコイツらの話を聞いてからでも遅くはないんじゃないのか?」

 

「いるんだろ?出てこい。」

 

 そう言った先に目線を向けると

 

「………。」

 

「え、えへへ…。」

 

「ごめん…盗み聞きしちゃった。」

 

 ぞろぞろとミサキ達が出てきた。

 

「大方、テメェが最近よく夜に出ていくから、心配になったんだろう。」

 

「さて……お前ら、なんかサオリのやつが出ていくらしいな。お前らはどっちについていく?」

 

「お金があって何でもやってくれる俺か?」

 

「それとも、俺よりも弱くて金もないこの情けない奴か?」

 

 その言葉に体が震えた。返事が聞きたくなかった。

 

 恐怖で体が竦んで、動くことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「「サオリ姉さん。」」「サっちゃん。」

 

「………え?」

 

「何が『え?』だ。素っ頓狂な声出しやがって。これが現実だ、常識的に考えろ。方や出会ってばかりの信用できない大人、方や長年自分達を守り続けた姉。この地獄の環境で選ぶなら後者に決まってる。」

 

「ここは確かに良い所ですけど、やっぱり姉さんに会えなくなるかもしれない可能性と比べると……。」

 

「こんな奴なんかよりも姉さんの方がずっと大切。」

それに、私の生きる意味だし……。

 

「嫌だよ。サっちゃんがいたから私は、ううん。『私達』は生きてこれたんだよ。そんなサっちゃんが居なくなるなんて、絶対に嫌。」

「私達はサっちゃんについていくよ。」

 

「………アツコ、お前には契約がある事を忘れるなよ。」

 

「あっ……。」

 

 

 

「………でも、私はサっちゃんといたいの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、一緒に居てよ。」

 

 何も、言えなかった。ただ泣いて、泣いて、泣き続けた。

 

 家族を抱きしめ、ただ、泣き続けた。

 

■■■

 

「キヨ。私はお前に嫉妬していた。」

 

「おう、急だな。」

 

「そしてまだ私はお前に嫉妬している。お前が私の家族達の心を救ったのは事実だから。だから、その嫉妬でもしかしたらお前に牙を剥くことがあるかもしれない。」

 

「ハッ!丁度いいサンドバッグができるじゃねぇかよ。最高だな。」

 

 

 

 

「あー。だが、いざ殴るとなると多少張り合いが欲しくなるな。そこで、だ。」

 

 キヨが何かをこちらに投げてくる。それはカバーのついたナイフだった。

 

「そいつの使い方を教えてやる。」

 

「いいのか?もしかしたらお前に勝って殺してしまう事になるかもしれないぞ?」

 

「言うようになったじゃないかこのクソガキ。」

 

 私の挑発を鼻で笑って言った。

 

「安心しろよ、俺は強いからな。」




誰やこのイケメン。新キャラか?
キヨさん?おかしい。そんなバカな事があるわけない。

『ソーシロー』さん。誤字報告ありがとうございました!
今後もよろしくお願いします!!(屑)
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