本日のお題は「夏の海」「絵本」「瞠目する」の3つです。
瞠目するとは感動から目を大きく開くこと、あるいはそのぐらい驚いたり感動したりしている様子のことらしいです。瞑目と漢字が似ているので私は調べるまで逆の意味だと思ってました。
充希にとって、同じ空間にいる人間の最大数は片手の指で事足りた。無機質な白で彩られた彼女のパーソナルスペースはそう広くなく、自然と
故に、両親から持ってきてもらった絵本の中の光景が、ファンタジーのように思えてならない。
比較的新しめのその絵本は、海に行く家族を題材にしていた。海に行くために子供がたくさん準備をして、けれど様々な障害に遭って、けれども最終的に海で楽しく過ごす話である。
もう絵本を読むような年齢ではない充希も十分に楽しめる話では合ったのだが、その最終ページに映る見開きの海水浴場の絵だけが、彼女の心に
一度充希が海に行ったときの経験も、その疑問に拍車をかけた。彼女にとって海とは冬の夜の静かなところで、潮風が厳しく身体に障るということでほんの一瞬足を運んだだけ。確かに美しい光景ではあったと思うものの、そこに大勢の人が集まるというのは彼女からすれば
「今日は、どこにいくのですか?」
誕生日。それは彼女が自分の定位置である病院を出られる数少ない貴重な機会である。
いつもは自動車に乗って自分は後部座席に作られた簡易ベッドに乗せられてレストランなどに向かうのだが、今年は何やら物々しいボックスタイプの車に乗せられて、充希はこれからどこに向かうのだろうと不安を覚えた。自分より後ろの座席とトランクに置かれている大きな荷物も、彼女の不安を煽る確かな要因の一つである。
「内緒だよ」
「着いたらわかるわ」
両親からは秘密だと返されてしまって、充希は気が気でなかった。車の外を眺めようにも体を起こさない限り見えるのは空だけ。特に何の安心材料にもならないが、しいて言えば雲一つない晴天だというのは朗報かもしれないと彼女は思案した。
車が止まる。いつもとは違う車だからか後部座席の簡易ベッドの造りが甘かったのか座席から転がり落ちそうになって、充希は腕を突っ張って体を支える。
充希が危ない状態だと気付いた彼女の両親が彼女を戻そうと扉を開けて後ろに回ろうとすると、外から車の扉が開き、その光景が充希の目に飛び込んできた。
「海……」
人だ。人がいる。あの絵本のように、大勢の人がそこにいる。
瞠目する充希の視界に、彼女の友人がひょっこりと顔を出した。
「この前絵本のお話ししてたでしょ? 海には入れないかもだけど、みっちゃんにも折角だから見せてあげたいなって思って」
聞けば、今日のドライブは彼女の提案によるものらしかった。炎天下に充希を晒すのを渋っていた両親だったが、充希に海を見せてあげたいという彼女の熱意に負けて万全の準備をしてここに足を運ぶことになったらしい。車の中にあった大きな荷物は、海でのレジャーグッズに加えて、充希に安全に海を楽しんでもらうための準備の品が詰まっていたらしい。
設営をして、充希は直射日光に晒されないようにパラソルの下に隠される。
結局彼女はビーチベッドの上に寝そべっているだけだったが、自分が想像もしたこともないほどの人の群れの中に入って、自分もその一員になっているという事実に感激した様子だった。
例え他者から見て味気ない思い出のように思えても、彼女にとってはかけがえのない一日だった。
簡単プロット
充希はベッドの上で夢想する。絵本の中では、夏の海は大勢人がいるらしいが充希はそれを見たことがない。
友達にサプライズとして病院の外に連れ出され、充希は初めての海を楽しむのだった。
若干プロットと違いますが、まあ概ね満足です。
30分クオリティですが、やっぱりパソコンの方が描きやすいですね。しかし若干書くペースが落ちている気がします。4日間のサボりが地味に効いていそう。リハビリを頑張りましょう。ぱわー。