Q貴女にとっての人生とは? 女主「うーん」   作:胸痛

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 日常回です。
 前話に追加しましたアンケート、答えて頂くださると嬉しいです。



苦痛の甘味

「ヒヨリテメェこの野郎!!よくも俺の苦労を台無しにてくれやがったな!!」

 

やれてくらはい(やめてください)!!ほっへをひっはららいれくらひゃい(ほっぺをひっぱらないでください)!!」

 

 むにーんという擬音が聞こえそうなほどにヒヨリの頬を強く引っ張るキヨ。

 

「えぇーい黙れぇ……!この口が悪いのかこの口が!!」

 

「うわあぁぁぁん!!」

 

「……どうする姉さん、止める?」

 

「いや…これは流石にヒヨリが悪いというか……。」

 

れえひゃんにもみふへらえらした(姉さんにも見捨てられました)!!もおおひらいれすぅぅ(もうおしまいですぅぅ)!!」

 

 どうしてこうなったのか、時間は遡る―――

 

 

 

 

『キヨ、今日も訓練を―――』

 

『あ゛?煩い黙れ、訓練は暫くなしだ。』

 

―――

 

『………。』

 

『だーかーらー!後処理はきちんとしろって何回も行ってるだろ!?』

 

『………ごめん。』

 

―――

 

『あ、あの…なんでこっちをずっと見てくるんですか…?』

 

『………。』

 

『な、なんで何も言わないんですか……!?』

 

『…………………。』

 

―――

 

『見て、やっと蕾ができたの。』

 

『………あぁ、そうかよ。』

 

―――

 

「最近、キヨの機嫌が悪くないか?」

 

 確かにキヨは性格というか、言動がアレだがここまでこちらに対して悪対応をするのはそれこそ初対面のあの時以来だった。

 そしてなにより―――

 

「なにか…あったのかな。」

 

 奴が大切にしている筈のアツコにさえ多少苛立ちを隠しきれていない所を見るに相当な事があったのだろう。

 

 現状こちらに被害はないがこの状況が続いていると確実によくないことが起こる……気がする。もし奴の苛立ちの原因が私達にあるのならば最悪の場合は一人づつどこかに捨てられ、口減らしされる可能性だってある。

 

 なんとかしなければ……。

 

 その為にはまずキヨの苛立ち原因が何処にあるのかを理解しなければならない。

 

「キヨの様子を観察してみないか?」

 

■□□

 

「お前ら食べ残しはないな?」

 

「はい!」

 

「そうか、ならもう食器下げるぞ。」

 

 さっさと食器を下げ、台所へ向かうキヨ。

 その様子を確認すると四人は足を忍ばせ後をつけ始めた。

 

「………。」

 水が無い為、紙で丁寧に汚れを拭き取っているキヨ。

 その後ろに並ぶ4対の目。

 

「……特に違和感ありませんね。」

「何が奴の苛立ちの原因がわからない以上、目を離してはならない。」

 

「……―――♪」

 

「鼻歌…?」

「アイツ歌とか歌うんだ…。」

 

「そこでなにやってる?」

 

「「「「!?」」」」

 

 気配を消し、一歩も動いていなかったにも関わらず気付かれたという事実に驚愕する。

 

「まずい、逃げ―――」

 

「待て、せっかく来たんだからたまにはお前らが洗い物をやって見ろ。」

 

―――

 

「くっ…!こんな筈では……。」

「ごめん姉さん、私が少し大きな声で言ったせいかも。」

 

「いやキヨのことだ、私達が声を出した時点で気がついていたのかもしれない。ミサキのせいだけではないさ。」

 

 できる限り手早く終わらせて続きをする為、急いで洗い物を進める、しかし

 

「汚れってなかなか落ちないね。」

 

「うぅ……食器が地味に重いです……。」

 

「水が使えればな……。」

 

 正直な事を言えばあまり飲み水には困っていない。キヨが手に入れた()物があるからだ。

 しかし5人が住んでいる以上、贅沢に使えばあっさり枯渇してしまう。その為、水を消費するという事は慎重に検討しなければならなかった。

 

