穿つという表現を使わなさすぎる。でもまあまあいい感じにまとまったと思います。
図書館で働く図司は、自習室前で同僚が学生に絡まれていることに気が付いた。
学生の方の声はそれなりに響いており、自習室が図書館の端の方に位置しているとて、その声は通常の書架にも届いてしまっていた。
「どうしました? 例の件です?」
そう声を掛ければ、同僚が泣きそうな顔で図司の方を向く。いや、既に一度涙が引っ込んだ後なのか、頬に少し水が零れた跡が見て取れた。
メイクを確認してこいとセクハラにならないだろうかとハラハラしながら同僚を逃がし、彼女を詰めていた学生に向き直る。学生は高校の制服を身に纏った、真面目そうな男子生徒だった。
「例の件って、これを知ってるんですか?」
そう言って男子生徒が手のひらに乗せて見せてきたのは、最近職員の中でも問題になっている、穴の穿たれた消しゴムだった。
これは先月の半ば頃から報告されている事象であり、席を離れて戻ってきたら使っている消しゴムに穴があけられていたという被害が既に片手では数えきれないぐらい聞こえてきている。泣き寝入りしている被害者がいる可能性を考えれば、被害者は既に二桁にかかるぐらい存在すると考えていいだろう。
「こちらでも問題になってましてね。同じような被害がいくつか報告されているんです」
「だったら、ちゃんと対策をしてください!」
「あの、ここは自習室の前です。声は抑えてください」
そう指摘をすれば、男子生徒は自分が声を荒らげていたことに気が付いたのかハッとしたようにしおらしくなる。キョロキョロと周りを見て視線が自分の方に向いていたことを悟り、恥ずかしそうに下を向いた。
しかし図司とて自分が被害に遭えばそうもなるだろうと男子生徒に同情的な目を向ける。
そしてふと男子生徒が先程見せた消しゴムを思い出して、図司はもう一度見せてくれと男子生徒に消しゴムを出すように依頼する。
「おー、なるほど」
穴を開けられたという話だけ聞いていて実物を見たことがなかった図司は、その消しゴムの状態を見て何か思い当たることがあったのか感心するような笑みを浮かべながら男子生徒に消しゴムを返却する。
男子生徒は彼のその様子を見て違和感に気付いたのだろう。何かわかったのかと率直に図司へと質問を投げる。
「ちょっと待ってもらえます? もしもし、あ、新谷見さん、ちょっといいですか?」
突然電話を取り出してどこかへ連絡を初めた図司に、男子生徒は思わず目を細める。
図書館で通話なんて、と自分の声の事を棚に上げてそんなことを考えていれば、いつの間に通話が終わったのか、図司がスマートフォンをズボンのポケットにしまっていた。
男子生徒が何を確認していたか聞く前に、図司は彼に向けて確認を取る。
「それ、本当に君のか確認してもらえます?」
「何を言ってるんですか?」
「確認してもらったんですが、被害に遭った消しゴムは全部新品だったんです。本当に昨日今日使い始めたぐらいのものです。それでもって、穴が開いてると聞いていたんでてっきりコンパスか何かでブスッと穴だらけにしたのかと思ってたんですが、そうじゃなくて何かでくりぬいたような穴が開いてるじゃないですか。普通に考えて欲しいんですが、お茶とかトイレとか行くぐらいの時間でこんなきれいに貫通させられますかね? しかも、こんな事したら目について仕方がないはずなのに、ここまで捕まらないってのもおかしいです」
そこまで言うと、男子生徒は自分の消しゴムに目を落としてカバーごとくりぬかれた消しゴムとカバーをずらし、
「これ、僕のじゃないです」
と、目を瞬いて図司の方を見た。
そこからは早かった。消しゴムに穴を開けられているのではなく、穴の開いている消しゴムに入れ替えられている。比較的新しい消しゴムが被害に遭っているのは削れている状態にさほど差異がなく入れ替えに気が付きづらくするため。そこがわかれば、おとりを作る余裕も生まれるというもの。
次の日、自習室を利用しようとした生徒の一人に事情を説明して新品の消しゴムを渡し、なるべく扉近くの席を陣取るようにお願いする。
そうして途中で少し乱雑に扉を閉めて貰って退席したことを分かりやすくしてもらえば、あとは犯人が行動に移るのを待つだけだ。
「ストップ。君が犯人だね」
あまりにも手慣れた動きで消しゴムを入れ替えて自習室の外に出てきた生徒を捕まえ、その手に持っている消しゴムが穴の開いていない消しゴムであることと協力してもらった生徒の机に穴の開いた消しゴムが置いてあることを確認して現場を押さえ、一連の事件は解決した。
犯人はどうやら癖で消しゴムに穴を穿つことをやめられず、親に見つかって怒られることを嫌がって犯行に及んでいたらしい。
事情聴取というなの聞き取りの内容を後から聞いた図司は難儀な
簡単プロット
図書館の自習室で消しゴムに穴を開けられる事件が相次いでいた。
被害に遭うのは新品の消しゴムばかりで、図書館側に苦情が来ていた。
図書館職員の図司は犯人がただ消しゴムをすり替えているだけだと気が付き、見事犯人を捕まえたのだった。
40分を超過という体力を使う掌編(?)執筆となりましたが、概ね満足してます。
基本プロット通りで、出来も即興にしては十分でしょう。一個上げるなら導入部分がプロットが無いも同然なのでそこもプロットにねじ込めるといいですね。これ以上は欲張りな気もしますが。
ともあれ日課の練習なので惰性でやるよりは目的意識を持ってやった方が良いのも事実です。新人賞の応募の時もいつも1000字程度の概要の提出のところで困ることが多いので、練習して慣らしていきたいですね。頑張りましょう。ぱわー。