―――プレゼントの準備(ヒヨリ)
「その手…ミサキ、お前また……!?」
「いや、これは…その……実は……」
朝、起きてきたアイツ等の会話を適当に流しながら朝食を出す。できるだけいつも通りに動揺を隠す。
「今日の夜にプレゼントが届くんですよね?」
「あ、あぁ……楽しみに…してろ……はは…。」
「……そうだ…!俺、今日もまた街に行くから大人しくしておけよ。」
「はーい」
ヒヨリの目は輝いている。彼女の求めた物が見つかるのか不安を覚えながらキヨはそそくさと街に向かった。
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(さて、本当に面倒なものを欲しがったな)
―――サンタさんへ
ヒヨリはアツコと同じ様に手紙を書いていた。
―――わたしたちは くるしみながらいきています。
―――でも、そんななんのおもしろみもない こいしみたいなじんせいですが、ほしいものがあります。
―――むかしみて いちどでいいから たべてみたかったんです。
―――最高級プレノアールのローストチキン
「出せるかァそんな物!!!!」
キヨは叫んだ。街を歩いていた数人がビクリと反応し、不自然に自身を避けていくがそんなことはどうでもよい。
「はぁ……鶏一匹くらいならどうにか買えるか?」
実はここ最近、市場は品揃えが悪い。ミサキのぬいぐるみだって、本来なら買えるはずだったのだ。確かにそういった物の少ない場所だが、手の器用な奴が作り売りして生計を立てるなどよくあることだった。
そして食品に関しては何処の店も露骨に出し渋っている。金はあるが、買えるものがなければそれは意味をなさない。
「『計画』を前倒しにするべきか……」
「おおっと、考えてる場合じゃねぇ。急がねぇと買えるものも買えなくなる。」
クリスマスの空気に相応しくない不穏な感覚から目を逸らしながらキヨは街を駆けていった。
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―――???
「おい、その鶏一匹いくらだ。」
「……二万だ」
「嘘はいけないな。ソイツは良くて5000円行くかどうかだろ。」
「……いい目をしてる。だが悪いな、『需要と供給』って奴さ。こんな値段でも買うやつがいる。アンタもそうだろ?」
「チッ……」
キヨは舌打ちしながら二万円を投げ渡して帰路に着く。
黙ってさえいれば綺麗な女が生鳥の入った箱を俵のように抱えながら歩く様子はどことなく笑いを誘う。
「はぁ……よく考えたらここから焼かなきゃならないんだよな…めんどくさい…。」
冬とはいえ、生肉を常温で放置するのは気が引ける。今夜にも焼かなければならない。見るからに料理が面倒そうな初めて扱う食材に果たして何時間向き合うことになるのかと考え、身を震わせつつ、買ってきたものを外に適当に隠す。
後は、家に入るだけ。扉へ手をかけ…
「……」
―――あぁ、開けたくない。
扉を開けたら、誰もいないんじゃないかという恐怖が頭を支配する。今日までの出来事はすべて都合の良い夢で、空き缶と虫の巣食ったあの場所が広がってるんじゃないかという思考が過ぎる。
それらを必死に振り祓って扉に手をかける。
そして勢いよく―――
「おかえり。遅かったね。」
「……!?」
開こうとした瞬間、後ろから声をかけられる。振り返れば、今一番会いたかった少女が如雨露を手に持ち自身の後ろに立っていた。
「……アツコ…?どうして外に……。」
「今日は天気がいいから、お花を外に出して、水をあげてたの。」
「……俺がいない時に外へ出たのか、悪い子だ。」
「悪い子はプレゼントを貰えないって聞いたんだけど、もしかして私も?」
「お前はいつもいい子だから、一回くらいは許してくれるさ。」
そう言ってアツコの頭を撫でてやる。
一回撫でるまでは触れることすら恐ろしかった。触れた途端に消えるんじゃないかって思ったから。
「寒いだろ?早く家に入ろう。」
手を引き、家の中へ入る。
「アツコ、キヨも帰ってきたのか。」
「うん。」
「キヨさん!早くご飯作ってください!私早く寝たいです!」
「あぁ、そうしておけ。夜更かしする悪い子にサンタクロースは来ないからな。」
その日の夜、四苦八苦しながら鶏を焼き、サオリの元に『ある物』、ミサキの元にぬいぐるみ。そして、アツコが家族達と一緒に寝る布団に、新しく大きな毛布をかけてやる。暫くすると、彼女達の僅かな震えが止まり、心地良さそうに寝息を立て始めた。
―――あっという間に過ぎてゆく幸せな日常。
―――だが、これは薄氷の上に成り立っているものでもあると、女は知っている。