 汚れに悪戦苦闘すること数十分。

 悪い方向に状況は動く。

 

「う、うわあぁぁ!?」

 

 ヒヨリの絶叫の数秒後、『カシャン』という嫌な音が響く。他が恐る恐るヒヨリの方を見る。

 

 そこでは案の定というべきか、皿が割れていた。

 

「あぁ…やっちゃった。」

 

「と、取り敢えず片付けないと……!」

 

 パニックに陥り、ひとまず割れた皿に手を伸ばすヒヨリ

 

「あっ待てヒヨリ!!」

 

 サオリの静止も虚しく、ヒヨリの手が皿の破片に触れ―――

 

「痛っ……あっ手が!?」

 

 案の定破片で手をあちこち切ってしまい、手が血だらけになってしまった。

 

「まずい、急いで片付けなければ……!」

 

「ミサキは床を拭けるものを!アツコは箒か何かを持ってきてくれ!」

 

「で、俺は何をしたらいいんだ?」

 

「キヨは……キヨ!?」

 

「なんだその手は、遂にヒヨリまでミサキみたいに面倒になったの―――あー…なるほどな。」

 

 呆れるように視線を落としたキヨは床の惨状を見て状況を理解したのか、ハァと一つため息をつく。

 

「もういい、後は俺がやっておく。」

 

 それだけ淡々と残すと、キヨはサオリ達を部屋から追い出して片付けを始めてしまった。

 

■■□

 

「くっ…!こんな筈では……。」

「姉さんごめんなさい…。私が皿を割ったせいで……。」

 

「……さっきも似たようなやりとりしたような……。」

 

 とは言えキヨの苛立ちの原因を解明し、それを解消する為の行動の結果さらにキヨを苛立たせてしまった。このままではいけない。

 

「ヒヨリ、手は大丈夫か?」

 

「は、はい…なんとか……。」

 

「よし、次こそは!」

 

―――

 

 洗い物を終えたキヨは自室に戻り、特にやることもないのか雑誌開いては投げ捨て、開いては投げ捨て、それを何度か繰り返した後、思い出したように刀を手入れし始めた。

 

 といっても刀身は出さず、鞘や持ち手を磨く程度なのだが。

 

「刀の手入れって刀身がメインだと思うんだけど。」

 

「分からない…が、何か拘りがあるのだろう。」

 

 一通り終えたのか、今度は部屋をフラフラ歩き回り、何かを探しているようだった。

 

「今度は何をやってるんでしょうか……。」

 

「探し物…?」

 

 随分と熱心なようで一度探した所をもう一度探したり、細かな物も退かしてみたりと相当な執念が見える。

 

「あー……クソッ…やっぱり見つからねえな。」

 

「何処にしまったんだ?」

 

 キヨの部屋には物が少ない。捨てようとしてこなかっただけで物に対する執着はよっぽどのものでないとないのだろう。

 そんな彼女が執着する何か。

 

「俺の『飴』……!!」

 

「えっあ、『飴』!?」

 

「ヒヨリ!?あー……聞かれていたか。」

 

「ごめんね…最近キヨがイライラしてるから、なんでか知りたくて……。」

 

「アツコも…いや、全員か……ハァ…実は、飴が舐めたくなって大量に仕入れたはずだったんだがある日突然しまっていた場所から消えちまってな。」

 

 観念したようにキヨは語る。

 

「飴がなくなってイライラって……子供みたい。」

 

「ぬいぐるみ抱いて寝てるおこちゃまは黙ってろ。」

 

「は?」

 

「あ゛?」

 

 話の脱線を戻す為、一度咳払いをしたあとにキヨは続ける。

 

「誰かに盗まれたわけでもないだろうし、『俺の部屋によく出入りしてて』、『食い意地の張った奴』でもいればそいつを詰めればいいんだが……ん?」

 

「ふーん……あれ?」

「ん?」

「………。」

 

 一人を除く皆の視線が一点に集まる。

 

「な、なんで皆さんこっちを見るんですか?わ、私はやってませんよ!?」

 

