何か具体的すぎるのがありますね。まあでもこういうのもうまく調理できてこそですね。
夜の空に炎が映える。
それが花火であれば美しい光景だと心躍ったのだろうが、残念ながら燃えているのは我が家である。これからどうすればよいのかと、まず自分の未来を案じてしまう。
次に案じたのは家族の無事だった。周囲を見渡しても家の者たちはいない。小さな体を活かして早々に脱出できたはいいが、家族が全員死んでしまえば自分も路頭に迷うしかない。
仕方なく、私は家の中に戻って息のある人間を探すことにした。
「ミァーオ」
炎があちこちに広がり、今まさに崩れ落ちんとしている館の中で家族を呼ぶ。
おやつをくれる心優しき次男、逆撫でをして嫌がらせをしてくる長男、おもちゃを使って遊んでくれる長女、最近私のご飯のランクを上げてくれた主人の妻、そして私には理解できないが自身の才能を生かして食い扶持を稼いでいるご主人。
それぞれの名前を呼んでいるのだが、彼らは私の言葉を解さないので誰が呼ばれているかはわからないだろう。だが、それでいい。私の役目は呼びかけ続け、誰かの反応を探ることなのだから。
「ミャオーゥ」
屋敷の中を歩いていたら、頭から血を流して意識を失っている次男を発見した。
衝撃を与えれば起きるかと思ってジャンプしてその頬に向かってパンチを繰り出したら、その勢いのまま花瓶のように倒れてしまう。そして、光の失せた瞳孔がこちらを向いているのが見えた。
なんということだ。もっとも心優しく未来に溢れていた次男が、こんなところで生を終えてしまうとは。
私は爪を立てないように気を付けながらその瞼を落としてやる。この結末では難しいかもしれないが、彼の眠りが安らかであることを願っておく。
「ニォアウオーィヤ」
パチパチと炎が音を立て、そこかしこから重たいものが落ちる音が響いてくる。崩落が進み、本格的に屋敷が崩れ始めているのだろう。
そんなことを考えながら焼け落ちていなかった階段の手すりから建物の二階に上って進んでいたら、私の呼びかけに応じる者がいた。
「ファムか。そこにいるのかい?」
ご主人の声だった。私を購入し、この家の家族にしてくれた恩人の声が、どこかから聞こえてくる。
グルグルとその場を回りながらご主人の姿を探すが、どこにも姿が見えない。
「ナーオ」
もう一度声を上げて、彼の反応を待つ。
すると、柱や天板が崩れている方から、ご主人の声が聞こえてきた。
「ファム、ああファム、無事だったか、良かった」
崩れ落ちた柱の上に飛び乗ってその先を見れば、逃げることが叶わないほど体を瓦礫で押しつぶされたご主人の姿があった。
私ではこの重く大きな邪魔者たちを退かすことはできない。このままではご主人は死んでしまう。
そんなことを考えてご主人の頭の周りをうろうろすることしかできなかった私に、ご主人は役目を与えてくれた。
「ファム、そうだ、こんな
そんなことを優しい顔で言われれば私は断ることができなかった。
恐らく私をここから逃がすための方便なのかもしれなかったが、頼むよと懇願されてしまっては耐えられなかった。
そして、ご主人はいつものように歌を詠んだ。その文字を忘れないように私の小さな脳に刻み込んで、私は外へ駆けた。
そして生き残った長女に連れられた場所で、私はそこにいた人間の見よう見まねでパソコンを叩いた。私に場所を奪われた人間はとても迷惑そうにしていたが、私が意味のある言葉を羅列し始めたのを見ると、一気にその目を変えて完成を固唾を呑んで待っていた。
斯くして、私はご主人の最期の詩を世に届けた。パソコンを操る賢い猫と騒がれようと、詩人の最後の詩を残した忠猫と世間に持て囃されようと、私はその称賛を素直に受け取ることができなかった。
だって、私は結局ご主人を見捨てたのだ。冷静に一度外に出て助けを呼べばよかったものを、私は彼の詩を届けただけ。
真にご主人に仕えるのであればあそこで共に死んでおくべきだったのではないかと、私は思ってしまう。
私があの場を去ったとき、ご主人はどんな心持ちだったのだろうか。寂しい思いをしていなかったか、それが一番心残りである。
何と30分で書いてます。単純だったからですかね。いつもより文字量が多い。というか迷いなく掛けましたね。
簡単プロット
炎に包まれた屋敷の中で、アルト家の飼い猫だったファムは生き残りを探して歩いていた。
見つけたのは瓦礫に挟まれて虫の息の主人。詩人であった主人が最後の歌を詠んだのを聞いて、ファムはそれを外に届けるのだった。
プロット通りですが、こういう小説を書く方が向いているのかも。書いていて楽しいし、普通に筆が進みました。こんな感じで自分に合いそうなジャンルとかを見つけるのも三題噺の醍醐味ですね。日課としてもっと続けてどんどん発掘していきましょう。