お題が難しすぎる。酷い話になりました。
まだあんなことやってんのかよ。
そう口にした友人の目が胡乱なものになっていることに気付いて、私は嫌な予感がした。その視線の先には、友人である正弥が一度就職し、親友である自分にすら辞職した理由を話さなかった有名店があった。
どうしたのだろうと私が問うより早く、正義漢の強い友人が足早にそちらに向かっていく。
「まだこんな商売してんのかよ! ただのスーパーの冷食をチンしただけだってのによォ!」
友人が吠えた言葉に、辺りがシンと静まり返った。
疑惑はあった。度々ネットの一部ではまことしやかにそれが囁かれ、いつか潰れると声高に叫ばれていた。
しかしそれを真実だと捉えるものは少なく、この店は未だブランドとしての価値を保ち続けているまま。それが正弥には許せなかったのかもしれない。
このタイミングで爆発してしまったのは、私が安易にデパートに彼を連れてきてしまったから。その事実に少し罪悪感を覚えた。
「ふざけるな! 何の証拠があってそんなことを言うんだ!」
「俺は元社員だからな! どうやってそれを作ってるかも知ってんだよ!」
最初は狂人が出たと騒がれていた辺りは、友人の一言で一変する。
疑惑が伝播する。どこかに駆けていく者がいる。どこからかやってくる野次馬もいる。もしかして、本当かもしれない、言われてみればそうかも。
芽生えてしまった疑念は、そう簡単には収まってくれそうになかった。
『わりぃ、マズった』
ひどくやつれた声で正弥から電話があったのは、そんな出来事があった三日後のことだ。
聞けばどうやらあの場で正弥が叫んだことは入社時と退職時に契られていた秘密保持契約に反するものだったらしく、一連の損害賠償を吹っ掛けられてしまったとのことだ。
この情報社会ではあっという間に話が広がってしまって、好調だったあの店も他の事業部におんぶにだっこの状態になって、今では事業を畳むという話も巷では囁かれているらしい。
その親会社の方から賠償責任を追及されてしまった正弥は、どうやら手に負えないほどの金額を叩きつけられたようで、今から飛ぶ(借金から逃げる)ということを私に連絡してきた。
世間では「よく言った」だの「勇者を守るべき」だのと言われているが、実際に正弥に手を差し伸べようという者はいない。裁判で戦えば勝てるのかもしれないが、あの企業相手であることを考えると個人では太刀打ちできない気もする。彼から聞かされた金額は私程度の人間が一生働いたとて手に入れられるような額を遥かに上回っていて、私には正弥を助けてあげることができなかった。
「死ぬなよ」
『善処するさ』
数日後、彼の家を訪れた。
玄関扉にカギはかかっていない。扉を開けると、彼が暮らしていた頃のまま物が全て残っていた。
力任せにちぎられたであろう紙袋を拾い上げれば、あの会社からの封筒だ。
今回の件は正弥の不注意の部分もあったが、少なくともこの会社のものを買う気にはならないなと、私は思った。
タイムは25分。実際は20分でほぼ完成、ラストの三行を5分ぐらい考えてました。
簡単プロット
デパートで正弥は吠えていた。職人の味と銘打つ店の裏側が、市販品をレンジでチンしただけの料理だったことに気が付いてしまったからである。しかし正弥は元従業員だったこともあり契約違反だと糾弾され、友人の引き留めも聞かずに逃げ出してしまった。
最後の部分だけプロットを変えました。「ちぎる」を「契る」「千切る」の二通りに掛けたかったんですが、総じて微妙なクオリティですね。もっと精進しなければ。継続あるのみ。ぱわー。