―――だから、女は直にこの生活を捨てなければならない。
―――だがどうか、今だけはそれを忘れさせてくれ。
そう願い、キヨは久しぶりに落ち着いて眠りについた。
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―――プレゼントの準備(サオリ)
朝、少女達は慣れない暖かさの中で目を覚ます。
「これ……新しい毛布…?」
「暖かいですね……。これ、もしかしてアツコちゃんのプレゼントですか?じゃ、じゃあ私の―――」
「お探しの物はコイツか?」
キヨが大きな皿に盛り付けられた鶏を持ってくる。
「うわあぁーーん!!ほんとに来ました!!」
「よかったな。まあ、冷めちまってるからまた暖めて食べよう。」
「そうですね。……あれ?でもなんだか雑誌で見たものと違う気が……」
「あーー……雑誌ってのは綺麗な物を出すからな。こんなもんだろ。」
「そ、そうなんでしょうか…?」
「姉さん!サオリ姉さんは何をもらったんですか?」
「私か?いや、実は私は―――」
「そこに段ボールがあるだろ?もしかしてそこに入ってるんじゃないか?」
ふとサオリは自身の枕元を見る。そこには寝る前にはなかった大きな段ボールが置いてあった。
「これが……私の物なのか?」
分からない。錠前サオリはこの箱の中身を知らない。
何故ならばこの少女は『クリスマスプレゼントを頼んでいない』のだから。
彼女は確かに願った。しかしその願いは、『私の物はいらないから、他の家族達の願いを絶対に叶えてくれ』という内容だった。
箱を開ける。
そこには、大量に菓子が詰められていた。
「お、お菓子がこんなにたくさん………!!」
「どういう事だ…?私は……」
サオリはふと箱の中にある飴が目に入る。それは、キヨがよく舐めているものと同じで、よく見ると何個も入っている。
「……!!」
キヨの方を見る。
「……」
キヨは何も言わず、こちらを見ていた。
そうか、このプレゼントはキヨが用意したのだ。きっとサンタに願わなかった為にプレゼントのない私やミサキに見繕ったのだろう。
確かに、プレゼントがある者とない者がいれば、どちらも気分が良くない。きっと、キヨはそれを嫌ったのだ。
(ありがとう)
心の中呟き、私は皆にお菓子を分け始めた。
「(………マジで何渡したらいいか思いつかなくて適当に菓子詰めたんだが、気に召したようでよかった……)」
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―――メリークリスマス
お菓子パーティーが開かれているのを横目にキヨは部屋を離れる。アツコが喜んでいる様を写真に収める為、カメラを取りに行ったのだ。
「待って。」
しかし、それを引き止める少女がいた。
「なんだ?お前はお菓子パーティーに参加しないのか?」
「なぁ、ミサキ?」
「……」
「皆のプレゼント、あんたが用意したんでしょ?」
「……さぁな。」
「私、1回夜に起きちゃってさ。その時見たんだよね。あんたが夜このぬいぐるみを作ってる所。」
そう言い、キヨの作ったフェルトマスコットを見せてくる。
「……」
キヨは絶句する。寝不足だったとはいえ、子供の接近に気が付かないとは、何たる不覚か。
「まあ、お礼は言っておく。ありがと。それと―――」
キヨに何かが投げ渡される。突然の事に驚きながらも、キヨはそれを受け取った。
手の中を開くと、そこには丸く切られた木の円盤に、何かの生き物が掘られた何かがあった。それは店に出すのも憚られるような不格好な代物だ。
「なんだこの動物……猫…か?」
「……熊なんだけど」
「……悪かった」
「……別に、いいよ。」
「これで貸し借りは無しだから。じゃあね。」
それだけを言い残して部屋へ戻っていくミサキ。よく見ると彼女の手にはこれを作る過程でつけられたのであろう切り傷がいくつか残っていた。
暫くした後、もう一度自身へ渡されたプレゼントを見つめそれをしっかりとポケットにしまう。
「あれだけ駆け回って、対価はお礼と小さなプレゼントか…ハッ、割に合わねぇー……。」
「でもまあ、悪くない。」
「メリークリスマス。クソガキ共。」
遅くなりましたが、メリークリスマスです。皆様。
今後の流れはどうしたほうがいいでしょうか
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寄り道無くブルアカ本編に行ってほしい
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少し寄り道もとい日常回がほしい