先に言っておくとバッドエンドです。
落とし穴の底が見えたとき、自分たちの運の無さに嫌気が差した。
そこが迷宮の地雷エリアと名高い、水中エリアだったからである。はぐれずに残っていた仲間の一人も、その事実に気付いて青い顔をしている。
「……クソッ」
そう呟いた数瞬の後、私たちは水中へと叩きつけられた。
両者ともに中央の浮島に辿り着けたのは、最悪な状況の中で唯一運が良かったと言える部分だろう。
五体満足とは言えないが、まだ二人とも息はあった。
水から這い出て、息を整える。足を食われた仲間を引っ張り上げて、止血をする。それが終わったら自分の脇腹の出来た裂傷の手当てをする。意識のない仲間は手伝ってはくれなかった。仕方がない。どちらも満身創痍だった。
「悪い、迷惑をかけた」
迷宮に足を踏み入れるような女は、総じて男勝りな性格なものが多い。左足を水中の魔物に食いちぎられた仲間も例に漏れずそういう性質の女であったが、いつになくしおらしい態度をしているところを見るに、相当堪えているのだろう。
迷宮の探索者にとって、自分の身体以上の資本はない。腕なら仕込み義手などの選択肢も多いが、義足については探索者用のものはまだまだ多くない。土、砂、水、沼地、そういった様々な環境て適応し、加えて魔物の攻撃を踏ん張れるぐらいの耐久性というのは、どうやら義手に素材が持っていかれてなかなか義足にまで回らないようだ。
「その足じゃ、自力で戻るのは無理だな」
「そもそもここから動けないだろう。我々には水上歩行の術式もなければ水生の加護もない」
仲間の言うとおりだった。
このエリアは水に入るとすぐに魔物が寄ってくる。そのため水上を歩ける術式を購入して水の中の魔物を刺激しないように静かに通り抜けるか、水生の加護という水の中でも普段と同じように動けるようになる聖魔術を利用して真っ向から魔物とぶつかって突っ切るかが必要なのだ。そうでなければ自分たちのようにまともな抵抗もできずに食われて終わりである。
加えてこのエリアは、上に戻るためには下の階層に辿り着く必要がある。上の階層からの道は水流によって流されて出てくるものがほとんどで、それ以外の道は落とし穴等の一方通行のルートのみ。飛行魔法の使い手であれば落とし穴の重力魔法を突破できないこともないが、そんな芸当ができるならばこの階層も容易に突破しているのである。
「じゃあどうする、ここで死ぬか」
「運よく救助が来ない限りは、そうだろうな」
「正気かよ」
「水の中に飛び込むよりは、正気を保っていると思うがな」
片足を失ったというのに冷静な仲間に辟易する。もっと取り乱してくれればこちらも冷静になれたかもしれないというのに。
いや、自分が平静でないから仲間が冷静になったのか。自分がそうでないとここまで調子が狂うのかと息を吐いた。
そんなことを考えていると、足元がぐらりと揺らいだ。
「なッ……!」
「……マズったな」
足場がぐわんと持ち上がって、水面がどんどん遠くなっていく。
話には聞いていたが、まだここに来るつもりのなかった自分たちは、判別できる方法を知らなかった。
地面が傾いていく。浮島だと思っていた地面が、折りたたまれるように島の中央へと落とそうとしてくる。
水中エリアに気軽に足を踏み入れてはいけない理由の一つで、水中エリアでの死因の約半数を占める化け物の口が大きく開いていた。
「いやだ……! こんなところでッ……」
縋るような目でこちらを見てくる仲間を見て、思わずその手を取った。
それでどうにかなるわけではないのに。終わりには違いないというのに。
握る手から不安と震えが伝わってくる。きっと自分の手からも仲間に伝わっている。自然と違いの体を寄せあった。体温を感じたかった。
目を瞑る。
浮遊感。
痛みは感じなかった。
簡単プロット
迷宮の水中エリア。そこは準備無しに足を踏み入れればその時点で終わりの魔境。
上層の落とし穴からそこへ落下してしまった二人は、手を握りながら終わりを待つのだった。
所要時間30分。まあこんなものか。
水中迷宮の観光とかでもよかったかもしれない。でも水中迷宮は安直すぎるかなって。迷宮の水中エリアもそう変わりませんね。
最近プロットが半分紹介文みたいになっているので、もう少し要約に近いものにしたいですね。練習あるのみです。ぱわー。