「そうか、それならよかった。実はあの飴はだいぶ前のやつでそろそろ処分しないとマズい物だったんだよ。」

 

「え、何ともなかったんですけど……?嘘ですよね…?」

 

「ああ、嘘だ。マヌケは見つかったがな。」

 

■■■

 

 そして現在に至る。

 

「この野郎!!この餅みたいに伸びる頬はどうなってんだ!!ああ゛!?」

 

「うわあぁぁぁあん!!」

 

「キヨ、流石にその辺にしてあげて……。」

 

「こればかりは許せねぇ、あの飴を手に入れる為に何個の組織が犠牲になったと思ってるんだ!!」

 

「それやったのアンタじゃん……。」

 

「大体コイツは食べ過ぎなんだよ!!毎回毎回『お代わりありますか』って……?」

 

 ピタリとキヨの先ほどまでの勢いが止まる。そしてヒヨリから手を離すと今度はミサキの方へ歩み寄る。

 

 そしてミサキの頬をつまむと、みょーんと引っ張った。

 

「―――っ!?やめろ変態!!」

 

 あまりに唐突だったので一瞬反応が遅れたものの、自分の状況を理解するとすぐさまミサキはキヨの手をはたき落としす。

 それを全く気に留めていないのか、キヨはまたヒヨリの頬をつまみ、むにーんと伸ばす。

 

「この弾力……!凄いな。俺が今まで触ってきたものの中で一番かもしれないぞ……!?」

 

「……ちょっと触ってみたいかも。」

 

「いいぞ、この触り心地は最高だ…!!」

 

 アツコは嬉々としてヒヨリの頬に触れる。

 

「うぅ……あう…。」

 

「確かに、柔らかい……!」

 

「そうだろうアツコ!なあ、ヒヨリ……。」

 

「は、はい……!」

 

 キヨはヒヨリの肩にポンと手を置く―――

 

 

 

「保存食、食ってたな?」

「!?」

 

 そして先程までの満面の笑みとは打って変わった真顔と低い声で言った。

 

「……どういうことだ?ヒヨリの頬の弾力が何故保存食を食べていたことにつながる?」

 

「今朝といいコイツ最近『おかわりください』って言ってくる頻度が少なくなってるんだ。ガキっていうのは普通年を重ねる程たくさん食うものなのにな。」

 

「つまりコイツは俺が見てる限りでは現状お前らと食ってる量はそう変わらないし、運動量も違いはないはずだ。それなのに二人でここまで違うのは個人差としてもありすぎな気がした。」

 

「そして最近非常食の数が合わないことが多くてな。非常食なんて探索()すればすぐに集まるから気の所為だと思うことにしてたんだが……この関係について聞かせてもらえるか?」

 

「………。」

 

 青い顔をしながら身を震わせるヒヨリ、視線で助けを求めたものの、目を逸らされてしまう。それで覚悟を決めたのか声を震わせ蚊の鳴くような声で言った。

 

「訓練がきつくてどうしてもお腹が減ったとき……ちょっとくらいいいかな……って思って…………。」

 

「ご、ごめんなさあぁぁぁい!!」

 

 ヒヨリはあまりの恐怖に逃げ出す。生命の危機という事で自分でも驚く速度が出た。

 

「何もしないから待ってよー。ちょっと大義名分ができたから口減らしするだけだってー。」

 

 口元を緩ませながらそれを追いかけるキヨ。

 

「それ実質死刑宣告じゃないですかあぁぁぁ!?」

 

 その後僅か数秒で捕まったヒヨリだったがアツコのお願いによってなんとかその日丸一日頬をキヨに自由にされるだけで済んだのだった。

 





キヨは意外と家庭的。料理、洗濯、掃除、修復等やろうと思えば何でもできる。
因みにアツコ達が来る前、もとい一人暮らししていたときは必要がなくなった為殆どやっていなかった。

『飴』
キヨの好物。飴は飴でも棒が付いている奴が好き。だがアリウス自治区のものである為非常に品質が悪い。しかし彼女にとっては『棒付きの飴を舐めている』という事が重要であり、その為だけに大枚を叩く意味と価値のある物である。
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