本日のテーマは「雨上がりの水たまり」「花札」「遊ぶ」の三つです。
お題はお題箱の三題噺ガチャから。
夕立に振られた春彦は、公園からほど近いところにあった友人である会田の家に転がり込んだ。
春彦はあまり会田の家に来るのはあまり好きではない。なぜなら、過去の残滓を感じ取ってしまうからである。
彼が最近新築の家に引っ越したというのも一つの要因なのかもしれないが、会田の家は祖母の代から住んでいるということもあって生活感がある。十年も二十年もその前ですら誰かが確かにここにいたのだろうと思わせるその家は、付喪神や座敷童がいると言われても違和感を覚えない。
また、春彦が会田の家に来ることを嫌う理由の一つに、ゲームの類が置いていないことが挙げられる。どうやら会田の両親ではなく祖父母の影響力が多いが故に、あまりそういった類のものを買い与えることに難色を示されているようだった。
「春彦、花札やろうぜ!」
そのため、会田の家に来てやることと言えば花札やめんこ、お手玉などの昔ながらの遊びである。会田はとても楽しそうにしているが、春彦はやはりあまり気乗りはしない。じじばばがやるものという認識が強く、自分があまり楽しめた記憶がないのである。
しかし、そうは行っても外は夕立で出られず、時間つぶしのために付き合ってやるかと会田のルール説明に耳を傾けた。正直、よくわからないが、やればわかるだろうと遊んでみることにした。
なめていた、と言うのが春彦の感想である。
なるほどこれは昔の子供たちがやるのも理解できる。単純なようで、戦略性もある。それが理解できるがために、頭を使って遊んでいる自分に酔いたい年頃の春彦がのめり込むのに時間はかからなかった。
一戦、二戦、まだまだ家族と遊んだことのある会田の方が一枚上手であるが、ルールを理解した春彦も経験を積むごとに段々とどうすればいいのか理解が進んで、勝負が本格化していく。
「うわ!」
二人ののぼせ上がった頭を冷ますかのように、風が吹いた。喚起のために開けていた窓から吹き込んだ風が、置かれていた札を舞い上げてしまう。
最近のスタイリッシュな家と違って軒がそれなりに長く伸びている会田の家は、窓を多少開けていたところで雨が吹き込むことは少ない。そのため雨だろうがこの時期の暑さを軽減するために窓を開けていたのだが、それが悪さして大きく盤面が崩れてしまうことになった。
春彦の目は次に勝負するつもりだった鳳凰の札を追っていた。それが故にいろいろなカードが舞って着地する中でただその一枚だけが窓の隙間から外に出て行ってしまったことにも気が付いてしまう。
「あ!」
春彦の声を上げた理由に首を傾げる会田を置いて、窓に張り付いて札の行き先を追いかける。
鳳凰はまるで春彦の目から隠れるように敷地の外へ逃げていき、その塀の向こう側に消えていった。
「取ってくる!」
春彦はそれだけ言い置いてすぐさま部屋を出て、階段をどたどたと音を鳴らしながら降り、踵を踏んだまま外へ駆ける。
鉄の門などない石塀の向こうの道には先の夕立で出来た水たまりがそこら中に広がっている。そこで自分に滴る水がないことに気が付いて、春彦はようやく夕立が止んでいる事実を認識した。
そういえば先程から雨音がしていなかった気がすると自分の記憶を洗ってみるが、そうして先程の風を思い出して、札がそこらに落ちていないかと辺りに目を向ける。
するとその道に広がる海の中に僅かばかりある浮島、即ち水の溜まっていない盛り上がっているアスファルトのところに、赤色の四角いものが落ちていることを発見する。
「お前、運が良いな」
拾い上げ、その柄を確認すれば、春彦が目で追っていた鳳凰である。
もしやこの羽を持つ伝説の生き物は自分で着地する場所を選んだのではと突拍子もないことを考えたが、そんなわけはないかと頭を振った。
しかしそのある種鳳凰が起こした幸運に心が揺らがないほど、まだ齢八つの春彦は大人ではない。
その後しばらく雨が降らない日も会田の家に上がり込んで、会田の祖父母たちに可愛がられたのは、春彦の子供時代の懐かしい思い出として今も記憶に刻まれている。
ちょっと時間が掛かってしまった。
15分ぐらいで書きたかったけど30分ぐらい掛かった気がする。反省。
一つのお題の登場が遅くなってしまうのが私の悪いところ。上手く素材を生かせないので、設定負けの小説が出来上がる原因にもなります。直したいですね。修行あるのみ。ぱわー。